オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、ずぶ濡れになる

 十月がやってきた。

 

 学校中で風邪が流行っているためマダムポンフリーが大変お忙しくされている。

 

 オレも忙しくしていた。

 

 なぜって? 

 

 とうとうオレの口の中に1ヶ月居座り続けたマンドレイクの葉を吐き出す日が今日の夜だからだ。口の中はへどろみたいな味で最悪だった。へどろを食べたことはないからこの表現が正しいかはわからないけど。

 

 まあとりあえずこの期間に彼女を作っちゃだめだね。別れるだけでなく裁判沙汰になりかねない。『彼氏のキスで死にかけました』とかなんとか。

 

 オレは朝から満月が見えますように、曇りませんようにと願うことに1日を使った。

 

 あまりにも上の空なのでオレも流行り風邪にかかったのではないかとハーマイオニーに無駄な心配をさせてしまった。というかハーマイオニーはオレのことを心配しすぎる癖があるのかもしれない。

 

 深夜、オレはハリーとロンが寝ているのを確認し小瓶をもって談話室に出た。こういう時地下が寮じゃなくて本当に良かったと思う。

 

 オレは小瓶に、今さっき吐き出してその後満月に照らしたマンドレイクの葉と唾液、自分の髪、七日間日が当たっていない露を小さじ一匙、そして去年のクリスマスプレゼントにハグリッドからもらって保存魔法をかけておいたドクロメンガタスズメの繭をそっと入れた。全部入れ終えた小瓶をウィーズリー家お手製の去年もらったセーターに包み部屋に戻った。

 

 これで雷雨になるまでこのままオレのトランクに眠っていてもらえばOK。ついでに今日から呪文を心臓に毎日日の出日の入りにかければしばらくはOKだ。これを忘れたり、時間を間違えたりすると最悪なことにもう一回初めからやらなくちゃいけない。たぶん次の挑戦は忙しさとか材料入手のルート的に来年、いや下手したら卒業後だろう。そんなの待っていられない。

 

 さっきまでは晴れるよう願っていたが、今からは早く雷雨になれと願っている。

 

 

 オレは日の出と日の入りと天気を気にしすぎて挙動が変だったせいか、具合の悪そうなジニーと一緒に元気爆発薬を週一で飲まされていた。

 

 何回「あなたたちまたですか」とマダムポンフリーに言われたかわからない。

 

 ハロウィーンの1日前、朝から雷雨で天気は最高だった。たぶんそう思っているのはオレだけだ。

 

 ハリーはクィディッチの練習をこんな天気の中やらなくてはいけないと嘆いていたがオレはウキウキが止まらない。

 

 オレは暴れ柳前の誰も来ない広い場所にウィーズリーセーターと中の小瓶を持ってやってきた。ちなみに全身に防水魔法を施したので寒いが濡れることはない。

 

 このセーターの中身を見て赤くなっていれば成功、なっていなければマンドレイクの葉っぱとドクロメンガタスズメの繭を新たに手に入れなければいけない。けっこう不可能だ。

 

 オレは意を決してセーターを剥いだ。

 

「よっし!!」

 

 オレは天才かもしれない。思わずガッツポーズをきめた。

 

 瓶はきちんと赤く光っていた。これでオレは史上最年少動物もどきだ。まあ50年前の資料によるとだ。

 

 あとはこれを呪文を唱えながら飲めばOKだ。戻れなくなったら動物として生きていくしかないのかもしれない。オレはどんな動物に変わるんだろう? 

 

 期待、恐怖、不安、高揚感いろんな気持ちが一気に湧き上がってきた。

 

 オレは呪文を唱え一思いに瓶の中身を飲み干した。

 

 オレの体は一瞬で体が小さくふわふわになった。ついでに目が異常によくなった。

 

 オレは足元に溜まっている水溜りを覗き込んで全身を見た。すると水面を覗き込んでいたのは青い目をしたフクロウだった。控えめに言ってかわいい。

 

 あとは人間に戻れれば完璧。

 

 もちろんフクロウは話せないので、心の中で呪文を唱える。

 

 すると次の瞬間オレはオレに戻っていた。

 

「オレ羽生えてないよな?」

 

 おもわずそう呟いてしまうくらいなんの違和感もなかった。成功する根拠のない自信はあったが、本当に成功してしまうと感慨深いものがある。もっとかっこいいヒョウとか、タカとかが理想だったがフクロウも悪くない。箒がなくても飛べるのは普通に便利だ。しかもありがたいことに魔法界ではフクロウが一般的だ。そこら辺にいても何も思われないのもいいことだ。

 

 オレは超浮かれていた。そのせいでフクロウになったからか防水魔法の効果が切れていたのに全く気づかなかった。普通にスキップして帰った。ランナーズハイならぬアニメーガスハイだ。

 

 玄関ホールに帰ってきて初めて自分が濡れていることに気づいた時にはすでに体温は狂っていた。寒いけど暑い。

 

「ブラック! びしょ濡れでどうしたんですか!」

「……」

 

 本当にマクゴナガル教授とはよく玄関ホールで会う。まあ、彼女の自室が玄関ホールに近いのが主な理由だろう。

 

 オレの意識はすでに半分切れかけていた。たぶん力を使い尽くしたのと雨にやられたの半々だろう。

 

 どんどんマクゴナガル教授の声が遠くなって、体の力が抜けるのを感じた。

 

 

 次に目をあけるとそこは白い天井だった。

 

 これで何度目かの医務室での起床だ。体は弱くないはずなんだが、すごい頻度でお世話になっている気がする。オレの特設ベッドが作られそうな勢いだ。

 

「目を覚ましましたね。まったく、この風邪が流行している時期にずぶ濡れになるなんて何を考えているんですか。ココアです、飲んでください」

 

 オレは湯気が出ているマグカップを手渡され素直に口に運んだ。地味に口の中があの得体の知れない魔法薬の味だったのでたすかった。

 

「明日のハロウィーンに出席したいのなら、あなたは今日1日ここで寝ること。いいですね?」

「いや、寮のベッドで寝ますよ」

「あなたが最近眠れていないことはマクゴナガル教授から聞いてちゃんと知っているんですよ。今日は睡眠薬を出しますからね。これは決定事項です」

 

 いや、眠れていないんじゃなくて日の出と日の入りに呪文をかけるために起きていただけなんです。今日からはぐっすり眠れます。なんて言えるはずもなく、渋々頷いた。

 

 風邪の生徒は元気爆発薬を飲んだらすぐ帰らされるのに風邪でもないオレはここで入院とか本気でオレ専用のベッドができるかもしれない。

 

 こうしてオレはマダムポンフリーが持ってきた病院食を晩ごはんに食べ、睡眠薬で強制的に夢の中に落とされた。

 

 

 

「ルークはもう寝ましたか?」

「あら、マクゴナガル先生。ルークには先ほど薬を飲んでもらいました。すっかり隈ができていましたよあまり眠れていないんでしょう」

「あの子は色々教わる前に全てを失ってしまったから心配なのです。しかもダンブルドアは休暇中もほとんどホグワーツにいるんですよ。まだたったの13歳の少年なのに一人で過ごさせるなんて」

「普段のいたずらも気をひくための彼なりの手段なんでしょうか。気づいている我々が手を差し伸べないと。まったく、まだ彼の容疑は晴れないのですか?」

「証人がハグリッドしかいないのが問題なのです。凶行をマグルが目撃していたのも厄介ですし──」

 

 

 

 オレはマダム・ポンフリーからOKが出たので寮に戻ることができた。談話室でハリーとロン、ハーマイオニーと出会い「何があったのか?」と質問攻めにされた。

 

「ちょっと散歩に行ったら防水魔法が切れてびしょ濡れになったところをマクゴナガル教授に保護されて医務室行きさ」

「あなたってたまにものすごくポンコツね。まだ学期始まって少ししか経っていないのに医務室に行くのこれで記念すべき10回目よ」

「あー、オレそんなに行ってた?」

「しかもベッド入院がその中に3回も」

「たしかにそんな気がする。でもマダムポンフリーが大袈裟なだけだって」

「あなた夢中になると自分のことなんてお構いなしになるところとかレイブンクローって感じね。そんなんじゃいつか本当に長期入院になるわよ」

「その言葉そのまま君に返そうかハーマイオニー。オレ知ってるんだからな、君が闇の魔術の防衛術を徹夜して予習しているの」

「でも、私は医務室にお世話になっていないからいいの」

「そういうところ二人ともレイブンクローって感じだ。僕には全く理解できないや。ハリーわかる?」

「全く。僕もレイブンクローとはあんまり迷われなかったな」

「でも何はともあれハロウィーンには戻ってこれたんだ。それで十分だろ?」

 オレがそう言うとハリーが何か思い出したようで口を開いた。

 

「そうだ、そのことなんだけど、今日僕たち7時から絶命日パーティーに行くことになってるんだ。一緒に行ってくれない?」

「なんだって? 君たちいつ死んだんだ?」

「違うよ、ニックに誘われたんだ」

「生きててもいけるんだな。まあ別にハロウィンにそこまで思い入れはないからなんでもいいよ」

 

 オレはすんなりOKを出してしまった。行ってみて絶命日パーティーがどんな催しかもよく知らないまま首を縦に振ってしまったことに後悔した。

 

 オレたちが会場に到着するとニックが真摯にお出迎えをしてくれた。

 

「これはこれはよくぞおいでくださいました。ごゆるりとお楽しみください」

 

 そう言って招き入れられたところは一言で言うと『地獄』または『混沌』だった。

 

 BGMはノコギリで骨を切っているような音で構成されていて、参加者は修道女や鎖が巻かれた男、太った修道士、嘆きのマートル、血みどろ男爵とバラエティーに富んだ構成だった。わかっていると思うが全員死んでいる。

 

 ちなみに嘆きのマートルってのは女子トイレでいじけている少女のゴーストだ。よく癇癪を起こしてパイプをおかしくしてトイレの床を水浸しにするらしい。ハーマイオニーによるととんでもなく卑屈なんだとか。あまり関わりたくはないタイプらしい。

 

「見て! 食べ物だ!」

 

 ロンは見つけた瞬間は元気よく発言したが、近づいてみるとどんどん気分が下がっていった。

 

 皿の上にはこれでもかと腐らせた魚に、うじ虫がわいたハギス。まっくろこげのケーキにカビで原形がなくなったチーズ。臭いはトロールといい勝負だ。

 

 ここは生きている人がくるパーティーじゃない。それがこの4人の共通見解だった。

 

「そろそろ行こう。大広間にもどればデザートくらいあるかも」

 

 ハリーの提案にオレたち3人は大きく頷いた。そして、こっそりと絶命日パーティーから抜け出した。

 

 そしてオレはビリーたちが食事を作ってくれることに改めて感謝した。

 

 今日の教訓をあげるとするならば、親しい人に鼠講を勧誘された時に一回吟味することの大切さだ。

 

 美味しい話も蓋を開いたら最悪だった時、友達に「なんでこんなのに誘ったんだ?」って聞いたら「こんなんだって思わなかったんだ。知らなかったよ」って返ってくること間違いなしだ。

 

 




動物もどきに関してはゲームの設定を曲解しました。
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