オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
ルーク、杖につつかれる
ついに外に出ることができる日がやってきた。
実は自分がどこに住んでいるのかもわからないくらい情報規制線がアルバスによって引かれてたりする。
「わしに知識で勝つか、ホグワーツに通える年齢になるまでは我慢しなさい。外は危険がいっぱいじゃ。今のままだと君は知らないものからお菓子をもらってどこかに行ってしまいそうじゃからな」
なんて言ってほぼ軟禁だったのだ。おれは幼児か?
「アルバス、このリストの物たちを買いに行くんですよね? どこに行くんですか?」
「ダイアゴン横丁じゃよルーク」
「そこは歩いていけるんですか? 箒ですか?」
「残念ながらどちらも違うのう。君も良く知っておる方法じゃ」
「自転車?」
「それも魅力的な提案じゃが、今回は姿くらましじゃよ」
「えっ? オレもできるんですか?」
オレはパチンと指を鳴らす。ビリーの真似だ。
「それはもう少し大きくなってからじゃ。これは資格が必要じゃからな、そうでないと簡単にばらける人でいっぱいになってしまう。腕につかまりなさい、すぐに終わる」
なんだよばらけるって、おっかないこと言うなよサンタ。
アルバスに差し出された腕を掴むと視界が歪んだ。シスターと一緒にマフィア(だと思われる)の基地から脱出した時のカーチェイスよりやばい、内臓が4回転半した感じだ。そんなことを考えている間に見慣れない景色が広がっていた。オレはもちろんその景色も気になったが、しばらく石畳とお友達になった。
「初めてにしては上出来じゃ。ほれ、レモンキャンディーじゃ。舐めれば気分もよくなる」
「……どうも。アルバスって絶対報連相が必要な役人にはなれないタイプですよね」
「わしの天職は教師じゃよ」
数分で回復したオレはあたりを見渡した。
ダイアゴン横丁は活気に溢れ、オックスフォードストリート並みの人口密度だった。一度連れを見失ったら出会うのに倍の時間かかるだろって感じ。
薬屋、ペットショップ、クィディッチ専門店、散髪屋(アルバスは頭も髭も剃る気はなさそうだった)を通り過ぎ、書店や洋服店、鍋屋で買い物をした。そして、オリバンダーの店にも行った。そこは、アルバスの話では、自分だけの杖が見つかる場所らしい。
「ぴったりの杖がみつかるはずじゃ。入ってみなさい」
アルバスに促されオレは少し薄汚れた店に足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ。おーおー、ダンブルドアではないですか。そのお連れさんは、ふむ、今年は珍しい客が多い年じゃ。君、杖腕は?」
「杖腕? あー左です」
「腕を伸ばして。そうそう」
老人はオレの腕をひっつかみ、洋服店での採寸と同じように肩から指先、ひじから手首とメジャーで測りとっていた。
「いいだろう。楽にして。さてさて君にあう杖はどれだろうか」
老人は棚の間を飛び回って何個か箱を取り出していた。「これは違う」とか「これはダメ」とか呟きながら。とうとう棚と棚との隙間に入り込み姿が見えなくなった時だった。
「まちなさいっ!!!!」
老人がまるで泥棒でも見つけたかのように声を張り上げた。オレは何があったのかと左右を見渡すが特に変化はない、いやなかった。3秒で状況が変わった。
「えっちょっ、ぐっ……なんだよ、ちょっこの棒なんですかっ?!」
「それはアカシアにドラゴンの心臓の琴線30センチ。アカシアはなかなか主が選ばれないので在庫はもう数本しかありません。その杖はその中でもちょっと特殊で主人が決まったら死ぬまで必ず主人の元に帰ってき──」
「ちがう! そんなことよりどうやったらこいつはオレを突くのをやめるのかを教えてください!」
猪突猛進というのはこういうことを言うのだろう。まっすぐに何度もぶつかってくる尖った棒は地味にけっこう痛い。アルバスは自分は関係ないからって呑気にふぉっふぉふぉっふぉ笑っている。
「それなら、止まれと言ったら止まりますよ」
「っ止まれ!」
なんとびっくり、杖は大人しくオレの掌にのっかりそのまま微動だにしなくなった。魔法使いってやつはみんな大事なことを後回しに発表していくスタイルはやめたほうがいい。ここは通販番組じゃないんだ。「なんと今お電話いただいた方には全員にフレキシブルノズルがタダで付いてくるんです! ついでに──」なんて後出し情報だらけだ。
「あなたはきっと偉大な魔法使いになるでしょう。活躍を楽しみにしています」
社交辞令を告げられ店を去ることになった。ダンブルドアは終始ニコニコしていた。
「お似合いの杖が手に入ってよかったのう」
「それはアルバス、オレが猪突猛進って言いたいんですか?」
「毎日毎日わしに悪戯をしかけてくるところはその杖とそっくりじゃよ」
「もしかして少しはダメージがあったってことですか?」
「いいや、その点だとまだ君の杖の方が少々過激かもしれんな」
「まじかよ……」
こうしてオレは杖をゲットした。これで意趣返しの幅が広がったと思ったのだが、そんなことはなかった。
「未成年は杖を使ってはならぬ。これは法律で決まっておるからのう、残念じゃがホグワーツに入学するまで杖魔法はお預けじゃ」
「家の中でもですか?」
「もちろん。わしが教師である以上特別扱いはなしじゃ」
◆
8月31日。
つまり明日からホグワーツって日の朝、いつも通り少し寝ぼけながらアルバスと二人で朝食をとっていた。
「これがホグズミード駅発、ホグズミード着の切符じゃ。出発は今日の23時が適切じゃろう。わしがホグズミードまで送ってやるからそこらへんは心配せんでも良い。忘れ物がないかしっかり確認しておくんじゃぞ」
「ん……えーっと、22時までに荷物をまとめていればいいんですね、わかりました。ねむっ」
「ふぉっふぉ。そうじゃ、列車の中で寝ることになるがそういうことは慣れておるじゃろ?」
「もちろん、木の上で一夜をすごしたことがあるくらいです。椅子があれば余裕、あっでもご飯はほしいかも」
「お弁当をビリーに作らせるから心配するでない。お小遣いももっているじゃろう? 車内販売があるから好きなものを買いなさい」
「はーい」
「楽しい学校生活が君を待ち受けているはずじゃ」
これが今朝の会話である。そのままアルバスは職場に行き、オレは教科書をトランクに詰め込みその他諸々生活必需品を一つ一つチェックしながらぶちこんだ。気分は7歳の時の遠足だ。あの時はバスが爆発してバックパックはお釈迦になったから今回はそうならないように願うしかない。余談だがそれ以降残念なことに遠足という行事は消え失せた。
準備万端、オレはいつでも出発できるって状態になったあとアルバスが来るまでは、ビリーと別れの会話をすることになった。
「ビリー、いつもありがとう。また休暇中に会おう」オレはいつもの感謝の気持ちを伝えた。
「ルーク様が大きくなって、明日からホグワーツだなんて信じられません。最初はビリーと同じ大きさだったのに」
ビリーはオイオイと泣きながらそう言ってきた。
「いや、オレきた時そんな小さくなかったから」
「もし眠れなかったら子守唄を歌ってあげますので気軽にお声掛けください」
涙を自分のボロで拭きながらビリーは言う。
「あぁそんなことはないから心配する……ん? どうやって声をかけるんだ?」
「玄関ドアから一個下がった階のフルーツバスケットの絵画の梨をくすぐればいいのです」
「そうしたらどうなるんだ?」
「洋梨が笑ってドアノブになります」
「その扉を開けたら?」
「ビリーに会えます! ついでにおいしいお食事もお出しできます!」
ビリーは笑顔になった。
「待ってくれ、ビリーはなんでそこにいるんだ?」
「ビリーはお屋敷がお暇な時はホグワーツの厨房で働いているのです!」
「あーー、つまりビリー。おまえはホグワーツにいると」
「ご主人様もホグワーツにいるので屋敷のみんなもホグワーツにいらっしゃいます!」
満面の笑みだ。
「なんだよ。別れの挨拶の意味がなくなったじゃないか。誰だよこんな挨拶はじめたの」
「ルーク様です」
とんだ茶番だ。しかもこの様子をすべてアルバスに見られていたみたいだ。いつの間にか真後ろに立っていた。
「ふぉっふぉふぉ。お別れの挨拶はできたようじゃなルーク」
「20時間程度の別れを惜しんでおりましたよ」
「準備はよさそうじゃの。ビリー、ルークの荷物は頼んだぞ」
「はいであります! 先にホグワーツに運んでおきます!」
「では、ルーク。わしの腕に掴まれ」
「レモンキャンディーよりハッカが好みです」
「用意しておる。行くぞ」
視界が5回転半した。