オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、薄い本を手に入れる

 オレたち4人は秘密の部屋について談義する機会が増えた。やっぱりゴシップは話のネタだ。

 

「あそこいつもフィルチが見張っているとこだ」ロンがつぶやいた。

 

 廊下にはオレたち以外に誰もいない、そうするとやることは一つ。

 

「ちょっと何か証拠が落ちてないか見ていこうぜ」

 

 オレがこう言ったのが悪かった。墓穴を掘った。

 

「焼け焦げだ! あっちにもこっちにも」

 ハリーが四つん這いになりながらそうつぶやいた。4人廊下で四つん這いになっている姿は避難訓練以外ではそうそう見れないだろう。ただホグワーツでは火災が起こった際の避難訓練などやったことないから本当にレアだ。

 

「来てみて! 変だわ……」

 

 この呼びかけがオレにとって地獄への導きだとは思いもよらず普通に「なんだいハーマイオニー」と覗き込んでしまった。

 

 ハーマイオニーが指差した先は窓ガラスの隙間だった。そこには20匹越えの蜘蛛がカサカサと先を争って這い出そうとしていた。

 

「蜘蛛があんな風に行動するのをみたことがある? ん? ルークどうしたの?」

 

 オレは寒気と動悸とその他諸々の症状と仲良くするのに一生懸命でハーマイオニーの質問にこたえる余裕など全くなかった。

 

「僕とルーク、あの──蜘蛛が──好きじゃない」

 

 ロンがオレの気持ちを代弁してくれた。そう、オレたちは蜘蛛嫌いだ。

 

「蜘蛛なんて魔法薬学で何度も使っているじゃない」

「死んだやつなら平気だ」

 

 オレは窓ガラスの方角から180度回転しながらそう答えた。手足が冷たくなって頭の警鐘がガンガンなっている。

 

「オレ先談話室もどるわ、体調悪い」

 

 この動悸の中ここに居続けるのもしんどくてオレは談話室に足をすすめた。ロンは迷ったようだが残ることにしたようだ。オレは一人廊下をよろよろと歩き続けた。

 

 オレが談話室に行くと泣き腫らした後のようなジニーがポツンと暖炉の近くに座っていた。

 

「やあジニー元気?」

「──ルークあなた顔色が最悪よ」

「ああ、ちょっとトラウマを突きつけられてね。オレの話を君が聞くのと、君の話をオレが聞くのどっちがいい? 君の顔色もオレに負けず劣らず悪いよ」

「そうね、あなたの話を聞きたいわ」

「おーけー。窓から逃げていく蜘蛛をハーマイオニーが見つけてね、オレたち3人にそれを教えてくれたんだ。もちろん親切心でだ。ただハーマイオニーはそこにいる3分の2が蜘蛛嫌いだってことをすっかり忘れていたみたいだ。オレも1匹程度なら冷や汗で済むんだけど今日は数十匹隊列組んでてさ。おかげでこの有様だ。ださいよな」

 

 オレはいまだに震える自分の手を眺めながらそう言い切った。

 

「どうして蜘蛛がきらいなの? あなたもテディーベアを蜘蛛に変えられたとか?」

「いいや。まったくそんなことはない。ただ物心ついた時から無理だったな。蜘蛛を見た瞬間オレの頭の中で逃げろって思いが溢れ出してくるんだ、変だろ? オレじゃないオレに指示されてる気分だね」

「──あのね、わたしも最近変なの。気づいたら知らないところにいたり、記憶が飛んでることもあるの。私が私じゃないみたい」

「それが今君が悩んでいる原因?」

「そう。わたしどうすればいいのかわかんないのっ」

「あーあー、目擦るなよジニー。いい子だ、こっちにおいで。不安だったんだな」

 

 オレは突然泣き出したジニーにただただ肩を貸して時間を過ごした。もうオレは冷や汗も動悸もすっかり止まって頭のなかは目の前の可愛い妹分のことでいっぱいになっていた。

 

「あのね。ルーク。わたしが、わたしがっ」

「ゆっくりでいい。他の人に聞かれたくなければ防音魔法を使ってもいいよ。オレこないだ簡易的なものだけど開発したんだ」

 

 オレはジニーが小さく頷くのを確認して防音魔法を張った。そもそも夕食の時間だからか談話室には見渡す限り誰もいなかった。

 

「誰にも言わない?」

「ああ、約束しよう。ステュクスの川に誓う。君がそれで安心して話せるならね」

「──わたしなの。たぶん」

「なにが?」

「みんなを襲っているのはたぶん私なのっ、ハロウィーンの日自分が何をしたか覚えてないのにローブにペンキがべっとりついてたの。それにローブが鶏の羽だらけだったし──」

 

 ジニーの呼吸はだんだん不規則になりはじめた。

 

「ジニー、落ち着こう。ほら、息を吸って、吐いて。そうだ、いい感じだ。君は自分が無意識のうちに何かをやっているんじゃないかって不安なんだな?」

 

 ジニーはまた小さく頷いた。

 

「一つ聞きたいんだけど、ジニーは秘密の部屋とか継承者とかについて知っていることはあるのか? あー、もし答えられなかったらオレの手を握ってくれ」

「知らないわっ。私は純血主義とかそんなのじゃないしグリフィンドールだもの。ミセス・ノリスにも何も思ってないわ! 信じてルーク!」

「わかってる。君が自分の意志でやったわけじゃないんだよね。じゃあ君は誰かに操られている可能性が考えられると思うんだ。こういうのって本とかから得たオレの知識によると何か媒介するものがあるはずなんだ。たとえば体に模様とか、持っているものとか。まあ服従の呪文って可能性もあるけど、意識がはっきりしている時としていない時があるなんてデータは見たことないし──」

「……模様はないと思う。いっつも持っているのは──」

 

 そう言ってジニーが取り出したのは、羽ペン、インク、杖、そしてオレがあげた髪留めと古びた薄い本だった。

 

「あー。先に言っておくがオレは操ってないからな」

「もちろん。ルークは疑ってないわよ。あなたはそんなことしないわ」

 

 ジニーの弱々しいけど可愛らしい笑顔はここ数日ぶりに見た気がする。SSRだ。贔屓目抜きに超可愛い。

 

「これは?」

 

 オレは薄い本を指差した。ただの本なのになぜかそれがとても魅力的なものに感じて仕方がない。それが逆に不気味でオレの中のなにかが危険信号を発している。蜘蛛といい今回といいオレの危険信号はあまりあてにならないかもだけど。

 

「日記帳なの。ここに書き込んだら親身に相談にのってくれるの。ママかパパが新生活不安だからって入れてくれたんだとおもう。これが危ないのかしら、そんなことないと思うんだけど」

「消去法だとこれってことになるけどまだわかんないな。一回預かって調べてみてもいい? それとも中みられたくない?」

「中身はすぐ消えるから見てもいいわよ」

 

 オレは日記を手に取り開くと確かに中は真っ白だった。

 

「じゃあこれ預かるよ。いつごろまで待ってくれる? 色々試したいことがあるんだ」

「そうね。わたしたぶん日記と一回離れた方がいいかもしれないわ。なんとなくそんな気がしてきた。とりあえずクリスマス休暇まで持ってて」

「おーけー。まだ時間はあるか。もし今後また記憶がなくなったりしたら言ってくれ。もう一回原因を探らなくちゃだからな」

「わかったわ。ありがとう」

「いいんだ、オレは好きでやってるからな」

 

 オレは日記をローブのポケットにしまい自分の部屋に戻った。蜘蛛のダメージがすごすぎて夕飯を食べる気にはなれなかった。

 

 

 オレがベッドの上でいろんな魔法を日記にかけている時ハリーとロンが帰ってきた。オレはすかさず日記を枕の下に隠した。

 

 日記について聞かれたらジニーのことも話さなくちゃいけなくなる。それはだめだ。

 

「──聞いてよルーク、パーシーったら最悪なんだ。僕たちあのあとミセスノリスを発見した時に床が濡れていただろ? それの原因を探ろうと思って嘆きのマートルの女子トイレの近くをうろついていたんだ。その後ハーマイオニーがマートルに聞き込み調査をしはじめてさ。それをパーシーに見られたんだ。そこでちょっと言い争いになって5点も減点された。同じ寮なのにさ」

 

 ロンがそう早口で捲し立ててきた。

 

「それは災難だったな。それで何か収穫はあったのかい?」

「いや、でも今後やることは決まったよ。なんかポジュリース薬ってやつをつかってスリザリンの談話室に忍び込んでマルフォイに質問するんだ」

「ハーマイオニーが策案者か。ちなみにハリー、たぶんそれポリジュース薬だ」

「そうそうそれ。ただ作り方は禁書の棚にあるらしいんだよね」

「よしわかった、オレが取ってこようか?」

 

 ついこないだ禁書を読んだせいで酷いことになったことを思い出したが頭の片隅に追いやった。別に闇の魔術には分類されてないからそこまで危険じゃないはずだし。

 

「いや、それよりいい方法があるよ。僕たちには防衛術の先生っていう強い味方がいるからね」

「もしかしてサインを頼むつもりか?」

「そこらへんはハーマイオニーがやる気になっているから気にしなくていいと思うよ、僕たちは一歩下がってみてればいいさ」

 

 さすが策案者、そこらへんの策は完璧ってことか。確かにロックハート教授はサインを書きたがる気があるからな。

 

 

 初回を除きロックハートの授業は教科書をもとにした演劇だった。モブや敵の役にはだいたいハリーが抜擢されている。今日は狼男役だそうだ。

 

「ハリー。大きく吼えて、そうそうそしてですね、信じられないかもしれないが、私は飛びかかった──そうこんなふうに、相手を床に叩きつけて、こうして片手でなんとか押さえつけ──もう一方の手で杖を喉元に突きつけ、それから残った力を振り絞って非常に複雑な異形もどしの術をかけた。敵は哀れなうめき声をあげ──ハリー、さあうめいて、もっと高い声で──そう、毛は抜け落ち、牙は縮みそいつは人の姿に戻った。簡単だが効果的だ──こうして、その村も満月のたびに襲われる恐怖から救われ、私を永久に讃えることになったのです」

 

演劇の閉幕と同時にチャイムが鳴りロックハートは立ち上がった。

 

「宿題。ワガワガの狼男が私に敗北したことについての詩を書くこと! 1番よくかけた生徒にはサイン入りの『私はマジックだ』を進呈!」

 

 みんなが教室から出て行き始めた。ハリーは教室の1番後ろに戻ってきてオレたち4人は集合した。

 

「用意は?」ハリーがたずねる。

「いいわ、行きましょ」

 

 ハーマイオニーが紙切れを一枚しっかり握りしめロックハートのデスクに近づいていった。オレたちは昨日言った通り後ろからついていく。

 

「あの──ロックハート先生? わたし、あの──図書館からこの本を借りたいんです。参考に読むだけです。問題は、これが『禁書』の棚にあって、それでどなたか先生にサインを頂かないといけないんです──先生の『グールお化けとのクールな散策』に出てくる、ゆっくり効く毒薬を理解するのにきっと役立つと思います」

 

 ハーマイオニーは少し声を震わせながらそう言い切った。思うにロックハートは有名人に話しかけるのが恐れ多いと思っている生徒と認識しているんだろう。にこにこだ。

 

「いいでしょう、いいでしょう」

 

 ロックハート教授は孔雀の羽がついた(邪魔でしかなさそうな)羽ペンを取り出し丸文字でサインをした。ハーマイオニーは少し頬が赤い。オレにはわからない魅力がロックハート教授にはあるんだろう。今の一連の動作のどこにも魅力なんて感じられなかった。

 

 ロックハート教授とわかれオレたちは廊下を歩いて図書館に向かった。マダム・ピンスにはすごく疑われたがしっかりとお目当てのブツはゲットできた。そしてオレは3人に女子トイレに連れて行かれた。人生2度目の女子トイレだ。

 

 ハーマイオニーはそこで借りてきた本を開きポリジュース薬のページを探した。

 

「クサカゲロウ、ヒル、満月草、ニワヤナギ、バイコーンの角の粉末、毒ツルヘビの皮の千切り、そして変身したい相手の一部ね」

「ヒル、満月草、ニワヤナギは森にある。クサカゲロウも生徒用の材料棚にあるはずだよハーマイオニー」

「さすが詳しいわねルーク」

「常連だからな。最近は大鍋を没収されたから休業中だけど」

「じゃああとはバイコーンの角の粉末と毒ツルヘビね。どうしましょう、二つとも貴重なものよ」

「その二つもスネイプ教授の個人用保管倉庫にあったよ。ちょっと前に忍び込んだ時に──やべっ」

「ルーク! まさかあなたそんなことをしたの?! ただでさえあなたスネイプ先生に目を付けられているのに鍋の次は杖を没収かもしれないわよ」

「大丈夫だ、没収される前の話だから」

「はぁ。でも私たちには透明マントがあるから場所さえわかればどうにかなりそうね」

「あれはどうだ? ロックハート教授にゆっくり効く毒薬の解毒剤の材料のバイコーンの粉末と毒ツルヘビの皮がなくてって言ってみたら調達してくれるかもよ」

「あなたロックハート教授のこと馬鹿にしているでしょう。あの人は偉大な方よ。自分の作った毒の解毒剤の材料を間違えるはずはないわ」

「ギリシャ文字に気づかなかったのに?」

「それは──とにかく、私が材料を少しずつ貰ってくるからハリーあなたのマントを貸してね。たぶん今すぐ始めたらクリスマス休暇くらいには完成するんじゃないかしら」

「1ヶ月だって?! マルフォイはそのあいだに学校中のマグルを襲ってしまうよ!」

 

 ロンはそう大袈裟に文句を言った。しかし、ハーマイオニーの目が吊り上がり「そんなに言うなら代替案を出してくれる?」みたいな顔をしたので慌ててロンは付け足した。

 

「でも今のところそれがベストな計画だな」

 

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