オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、腕が紫になる

 ここ数日オレはあることにハマっていた。

 

 そのおかげでクィディッチでグリフィンドールがスリザリンに勝ったことも、ハリーがブラッジャーに執拗に付き纏われて骨を折ったり(ついでにロックハート教授が治療という名目でハリーの骨を抜き去ったり)といったことにも頭の容量を割く気になれなかった。

 

 そのハマっていることってのはトムと雑談をすることだった。トムは特別優秀な主席らしくいろんな魔法を知っている。それをオレに何個か伝授してくれた時点でオレはもうトムのことが好きになっていた。皆が見ていない時はずっと魔法や薬草、魔道具について書き込んでいる気がする。なぜか何か書かなきゃいけないような義務感まで最近は出てきている。

 

 そう、自分の行動になにも違和感を抱かなかった。

 

 今日もその延長線だった。ただ、ちょっとトムの自我が強めだった。トムはいつも以上に饒舌(と言っても文字だが)だった。自分の幼少期の悲惨な過去まで暴露してくれた。オレも適当な返事を返していた。

 

『やあトム、この間教えてくれた杖なしでの魔法試してみたんだけどまだ難しかったよ。でも失神呪文は使えるようになった気がする。まだ人に試す機会はさらさらなさそうだけど』

『僕も苦労した杖なし呪文をすぐにマスターされたら困ってしまうよ。でもやっぱり君は優秀だな。どんな英才教育を受けてきたのかな?』

『いや、ホグワーツを知ったのも昨年だから英才教育とは無縁だね』

『でも君はブラックだろう?』

『そうなんだけど、両親が蒸発したせいでマグルの孤児院育ちだよ』

『そしたら夏季休暇は孤児院に?』

『いや、ダンブルドアが養父になってくれたんだ。知ってる? アルバス・ダンブルドアっていうホグワーツの校長。まじであの人保護者向きじゃないんだ』

『もちろん知っているさ。──不思議だな。君と僕はすごく似ている』

『どこが?』

『自分が高貴な血をひく魔法使いとして生を受けたことに気づくことなく幼少期を孤児院ですごした。君は孤児院で魔法使いだからって周りから異端児として扱われたりしなかったかい? そしてダンブルドア。僕はずっと彼に見張られ続けたよ。ずっと警戒されていた。何かしでかさないかってね。君もそうじゃないか? そんな生活窮屈だと思ったことはないかい? 自分の力を認められたい、そう思ったことはないかい?』

 

 たしかにオレはブラックっていう結構いいとこ出の血筋だし、幼少期はホワイト子供の家で育ちその中でもまあまあ問題児だった。それにアルバスになにかやらかさないかって見張られている自信もある。(アルバスよりマクゴナガル教授とかスネイプ教授の方がオレのことを見張っている気がするけど)たぶん年表で生い立ちを適当な知り合いに書かせたら相当似てる。

 

 でもまあ、あの家は大概問題児な部分を得意なことでカバーすることが許される環境だったし、なんなら俺含めて結構注意力散漫な感じの子多めだった。アルバスに関してはそれを潜り抜けておどろかせる作戦を考えるのが醍醐味だから窮屈だとか思ったことはないな。

 

 ただ、この日記の作者であるトムのことを知るためならここは「そう思う」の一択だろう。共感は情報を引き出す手段だ。

 

『あるよ』

 

 オレはそう簡潔に答えた。

 

 オレが主導権を握っていると思っていたが、オレの方が手のひらで転がされていたっぽい。

 

 トムの指示に従ってオレの体が動き始めた。

 

『やっぱり、そうだと思ったんだ。僕が在学中にホグワーツに隠した遺産があるんだ、君をそこにいつか招待しようと思う。そのためにも僕の指示に従ってくれるかな? まず指の血を、そうそう。いいね。ありがとう君のおかげで僕はまた体を──』

 

 そこから記憶が飛んだ。ついでに薄い本もどこかに行った。

 

 マクゴナガル教授に開ける手順を間違えると呪われる本の話をされたけど、この本はそのタイプだったっぽい。

 

 オレが目を開けると白い天井だった。

 

 

「目が覚めたのね! ルーク! ルーク! 聞こえる?!」

 

 ハーマイオニーがオレの耳元で大声を上げた。この状況デジャブすぎる。毎度毎度ハーマイオニーはタイミング完璧だな。

 

「っ聞こえるからボリュームを落としてくれハーマイオニー、何があったんだ?」

 

 オレは起きあがろうとすると左腕に激痛が走ってすぐにまたベッドに倒れ込んだ。

 

「それはこっちのセリフよ! あなた血みどろで廊下に倒れていたの。その、あなたの左腕が血だらけのボロボロになっててついでに色も黒くなっておかしなことになっていたわ。発見したのは医務室に行く廊下の途中。あなたどうしてコリンと一緒にいたの? 仲が良いイメージはなかったわ」

「コリンだって? まさか。彼とカメラからは逃げ回る毎日だよ。オレがなんでそこに倒れていたのかもわからなければ、腕が血みどろ? になった覚えもないな」

「あのね。驚かないでほしいんだけど、その、コリンが石になったの」

「は?」

「あの子マグル生まれでしょ? だからその、継承者がコリンを狙ったんじゃないかって。あなたは純血だろうから石にはされなかったってみんな噂している。何か見ていない?」

「あー、落ち着けオレ。今から頭を回転させるからちょっと待ってくれ。寝起きでその情報は処理しきれないな。えーと、つまりオレはコリンと共に継承者に襲われた。だけど純血? だから石にはならなかった。オレはなんで医務室の廊下にいたのかも覚えてないし、今日が何日なのかもわかんない。こんな感じ?」

「あなたはハリーが骨無しになった日の夕方に私がたまたまみつけて、ダンブルドア校長とマクゴナガル教授とマダムポンフリーの処置を受けて三日は寝ていることになるわ。もうハリーは退院しているの。わたし──あなたが起きないんじゃないかって……怖かった」

「オレけっこう医務室で長く寝るタイプみたいだ。だからそんな顔するなってハーマイオニー。怪我がひどいなら聖マンゴっていう病院に連れて行かれているはずさ。今のところとりあえず痛い以外なんの問題もないからな」

「それって結構な問題よ。……あなたが休んでいた授業のノート、よかったら使って」

「助かるよ」

 

 ハーマイオニーはしばらくしてマダム・ポンフリーに追い出された。

 

「ミスターブラック、あなた禁書の棚にあるような呪いを使ったりしてませんよね?」

 

 問診そうそう疑われているようだ。ただそんな心当たりは一個も、いや一個しかない。

 

「オレ、直前の記憶が全くなくて……覚えているのが日記を書いたところなんです。薄い日記が落ちてませんでした?」

「いいえ、その場には血みどろになったあなたと石になったクリービーしかいませんでした。あと燃えたカメラくらいですね。ああ、そんなに腕を動かさないで! しばらく利き腕は使えないものと思っていてください。指先から悪いものが入ろうとしたところをあなたの体の免疫か守りの呪文か何かが防いだ痕跡がありました。それにも関わらずよほど強力な呪いか毒だったんでしょうか肩まで影響が出ていますよ。本当に今年のホグワーツは不穏です、まったく。はいこれを食べて、こっちもお飲みなさい」

 

 差し出されたブラウニーみたいなやつを口に入れるとバタークッキーとレモンキャンディーみたいな味がした。サンタとはじめてのお茶会をした時に食べたメニューだ。ついでに薬も飲むと俺好みの紅茶みたいな味がした。普通に美味い。それに全身が温まったし痛みも和らいだ。すごい。

 

「えっ。これなんですか? 前も食べた気がするけどすごいですね」

「校長によるとアンブロシアとネクタルだそうです。あなた以外が食べると命を落とすので気をつけるようにとのことです」

「まじで? なんでオレだけ食べれるんですか?」

「それは私にもわかりません。あなたが今やるべきことは眠って体を回復させることです。ゆっくりおやすみなさい。あなたの腕は──」

 

 マダムが言うには包帯で見えないがオレの腕は肩まで人ならざる色をしているらしい。アルバスが色々やってくれたみたいで回復の余地ありって感じらしい。さすが最高峰の魔法士。

 

 どうして石にならなかったのかとか、なんであの場にいたのかとかは大きな疑問がつきまとうが一つわかったことがある。

 

 あの薄い本がたぶんだいぶやばい。普通に何をしたかの記憶がトムが自我を出し始めたあたりからぶっ飛んでる。

 

 たぶんトムがオレのことを操ってたに違いない。そうすればジニーの症状とも合致する。

 

 オレの警鐘は今回は正しかったみたいだ。これからはもっと信じることにしよう。

 

 そんなことよりもこれを誰かに伝えなければ。ただジニーのことはステュクスの川に誓ったから言えないけど。

 

 今オレの手元には日記はないからまた誰が犠牲になってもおかしくない。

 

 オレは病人なりに頭を回転させそう結論づけた。

 

「眠る前にダンブルドア校長に話したいことがあるんですが呼んでもらえませんか?」

「わかりました。呼んで来ますのでくれぐれも安静に。決して左腕は動かさないでくださいよ」

 

 オレは言いつけ通りピクリともせずベッドの上で待機していた。するとアルバスは思ったよりも早くやってきた。

 

「わしを呼ぶなんて珍しいのう。てっきり君はわしから隠れて何かすることの方が好きだと思っていたんじゃが」

「そりゃあもちろん、強敵を出し抜いた時の爽快感は──ってそんな話で呼んだんじゃないんです」

「落ち着きなさい。ゆっくり話せばよい。今は時間が有り余っておる。嬉しいことに今日は仕事がすべて片付いたのじゃ。増えなければの話じゃけれどな」

「じゃあ今からその仕事をオレが増やしてあげますよ。オレ、今噂の秘密の部屋について知ってしまったかもしれないんです。トムの日記ってやつが一連の事件の発端なんです」

「最近耳が遠くてのう、今誰の日記と言ったかね?」

「トムです! トム・リドル! そういえばトムはあなたのことを嫌っているみたいでしたよ」

「その名を聞くのは何年振りか……なぜそんなことを知っておる?」

「日記で会話をしたんです。文字を書いたら答えが返ってくるんです。それでちょっと色々話して……そしたらオレは彼と境遇が似ているとかなんとかっていう話になって」

「それは君もそう思ったのかのう?」

「いいえ全く。彼みたいに優等生のふりとかしたいと思わないし。で、ホグワーツに隠したものを紹介したいって言われて……たぶん何かをしたんですけど、そしたらいつのまにかここにいた感じです。あの黒い日記絶対なんかあります。早く見つけ出さないとバッタバッタ医務室に生徒が運ばれてきますよっ」

「慌ててもなにもかわらんよルーク。ふむ、そんなものがこの学校に紛れ込んでいるとは、よくないのう。日記はどこで手に入れて今どこにあるんじゃ?」

「手に入れたことに関しては教科書に紛れこんでた感じです。そして今ある場所はわからないからこうやって慌てているんじゃないですか」

「ふむ。そうか。困った、じゃがここで日記を持っているものを炙り出した場合トムが何をするかわからないのがやっかいじゃ。事実君の腕は悲惨なものじゃった」

「でも放置したら死者が出るかもしれないんでしょう? はやくどうにかしないと」

「それはないはずじゃ。トムが今1番恐れていることはホグワーツが閉まることじゃからのう」

「なんでそんなことがわかるんですか?」

「経験則じゃよ。ルーク、君は医務室から出たら常に二人以上で行動するようにしなさい。まずは自分の身を守ることが優先じゃ」

「まあ利き腕が使えないんで誰かと一緒にいるのは確実ですよ」

「君は回復力が普通の人よりも強いから腕の心配はしなくてもよい。アンブロシアを食べていれば腕は一週間もせずにほとんど元通りになるはずじゃ、そうなった後も決して一人で行動せんように。予想じゃが今の君はトムと相性が悪いからのう。もしかしたらそのトムと繋がりができてしまっておるかもしれん」

「繋がり?」

「何かあればすぐにわしに手紙を送るように。特に魔法が使えなくなったり、貧血気味になったりしたらすぐにわしに言いなさい。あとこれを渡しておくから体調が悪くなったら一欠片ずつ食べるんじゃ。いいかね?」

 

 アルバスは繋がりについては話すことなく腰をあげて出口に向かっていってしまった。たぶんオレが知る必要のない、または知ると面倒なことになることなのだろう。

 

 こうしてとりあえず情報提供は済ませた。もしこれから悪いことがあったらオレの誓いの範囲は思ってるより広くて誰にも言わないって約束を破った罰が下ったってことだ。

 

 

 あれから数日たったが、オレの周りは平和だった。ただ、謎の護身グッズが流行っている以外は。

 

 ジニーもあれから記憶が飛ぶこともなくなったそうだし、顔色が良くなっていた。

 

 十二月の第二週目に例年通りマクゴナガル教授はクリスマス休暇に残る生徒の名前を調べにきた。オレたち4人はもちろん名前を書いた。マルフォイも残ると聞いて絶好のチャンスだと3人は思ったらしい。

 

 オレは継承者について関わることを止めようと思ったが、ポリジュース薬は調合してみたいし、スリザリンの寮内も見てみたいという欲求が勝ってしまって止めなかった。こういうところはオレの悪い癖だと思う。

 

 でもやらずに後悔するよりは断然マシだと思う。

 

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