オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
決闘クラブのお知らせがきたのは、ハーマイオニーがバイコーンの粉末と毒ツルヘビの皮を手に入れてから一週間ほど経った時だった。
グリフィンドール生ははじめての実践の場に浮き足立っていた。オレももちろんその一人だ。なかなか授業では対人の呪文はやらないから誰が教えてくれるのかどんなことを教えてくれるのか気になって仕方がなかった。
「いったい誰が教えるのかしら?」
「フリットウィック教授だといいな。決闘チャンピオンだったらしいし」
「誰だっていいよ。あいつじゃなければ……」
ハリーが言ったあいつとはロックハート教授で自明だろう。毎回の演劇の授業で敵役をやらされたらそう思っても仕方がないとおもう。ただその願望はすぐに裏切られた。
ギルデロイ・ロックハートは舞台へと登場した。紫色のローブをまとい後ろにコウモリ、いやスネイプ教授を引き連れている。
「みなさん、集まって。さあ集まって。みなさん、私がよく見えますか? 私の声が聞こえますか? 結構、結構! ダンブルドア教授から私がこの小さな決闘クラブを始めるお許しをいただきました。私自身が数えきれないほど経験してきたように、自らを守る必要が生じた万一の場合に備えて、みなさんをしっかり鍛え上げるためです──詳しくは、私の著書を読んでください」
ちゃっかり自分の著書の紹介をするあたりさすが芸能人だ。
「ではスネイプ先生をご紹介しましょう。スネイプ先生がおっしゃるには決闘についてごくわずかご存じらしい。訓練を始めるにあたり短い模範演技をするのに勇敢にも手伝ってくださると言う御了承をいただきました」
ロックハート教授はまるで自分が勝つことが確定しているかのような物言いだが、オレは知っている。スネイプ教授はけっこうすごい教授だ。いや、もちろん好きか嫌いかっていう判断を下す必要があるなら嫌いだが。
ロックハート教授とスネイプ教授はお互い向き合い一礼した。それから二人とも杖を剣のように前に突き出して構えた。
「三つ数えてから最初の術をかけます。もちろんどちらも相手を殺すつもりはありませんからご心配なく」
その言葉を信じるにはスネイプ教授の顔が険しすぎた。隣でハリーが「僕にはそうは思えないけど」って言っているのが聞こえた。
カウントで3が数えられるとスネイプ教授が杖を振り上げて叫んだ。
「エクスペリアームズ武器よ去れ!」
紅の閃光がスネイプ教授の杖から放たれロックハート教授に直撃し教授は舞台から無様に吹っ飛んだ。
その後取り繕うようにロックハート教授は先ほどのスネイプ教授が放った呪文について解説を始めた。そして自分の失敗? を記憶から消させるためにか生徒を二人ずつに組み分け始めた。
「そこの君は、そこの彼女と。でー、ああブラック君はいい機会だからスネイプ教授と組むがいい、そしてハリーくんは私とペアを組むかい?」
「んん、失礼少しいいですかな教授。我輩としてはポッターをマルフォイ君と組ませるのが良いと考えます。ブラックはミスグレンジャーとでも組んだらどうですかな。我輩は先程のように誤って吹き飛ばす可能性がありますので」
「いいでしょう、いいでしょう。私はこだわりはないですからスネイプ教授に一任しますよ」
教授同士の勝手な話し合いによってオレはスネイプ教授とではなくハーマイオニーとペアになった。いつもの鬱憤を晴らせるチャンスを逃した。まあ俺が災難な目に遭うのを回避することができたとも言う。さっき見た通りスネイプ教授は普通に強いし。
「あなたとこうやって魔法を打ち合う機会があるなんて光栄ね」
「こちらこそ、手加減はしないよ」
「もちろんよ」
オレたちは互いにルールに則り礼をし杖を構えた。そしてロックハート教授の合図に合わせて魔法を放った。オレは盾魔法、そしてハーマイオニーは武装解除魔法。
「あぶなっ、武装解除呪文って意外と速度が速いんだな。ただやっぱりプロテゴの方が文字数が短いのと自分自身に発動するから距離が近い分防御側が有利だ」
「そうね、でもどの呪文がどこから飛んでくるかわからない状況だったら盾呪文も万能じゃないわ。全方向に盾を張ることはできないもの」
「確かに。それに盾が不完全だとすぐに破られるし、死の魔法なんかは普通に通り抜けてくるらしいしな」
「じゃあ盾魔法の代わりに術者に妨害魔法や減速魔法なんてどうかしら? あとは魔法は物理的にものにぶつかったら透過しないから呼び寄せ魔法で防ぐのもありね」
「最初の二つはありだな。最後のは呼び寄せている間に魔法がこっちに届きそうだ。魔法をはじく盾(物理)みたいなのがあってもいいよな。持ち運び機能付きで開発できれば普及するんじゃないか?」
「そうね。魔法も万能じゃないもの。わざわざ魔法で対抗しなくてもいいはずよね──」
オレたちが魔法についての考察に夢中になっている間に周りは悲惨なことになっていた。ハリーとドラコはスネイプ教授にフィニート・インカンターテムで呪文を強制終了されてるし、ロンは顔面蒼白なシェーマスにすごい勢いで謝っている。あたりは緑やらピンクの煙があがり、爆発音もたくさん聞こえてきた。
「オレたちもああいうのに擬態した方がいい感じ? 煙一発行っとく?」
「いいえ、けっこう。あなたの根が真面目で助かったわ」
「さてさて、誰か進んでモデルになる人はいますか?」とロックハート教授は壇上で実演する生徒を募った。
「「ルーク、あなた立候補したら!?」」
となりで髪の毛の先が焦げついているラベンダーとメガネが歪んだサリーが同時にそう言ってきた。ハーマイオニーもそれに同意らしい。「あなたがどんな闘い方をするのか見てみたいわ」なんて研究対象宣言をされた。
「みんなあなたのかっこいい姿が見たいと思うの。特に一年生がね」
そう言ってラベンダーがちらっと見た先にはジニーを含めたグリフィンドール一年組がいた。そこにコリンがいないのはなんだか寂しいな。
「ミスター・ブラックやってくれますか! ではもう一人はスネイプ教授に2年生の中から選んでもらいましょう」
「マルフォイ行きなさい」
こうしてなぜかオレがうんと頷く前にドラコが壇上でやりあうことになった。ただこのチョイスをしたスネイプ教授はエンタメをよくわかっているかもしれない。
スリザリンVSグリフィンドール、同年代、成績もドラコはハーマイオニーの次の3番だし相手としては申し分ない。
「教授ルールは?」
「君たちはまだそこまで大した魔法は使えないだろうから杞憂かもしれないが、相手を直接傷つける魔法は禁止。それ以外は自分の知っている魔法を使って好きにやりなさい。私が教えた『あべこべ呪文』なんかを使ってもいいですよ」
「わかりました、準備ができたのでカウントお願いします」
オレはロックハート教授にカウントを頼みお辞儀をして杖を構えた。ここで負けるわけにはいかないからそこそこ真剣に取り組ませてもらう。
「インペディメンタ妨害せよ!」「サーペンソーティア!ヘビ出よ!」
唱えたのは同時だったが、オレの魔法の方が術者に直接当たる分早い。ドラコは後ろにふっとび尻餅をついた。ただ、その時には蛇は杖先にでかかっていたせいで、彼の出したヘビはエネルギー保存の法則からか通常の何倍もの速度で飛び出てオレの上空を通過し場外に落ちた。場外にはもちろん観客がいるため混乱が生じている。
この決闘が終わっていないと思っていたのはこの会場内でオレだけだったらしい。
スネイプ教授とロックハート教授が蛇を除去しようとしている間にオレは吹っ飛ばしたドラコから武装解除呪文で杖を奪い取り、おまけに頭にチューリップを生やしてやった。いつぞやのロンの借りは返した。
オレは真っ赤になっているドラコに近づいて耳元で囁いた。
「次オレの友達のことを侮辱したら許さないからな」
「っなんで君は、君も高貴な血だろ?! どうしてそうなるんだっ、僕は調子に乗っている彼女や彼にちょっと言ってやろうと思っただけだ、なのに──」
「血なんて見えないものに縋るより、自分が見えるものを信じて大切にする。それがオレの考え、ドラコとは違うみたいだな」
「そんなに穢れ──マグル生まれや裏切りがいいのか?」
「オレのことを慕ってくれるだけで仲良くする理由になると思うんだけど、違う?」
「わからない、僕はそう思ったことはない」
「オレ本当はドラコ、君とも仲良くしたいんだ。君の魔法薬学のスキルはオレでもたまに真似したいところがあるからね。もちろん君がオレの価値観に合わせる必要はないけど。これはオレの提案、よかったら普通に友人として関係を築かないかっていうね」
「──っ考えとく」
これで少しは無駄な争いが減ればいいけど。
ドラコの顔の熱は冷めることはなかったらしい、まだ耳まで赤くして後ろを向いて壇上を降りていった。ちなみにチューリップはオレのお情けですぐに消してやった。
こうしてオレがドラコに語りかけている間に後ろでは事件が起きていた。
先ほどまで存在感を放っていた蛇は実家に帰ったのかいなかった。かわりになぜかハリーの周り半径1mに空間ができていた。360°盾魔法が使えるようになったならぜひ教えてほしいところだがそんなことはなさそうな雰囲気だ。
「あー、あー。みなさんオレの華麗なステージはどうだったかの感想を聞かせてほしいな。そこの女の子とかどう?」
「えっ、あっそのすごくかっこよかったです!!ほんとうに!」
「そっかよかった。そこの君はもしオレの立場に立ったらどんな魔法を使う?」
オレはハリーとハーマイオニー、ロンに目配せした。2人はオレの意図が伝わったらしい、ハリーの腕を掴んで大広間からこっそり抜け出していた。
「ミスターブラック、目立ちたいのはわかりますが一応ここは私の授業ですので、ね。じゃあみなさん勇敢な二人の参加者に大きな拍手を!! そして司会進行の私にも! あーどうもどうも」
なんだか最近というか、最初からロックハート教授にライバル視されているような気がするのはオレだけか?
オレはロックハート教授に背中を軽く押されて壇上から下ろされた。
「ルーク、お疲れ様。本当にあなたってすごかったのね。もう左腕に違和感はないの?」
「ありがとうジニー。もっと讃えてくれてもいいんだよ? 腕はもう通常運行だね、色は土気色でちょっと悪いけど。で、何があったんだ?」
「ハリーが、あの、マルフォイが飛ばした蛇と喋ったの」
「別にオレもペットと喋るしなんの問題もないだろ。それにお前の兄貴だってスキャバーズに『お前少し太った?』とかよく言ってるけど。なに? 魔法使いって蛇とお話するのタブーとかあったっけ?」
「そういう話じゃないの。ハリーは蛇語が使えたの!」
「あー、それってパーセルマウスとかいうやつだっけ。珍しいやつだろ?」
「もちろん珍しいのはそうなんだけど、1番の問題は誰もハリーがなんて言ったかわからなかったこと。みんなハリーが蛇にジャスティンを襲わせたって思っているわ」
「それは論理の飛躍だな。ただ、この時期に発覚するのも良くなかったってことか。今頃ハリーはサラザールの末裔とかって言われてたりする?」
「そう、あなたの想像の通りよ。秘密の部屋との関係もセットで噂されているわ」
「面倒なことになったな。殺人鬼の息子と悪の寮サラザールの末裔か。いいゴシップが書けそうだ」
「殺人鬼? 何の話?」
「いや、こっちの話だ。まあハリーが末裔かは置いておいて、秘密の部屋はあの日記帳が原因で間違いないよ。ただちょっと失敗して見失ったけど。まさか戻ってきてないよな?」
「──やっぱりそうだったのね。持っていないわ。それにわたし、もう変なものは持たないって決めたの。あと何かあったらあなたに相談するとも。本当にありがとう、そしてごめんなさい。私のせいであなたが襲われて、腕が──」
「ストップストップ、この件に関して謝ったり後悔するのはもう終わりだ。オレは生きてるし、ジニーも生きてる。それで十分。もう少し求めるとしてもこうやって普通に話せてる。そうだろ?」
「ありがとう」
「それにちょっとオレがやらかしたこともあるから……まあ状況が悪化したとしてもオレのせいだから気にするなよ」
「私が言えたことじゃないけどそういえばあなたって事件を起こす天才だったわね」
「ちょっと待った、オレそんなに君の前でやらかした覚えはないんだけど……強いていうなら新学期初日くらいか?」
「あなたの武勇伝はハーマイオニーからよく聞くの。それ以外にも噂で色々回ってくるわよ。たとえばしょっぱなの授業からマクゴナガル先生に減点と加点を一授業でされたとか、スネイプ教授に大鍋を没収されているとか、野生のトロールに二回も勝利したとか、地獄の番犬を手懐けたとか──」
「やめてくれジニー、そんなに掘り返されると恥ずかしいな。まあ好き勝手やってるおかげでこの一年後悔は一つもないけどな」
「本当にあなたって、そうね──ピエロみたい。人間っぽくないわ」
「なんだそれ。ほら、明日からは寒くなるって噂だ。これでもかぶっとけよ」
「なにこれ?」
「マフラー。オレに編み物を教えた君のお母様に感謝するんだな」
「くれるの?」
「もちろん。オレにはその色は似合わなそうだからな、じゃっいい夢見ろよ」
オレは談話室についたタイミングでポケットからマフラーを取り出した。ん? ポケットになんで入るのかって? オレは魔法使いだからな、検知不可能拡大呪文を至る所にかけてたりする。ただこれの難点はどこに何をしまったかわからなくなることが多々あることだ。
ちなみにこれはトムに教わった魔法ってのは秘密だ。魔法に罪はない。
「ルークありがとう、大好きよ」
「オレもだよおちびちゃん」
オレは男子寮へ、ジニーは女子寮へと向かった。
「やあハリー、君まだ寝ないの? けっこうな時間だと思うけど」
「……君こそ」
「少し勉強してからにしようかなって」
「君って本当に勉強が好きなんだね。レイブンクロー生みたいだ」
「まあ好きか嫌いかって言ったら好きだけど……なにかあった時に大切な人を、自分を守れないなんて後悔したくないからね。それに知識は力になるから……って何真面目に語ってんだろ。最近センチになることが多くてさ。で、君は何に悩んでるの?」
「今日僕がやらかしたことを知ってて聞いてる?」
「パーセルマウスか」
「僕は何にも知らないんだ。両親のことも、父親の家族のことも。おじさんは親戚の魔法使いについて質問することを禁止してたし……もし僕にスリザリンの血が流れていたら」
「流れてたら何だっていうんだ。すごいじゃないか、創始者の血だろ? 優秀な遺伝子、それだけだろ」
「でも、みんなは君とは違う。僕のことを恐怖している。僕が蛇をけしかけたってね」
「そんなふうに思う人のことなんて気にしないでいいだろ。もっと君自身を見てくれている人を大切にする。それで十分じゃないか?」
「みんなから好かれている人気者の君に何がわかるんだよっ!!──あ、ごめん」
「いいよ。オレがつっこみすぎたな、悪かった。おやすみ、いい夢を」
ここで一つ宣言しよう。
オレは血なんて信じない。
たとえブラックの血が流れていても、父親の血が流れていてもオレはオレだ。血は手段の一つになるだけでそれが全てじゃない。そう思う。
そうでもないとオレは根っからの純血主義で、癇癪持ちで、親友が殺されたことで感情が爆発し近くにいたマグルを大量殺人してついでに旧友も吹き飛ばしちゃうようなそんなディメンターもびっくりなハッピーセットになってしまうからな。一応証拠不十分でディメンター在住のアズカバンには行かなかったぽいけど。
何で知ってるかって?
別にアルバスに直接聞かなくてもここには本や新聞、おしゃべりな校長の肖像画、調べられるものがいっぱいあるからな。
メディアリテラシー的に全部鵜呑みにしてるわけじゃないぞ。特に最後のやつ。
まあ事件は未解決で父親は島流しにされているらしい。生きてるなら連絡くらいしてくれてもいいだろと思わないこともないが。
そういえばオレ、まだ資産運用とか勉強してないんだけどブラック家ってけっこうな資産家だったらしいしやらないとヤバそうかな。
今は父親のおかげで途絶えかけのブラック家だけど、オレが成人したら赤ん坊も知ってる有名な家系に育ててやるからな。待ってろよ。