オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
オレは久しぶりに寝坊というものをしでかした。といっても医務室に担ぎ込まれる系の寝坊なら何回もあるから久しぶりとは言えないかもだけど。
ただラッキーなことに学期最後の薬草学の授業は休講になったらしい。大吹雪のせいでスプラウト教授がマンドレイクに靴下をはかせてマフラーを巻かないといけないらしい。昨日オレがジニーにやったように。
談話室へと向かうとそこには魔法チェスをしているハーマイオニーとロン、そしてそれを眺めているハリーがいた。
「おはようみんな、いい試合してるね」
「やっと起きてきたよ。僕きみのこと起こしたんだけどあやうくベッドに連れ込まれそうになったから諦めたんだ。君と一緒に寝る趣味は僕にはないよ」
「ごめんってロン。無意識だ。それにオレもそんな気は全くない」
「おはようルーク、今日が休講でよかったわね。ところで、次どこの駒を動かすのがいいと思う?」
「おい、ハーマイオニーそれはずるだろ! 二対一は卑怯だぞ」
「だそうだハーマイオニー、自分で考えないとらしいぞ。まあこの状況だと『オレ』を動かすよりは『オレの隣のやつ』を動かした方がいいんじゃないか?」
「あっ、そうね! チェックメイト」
「おいルーク、なんで言っちゃうんだよ。ハーマイオニー気づいてなかったからいけると思ったのにクソッ」
「次の試合でコテンパンにしてやれよ」
「ルーク、あなたそんな事言うのね。選手交代よ、はい、あなたがロンと対決して」
「まじかよ、ロンコテンパンなんて考えるなよ?」
「男に二言はないんだろ。今日こそ僕が圧勝してやる」
こうしてオレは寝起きそうそうチェスをすることになった。
「ハリー、そんなに気になるんだったらこっちからジャスティンを探しにいけばいいじゃない」
ハーマイオニーはぶすくれたハリーの様子を見かねてそう声をかけた。ハリーはそれに無言で頷き談話室を出て行った。
「ハリー、意外とショック受けてるんだな」
「仕方ないわ。嫌疑をかけられて噂話されるのが好きな人はあまりいないもの。あなたはそんなことすら気にしなそうだけど」
「e4ポーン。そうそう、『気にすんな』ってアドバイスを昨日ハリーに間違えて送っちゃったせいで微妙な雰囲気になったところだ」
オレが昨日の出来事を2人に話すと2人は同時にため息をついた。まったく失礼な。
「君ってふらっとしてそうなのにそういう信念みたいなのはブレないよな、c5ポーン」
「自分の中の優先順位を崩すと判断が鈍るからな。そうじゃないと最悪死ぬから。c3ナイト」
「あなたって語る次元が同年代とずれてるわ。誰も死ぬなんて考えてないからあなたのアドバイスが合わないのよ」
「e6ポーン。確かに君って毎日が戦場みたいな感じで生きてるよな、なんていうか明日死んでも自分が後悔しないようにみたいな」
「そうか? でも小さい頃から鉄屑集めしてたら溶岩の球投げるようなヤンチャなやつらに追いかけられたり、買い物に行ったら店員がオレの血を欲しがってきたりそんな日常を送ってたからかもしれないな。f3ナイト」
オレの言うことは信じられないらしいロンはお得意の眉と肩を同時に上げる技を披露した。
「君ってたまにおかしなこと言うよな。どうしたらそんな幼少期をすごせるんだ? f6ナイト」
「それはこっちが聞きたいさ。そんな日常ともおさらばかと思ったら、トロールだ頭に寄生してる闇の帝王だ、極め付けには秘密の部屋だ継承者だ、昔と変わらずハプニングだらけ。e5ポーン」
「あなたってそういう変なものを惹きつけるなにかがあるのかもね。私からしたら魔法使いって時点でここのみんなは普通じゃないけど。普通の13歳は明日の宿題の心配とご飯のメニューしか気にしてないわ」
「それも極端な例えだよハーマイオニー、もっとあるだろ。たとえば友情とか恋愛とかさ。d5ナイト」
「ロンって意外とロマンチストだよな。オレだってみんなと同じように友情とか宿題とか晩飯のメニューとか考えてるさ。ただそれだけしか考えないと脳みそが不足を訴えてくるんだよ。d5ナイト」
「君の脳みそを一回見てみたいよ。たぶんマルチタスクがすごいことになってるんだろうな。d5ポーン」
オレたちは呑気にチェスを楽しんだ。3人で対戦相手をシャッフルしながら飽きるまでゲームをしたころ急に談話室が騒がしくなった。
「ジャスティンが石になった! 襲われたんだ!」
「ほとんど首無しニックもだぞ! ゴーストも石になったんだっ!」
「ポッターがその現場の第一発見者だったらしいぞ!」
「ハッフルパフの話だとハリーは今日ジャスティンに話しかけにいったらしいぞっ、それにマクゴナガルに連れてかれたって」
「つまりポッターが継承者?!」
噂が噂を呼び、その前の噂がさも真であるかのように人伝に伝わっていく。
「あー、大変なことになったな。知らんぷりするにはハリーが巻き込まれ始めたか……」
「もしかして、あなた何か知ってるの?」
「いや、まぁ少し。でも──オレは君たちを巻き込みたくはない……けどやっぱり無知は無知で危険だよな。オレはこの一連の犯人に目星がついているって話聞く?」
「なんだって?! それなら早くそいつを捕まえてダンブルドアに引き渡そうよ! このままだとハリーが犯人って思われちゃう。で、それってドラコ・マルフォイ?」
「違う。犯人はトム、トム・リドルだ」
「おい何馬鹿なこといってるんだルーク、僕たちがさんざん銀の盾磨いてた時に何度もお目にかかった名前だろ? トム・リドル、だっけ何年前の人だって話だ」
「あなたがそんな突拍子もないことを言うなんてなにか根拠でもあるの?」
「オレが襲われた日あっただろ? あの時オレはトムの日記を持ってたんだ。日記って言ってもただの日記じゃない。オレが書き込むとしっかり理解して返信をしてくる。そこでちょっと色々話して、自分でも馬鹿だと思うんだけど──気づいたら廊下に倒れて腕が変色してたんだ。そして隣にはマグル生まれのコリン。オレが日記から得た情報によるとトムは孤児でマグルの中で育って異端として扱われてたらしい。だからマグルに恨みがあるとも。ハーマイオニー、君はマグル生まれってけっこうみんなが知っている。だからより気をつけてくれ、薄めの黒革の日記が落ちてたら触らずに教授に報告。誰かと一緒に行動するとか──」
「あなた馬鹿なの? なんでそんな重要な情報今まで黙っていたのよ。私たちってあなたに守られる存在じゃないわ、隣に立って一緒に立ち向かう存在。そうでしょ?」
「そうだそうだ。君に隠し事をされたら誰も気が付かないだろ」
「そうだな。情報共有は戦略の要だよな。悪かった」
「で、なにか作戦はあるのかい?」
「残念ながらオレたちは後手に回るしかないと思う。トムが今どうやって動いているのかもわからなければ、言い伝えの怪物が何かもわかってない。誰か協力者もしくは体を乗っ取られている人がいるかもしれないし、下手に大っぴらに動き回ってターゲットになるのも困る」
「つまり私たちができることは人を石にできる怪物の正体を探るくらいね。あとは日記を持っている人がいたらその人の様子を確認すると」
「そゆこと。あとはクリスマス休暇に残るやつがトムを手伝っている可能性が高いってことがキーだ。今日のこともあって今年のクリスマスは人が少ないだろうし」
「ポリジュース薬もちょうどそこでできるわ。他寮を探るにはもってこいね」
「君たちの会話って色々飛びすぎてついていけないよ。とりあえず僕はクリスマス休暇ここに残ればいいってこと?」
「そういうことだ」
◆
とうとう学期が終わり、降り積もった雪と同じくらい深い静寂が城を包んだ。残っているのはウィーズリーメンバー、オレ、ハリー、ハーマイオニー。スリザリンはドラコ、クラッブ、ゴイルあと数人の上級生。ハッフルパフは全員帰宅、レイブンクローはルーナとかいう女の子のみ残っているらしい。
ハリーは噂から解放されて休暇を満喫しているようだ。みんなで「爆発ゲーム」をしたり、決闘の練習をしたりそんな感じだ。オレは開発途中の数々のアイデアを形にするのに時間を使っていた。大鍋はロンから借りている。教授に言うなよ?
◆
クリスマスの朝、オレのベッド下には去年よりも多いプレゼントが並んでいた。
ハリー、ロン、ハーマイオニー、ジニー、ウィーズリー家、ハグリッド、アルバス、そしてその他諸々だ。
ハリーからは本の栞を、ロンはマシュマロとパンとチーズとソーセージのBBQセットを、ハーマイオニーはマグカップをくれた。
ロンに関しては自分が休暇中にやりたいことを送ってきただろ。
ハグリッドからはフラッフィーのための玩具がたくさん。アルバスからはプロのナイフ術とかいう本が送られてきた。サンタはオレにサバイバーになってほしいみたいだ。
ジニーからはピアスが送られてきた。オレはまだピアスの穴を開けてないから開けてほしいってことなんだろう。
オレは鏡と数分睨めっこしたあと一思いで耳に穴を開けた。バチっという音でオレの耳にはピアスがついた。最初だから控えめなやつっぽい。意外といけてると思う。個人的にだけど気に入った。
まだ寝ているハリーとロンを放置してオレは談話室へとむかった。
「メリークリスマス、ハーマイオニー。どんな感じ?」
「メリークリスマス、ルーク。いまからクサカゲロウを加えに行こうかなって思っていたところ。一緒にいく?」
「もちろん。いよいよ今日完成か、楽しみだ」
「そうね。あら? あなたピアスなんて開けてたかしら?」
「いや、さっき開けたんだ。プレゼントでもらったからいい機会だしと思ってね。似合ってる?」
「すごく似合ってるわ。ピアスってあなたのためにあったみたいね」
「なにそれ、大袈裟すぎだろ。君からもらったマグも普段使いさせてもらうよ。ちょうどこないだ割っちゃったからね」
「知ってる。氷でキンキンに冷やしたマグに熱いココアを注ぐのを私みてたもの」
「やった後に気づいたんだ。知識と現実がつながっていない時によくやらかす」
「そうだ、あなたポリジュース薬用の体の一部は採取してきた?」
「ああ、その件なんだけど一応ノットから髪の毛を拝借したんだ。ただ後から知ったんだけどドラコとノットってそこまで仲がいいわけじゃないらしい。やっぱりクラッブとゴイルが適任だよな」
「そうね、そしたらハリーとロンにその役を任せましょう。あなたは彼らがやらかした時のサポートにまわることにしましょ」
「そういうハーマイオニーは誰のにしたんだい?」
「ミリセント、ローブについていた髪の毛を採取したわ」
「オーケー、ミリセントね覚悟しておく」
「そうだ、クラッブとゴイルの髪の毛を採るために眠り薬を作らなくちゃいけないの手伝ってくれる?」
「鍋があるならお安い御用だ。ついでに材料もあれば嬉しいけど、最近警戒レベルが上がったっぽいんだよなスネイプ教授の棚」
「もちろん全部揃えてあるわ。生ける屍の水薬じゃあるまいし材料は生徒用の棚に全部置いてあったわよ」
「そっかそういえばそうだったな。二人に睡眠薬を盛る方法は考えてるの?」
「カップケーキに混ぜて彼らが見つけられるようにしておくつもり。その場で食べるだろうから、眠ったら髪の毛を抜いて箒用ロッカーに隠せばいいかなって、あそこは起きても出るのに時間がかかるだろうから。どう?」
「箒用ロッカーよりも空き教室にいれよう。あいつらよく授業中も船漕いでるし教室で寝てるくらいじゃ疑われないよ。下手に物置にしまってそれを調査されたら困るからな」
「そうね。あなたが作る眠り薬の効果はあのスネイプ教授でさえ優+をつけていたものね。効果が途中で切れるかもなんて心配の必要はなさそうね」
オレたちは今日の作戦を話し合いながら女子トイレにたどり着いた。ぐつぐつと音を立てながら悪臭を放つ薬にクサカゲロウを加えかき混ぜた。
「じゃあ眠り薬をつくってしまいましょ」
そう言ってハーマイオニーが立ち上がった瞬間にフワッとやわらかい香りが鼻を掠めた。
「あっ、もしかしてオレがあげた香水使ってくれてる? 1から調合したから好きな香りじゃなかったらどうしようかなと思ってたんだけど」
「やっぱりあなたが調合したのね。私この香りすごく好きだわ」
「匂いは人をリラックスさせてくれるからね。疲れた時とかに使うと少しは効果があるかなって。予習もほどほどにな」
「……あなたってそういうところあるわよね。ありがとう、大切に使うわ」
そういうところってなんだろう。