オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、ゴシップにうんざりする

「全校生徒は夕方6時までに各寮の談話室に戻るように。授業に行くときは必ず先生が一人引率します。トイレに行くときは必ず先生に付き添ってもらうこと。クラブ活動も一切禁止です」

 

 マクゴナガル教授がそう言って寮を出ると途端にグリフィンドール生は喋り始めた。

 

「これでグリフィンドールは二人目だ。ハッフルパフも一人──」

 

 オレは一人ハーマイオニーが石になったことを引きずっていた。秘密の部屋の噂があってから彼女を一人にしないようにフラッフィーをつけたり、オレがついて行ったり人通りが多いところを通らせたりしていたのに結局彼女はオレの気の緩みで襲われた。

 

「ルーク、大丈夫だよ。ハーマイオニーはマンドレイクの薬で戻るんだろ? いつも言ってるじゃないか死んでないから問題ないって」

「むしろ君まで巻き込まれなくてよかったよ」

 

 ハリーとロンがオレを必死に慰めてくれている。いつもと逆パターンだ。それだけオレは酷い顔をしてるってことだろう。

 

「……なあ、オレが今から校則を大量に破るって言ったら君たちは止めるかい?」

 

 ハリーとロンはお互いを見てオレを見た。

 

「君が校則を破るなんて日常だろ? 何言ってるんだ?」ロンがそう言い、ハリーが頷く。

 

「確かにそうかも。オレ今夜ハグリッドのところに行く。ハグリッドは50年前秘密の部屋を開いた罪で退学させられているんだ。真相に近づく何かを知っているかもしれない」

「ルークそれどういうこと? ハグリッドが犯人だって?」

「いや、トム・リドルがハグリッドに罪をなすりつけたんだ。ダンブルドアもそう言ってた。でも証拠がないから今まで動けなかったっぽい」

 

 そう言うとハリーは固まった。

 

「僕このあいだ変な夢を見たんだ。君が言ってる話と被るかも。舞台はホグワーツでハグリッドが大きめの箱から何か生き物を逃そうとしているところをトムが見つけて『やっぱり君が犯人だったんだね、ルビウス・ハグリッド』って言って捕縛しようとしたんだ。でも結局けむくじゃらの生き物は逃げて、ハグリッドがトムを投げ飛ばして、そこで目が覚めたんだ。でもハグリッドが秘密の部屋の継承者なんて馬鹿らしいと思って今まで気にしてなかったけど……」

 

 ハリーはトム・リドル視点の夢を見たらしい。

 

「君の夢にまで干渉するなんて……トム・リドル……やっぱりやばいな」

「で、どうやって外出するつもり?」

「もちろん帽子をかぶって行くよ。外出もそうだし、オレそもそもハグリッドと面会禁止だし」

「僕も行く。透明マントがあるし」

「ハリー、君がここでオレと共に動く理由はなんだ? オレは今年度中にトム・リドルに辿り着くつもりだ。彼がわざわざ名乗り出た理由が知りたいし他にも色々理由はある。でも君は? わざわざ危険に飛び込む理由はなんだ?」

「去年のことを思い出してよ。僕が賢者の石を守りに行くのに君たちはついてきた。それに犯人を捕まえないと僕は一生ダーズリー家で暮らす羽目になるからね」

「僕も行くよ。またチェスがあるかもだろ?」

 

 こうしてオレらはまたもやチームでこの難題に取り組むこととなった。ただ残念ながらほぼ確定でチェスは出現しなさそうだけど。

 

 暗い人気のない廊下を歩いて外に出る予定だったが、今は暗い混み合った廊下だ。教授やゴーストが二人一組になって不審な動きはないかと目を光らせている。

 

 オレは一人だから良いものの、ハリーとロンは二人で同じマントに入っているせいか足音やぶつかる音が消し切れていない。そのせいで何度危なかったことか。スネイプ教授がくしゃみをしなければ今頃無様に捕縛されていたことだろう。

 

 なんとか正面玄関にたどり着き樫の扉を開けた時やっと緊張感から解放された。星の輝く明るい夜だ。オレたちはハグリッドの小屋の明かりを目指した。

 

 オレは帽子を脱ぎ、扉を叩いた。するとハグリッドは石弓をこちらにむけて顔を出すという心底丁寧なおもてなしをしてくれた。

 

「……っおお、3人ともこんなとこで何しとる? 入れ入れ」

「それ、なんのためなの?」

 オレたちは小屋に入りながら石弓を指差した。

 

「なんでもねえ。なんでも。ただ、もしかすると、うんにゃ……座れや、茶をいれるわい」

 

 ハグリッドは終始上の空だった。やかんから水をこぼすし、お茶を出すと言いながらお湯が出てきた。

 

「ハグリッド、大丈夫? ハーマイオニーのことを聞いた?」

 

 ハリーが声をかけるとハグリッドは「ああ聞いた、確かに」と言いながらコップの中のお湯を一気飲みした。

 

 その時扉を叩く大きな音が聞こえ、慌ててオレは帽子を、ハリーとロンはマントを被った。ハグリッドはゆっくりとドアを開けた。先ほど同様石弓を持って。

 

「こんばんは、ハグリッド」

 

 現れたのはサンタだった。ただ今日のサンタはプレゼントももっていなければむしろサンタらしからぬ深刻そうな顔をしている。強いて言うならプレゼントの代わりであろう見知らぬ背の低い恰幅のいい体にクシャクシャの白髪頭をしたスーツの男性がアルバスに続いて入ってきた。

 

 ハグリッドの顔は青ざめ、汗をかいている。アルバスの顔を見て、男性の顔を見て椅子にどかっと座り込んだ。

 

「状況はよくないハグリッド。すこぶるよくない。来ざるをえなかった。マグル出身が3人もやられた。もう始末に負えん。本省がなにかしなくては」

「俺は決して」ハグリッドがすがるようにダンブルドアを見た。

 

「ダンブルドア先生様、知ってなさるでしょう。俺は決して……」

「コーネリウス、これだけはわかってほしい。わしはハグリッドに全幅の信頼を置いておる」

「しかしアルバス。ハグリッドには不利な前科がある。魔法省としてもなんとかしなければならん。理事たちがうるさい」

「コーネリウスもう一度言う。ハグリッドを連れて行ったところでなんの役にも立たんじゃろう」

「私の身にもなってくれ。プレッシャーもかけられている。何か手を打ったと言う印象を与えないと。ハグリッドでないとわかれば彼はここに戻り、なんのお咎めもない。どうしても。私にも立場というものがあり──」

「俺を連行? どこへ? まさかアズカバンじゃ?」

 

 ハグリッドの声は誰が聞いてもわかるくらい震えていた。

 

 そして、また来訪者が現れた。今度はオレも知っているやつだった。

 

「俺の家から出て行け!」

 

 その男はハグリッドの激しい声にも全く動じず180度周りを眺めた後こう言った。

 

「校長がここだと聞いたものでね」

「いったいわしに何の用があるというのかね? ルシウス」

「ひどいことだがねダンブルドア。しかし、理事たちはあなたが退くときが来たと感じたようだ。ここに『停職命令』がある。そして12人の署名も。残念ながら私たちはあなたが現状を掌握できていないと感じておりましてな。これまでいったい何回襲われたというのかね?今日の午後にまた一人。そうですな? この調子ではホグワーツにはマグル出身者は一人もいなくなりますぞ。それが学校にとってはどんなに恐るべき損失か。我々全てが承知しておる」

 

 ルシウス・マルフォイはオレのサンタをどうしても停職に追い込みたいらしい。コーネリウス・ファッジとかいうたぶん現魔法省大臣はダンブルドアが校長ではなくなることに反対しているようだが、権力に屈した。

 

 オレがブラック家当主だったらマルフォイなんかに好き勝手やらせない力があっただろうけど、今のオレは校則を破っているただの生徒だ。

 

「理事たちがわしの退陣を求めるなら、ルシウス、わしはもちろん退こう。しかし、覚えておくが良い。わしが本当にこの学校を離れるのは、わしに忠実な者が一人もいなくなった時だけじゃ。覚えておくがよい。ホグワーツでは助けを求めるものには必ずそれが与えられる」

 

 アルバスは確実にオレたちを見た。なんなら一瞬目があった。何も言わないということは続けてもいいというサインだ。とオレは認識した。

 

 ハグリッドは連行された。オレたちにメッセージを残して。

 

「何かを見つけたかったら蜘蛛を辿れば良い。誰かオレのいねえ間にファングとフラッフィー、あとアラゴグのことを頼んだぞ」

 

 そう言い残して扉がバタンとしまった。

 

「大変だ。ダンブルドアもいなくなった。これじゃあ全員がトム・リドルに襲われるのも時間の問題だ」

「ハグリッドはオレたちにヒントを残してくれた。そしてオレにとっては最悪のヒントを」

「どういうこと? ルーク」

「50年前のことをアラゴグは知っているんだ。オレが一年のとき罰則でお見合いをしたでかい蜘蛛だよ」

「つまり僕たちハグリッドのペットの蜘蛛に会いに行かなきゃってこと?」

「そういうことだハリー。そしてオレはもう二度とあいつにあいたくなかったし思い出したくもなかった……」

 

 オレたちはとりあえず寮に戻ることにした。行きに比べてオレの気分はさらに落ちていた。つまりどん底。

 

 

 ハーマイオニーが襲われた次の日は最悪だった。

 

 アルバスもいなければ、ハーマイオニーもハグリッドもいない。そしてそれについていろいろ言ってくるざっくばらんなメンバー。特にドラコの言動にオレはいつも以上にイラついていた。

 

「お前たちに言って聞かせただろう。父上は、ダンブルドアがこの学校始まって以来の最悪の校長だと思ってるって。たぶん今度はもっと適切な校長が来るだろう。『秘密の部屋』を閉じたりすることを望まない誰かが」

 

 魔法薬学の時間だ。オレは手元に完成した縮み薬をドラコに大鍋ごとひっくり返そうかと思う気持ちを必死に抑えている。

 

「先生。先生が校長職に志願なさってはいかがですか?」

「これこれマルフォイ、ダンブルドア先生は理事たちに停職させられただけだ。我輩は間も無く復職なさると思う」

「さあどうでしょうか──それにしても『穢れた血』の連中がまだ荷物をまとめていないのには驚くねえ──」

 

 クリスマス休暇で言っていたオレの隣に立てるように自己研鑽をするって話はどこにいったドラコ。やっぱり人間口先だけで変わることは難しいってことか。

 

 とりあえずオレは今のお前が大嫌いだ。

 

「ミスター・ブラックは大層暇をしているようですな。他の生徒が作り終わるまで縮み薬の作り方の改善案について羊皮紙にまとめて提出しなさい。優秀な君ならそれくらい造作もないことだろう」

 

 オレが今にも縮み薬をひっくり返そうとしているのが伝わったのか、それともいつものオレにだけ課題が異常に多いことの延長なのかわからないが今のオレには都合がよかった。

 

 ただ無心になってレポートを書くことで何も思い出さなくてよかった。いわゆる現実逃避だ。

 

 魔法薬のあとの薬草学でアーニーがハリーに継承者だと疑ったことを謝ったあとに「マルフォイとブラックどっちが継承者なんだと君たちは思う?」なんて聞いていたのをオレは聞かなかったことにした。

 

 オレは二回とも襲われた現場にいたのに無事だったこととブラックって名前が独り歩きしているらしい。

 

 オレが継承者ならこんな思いはしなくて済んだ。

 

 

「今日の夜オレは行く予定だ。それまで寝ている」

 

 オレは18時から寝室に行きベッドに入った。談話室は18時以降行き場がないから混み合っていた。それにそこで話される内容はオレにとって気を荒立てるか罪悪感に苛まれるか、とにかく良い気分になることはない話ばかりだった。

 

 ハリーとロンそしてジニー以外はオレの内心なんて全くわかっていなかった。

 

 なんなら「君が継承者って噂なんだけどどうなの?」なんて質問をしてくる子がいるくらいだ。ジョークのつもりなんだろうけど今のオレには苦笑いをすることしかできない。数ヶ月前だったら「オレが継承者ならまず最初のターゲットは校長かロックハート教授かもな」くらいのジョークで返せただろう。今は不謹慎すぎて口に出すことすら躊躇されるけど。

 

 0時少し前に目を覚ました。オレは帽子を持って談話室に向かった。そこにはハリーとロンそしてジョージとジニーが爆発ゲームをしていた。

 

「ルーク、あなた大丈夫? 隈がひどいわ」

 

 ジニーが心配そうな顔をしてオレのもとに駆け寄ってきた。

 

「そうかな? さっきまで寝ていたんだけど目が覚めちゃってさ。それよりもジニーはこんなに遅くまで起きていて大丈夫なの?」

 

 オレは心配させないために明るく振る舞った。声が変にうわずっていたと思う。でもジニーは優しかった。

 

「あらっ、もうこんな時間なのね。私もう寝なきゃ。あの……私でよければなんでも話してね。それにあなたはなにも悪くないわ……おやすみなさい」

 

 絶対オレがこの後何かするって気づいただろうに気づかないふりをしてくれた。

 

 オレは頷きジニーが寝室に戻るのを見送った。ジョージも寝ることに決めたらしい。オレたちに爆発ゲームの後処理を頼んで階段を上っていった。オレは爆発した残骸を適当に暖炉に放り込んだ。

 

「よし行こう」

 

 

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