オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、超楽しいドライブをする

 オレたち三人は今は無人のハグリッドの小屋まで辿り着いた。

 

「ルーク、場所は覚えているの? その、あの……あれの」

「ああ、そこは大丈夫。オレの足が言うことを聞けば絶対に辿り着く」

 

 ロンからの問いかけに今にも回れ右したくなる足を眺めながらオレはそう答えた。

 

「ファングと一緒に行こうよ。ファングなら森に慣れているだろうし」

「いい案だハリー。そうしたらフラッフィーも一緒に連れて行くよ」

 

 こうしてオレたちは三人と二匹で例の場所に向かった。オレとハリーが『ルーモス』で杖先を光らせ道を照らしている。ロンは残念ながら杖の健康状態があまりよくないからファングの手綱を握る役目だ。

 

「ルーク、ルーモス苦手だっけ?」

 

 ハリーが歩きながら尋ねてきた。確かにオレの杖先はあと1日保つかどうかくらいの電球みたいに僅かにチカチカしている。

 

「そんなことないはずなんだけどな……」

「やっぱり日を改めた方がいいよルーク。君ストレスとか色々で魔法にまで影響が出てるに違いないよ。ここ最近の、いやあの日以来の君は……友達だから言うけど……オーラがそのなんというか、不吉な感じだ。それも相まって噂も爆発、そのせいで余計君にストレスがかかる。そうだろ? 一回体調を整えていつもどおりになってから──」

 

 ロンが水を得た魚のように急に饒舌になり始めた。オレはその態度になぜかひどくムカついた。

 

「──ロン一回黙れよ。じゃあオレはどうすればいいんだっ、体調を整える? そうしたら安心安全なホグワーツでの学校生活が帰ってくるって言うのか?」

 

  思わず反射で怒鳴り返してしまった。ロンは目を見開いた後、険しい顔になった。

 

「っそんなこと言ってないよ!君がいつもと違って冷静さを失っているから教えてあげたんだ。いつもみたいに緻密な作戦の共有もなければ、魔法もうまくいってない。君らしくない、それは事実だろ?」

「ロンもルークもこんなところで喧嘩しないでよ──」

「ハリー、僕はこいつに一回わからせてやるのが友達だと思うよ。明らかに変だろ。僕たちが背中を預けたいのはこんなやつじゃない。ハーマイオニーも絶対そう言うだろうね──」

 

 やらかしている。今すぐやめなくちゃと思っていたのに口が止まらない。

 

「オレは自分のできる最善を選んでここまできたんだ! いくらまわりに秘密の部屋について揶揄われても耐え切ったし、嫌な噂も全部無視した。これ以上に君は何をオレに求めるんだよっ」

「だから言ってるだろ! 一人で抱え込むなって! 僕たちは君に全てを抱え込んで欲しいとか全く思っていないしむしろダメになる前に日頃から辛かったら言って欲しいって思ってるんだよ!」

 

 ロンは息を切らし真っ赤になりながらそう叫んだ。オレに必死に口で伝えようとしている様子を見てオレは自分に余裕が全くなかったことに気がついた。

 

 オレは深呼吸をした後、杖をホルダーにしまって両手を顔の横に持っていき、一気に頬を叩いた。その行為にロンとハリーは驚いているようだ。

 

「ごめん二人とも。オレ最近ロンが言う通り魔法も思った通りにいかないし、噂とかに翻弄されて……余裕がなかった。絶対にこんなふうに感情的にならないって誓ったのにカッコ悪いな」

「こんなふうにすぐ非を認められるところは十分かっこいいから安心しなよ。僕が君だったら1ヶ月は僕と口をきかないだろうから」

 

 そう自慢げに言い切ったロンにハリーも大きく同意している。なんだよ二人とも。

 

「ロンとハーマイオニーはそれで仲良くなるのに時間がかかっていたもんな……よし、じゃあ仕切り直しだ。オレたちはアラゴグから秘密の部屋の真相を聞きに行く。本物の怪物が何か、部屋はどこにあるのか、トム・リドルについてを重点的に。オレはアラゴグとは仲良くなれなかったから、挨拶以外の質問はハリーに頼む。ロンはファングの管理を頼んだ。そして緊急脱出にはフラッフィーを使う。体を大きくして背中に乗れば森を走ってくれるはずだ──」

 

 オレは頭の中の計画を順序立てて説明していく。二人が途中でニヤニヤしはじめた。

 

「なんだよ?」

「いつもの博識聡明なルークに戻ったなって思って」とハリー。

「死神から戦略家に早変わりだ」とロン。

 

 二人とも失礼なやつだ。

 

「無駄なこと考えてるなら歩くの早くするぞ」

 

 オレたちは順調に足をすすめていた。そしてこれからもその予定だった。

 

 三人中二人が蜘蛛嫌いでなければその予定は遂行されていただろう。なぜならアラゴグの巣への道のりには案内係がたくさんいたからだ。

 

 そう、小蜘蛛だ。彼らはカサカサと音を立てながら同じ方向に向かっている。

 

 ただの蜘蛛だ。足が八本あって毛むくじゃらなだけだ。オレの方が強い。いつでも踏み潰せる。

 

 そう自分に言い聞かせる。

 

 でもすでに心臓がばくばくいっている。大量の蜘蛛がいるのは覚悟してきた。この先何が待っているかも予習済みだ。

 

 小屋の時は2、3匹だったのがこれだけ増えてきたら「もうじき」だ。

 

 震える手を握りしめることでなんとか震えを抑えつける。一歩一歩無理やり足を前に出している。

 

 心臓が逃げ出したがっている。

 

 ようやくあの時見た景色と同じ場所に来た。たぶん20分くらいしか歩いてないんだろうが、体内時計では3時間はすぎている。

 

「ここをまっすぐ歩いた窪地が前回アラゴグのいた場所だ。ロン、大丈夫か?」

「……ここを一人でもどるよりマシさ。それにここで戻るなんて友達じゃないだろ」

 

 ロンの声はもちろんうわずっていた。オレもそろそろ演技なんてできない。カサカサと耳につく音のせいで狂いそうだ。

 

「っ──」

 

 オレの視界は反転した。地面が空、空が地面。

 

 つまり宙吊りだ。

 

 カシャカシャという音をBGMにオレはどこかに運ばれている。胃の中のものが迫り上がってきて我慢できずに吐き出したが運び屋はそんなことはお構いなしに進んでいく。口の中が酸っぱくなった。

 

 宙吊りにされた時に杖をどこかへ落としたせいで光源を失った。たぶん今頃戻ってきていて杖はオレの太ももにあるホルダーの中だ。

 

 ポジティブに考えると真っ暗なおかげでまだ現実を直視しなくていい。

 

 ただどんなに現実逃避しようが確実にオレを運んでいるのはでかい蜘蛛だ。

 

 何回目かの胃の中の逆流の後オレは目的の場所についたのか掴まれていた足を離され地面に落ちた。

 

「アラゴグ! アラゴグ! 人間です!」

「ハグリッドか?」

「知らない人間です」

「殺せ、眠っていたのに」

 

 気味の悪いざらついた声で会話をしている。

 

 オレの恐怖は限界に達した。

 

 トロールにリンチされた時も、初めて変身した時も、腕が紫になった時も、トム・リドルに背後を取られた時もなんだかんだ理性や怒りが勝った。

 

 ただ今回はどうだろうか。ベッドを抜け出して約数時間、オレは震えたり、冷や汗をかいたり、吐いたりの繰り返しだ。

 

 巨大蜘蛛を前に涙を堪えているうちに、体は怖がるのをやめた。頭のどこかで『悪いけど、これ以上恐怖を感じろって言われても無理』という声が聞こえる。

 

 そこでやっと思考がクリアになった。

 

「僕たちハグリッドの友達です」挨拶をし忘れているオレを見かねてハリーがそう叫んだ。

「アラゴグ、オレだ。ルーク・ブラック。一年前ハグリッドとここにきた!」そこで慌ててオレも挨拶をした。

 

 オレたちの声にアラゴグは反応した。アラゴグの目は白く濁っているから匂いと声で判断しているのだろう。

 

「もう二度と会いたくないとお互いに思ったかと認識したのだが……何しに来た」

「ハグリッドが大変なんです。それで僕たちが来たんです」

 ハリーが息を切らしながらそう言った。

 

「大変?」

「ホグワーツで秘密の部屋が開かれた。それでハグリッドが逮捕された。アラゴグ、あなたなら何か知っているんじゃないですか? 50年前の事件の真相を」

「はっ──よく覚えている。それでハグリッドは退学させられた。みんながわしのことを、いわゆる『秘密の部屋』に住む怪物だと信じ込んだ。ハグリッドが『部屋』をあけてわしを自由にしたのだと」

 

 忌々しい記憶だと言わんばかりの声色でそうアラゴグは答えた。

 

「あなたじゃないんですね?」

 

 ハリーの問いかけにアラゴグは怒りでハサミを打ち鳴らしながら話を続けた。

 

「わしはこの城で生まれていない。遠いところからやってきた。わしが卵の時に旅人からハグリッドが買い取った。ハグリッドはわしの面倒をよく見てくれた。城の物置に隠し食事を食べさせてくれた。わしが見つかってしまい女の子を殺した罪を着せられた時、ハグリッドはわしを護ってくれた。その時以来わしはこの森に住み続けている」

「じゃあ一度も誰も襲っていないんですね?」

 

 ハリーがアラゴグと対話している間オレは秘密の部屋の生き物について考えていた。

 

「わしはハグリッドの名誉のために決して人間を傷つけなかった。殺された女の子の死体はトイレで発見された。ハグリッドとは面識のないレイブンクローの少女だ。それにわしは物置以外にいったことはない」

「それならいったい何が女の子を殺したか知りませんか? 何者であれ今そいつは戻ってきて、またみんなを襲って──」

「城に住むその物はわしら蜘蛛が何よりも恐れる太古の生き物だ」

「……バジリスク」

その名前を口にするな! ずっと……ずっとお前が気に食わなかった。血はだいぶ薄くなったようだがしっかりと感じる。一度はハグリッドがついていたから許したがもう生かしておく理由もない。それに神の子はうまい。殺せ子供たちよ。今日は晩餐だ」

 

 オレの発言が逆鱗に触れたことはもちろんのこと、多分もともとオレを生かしておく気もさらさらなかったようだ。というかオレを襲ってくるやつオレの血好きすぎないか?

 

 オレは迫ってくる中くらいの(と言っても俺たちより十分大きい)蜘蛛に魔法を放ったが、やっぱり分類XXXXXの子供。オレの調整しきれていない魔法は全く効かない。

 

「何かないの!!??」

 ロンの悲鳴が聞こえる、ハリーも隣で果敢に挑戦しているものの魔法は一時的な凌ぎでしかない様子だ。むしろ今1番致命傷を与えているのは噛みつき技を持っているファングだった。

 

 ただ本当に残念なことにファングにチームプレイは無理だった。

 

「ファング!! どこ行くの!」

 ロンの実況から察するにファングは逃げることを選択したらしい。1番その場で自分が助かる可能性が高い方法、仲間を盾にして逃げること。よくわかっているな。

 

「ルーク! フラッフィーはっ?! 近くにいないのっ!?」

「蜘蛛に運ばれてから見失ったんだ。それに影も蜘蛛が敷き詰められていてうまく見えないっ! 口笛も届いてないし、どうにかして呼べればっ。……あっハリー、ロン!! 30秒死ぬ気で生き残れっ!!」

「死ぬのか生きるのかはっきりしてよ!」

 

 オレはそんなロンの悲痛な嘆きをよそにポケットの中に手を突っ込みステュクスの川の氷で作られたあの笛を取り出し強く吹いた。

 

 甲高い音と共に笛が砕け散った。そして目の前にはフラッフィーがいい笑顔でお座りしている。オレが首輪を最大限大きくさせるとそれと共にみるみる大きくなって初対面の時と同じくらいになった。そして中くらいの蜘蛛はフラッフィーの座布団になった。

 

「フラッフィー、オレたち三人をホグワーツ城に連れてってくれっ!」

 

 オレは小蜘蛛を物理的に吹っ飛ばしながらフラッフィーに叫んだ。するとオレの体を1番右の頭が咥え背中に乗せてくれた。二人もオレに続いて背中に乗っけられた。

 

 そしてフラッフィーは急発進した。

 

 当初の森を走るという予定とは別ルートを辿ることになったが。

 

 どこのルートだと思う? フラッフィーに飛翔能力があったとか? 猿みたいに木を渡ったとか?

 

 いやオレたちが通ったのは影の中だった。

 

 

 以下のものが苦手な人はフラッフィーに乗ってシャドードライブをするのはやめておいた方がいい。

 

1 暗いところ

2 背筋を這い上る寒気

3 不気味な音

4 顔の皮がむけそうなくらいの猛スピード

 

 つまり、最高ってこと。

 

 一瞬で何も見えなくなる。フラッフィーの毛の感覚と落とされないように必死に毛を掴んでいる感覚しかなくなる。

 

 と思っていたらオレたちはホグワーツの自分達の寝室にいた。

 

 フラッフィーはよろけて大きなあくびをしたと思ったらどさっと座り込んだ。

 

 オレたちは背中から滑り降りた。そしてフラッフィーと同様に地面に座り込んだ。チラッと見るとハリーとロンは真っ青になっていた。

 

 オレは疲れたものの蜘蛛に比べれば影のほうが断然居心地がよかった。

 

 ただここは寝室、呑気に横たわっている場合ではない。この部屋はフラッフィーの大きさに対応なんてもちろんしていない。机の上の羊皮紙は吹っ飛び、教科書は散乱した。ついでにベッドの場所も大きく移動している。

 

「フラッフィー、ありがとう。今から君を小さくするよ。このままだとオレたちのベッドの足が折れて傾いた布団になるだろうから」

 

 首輪を小さくするとゴールデンレトリーバーサイズまで小さくなった。それを見て安心したところまでは覚えているがそれ以降の記憶はない。たぶんオレは気を失った。疲れには勝てない。

 

 

 目が覚めたら部屋はハリケーンが通ったみたいな荒れ具合だった。まあ誰も片付けていないのだとしたら当たり前の結果だ。

 

「ハリー、ロン起きろ! 朝食に間に合わなくなる」

 

 どうやらハリーとロンも同じように地面で寝ていたようだ。のそっと起き上がって肩を回している。冷や汗のおかげで服がべっちゃりなのはお揃いだ。

 

 二人とももうフラッフィーの背中には乗りたくないとブツブツ言っている。特にハリーはドライブ以降頭痛がひどいらしい。緑の光がとかなんとかとか言っている。オレ的にはそんなに悪いもんじゃなかったけど。むしろこの表現が合っているのかよくわからないけれど実家的な懐かしさも感じた。

 

 話は戻すがこういうときオレは魔法使いで本当に良かったと思う。杖を何振りかすれば物はもとの位置に戻ってベッドの折れた足はきちんと修繕された。魔法の調子が悪いって言ってもこれくらいの生活魔法は余裕だ。

 

「結局昨日のあれで何がわかったんだ? ただ怖い思いして襲われにいっただけだよ。蜘蛛に出会ってそのあとあのケルベロスとドライブだ。最高すぎるだろ……」

 

 ロンの言葉にオレもハリーも頷いた。はっきり言って2度と経験したくない、そんな顔だ。

 

 俺たちは結局昨日得られた微々たる情報をまとめることにした。思い出したくないことも多いが今後のために三人とも苦虫を噛み潰したみたいな顔をしながら議論を進めていく。

 

「──ねえ、死んだ女の子だけど、アラゴグはトイレで見つかったって言ってたよね? あれって」

「オレもそう思ったよハリー。もしその女の子が一度もトイレを離れなかったとしたら? ってね」

「もしかして──『嘆きのマートル』?」

 

 ロンの回答がオレとハリーが至った共通解だ。

 

 

 オレがいかに非日常をすごしていても学校の運営側は日常を送らせようと躍起になっている。その証拠に一週間後の試験が告知された。

 

「わたし今年こそあなたを抜いて1番になってみせるわ」

 

 なんて言っていたハーマイオニーがそもそもテストに参加すらできなさそうな今の現状にオレのテストに対する意欲が上がるわけもない。というか最近のオレは昨日自覚したのだが体も心もボロボロだ。やっと自覚したのかって思われるかもしれないが。

 

 今から待ち受けているだろう秘密の部屋での試練。それを乗り越えるために視野が狭かったらだめだし、不健康でもだめだ。この間ロンに諭されてそう思った。

 

 自分のベストを尽くさず挑むなんてそれこそ負け戦。

 

 オレはそう自分に言い聞かせて早寝早起き、3食栄養の取れた食事、勉強と勤勉学生に擬態した。そうすることで正気を保ち続けた。

 

 オレって超理性的だと思う。

 

 

 オレは人より少しだけ頭の回転が早いと自負しているし、論理をきれいに組みたてるのに適した頭をもっていると思っている。

 

 ここ数日、秘密の部屋について自分が持ち合わせている情報を組み合わせて秘密の部屋の概要を掴んできた。図書館にも通って新聞や雑誌を片っ端から読み漁ったり、絵画たちに聞き込み調査もした。

 

 まず、秘密の部屋を開けたのは50年前も今もトム・リドル。そして秘密の部屋の怪物はバジリスク、バジリスクの眼球は直視したら確実に死ぬ。そして前回直接見てしまったのはマートル。今までのハリーの言動から推察するにパイプを通って移動しているのだろう。

 

 こんな感じでどんどん真相に近づいている。ただこれがオレの功績なのか、トムに誘導されてここまできたのか現状で判断できないのがネックだ。

 

 でも今からやることは一つ。アルバスに渡す手紙をマクゴナガル教授に渡すこと。この間アルバスに送った手紙はそのまま帰ってきた。たぶん連絡が気軽に取れない状況にいるっぽい。

 

 オレは付き添いのロンとハリーを連れて職員室を訪ねていた。オレなりの最適解を持って。

 

『生徒全員、それぞれの寮に戻りなさい。教師は全員、職員室に大至急お集まりください』

 

 校内に放送が流れた。何かがあったようだ。

 

「また襲われたのか? 今になって?」

 ロンが意味わからないという顔をしながらそう言った。たしかに明日のテストが終われば数日で学校は夏休みを迎える。

 

「何が起こったか聞いた後その手紙をマクゴナガル先生に渡そうよルーク。それにダンブルドアだけじゃなくて他の先生にもわかっていることを話したほうがいいって」

「ああ、とりあえずそこのマントかけの中に入ろう」

 

 ハリーの提案に同意し、オレたちは端の方にあるカビ臭いマントかけに身を隠した。

 

「とうとう起こりました。生徒が一人連れ去られました『秘密の部屋』そのものの中へです。継承者が伝言を書き残しました。『準備は整った。黒き高貴な血を引く者よ、我が部屋に招待しよう。断れば君の友人は永遠の眠りにつくだろう』」

 

 それを聞いたフリットウィック教授は泣き出した。

 

「誰ですか? 連れ去られたのはどの子ですか?」

 

 マダム・フーチが聞いた。

 

「ドラコ・マルフォイ」

 

 マクゴナガル教授がそう言い切った。スネイプ教授の血の気のない顔が余計に青白くなり、職員室の温度が1度は下がった。

 

「全校生徒を明日、帰宅させなければなりません。ホグワーツはおしまいです。理事たちにも説明をしなければなりません……やはりダンブルドア校長がホグワーツから追い出されたのが──」

「んん、マクゴナガル教授。大事な話の前に、一人足りないようですがロックハート教授はどちらに? 今こそ彼の出番では?」

 

 フリットウィック教授は出番とは全く思っていなさそうな口ぶりでそう言った。

 

「はぁ、まったくこんな非常事態に。スネイプ教授、呼んできてもらえますか?」

「正直に申しあげますと、彼がいようがいまいが問題ないかと。むしろ事態を悪化させかねないと思いますな」

 

 教授たちは次々に首を縦に振っている。ロックハート教授の周りからの扱いが透けて見えた瞬間だった。

 

「寮監の先生方は寮にもどり生徒に何が起こったかを知らせてください。明日の1番のホグワーツ特急で生徒を帰宅させる、と伝えてください。他の先生は決して生徒が寮の外に残っていないよう見回ってください。では」

 

 先生たちは立ち上がり次々に出ていき残ったのはスネイプ教授とマクゴナガル教授だけになった。

 

「スネイプ教授はルシウス氏に連絡を」

「その前にブラックにこれを飲ませ吐かせましょう。やつは確実に何かを知っている」

「──っ真実薬なんて2年生にのませるものではありません」

「壁に残された黒き高貴な血がブラック以外にあてはまる人物がいるとでも? それにポリジュース薬を私用に作るほどの何かを抱えていた。状況からして彼から全てを吐かせるのが事件の解決のためにも適当かと」

「……ポリジュース薬とは何のことでしょうか」

「……言ってませんでしたな。あー、吾輩の個人所有の薬草がいくらかなくなっていましてね。その後グレンジャーの瞳の色が変わったと医務室に訪れたことは確認済みです。彼と彼女の技術では作ることは容易いかと」

「今この忙しい時にそんな情報は聞きたくありませんでした。真実薬を飲ませなくても彼に話させます。それから……それは最終手段に取っておきましょう。このままじゃその飲ませた薬も3年生あたりに作りかねません」

 

「……甘いですな」

「それは薬草の盗難を報告しなかったあなたもですよ。お互い様でしょう」




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