オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
オレたちは教授たちが扉から出た瞬間駆け足で寮に戻った。いくつもの抜け道を全速力で通ったおかげで息がきれたが、そのおかげでまだマクゴナガル教授は寮にいなかった。
「どうするのルーク? たぶん今から君スネイプからの拷問だ。真実薬ってやばいよ。真実薬って自分の意思関係なく全部話しちゃう薬だろ?! 今すぐ記憶を消さなきゃ! とりあえず殴る?」
ロンが最初に会話を切り出した。それにしてもパニクリすぎだロン、オレは友達にそんな理由で殴られたくない。
「逆に真実薬の内容は正気を失ってたり催眠にかかってると判断されなければ確かな証言になる。それでこの問題が解決するならそれに越したことはないだろ? それにオレたちもとから全部話そうとしていたし」
「あともう一個、君は部屋に招待された。どうするの?」
「行くしかないだろ。オレの友達を永遠の眠りにつかせるなんてできない」
「でも行って君が永遠の眠りについたらどうするんだよ! しかもあのマルフォイを助けるためにだぞ??」
ロンはなんて馬鹿なことをしようとしているんだ、と言わんばかりだ。
「ロン、さっきからアドレナリン出まくってるぞおちつけ。別に一人で行くわけじゃない。教授はもちろんついてくるだろうし、それにハリーとは確実に一緒に行かないといけない」
「僕? どういうこと?」
「入口を開くためには蛇語で何か言わないといけないはずだ。オレは話せないから……ハリー、君は? 正直に言うとオレはドラコを助けたい。嫌なやつだし何度も殴りたくなるようなことを言ってきたけど、見殺しにするのは違う気がするんだ。それに……オレの友達っていうのが指している対象がハーマイオニーとかの可能性が否定できない。個人を指名されてないからもしかしたら君たち二人の可能性もある。つまり誰が眠りにつくのかわからないんだ。そんな曖昧でリスキーな状況、そして君はこれからの行動を選ぶ権利がある。行く? 行かない?」
「僕は、マルフォイなんて糞食らえって思ってるし、これまでの言動は許せないけど……でもルークの願いなら行くよ。それにハーマイオニーだったら後悔してもしきれないし」
「僕は? 蛇語は話せないけど何かできることはあるかいルーク」
「ロンはオレたちが部屋に入っている間ハーマイオニーの隣を離れないで何か異変があったらすぐにマダムに伝えることかな。君のことは信頼しているけど、今の君の杖は信頼できないから」
「あー、たしかに。今僕にできることは意図しない爆発か自分に呪いをかけることくらいだったの忘れていたよ」
「この騒動が終わったら杖買いに行こうぜ」
「変なフラグ立てるなよルーク」
ドアが開きマクゴナガル教授がきびきびと歩いてきて手を数回叩いて注目を集めた。
「もうすでに情報が回っているようですが、秘密の部屋に生徒が一人連れ去られました。皆さんの安全を考慮し明日1番のホグワーツ特急で皆さんを帰宅させます。明日までは決して談話室から出ないようにして談話室内でも何人かでグループになって行動してください。何かあったらフクロウを飛ばしてください」
マクゴナガル教授はそう言い切ったあとオレたちの方に向かって歩いてこようとするのでオレはロンとハリーの手を引っ張って談話室のドアの前まで回り込んだ。こんなところで『ミスター・ブラック少しついて来なさい』なんて言われたらオレが秘密の部屋の継承者みたいになるじゃないか。そういえばスリザリンの中ではオレが継承者ってことになってたよな。そしてその他大勢の噂でも。
「何か用ですかマクゴナガル教授?」
「あなたに話と質問があります。私についてきなさい」
「二人も一緒に。どうせあとから呼ぶことになるでしょうから」
「……本当に何か知っているのですね。わかりました二人もついてきなさい」
オレたち三人はできるだけこっそり寮を出たが幾らかの寮生見られていたかもしれない。これからの寮内での居心地はこの事件の解決具合によることは間違い無いだろう。
歩いてたどり着いたのは地下。つまり魔法薬学の教室だ。そこにはスネイプ教授、フリットウィック教授、スプラウト教授がいた。つまり寮監の集まりだ。
「事態は一刻を争います。ブラック、あなたはこの事件に関わっていますね?」
「否定はできませんね。その件に関してダンブルドア教授に手紙を送ろうと思っていたところですから」
「ブラック、全てを吐け。今すぐにだ。嘘をついたらわかっているな」
真実薬は使わないようだがスネイプ教授はオレを椅子に座らせ、向かいにもう一つ椅子を持ってきて座った。つまりオレたちは今対面座位ってことだ。
「言われなくても、スネイプ教授。──オレがまずこの事件に関わったのは薄い本が原因でした。その所有者はトム・リドル。50年前秘密の部屋が開いた時ハグリッドを追放した本人です。そのことを知ったのはつい最近ですが。日記は自我を持ち日記に書きこんだ者を操り好き放題やっていました。例えば壁に赤い文字を書いたり鶏を絞め殺したり。そうしてオレもたぶん操られました。オレがコリンと廊下に倒れていた時ですね。それから日記の行方はわからなくなりました。そしてハーマイオニーが倒れたあの日、オレたちは怪物の正体を突き止めました。そして青年姿のトムにも出会いました。オレの魔法では彼に勝ち目がなかった。その後オレは50年前に罪を擦りつけられたアクロマンチュラに禁じられた森で会って話を聞きに行き、秘密の部屋の入り口を突き止めました。それを今からダンブルドア校長に伝える予定でした」
「怪物の正体は?」
「たぶんバジリスクです」
「秘密の部屋の入口は?」
「嘆きのマートルがいる女子トイレのパイプがつながっているところです」
「……嘘はついていないようですぞ」
あまり知らない分野だけど開心術とかの類なのだろうか、オレの目から視線を外さず質問をされた。こんなにスネイプ教授に見つめられたのって初めてかもしれない。いっつも横目でさらっと流されるか後ろから嫌味を言われるだけだし。
「……いったいどうしたらそこまでの秘密にたどり着き、しかも隠していられるのですか?! セブルスあなたよく落ち着いていられますね。私はその日記のことも知らなければ、バジリスクのことも気づきませんでした。それに校内にバジリスクに加えアクロマンチュラが存在することもです。たぶんお二人も同じ気持ちでしょう」
マクゴナガル教授の言葉にスプラウト教授とフリットウィック教授が同意を示した。
「学生時代から吾輩の周りには一般人と頭の作りが大きく異なる連中が大勢いたので慣れております」
その連中の中にたぶんサンタとロックハート教授が含まれているだろう。それに母さんもその部類だったような気がする。しらないけど。
「ではブラックを秘密の部屋に送り込むかを──」
「私は断固反対です。ただでさえ一人生徒が危うい状況なのにもう一人だなんて。不安材料を投下する理由がありません」
「そしたらマルフォイをそのまま見殺しにしろと?」
「そうではありません。ですが……」
「オレは行きますよ。そしてハリーも。な?」
「もちろん行きます!」
ハリーにアイコンタクトを取るとハリーは大きく頷いた。なぜかそれにスネイプ教授が苦虫を噛み潰したような顔をした。
「本気で言っているのですかブラック?! 危険です」
「オレが行かないと助かる命も助からないですし。それに計画はすでに立てています。ドラコを救い出す方法を」
「──話してみろ。それから皆で判断する」
妙にスネイプ教授がオレの行動に好意的なのはドラコを助けたいからだろう。
「まず医務室にマンドレイクの鉢をロン、スプラウト教授で運び込みます。医務室の2人とマダム・ポンフリーはそれぞれ固まった生徒から目を離すことなく、またバジリスクの襲撃に備えてください。バジリスクが逃げ出したと仮定してトムの性格的にそこに向かって石から死体または食糧に変えて回るでしょうから。談話室はパイプが煙突以外ないのでしばらくは安心でしょう。次にオレ、ハリー、マクゴナガル教授、フリットウィック教授、スネイプ教授は全員女子トイレに向かいます。ハリーに入口をパーセルマウスで開けてもらい中に入ります。バジリスクと戦うかトムと話し合いで解決するか葬るかはわかりませんがそれは相手の出方しだいですね。──バジリスクは目を見ず、また噛まれなければただの皮の硬い蛇です。匂いを頼りに襲ってくるでしょう。そこでこれです」
「それは?」
「香水です。少し前にいろんな種類を調合しましたのでひとり1ダースずつ持っていきましょう。戦いの中プッシュしている暇はないので爆発させて使います。ちなみに全て天然由来の成分なので環境に優しくまた……あ、話がそれましたね、今回の目的は優先度順にドラコの奪還、バジリスクの駆除、トム・リドルを確保の3点です。トムの話相手はオレが務めますが、魔法の打ち合いになった場合は教授のお力をお借りしたいですね。またフラッフィーも連れていきます。ハリーはバジリスクの説得がメインの仕事です、唯一蛇語がわかるので。最悪取りつく島もなければドラコ奪還組に入りましょう。そして教授方はそれぞれバジリスク、ドラコ、トムの三つに分かれてもらいましょうか。希望などあります?」
「吾輩はマルフォイの安全を確保する」
「わしはバジリスクと決闘をしようかのう。腕が鳴るのう」
「私はあなたの補助に入ります」
「ではそれで。ロックハート教授はバジリスクがいいでしょうか? いまここにいらっしゃらないようですが。それか他の教授のように校内の見回りと寮生の保護に回すべきでしょうか?」
「いや、やつはこの作戦には参加させない。それにそもそもどこにいるのか誰も把握していない」
「それって探しに行くのがめんど──んんっ、すみません。はいでは」
スネイプ教授に強く睨まれたので話を進めることにした。
「気を取り直して。オレが知る限り秘密の部屋は去年の4階のように守るためのトラップはないはずです。そもそも蛇語が話せるかが最大の守りですからね。ちなみに魔法で部屋が造られていない限りここに部屋は存在するでしょう。城の構造的にここに大きな空間が存在するので」
オレは自作の地図を広げ指差した。
「ほう、この地図は実によくできているのう。今度わしに複写させてくれんか?」
フリットウィック教授が感心感心とでも言わんばかりに覗き込んでいる。
「……もう私は何を見てもしばらく驚きません。私が知らない隠し通路が何本もあってもです」
「わーお、すごいやルーク。これ僕にもちょうだい」
今は地図がメインの話じゃないし、その地図まだ通行人の場所がわからないから未完成なんだ。
「で、ここはちょうど女子トイレの下、スリザリン寮とも近いことから妥当かと。部屋にたどり着いて話し合いの余地があるのならば最優先はドラコの保護です。ドラコをこちらの手に入れるまでは相手の要求を飲む行動を取ります。そして万が一交渉が決裂したら先ほど言った分担に分かれます。そして──」
オレは頭の中にある計画の大筋を丁寧に話していく。
「──あとはトム・リドルについて情報共有をしておきますか。彼は約50年前この学校の生徒かつ主席をとるような優秀な男児でした。今の魔法のレベルはオレが思うに7年生より上なことは確実。杖なしで魔法を弾くくらいは造作もない感じでした。杖は持っていなかったですが今頃ドラコの杖を奪い取っているでしょう。あと疑問なのは姿が学生のままなことですね。あとオレになぜか好意的なこともひっかかります」
こうしてオレは端的にまとめて情報共有をした。日常だったらオレの話を真剣に聞いている教授なんて違和感のありすぎる光景だ。それからそれぞれ気になるところについて意見や質問を出し合い皆の考えがおおむね一致した。
「はぁ……最高の結末を期待するためにはこの案が最適解だと私は判断しました。今回の作戦は人質をとられている以上我々が後手に回らざるを得ないですね。本来なら魔法省の方を呼んでバジリスクの駆除をお願いした方がいいのですが……そんなことを言っている場合ではないことは理解しております。今から起こることは私が全て責任を持ちます。生徒の三人は自分の命を守ることを第一に行動するように。いいですね?」
こんなにあっさりと全責任をとると宣言するマクゴナガル教授はさすがすぎる。普通未成年の子供を危険に送り込むなんてと断るだけなのに、全てを守り切る実力と強い意志どちらも持っている彼女だからできることなんだろう。素直に尊敬する。
「では吾輩は準備をしてきますので20分後例の女子トイレに」
こんなにも真っ黒のマントを翻す姿が頼もしいと思えたことはない。いつもはコウモリだと感じるのに。
オレも準備の仕上げのために揺らいだ影の中に手を突っ込み頭を撫で飴玉を三つ影に落とした。それ以外にやることって言ったらホルダーに入った杖が折れてないか確認することぐらいだ。