オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
時間どおりあれから20分後準備を整えてトイレの前に集まっていた。
「で、ルーク入口はどこなの?」
「今からそれを知っている人に聞こうかなって。やあマートル、君秘密の部屋について何かしっているよね。教えてくれるかな?」
「し、知ら──そっちよ。っただ私はオリーブ・ホーンビーがメガネをからかってきたからトイレで泣いていただけ。そしたら誰か入ってきて外国語を喋っていたの。それが男の子の声だったから出ていけって言おうと思ってトイレから出たら金縛りにあって気づいたらこうなっていたの。最後の記憶は黄色い目ん玉だけ。でもいつのまにか戻ってきたの。たぶんオリーブ・ホーンビーに取り憑いてやるって決めたから。ああオリーブった──」
「君の気持ちは後で聞こうか。ありがとうマートル、いい子だね」
マートルは素直に話してくれた。
「とのことなので鍵はどこかの蛇口でしょうか。オレの予想だとここに空洞ができるから……いっそのこと爆発させます?」
「その短絡的な考えに賛成する者がいるとお考えかなミスター・ブラック。これを見たまえ」
スネイプ教授が指を差した先には蛇の彫刻が刻まれていた。さすが教授細かいとこまでねちっこく見るのが得意なわけだ。
「あー、ありがとうございます。よしハリー蛇語でなにか言ってみろよ。開けとかなんとか」
「でも──」
ハリーは自信なさげに蛇口に向かい合った。そして口から出てきた言葉はオレもきちんと理解できた。
「ハリーそれは普通の言葉だ、ちょっと待ってろ。『サーペンソーティア』ほらこいつとお話ししてみろ」
オレはドラコが使っていた魔法で蛇を呼び出しハリーに放った。ハリーはそれを受け取ったあとめっちゃ蛇語を話し始めた。オレが無理やり呼び出したことについてたぶんめっちゃ謝っている。
そして蛇とお話ししているハリーの横で手洗い台が動き始めた。手洗い台が沈み太いパイプが剥き出しに。ぱっと見先の見えない滑り台が姿を現した。
「よくやった……おい、もうその蛇語はやめてくれていいんだぞ?」
スネイプ教授が杖を一振りしたおかげで黒い煙を上げながらオレが呼び出した蛇は実家に帰った。そしてハリーも普通の言葉を話し始めた。
「あの蛇、君のせいで丸く太った食べ頃のネズミを逃したってさ」
ああ悪いことをしたな。その鼠がスキャバーズじゃなかったらいいけど。
「こんな大掛かりな隠し通路がホグワーツに存在するだなんて……信じられません」
「ぐずぐずしている暇は無さそうですな。吾輩の合図の後についてきなさい」
最初にスネイプ教授がパイプを滑り降り、その後オレ、フリットウィック教授、ハリー、最後にマクゴナガル教授という順番に降りた。降りた先は真っ暗なはずだったが教授がすでに魔法で明かりを灯しているおかげであたりをよく見渡すことができた。
「教授! これは! 脱皮後の皮が緑のままだなんて珍しい──」
「ああ、これは貴重な材料になる。普通は白くなるものだが、バジリスク特有の性質かもしれないですな。しかもまだ脱ぎたてだからか乾燥していない。ブラック、ペティーナイフ──」
「んんっ、お二方それは後にしてください。今はその大きさのバジリスクを討伐しなくてはいけないことを覚悟する時間であり、材料を採取する時間ではありません」
スネイプ教授はごまかすかのように乱れたマントを整え通常に戻った。オレも名残惜しいが一度蛇皮のことは忘れることにした。
「ではここからは何が起こるか予想がつきませんので気を引き締めていきますよ。いいですね?」
マクゴナガル教授の言葉にオレとハリーはしっかり頷いた。
オレたちは細心の注意をはらいながら一本道を歩いていた。そしてエメラルドが嵌め込まれた壁にたどり着いた。今度はオレが蛇を出すことなくハリーが蛇語を話し始めた。そして両側の壁がスルスルと滑るように見えなくなった。
蛇が絡み合う彫刻を施したたくさんの石の柱にお出迎えされオレたちは全方位を警戒しながら歩みを進める。
「あっ──」
ハリーが叫びかけるのをオレは手で防いだ。こんなところで声を上げたらばれていなくてもばれてしまう。ただ声を上げたい気持ちもよくわかる。なぜなら少し先で倒れている彼こそオレたちが救い出しにきたドラコ・マルフォイだからだ。
カツンカツンという音とともに奥から二人が現れた。どちらもオレがよく知っている顔だった。
「やあ、ルーク。随分と来るのが遅いと思ったら……招かれざる客たちも連れてきたってわけか──まあ僕も一人連れてきたから人のことを言えないか。ロックハート教授、あなたはあっちでさっき言った通り邪魔者の始末をしていただけますか。ルークはこっちだ」
「とうとう私の出番ですね。わかっていますとも、彼らくらいお茶の子さいさいですよ。なぜって? 私には強い味方がいますからね」
ロックハート教授はチャーミングスマイルで杖を構えている。トムの方ではなく、教授たちに。
「トム、オレは君となにもお茶会をするために来たわけでも戦いにきたわけでもないんです。ただそこで倒れている彼を無事返してもらうためだけにここに足を運んだ、わかっているでしょう?」
「そうか、お茶会とは良い案だ。ルークはこっちで座って」
オレは強制的に椅子に座らされ、トムの指スナップででてきたティーカップを手にしていた。そしてトムは多分蛇語と思われるなにかを石像に向かって話している。ハリーの顔が真っ青になったところを見るにたぶん「お茶会用のお菓子をフクロウ便に頼んでおいてくれないか?」なんてことは言ってなさそうだ。
そんな一連の流れのあとトムはオレとトムの周りに何か魔法をかけた。
オレは混乱している。なぜここにロックハート教授がいるのか。しかも裏切る気まんまんで。それにオレがティーカップを持ったせいで初っ端からプランAを大幅に外れている。誰が戦いの場でお茶会するとか想像できるんだよ、くそっ。
「何をしたんですか、トム」
「安心して、君と二人でじっくり話したかっただけだよ。もし僕たちが話し終わった後ハリー・ポッターも生き残っていたのならぜひ話してみたいけどね」
オレの周りは薄い膜で覆われ閉じ込められた。空間内にはオレとトムの二人、外では何かを叫んでいるマクゴナガル教授とハリー、魔法を打っているフリットウィック教授、もういらないと言わんばかりに吹っ飛ばされたドラコを保護しているスネイプ教授。
「あそこにいる彼がハリー・ポッターだよね。彼は本当にパーセルマウスのようだね。彼の武勇伝を教えてほしいな、彼はなぜ魔法界で英雄として扱われているんだい?」
ちらっと見たハリーはロックハート教授に執拗に狙われているところをマクゴナガル教授がヘルプしているところだった。ちなみにフリットウィック教授は簡易的に濃緑色のイキイキとしたバジリスクを縛り上げている。ただやっぱりただの綱は効果があまりなさそうだ。バジリスクがフリットウィック教授の方を見ている間は他の人と目が合うことはないから誰かが石になることはなさそうだが、彼の負担が重すぎる。そしてスネイプ教授は端の方でドラコに何か飲ませている。戦いどころではなさそうだ。
オレの方が閉じ込められているのに明らかにこっちの方が安全で、まるで水族館でいろんな魚を見ているような気分だ。
「なんでそんなことを?」
「少し気になることがあってね。これといった特別な魔力を持たない赤ん坊が不世出の偉大な魔法使いをどうやって破ったんだ? ヴォルデモート卿の力が打ち砕かれたのに、ハリーポッターはなぜたった傷痕一つで逃れられたんだ?」
「そういうのは本人に聞いた方がいいですよ。ただハリーが1歳の時のことを覚えていればの話ですがね」
オレは席を立ち薄い膜を蹴った。残念なことにびくともしない。
「ああ、言い忘れていたけど今外に行かない方がいい。誤ってバジリスクが君を殺してしまったら困るし逆も然りだ」
「ドラコはどういう状況なんですか?」
オレは無難(?)に会話を進めていくことにシフトチェンジした。
「眠っているだけさ。君がここに来た時点で彼にもう用はないよ。彼は年齢相応で単純で良いね。自分がどれだけちっぽけな存在かを自覚していない分操りやすい。それに地位もある。スリザリン内での君の地位向上のきっかけは彼のおかげでどれだけ作りやすかったことか」
自我がでたトムはけっこうお喋りだ。
「やっぱり『先輩』っていうのはあなただったんですね」
「まちがってはいないだろう? 僕はスリザリン生だったし、ホグワーツを卒業したはずだからね」
「はず?」
「16歳の自分の魂を切り離したからね、それ以降の自分のことは書籍か噂でしかわからない」
「切り離した? つまりあなたは16で時が止まっている魂だと。……オレの考えだとあなたは日記帳の形をしてオレと出会ったはずだ。いつのまに体を手に入れたんですか」
「ふふっ、やっぱり君は頭が良いね。そうさ、僕の実体は君の血を源に記憶から作り出したんだ。そして君が言っている日記はこれ。これのおかげで今、僕と君はつながっている。僕が魔法を使えるのも君の濃くて強い血の力のおかげだよ。つまり僕と君は一心同体ってことだね。良い響きだろう?」
トムは恍惚としているが、どこにもそんな顔をする要素はない。オレにとってトムは卵を産む準備を整えたエメラルドゴキブリバチだ。まだオレがそのゴキブリみたいにゾンビ化していないだけましなのかもしれないが。
「今の僕がどうなっているのかわからないけど、きっと君のことは気にいるはずだよ。なんなら僕が推薦してあげても良い。自分に推薦ってなんだか変な話だけど」
「ちょっと待ってください、あなたは現在も別の魂として生きているんですか?」
「たぶんそうじゃないかな。さっきも言ったけどヴォルデモート卿があんな赤子にやられるわけがないだろう? それに僕の存在がある限り彼が本当に死ぬことはないだろうからね」
ちょっと待て。今なんて言った?
「賢い君なら気づいたかな?」
トムは空中に文字を書いた。三つの言葉がゆらめきながら淡く光った。
TOM MARVOLO RIDDLE
そしてその文字は動き出し別の配列に変化した。
I AM LORD VOLDEMORT
「わかったね?」
納得だ。杖なしで魔法が使えるくらい優秀でカリスマ性がある彼が何も成し遂げていないわけがないだろう。幼い時に不慮の事故にでも遭ってない限り。
「オレは未来のあなたの成したことについてはっきり知りません。何を求めて行動したのかとかあなたのことを話してくれる大人はもう誰もいないんです。なぜってあなたの名前は今では触れてはいけないものになっているから。それを聞かせてくれませんか」
少しでも彼の情報が欲しかった。そして時間も欲しかった。大丈夫、教授たちとパーセルマウスもちのハリーならバジリスクだろうが対処できるはず。ロックハート教授がどこまですごいのかは未知数だが。
「ヴォルデモート卿という名前は在学中にすでに使っていた。もちろん親しい友人にしか明かしていないが。穢らわしいマグルの父親の姓をいつまでも使うと思うかい? 母方の血筋にサラザール・スリザリンその人の血が流れている僕が? 答えはノーだ。僕は自分の名前を捨てた。そしていつの日か必ずや魔法界の全てが口にすることを恐れる名前を自分でつけた。僕はその時から確信していたよ。僕が世界一偉大な魔法使いになる日が来ることを!」
つまり彼は半純血である自分の血筋を恥じ、自分が1番になることでマグルの血を否定しようとした……ってことか? オレにはマグルの血が入っていようがいまいが自分が1番になることで血など関係ないことを示しているようにしか思えない……が彼的にはマグルの血を完璧に否定したことになるらしい。
「確かにあなたの名前を口にすることを恐れている大人は多いですね。ただオレやオレたちの世代の半数があなたに感じている恐怖は天然痘に対するようなもの。つまりあなたは滅びたと思い過去の文献を読んで今の時代に生きれてよかったと安心する程度ですよ」
「そう、その原因がハリー・ポッター、忌々しい、生き残った男の子。だからこそ君の出番だ。君のことはずっと見ていたけれど確実にハリー・ポッターより優れている。まだ君に倒されたと言われた方が納得できるほどにね。彼と同世代の優れた君が君の世代に僕への畏怖を蔓延させてくれればいい。その代わりに君には僕の後継者の地位を与える。お互いウィンウィンの関係だ。もちろん僕の得た知識を教えてあげることもできる」
あの天下のヴォルデモート卿がオレのスカウトに一生懸命になっているのはなんだかおもしろい。
「いいですね、そうしたらオレは一から地位を築き上げなくていいと。では、あなたの功績や理念を詳しく教えていただけませんか? 布教するにもオレに知識はゼロですから。このままでは畏怖を促すというよりあなたの美貌しか伝えられませんよ」
こうしていかにトムが他の人と違うかなどの熱弁に適当に相槌を打つことで時間を稼いだ。トムはバジリスクが負けるはずないという自信からなのか、オレがすでにトムに惚れ込んでいると錯覚しているからなのか、16歳の精神で止まっているからなのかとても油断しているように見えた。オレが思っていた暗黒時代の彼とは思えない警戒心のなさ。
ちらっと外を見るとなぜかハリーはロングソードを持って振り回しているし、バジリスクの目からは大量の血が流れているし、マクゴナガル教授はロックハート教授を天井からぶら下げているし、スネイプ教授はドラコを守りながらバジリスクに魔法で攻撃をしているし、フリットウィック教授なんてバジリスクの上にしがみついている。
そしてみんな共通して泡をかぶっている。今の数分で何があったんだよ。
でも最高だ。生きて時間を稼ぐっていうオレの役割はきちんと担えたっぽい。
「──トム、確かに君はとっても優秀です。でも君にはついていけません。なぜって? オレの友達を傷つけたから。ハーマイオニー、彼女はオレの大切な人なんです。初めての気が合う友人をオレから奪おうとした人の何を信用しろと?」
オレは無理やり立ち上がりトムに杖を突きつけた。
「落ち着こうルーク。さっきも言ったじゃないか、僕と君は一心同体。安易に魔法を使えば君の魔力は限界に達する。事実最近魔法がうまく調整できていないだろう?」
トムは最初からそれが狙いだったようだ。つまりオレは人質、もしくは力のために寝返って仲間。教授たちは生徒を盾にされたら判断が鈍るだろう。事実今生徒が戦っている状況がそれを表している。
ロックハート教授を寝返らせた理由は謎だがまあ教授って点で役に立つと思ったのだろう。壁役とか。広告役とか。
「それはやってみないとわからないだろ」
オレは思いつく限りの攻撃魔法をトムに放つ。確かにトムの忠告通り息が切れる、肺が痛い。心臓の動悸がもうこれ以上動かしたら爆発しますと訴えているようだ。トムが笑顔で魔法を防ぐたびに自分が放った攻撃魔法が自分にもダメージを与えてくる。
ただ最終的に苦痛はオレだけに降り注いだわけじゃなかった。
目の前が霞み始めた時、つまりもう魔法を一回も使えないと思った時にトムの体にも異変が生じ始めた。
あんなベラベラ種明かしをされた後なら少し考えれば想像がつく。
供給源が尽きたらトムも自分の体を維持できなくなる。そしていつか日記に戻る。
「……その……まえに、なぐらせろっ!!」
オレは魔法が使えなくなったトムに左ストレートをかました。トムの軽い体がオレたちの周りに張っていた壁にぶつかって壁はパリンとガラスのように割れた。
その途端意味のわからない匂いに脳みそと鼻を一気に殴られた。そして力が入らないはずの体で盛大にむせた。
これオレの香水じゃん。
そりゃみんな泡を頭にかぶるわ。
自分の香水作戦に死にかけそうになっていると急に呼吸がしやすくなった。
「策士策に溺れるとはまさにこのこと」
オレを助けてくれたのは先ほどまでドラコの介抱をしていたスネイプ教授だった。オレの頭には泡がかぶさった。
「ありがとうございます」
オレは消えかけかつめちゃくちゃにむせているトムに話しかける。実体って意外と不便なのかもしれない。
「哀れな魂よ、エレボス(死者が冥界へ行く途中に通る暗黒界)で判決を待つか今食われるかどっちがいい?」
トムからオレへの返事の代わりにハリーの叫び声が聞こえた。オレとスネイプ教授が振り返る。
そこには大きく口を開けたバジリスクが、その口蓋に剣をブッ刺されていた。そしてハリーの腕にも牙が刺さっていた。
「っハリー!!!!」
オレがハリーの下に向かおうとするのをスネイプ教授は片手でとめてオレにこう言った。
「お前はこやつをしっかりと対処しておけ。油断するな、すぐ戻る」
そしてハリーの下に走っていった。オレは頷きまたトムを見、日記を見た。
「フラッフィー!」
オレは口笛を吹いた。
するとフラッフィーは待っていましたみたいな顔をして出てきた後、ここめちゃくちゃ臭いんだけどみたいな顔をしてきた。君の鼻はまちがっていないよ。
「甘くはなさそうだけど、これ食べられる?」
オレの問いかけに待っていましたと言わんばかりにのたうち回っている消えかけのトムの実体を飲み込んだ。その後に「あれ? これ本当に人間だった? カロリーゼロ?」と訴えかけてきた。
やっぱりそこにある日記帳をどうにかしないと彼を葬ることはできないっぽい。それに日記とオレの契約も解いてしまわないと。そう思っているとオレが持っていた杖が一年振りにナイフに変わった。確かに全く魔法が使える気がしない今、杖よりナイフの方が使い勝手はいい。
ためしにオレは日記を開いてナイフを突き刺した。これで契約解除できればラッキー程度の軽い気持ちで。
するとオレの左手から腕に電流が走った。そして黒煙があがった。
契約が切れた、なんとなくわかった。これで振り出しに戻った。
「フラッフィー、悪いがこれも食べてくれ。たぶんおいしい」
フラッフィーが「それは嘘だ、絶対甘くないって」って言っているのを無視して日記をフラッフィーの口元に投げた。反射でフラッフィーは日記を口に入れ、仕方なさそうに咀嚼した。
フラッフィーの口の中でゾッとする悲鳴が響いた。今日はフラッフィーにかわいそうなことをしたな。鼻も耳も舌もおかしくなったらどうしよう。ただその悲鳴もフラッフィーの喉が動いた瞬間に消えた。そしてフラッフィーは早々に影に戻ってしまった。「あとで角砂糖三つちょうだいね」って言いながら。
全て終わった。
あとは地上に帰るだけ。
そう思った瞬間今まで忘れていた苦痛が再び襲いかかってきた。腕も痛いし頭も痛い、気持ちも悪いし、視界が霞む。しばらく力なく横たわっていると肩を何度か叩かれた。
「ブラック聞こえるか、返事をしろ」
「……はい」
「今からお前を運ぶ。暴れたら落とすからな」
そう言ったあとスネイプ教授はオレを担ぎ上げた。いくら魔法を使っているからって動きづらいだろう。
「ぅえっ……くっはぁ」
オレが必死に胃がひっくり返るのを我慢して教授の背中に乗っている間に全員が秘密の部屋の扉まえに集合していた。
「みなさん本当によくやりました。私がミスター・ポッターとミスター・マルフォイを上に送り届けますのでフリットウィック教授はあの大馬鹿者を拘束してください。スネイプ教授はミスター・ブラックを頼みます」
フリットウィックは任せてくださいと言わんばかりにロックハート教授に巻き付いている縄をきつく縛っている。そして当人は大声で自分の無実を主張している。
「私は彼に騙されていただけなのです!! ブラックが継承者だからそれを一緒に捕まえに行こうと言われたのです! そして案内された場所がここだったのです」
「そうしたらなぜワシらに杖を向けたんじゃ」
「それはっ……彼に操られていたんです!」
「はぁ、真実薬の在庫はありますのでご心配なく。それよりもミスター・ブラックが限界に達する前に医務室に運び込んだ方がいいかと」
「ルーク大丈夫?」
ハリーの問いかけにオレはこう返したかった。「君の方こそバジリスクの毒は大丈夫だったのか? あとドラコは?」って。ただオレの口からでた言葉はこれだけだった。
「……こ……バ…リ……だいじょ…だった? あ……ドラ……」
「無理して喋らないでいいよ。僕は大丈夫。石を無理やり飲み込ませられた以外には、ちょっと牙が腕を貫通しかけたくらいだよ。不死鳥のおかげで傷は塞がったし。それに僕たちが助け出したマルフォイも口の中が激まずなこと以外はピンピンしているよ。君が心配することは自分の体だけだ」
さすがハリー、オレの親友。オレが言いたいことを全て理解してくれたっぽい。ドラコもこっちに駆け寄ってきてなぜか泣いている。
「教授っルークは大丈夫なんですよね?! 死んじゃったりしないですよね?!」
「ドラコ落ち着け。こいつはこんなことでは死なない。ただ疲れた赤子のように熱があがっているだけだ」
ドラコオレのことを勝手に殺そうとするなよ。まだピンピン、いやたしかにピンピンではないが死にはしないさ。そして赤子ってなんだ赤子って。
そこまでの記憶ははっきりあったが目を瞑った瞬間に意識が落ちたのだろう。心地よい眠りについた。