オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、カボチャパイの制裁から逃れる

 

 着いた駅は無人。あたりはもちろん真っ暗。特筆することがあるとすれば、その駅には大きな赤い列車が止まっていた。

 

「これに乗りなさい。8時間したらキングスクロス駅に、もう8時間したらホグズミード駅に到着する。くれぐれも列車内では大人しくしているように」

「あー、アルバス。オレ今聞き間違えた気がするんですけど……この駅の名前は?」

「ホグズミード駅じゃ」

「で、到着駅は?」

「ホグズミード駅じゃ」

「ホグズミード駅は世界に何個あるんですか?」

「一つじゃのう」

「オーケーオーケー。つまりオレ、明日の夕方にここにいればいいってこと。違いますか?」

「そうとも言えるのう」

「っなにが悲しくてこんな真夜中に出発駅と終着駅が同じ列車に一人で乗らなくちゃいけないんですか!」

「一人だけ列車に乗らないのはかわいそうだと思ったおいぼれの気遣いじゃ」

「その気遣いをもう一段階ギア上げて、明日の昼キングスクロス駅に姿現ししてくれればよかったでしょう」

「ほう、それは盲点じゃった。そろそろ列車が出発するようじゃぞ、はやく乗りなさい」

 

 このサンタクロース頭おかしいんじゃないか? 盲点ってなんだ盲点って、こんなことビリーでもわかるぞ。いやそれはビリーに失礼だ。

 

「ルーク、お主はいつになったらわしのことをサンタクロースだと思わなくなるのじゃ……」

 

 ちがう、今悲しんでいいのはオレだ。アルバスじゃない。これから約20時間の無意味な列車の旅が待ってるオレの方がサンタクロースより圧倒的に惨めだ。

 

 汽笛がなって徐々に列車が動き始めた。

 

「次会うときは式典じゃ。楽しみにしておるぞ。くれぐれも途中下──」

 

 煙の音に消されて何を言ってるのか聞こえなかったがまぁいい。

 

 ただ今の時刻は23:30。もう良い子は寝る時間だ。ただ、オレは幸運なことに良い子ではない。誰もいない自由な未知の空間。やることと言えば探検だろう。

 

 そうと決まればオレは先頭車両から準にコンパートメントを一つ一つ開けていく。

 

「本当に誰もいないや。なのにライトは全車両ついてるってすごいな、あっ窓開くんだ。梯子あるじゃ──っうわ」

「車内販売よ。何かいりませんか?」

「わーお。マダム、客がオレしかいないのに車内販売なんてご苦労様です。ただ悪いんですがまだお腹が空いていないんです」

「そうなんですね。窓を閉めお席にお座りください」

「あー、窓開けるの禁止ってこと?」

「お座りください」

「オレちょっとしたスパイスになることを探してるだけなんです。見逃してくれません?」

「お座りください」

 

 優しそうだった車内販売のおばあさんはいつのまにか片手にバチバチ音を鳴らしているカボチャパイらしきものを握り、片手は剣になっていた。片手に剣だけでもびっくりなのに、片手()剣だ。

 

「安全のためです。何人たりとも途中下車させません。150年以上一人も途中下車させていないんです。そして危ない喧嘩もすべて解決してきました。それが私の使命です」

「わお、いい信念ですね。じゃあこのコンパートメントでゆっくり寝ることにします。それでオーケー?」

 

 車内販売を装ったとんでも魔女はオレが着席したのを確認して音もなくどこかに去っていってしまった。

 

 なんて怖いとこなんだ魔法界って。あの魔女カボチャパイを投げつけて斬りかかってくる一歩手前だったぞ。

 

 仕方なくオレはソファーに横になり朝日が昇るまで睡眠をとることにした。

 

 

 目が覚めると太陽の光が差し込んできた。時刻は7時。いい夢をみた。

 

 カボチャパイを投げてくる魔女と列車の上でチェイスする夢だ。あのカボチャパイ夢の中じゃガチで大爆発してたけど、流石にリアルはあんな大爆発しないよな? してもポンッくらいだよな??

 

 しばらくあの魔女のターゲットにならないようにオレはコンパートメントの中で覚えた魔法を使って遊んでいた。もちろん爆発魔法も使ってないし切断魔法も使ってない。

 

 邪魔避け呪文を壁にかけて、タオルをボールに変身させひとりバレーボールを楽しんでいただけだ。

 

 最初は楽しかったがだんだん飽きてくる。今ならU15風船バレー大会でいい成績が残せそうだってくらいやりこんだ。

 

 オレは思った。昨夜の魔女こそ最大の暇つぶし用スパイスだったんじゃないかって。

 

 昨日は初見で何もできなかったが、今日は戦いの準備をしてから挑めばいい。別に途中下車する気もないが、自分がどれだけやれるのかを知るいい機会だ。そう考え、オレは計画を練り始めた。

 

 まずは外梯子が一番近い窓を開ける。たぶんすぐに飛んでくるんだろう。魔女からの剣と魔法の攻撃を避けながら、列車の上に這い上がる。そこで夢同様決闘だ。相手は剣を持っていることから近距離戦重視に違いない。相手のホームにならないように、遠距離攻撃を重視する。たぶん相手は盾魔法をつかってくるはずだから、直接攻撃はきかない。となると、物理攻撃が最適。水を出す呪文はなんだっけ、アグアメンティか。まず一発目は反射魔法と組み合わせて後ろから水をかけよう。そして次は冷却魔法だ。ここらへんはうまくやらないと人殺しになりかねないから足を狙おう。それで魔女が動けなくなったらコンパートメントに戻って何事もなかったかのようにすればいい。これを駅に着くまでにできたらミッションクリアだ。いや。たかが冷却魔法で凍らせただけであの魔女は静止するのか? もっと計画を練ってから挑まないと3分ももたないかもしれない。なんてったって150年前の先輩までは全員負けているらしいし。

 

 ああでもない、こうでもないと羊皮紙をインクで埋めている間に列車がとまった。つまりこの計画は来年に持ち越しってことだ。よかった。

 

 

 今の時刻は10:30。

 

 車内に人がどんどん乗り込んできてガヤガヤとしてきた。ただ皆友人連れらしく、独り身のオレのコンパートメントに入ってくる人は誰もいなかった。

 

 このままだと本当になんのために列車に乗ったのかわからなくなりそうだ。一回ここを出てどこか別のコンパートメントを探そうかと思ったときだった。

 

「あの、ここって空いてる? 2人入れるといいんだけど」

 

 丸メガネの少年と赤毛の少年がドア越しにそう尋ねてきた。

 

「空いてるよ。どうぞ」

「助かった、どこも友達同士でいっぱいなんだ。君もう着替えたのかい? 早いね」

「ざっと10時間前にね」

「おもしろいこと言うね。僕ロン、ロン・ウィーズリー」

 ロンはオレの発言をジョークと受け取ったらしい。オレもジョークであればって何回も思った。

 

「オレはルーク。そっちは?」

「僕はハリー・ポッター」

 

 順に自己紹介をしていった。なんとびっくり、初手からハリー・ポッターと関われるとは。やっぱ#BFFって遺伝する感じ?

 

「君本当にハリー・ポッターなの? フレッドとジョージがふざけてるのかと思った。じゃ、その、君本当にあるの? ほら額の」

 ロンはいかにも興味ありますみたいな顔してハリーに尋ねた。お前ら知り合いじゃなかったのかよ。

 

 ハリーはこくりと頷き前髪を上げた。そこには稲妻マークの傷が浮かび上がっていた。ロンが「ワーオ」って言うからオレも一緒に「ワーオ」って言っておいた。なんだ? 傷に刺青的なかっこよさでもあるのか?

 

「それじゃこれが『例のあの人の』?」

「うん、でも僕何にも覚えていないんだ」

 

 あー違った、つまり額の傷は例のあの人をぶちのめした時にできた傷ってことか。オレも耳裏あたりに稲妻入れようかな? とか思ったのが間違いだった。ただのハリー・ポッターファンになるとこだった危ない。

 

「君たちの家族は魔法使い?」

 ハリーは自分のことより俺たちのことが気になるらしい。

 

「ああ、うん。そうだと思う。ママのはとこは会計士だけど……その人のことは話題にしないんだ。ルークは?」

 ナイスバトンパスだロン。

 

「たぶんね。両親と会ったことないからよくわかんないけど。でもハリーの両親の友達だったって聞いたよ」

「僕の両親のこと知ってるの?」

 ハリーが食いついてきた。

 

「んー、オレ自分の両親のことも知らないから……ごめん」

 ロンごめん、オレせっかくのパスを台無しにした。

 

「いや、いいんだ。ルークも親戚とかと過ごしてた感じ? 僕はマグルのおじさんとおばさんといとこと住んでたんだけど最悪だったよ。僕も魔法使いの兄弟がロンのとこみたいに3人いればいいのに」

 その言葉にロンが反応した。

 

「いや、兄弟は5人。ホグワーツに入学するのは僕で6人目。期待に沿うのは大変だよ。一番上のビルは首席だったし、二番目のチャーリーはクィディッチのキャプテンだった。三番目のパーシーは今監督生、フレッドとジョージは悪戯ばっかりやってるけど成績はいいんだ。僕はみんなに期待されてるけどただ同じことをやるだけじゃたいしたことないって思われちゃうし……それに5人も上にいるから新品がもらえないんだ」

 

 この話をきっかけにハリーとロンはいかに自分がひどい生活を送っているかを語り合い慰め合っていた。オレもしっかり頷いておいた。ついでにホワイト子供の家の話をしたら2人に大あたりだったようだ。なんとも惨めな同盟がオレたちの間で築かれようとしていた。

 

 話は初対面なのに盛り上がりいつの間にか12時すぎになっていた。通路でガチャガチャと大きな音をたて扉が開いた。オレはもちろん固まった。

 

「車内販売よ。何かいりませんか?」

 

 魔女と超目があった気がした。こっわ。

 

 思わず唾を飲み込んでいる間にハリーが両腕いっぱいのお菓子を抱えて通路から戻ってきた。どかっと全部開いているソファーの部分に置き、カボチャパイにかじりついている。すでに魔女はお隣のコンパートメントに行ったようだ。

 

「変なこと聞くようで悪いんだけど、そのカボチャパイ食べている間に爆発したりしない?」

「カボチャパイは仕掛けなしの普通だよ?」

 ロンが不思議そうな顔をして答えてくれた。ハリーも食べながら「なんもなさそうだよ」なんて言ってる。やっぱりあれは夢か。

 

「ロンもルークも一緒に食べよ? 流石に僕一人じゃ食べきれないや」

「いいの?」

 そう言うや否やロンが目を輝かせてお菓子の包みを開け始めた。

 

 オレはロンがもってきたコンビーフのサンドイッチをもらうことにした。甘いものより塩が効いているほうが好みだ。甘いもんはお茶会で食べすぎた。

 

 ハリーが蛙チョコからカードを取り出した。そこにはオレが毎日見ていた顔があった。

 

「この人がダンブルドアなんだ!」

 ハリーが声を上げた。

 

「ダンブルドアのこと知らなかったの? なんてこった」

 ロンは他の蛙チョコを開けながら驚いている。

 

「アルバス・ダンブルドア:現在ホグワーツ校長。近代の魔法使いの中で最も偉大な魔法使いと言われている。とくに闇の魔法使いグリンデルバルドを破ったこと、ドラゴンの血液の12種類の利用法の発見、ニコラスフラメルとの錬金術の共同研究などで有名。趣味は室内楽とボウリング。だってさ」

 ハリーが丁寧にカードの裏面を読み上げてくれた。

 

「それに追加するとしたら甘党だってことだ。レモンキャンディーが好きなのは覚えておいて損はない」

「いなくなっちゃったよ!!」

 ハリーはオレの余分な知識の付け足しよりも写真が動いたことに驚いたようだ。

 

「そりゃ一日中その中にいるはずないよ。またしばらくしたら帰ってくるさ」ロンが言った。

「でもね、マグルの世界ではずーっと写真のなかにいるよ」

「変なの!」

 ロンは驚いているようだった。ハリーが「だよね?」みたいな顔をしてきたので頷いておいた。オレは最初こっちの写真を見て最新テクノロジーだと頭が判断したのを思い出して頭痛がした。

 

 菓子パが一段落しそうな頃ドアがノックされた。車内販売2回目にしては回転が早すぎるよな??

 

 言わなくてもわかっているだろうが決してオレは窓を開けてもなければ、剣の装備もしてない。

 

 オレの脳裏にはあの恐ろしい笑顔が浮かび上がっている。

 

 オレは深呼吸をしながら動くドアを凝視した。

 

 もちろん言っておくがビビっているわけではない。

 

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