オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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おまけ

ハリー視点

 

「あっ──」

 

 思わず声を上げた。ルークに口を押さえられたけど出てしまった音は戻ることはなかった。僕の声はホールに響き渡った。

 

 それと同時にカツンカツンという音と二人の影。一人はよく知る人だった。

 

「やあ、ルーク。随分と来るのが遅いと思ったら……招かれざる客たちも連れてきたってわけか──まあ僕も一人連れてきたから人のことを言えないか。ロックハート教授、あなたはあっちでさっき言った通り邪魔者の始末をしていただけますか。ルークはこっちだ」

 

 ルークに話しかけている美青年は僕たちのことはお構いなしだ。その代わりにロックハートは一度もまともな呪文をはなったことのないあの杖を僕たちの方に向けておしゃべりを始めた。

 

「とうとう私の出番ですね。わかっていますとも、あなたたちくらいお茶の子さいさいですよ。強化された体と魔法もありますし、それに私には強い味方がいますから。私のチャーミングなスマイルと同じくらいの力のある目を持つ蛇がね。ああもちろん私のスマイルは女性限定ですが」

 

 ルークはトムと言われる青年に操られ一人隔離された。それを衝動的に追いかけようとするのをマクゴナガル先生に後ろからローブを引っ張られて止められた。

 

「先生! ルークが!」

 

 マクゴナガル教授は首を横に振るだけだった。ただ仕方なく首を降っているって感じではなく、むしろ彼なら大丈夫とでもいうかのようなそんな雰囲気だ。

 

 そんな中でもロックハートは授業の時と同じ明るい声色でベラベラと口を動かし続けている。今度は床に倒れているマルフォイに杖を向けながら。

 

「次の本のタイトルは『バジリスクとリスクたっぷりな日常』とかいいですね。野生のバジリスクがホグワーツを襲撃、何人かの教職員や生徒が命を落としたりショックで記憶を失う被害がでるも、バジリスクを手懐け一連の事件を収束させた一人の最高な教師。いい記事だ」

 

 ロックハートは何を言っているんだ?

 

「先生! どうして?!」

「ああ、最近本のネタに困っていてね。大きな手柄を手に入れるには広い情報網と緻密な計画が必要なんだよ。彼はそれを無償でくれる。しかも責任は彼もち。割のいい仕事だろう? ああ、動かないで。痛い目には遭いたくないだろう?」

「ギルデロイ、これは最後の忠告です。今すぐその杖を捨てなさい。今すぐにです」

「それはできないお願いですなマクゴナガル教授。あなた方がおとなしく記憶を失ってくれそうにないことは大いに予想ができていましたよ。卿、とっておきのを出してください

 

 ロックハートは青年にあれを出すように伝えた。そして青年は僕にだけわかる言葉でこう言った。

 

『スリザリンよ。ホグワーツ四強の中で最強のものよ。われに話したまえ──』

 

 石像が動き奥の方からずるずると這い出してきた。そちら側を見ないようにしながら僕は後ずさった。そんな丸腰の僕のことをロックハートはいい獲物だと思ったらしい。

 

「エクスペリアームズ! オブリビエイト、忘れよ!」

 

 そんな呪文が僕めがけて飛んできた。すかさずマクゴナガル教授によって跳ね返された。ただ残念なことに僕の杖はどこかに吹き飛んだ。

 

「ギルデロイ! 生徒になんてことを!!」

 

 マクゴナガル教授は僕の前に立ちロックハート教授と決闘している。彼女が苦戦しているのは僕を守っていることとロックハート側にバジリスクがいることもあるんだろうけど……ロックハートは授業で見せていた姿よりは確実に強かった。

 

 杖を見つけようと杖が飛んでいったであろう方を見ると視界の端で黒いなにかが動いた。

 

 その正体は敵ではなくただのマルフォイを端に避難させようとしているスネイプだった。

 

 そして今は姿を直視できない方向にいるフリットウィック教授はいつもの高い声で呪文をたぶんバジリスクに向かって唱えている。

 

 僕は……僕は何もしていない。その事実が突きつけられた気がした。

 

 正確に言えば杖なしの僕にできることは邪魔にならないように頑張ることくらいだった。教授たちはそれぞれの役割を全うしている。そしてルークはあの青年を一人で対応している。僕がここにきた意味は扉を開ける、それだけだった。

 

 こんなことは今思うべきことじゃないってのはよくわかっているけど、どうして僕ではなくルークが彼に選ばれたのか。興味を示されたのか。そんなことが僕の嫌な部分に引っかかっている。

 

 彼は僕が『ハリー・ポッター』であることを知らないのかもしれない。もし……もし彼が知っていたんだとしたら僕は取るに足らない、視界にすら入らないような存在だと言われているような気がした。ダンブルドアは去年僕に期待してくれていたのに、僕はただの人だ。優秀でもなんでもない。

 

 戦いの中こんなことを考えていた僕を現実に引き戻したのはこの場にふさわしくない音楽だった。

 

「フォークス……?」

 

 ルークが言っていた気がする。不死鳥は心正しき人には勇気を与え、悪しき人には恐怖を与えると。

 

 今の僕は必死に頑張っている友達に嫉妬して……心正しき人なんかじゃ全くない。

 

 唇を噛み締めている僕に一直線に向かってきたフォークスは、まるで僕を慰めるかのように肩に止まって、頬に温かい体を寄せた。ついでに僕の頭に組み分け帽子を乗せて。

 

 僕は組み分け帽子を手に取った。今帽子に頭の中を覗かれてスリザリンに入れておくべきだったなんて言われてしまうかもしれないことを恐れて。

 

「ポッター! そこは邪魔だ! こっちに来い!」

 

 スネイプに呼ばれた。でもそっちに行ったら僕は気絶したマルフォイと同じ扱いだ。今は色のやばい薬に盛大にむせかけているところを音を立てるなと言わんばかりにスネイプが手でマルフォイの口を覆っているところだけど。

 

 

 僕がここでやるべきことはなんだった? 

 

 僕にしかできないこと。

 

 バジリスクとの会話。

 

『一回話し合おう! もし君が今おとなしくしてくれるのだったら話し合いで解決できると思う!』

『……お主は我が主人でない』

『君の主人は悪い奴だ! 君は騙されているんだよ! もし抵抗をやめてくれたら……3食おいしいネズミが食べられるよ! あーー、デ、デザートのりんごもいる?』

 

 ルークのように交渉しようと思ったらむしろ失敗した。なにがりんごだ。もっといい興味の惹き方があっただろ僕。

 

『お主が持っているそれは宿敵グリフィンドールの剣……それに現主がくれる糖蜜パイの方がネズミよりうまい』

 

 しまった。こいつ僕と同じで意外と甘党だった。交渉は決裂。そして話している間に近づきすぎた。終わった。後ろから先生方の叫びが聴こえる。逃げろだとかなんとか。

 

 ん?

 

 剣ってなんだ?

 

 僕は自分が持っている帽子をちらっと見た。そこには光り輝く何かが見えた。そして急に帽子が重くなった。

 

 迷わず剣を引き抜いた。そして一振りするとバジリスクは少し慄いた気がした。

 

「よく時間を稼いだポッター! 作戦は覚えているな! 嗅覚を潰すんじゃ!」

 

 フリットウィック教授の合図で僕はルークからもらった香水をバジリスクに向かって投げた。フリットウィック教授がその瓶を爆発させる。その瞬間フォークスがバジリスクの方に向かい何かをした。バジリスクは大きな悲鳴をあげた。ついでに僕は盛大にむせた。今回ルークが僕にくれたのはシナモンとかのスパイスの香りだったらしい。

 

「不死鳥が片目を潰した! 一度下がれポッター! ミネルヴァは愚か者を決して逃さぬよう」

「もちろんです。色々聞かなければ気が済みませんまったく」

 

 泡をかぶったスネイプ教授が指揮を取り始めた。マクゴナガル教授も自分の頭に泡をかぶった後僕にもそれを施してくれた。つまり僕の鼻は終わりをむかえるには至らなかった。

 

 僕は再び剣を構えた。

 

 バジリスクの目はフォークスとバジリスクに馬乗りしているフリットウィック教授によって潰された。粘膜以外に外部攻撃の効かないバジリスクには僕の持っている剣が有効だ、そう思った。

 

 これは僕がやる仕事。やり遂げないと。

 

『おいのろま! こっちだ! 耳は聞こえてるんだろ!』

 

 バジリスクは僕を音を頼りに追ってくる。わざと足音を立ててドラコから離れるように真反対に走った。

 

 壁によじのぼり、口を開けて襲いかかってくるバジリスクに剣を振りかぶった。フリットウィック教授がバジリスクを何回もしばっているおかげでまだ動きが読める。

 

 バジリスクが僕を捕らえた。全体重を乗せて剣の鍔まで届くほど深く口蓋にずぶりと突き刺した。自分のことなんてその時は全く考えていなかった。

 

 あまりの痛さ、いや熱さに僕は叫んだ。フリットウィック教授がバジリスクの背中からこちらに駆け寄ってきて牙をバジリスクから切り離した。

 

 僕の腕にはしっかりと白い牙が刺さっている。

 

「牙を抜けば失血、抜かなければ毒が……」

 

 僕は死ぬんだろうな。フリットウィック教授がなにやら僕の腕に魔法を色々とかけている。

 

「っハリー!!!!」

 

 遠くで友の声がする。彼も勝ったのか。さすがだなルークは。

 

 意識を飛ばしそうなその時、僕の周りをフォークスが一回りした後僕の怪我に寄り添って水滴を垂らした。

 

「不死鳥の涙……セブルス! 応急処置は施した、あとはお前しかわからん!」

「ポッター口を開けろ」

 

 僕が自分の意思で開ける前に無理やり手を突っ込まれ硬い何かを飲み込ませられた。

 

「不死鳥の涙は強力な癒しの効果があると言われている。そしてベゾアール石は大抵の毒に対する解毒剤になる。これを機に猪突猛進なその頭に叩き込んでおけ」

 

 そんな小言を一言も漏らさずに聞けるくらいには回復していた。

 

「ブラックを見てきます。こっちは頼みました」

 

 そう言ってスネイプは小走りでむかい、死にかけのルークを連れて帰ってきた。その姿だけ見るとスネイプはいい大人だった。普段は絶対にそんなことはないが。

 

「みなさん本当によくやりました。私がミスター・ポッターとミスター・マルフォイを上に送り届けますのでフリットウィック教授はあの大馬鹿者を拘束してください。スネイプ教授はミスター・ブラックを頼みます」

 

 フリットウィックは任せてくださいと言わんばかりにロックハート教授に巻き付いている縄をきつく縛っている。そして当人は大声で自分の無実を主張している。

 

「私は彼に騙されていただけなのです!! ブラックが継承者だからそれを一緒に捕まえに行こうと言われたのです! そして案内された場所がここだったのです」

「それならなぜワシらに杖を向けたんじゃ」

「それはっ……彼に操られていたんです!」

「はぁ、真実薬の在庫はありますのでご心配なく。それよりもミスター・ブラックが限界に達する前に医務室に運び込んだ方がいいかと」

「ルーク大丈夫?」

 

 僕の問いかけにルークはほぼ口パクで返してきた。

 

「……こ……バ…リ……だいじょ…だった? あ……ドラ……」

「無理して喋らないでいいよ。僕は大丈夫。石を無理やり飲み込ませられた以外には、ちょっと牙が腕を貫通しかけたくらいだよ。不死鳥のおかげで傷は塞がったし。それに僕たちが助け出したマルフォイも口の中が激まずなこと以外はピンピンしているよ。君が心配することは自分の体だけだ」

 

 

 医務室にたどり着いた。ベッドに横たわるルークを取り囲むようにとりあえず配置された。

 

「お前が息子を巻き込んだのか?!」

 

 ゆっくり席に座る暇もなかった。胸ぐらをルシウス氏に掴まれ問いただされる。なんでだよ! むしろマルフォイを助けてやったのが僕たちだ! もう少し感謝とかそう言うのないのかよ!

 

「ルシウス、少し落ち着け。息子が巻き込まれたのは気の毒じゃが、ハリーに当たるのはお門違いじゃよ」

 

 ダンブルドアがそう言うと、ルシウス氏は忌々しげな顔をしながらドラコの隣に戻った。周りの騒がしさに気がついたのかルークが目を覚ました。

 

「よくぞ我が息子を助けてくれた! 感謝する。だがなぜドラコがこんなことに巻き込まれたんだ?! ホグワーツの管理体制はどうなっている!」

「……あなたが校長を追い出さなければまだましな状況だったでしょうに」

 

 マクゴナガル教授の直球な皮肉はルシウス氏には届いていなさそうだった。ルークは僕も知らなかった事件の全貌を語り始めた。トム・リドルがヴォルデモートだったって本当?!

 

「トム・リドル……日記……まさかあの小娘の……クソっなぜ……」

 

 ルシウス氏は顔をより青白くさせた。僕の記憶を辿ると、ダイアゴン横丁の書店で確かにルシウス氏が何かをジニーの大鍋に滑らせていたような気がする。身から出た錆だな。

 

 ルークが話し終わった後、必然的に僕にも話す機会が訪れた。僕は、自分の嫌な部分を除いて思ったことを全て話した。ロックハートがどんどん青ざめていくのはとっても滑稽だった。

 

「そうか、そうか。ギルデロイとは一度きちんと話す必要がありそうじゃな。過去のことも含め」

「校長、真実薬ならばここにあります」

「ごくろうセブルス。魔法省のものに連絡をせんとのう」

 

 スネイプ教授は真実薬推しらしい。

 

「それにしても……ハリーではなくルークに興味を示すとは……」

「校長! ミスター・ブラックの面会時間はとうに過ぎましたよ! 彼には十分な睡眠が必要です。あと例の食べ物も」

 

 そして僕はダンブルドア校長に誘われて校長室に向かった。

 

「まだ話し足りんことがあるじゃろう?」

 

 僕の心を見透かしているみたいだった。暖炉のそばの椅子に腰をかけたダンブルドアは僕にも座ることを要求した。

 

「まずは、ハリー、お礼を言おう。君はわしが思っていたよりもわしを信頼してくれていたようじゃ。それでなければ不死鳥が君のところに辿り着くことはなかったじゃろう」

「でも、結局僕はみんなのお荷物だった」

「ほう、なんでそう思ったのじゃ?」

「教授たちは、それぞれの役割を全うしていたし……ルークは一対一でトム・リドルと対峙してた。でも僕は……そんなルークが羨ましいって、なんであいつがって思っちゃったんです。グリフィンドールっぽくない、意地悪な僕があの時僕の頭をいっぱいにした」

「ふむ、君は正真正銘グリフィンドールじゃよ」

「でも、組み分け帽子は僕をスリザリンに入れようか迷ってた。僕が頼んだからグリフィンドールに入っただけで」

「その通り、それだからこそ君はグリフィンドールなんじゃ。君が何者かを示すのは持っている能力ではなく自分がどのような選択をするかということなんじゃよ」

 

 僕は呆然として、身動きもせず椅子にすわっていた。

 

「君がグリフィンドールに属する証拠が欲しいのなら、これをよく見てみなさい」

 

 渡されたのはバジリスクの血に染まった銀の剣。剣には文字が書いてあった。

 

「これは真のグリフィンドール生だけが帽子から取り出してみせることができるのじゃよ」

 

 そして、ダンブルドアは小さな声でこう言った。僕に聞かせようとしたのか、それとも声に出てしまったのかはわからないけど。

 

「ハリー、ルークとは共に高めあうことはあれ、決して対立してはならぬ。君と彼が対立した時、最悪魔法界は破滅の道を辿るじゃろう」

「ルークになにかあるんですか?」

「本人が知らぬことをおいぼれが勝手に吹聴するわけにはいかんからのう」

 

 

「さて、ロックハート教授。わしはちと間違いを犯したようじゃ。何があったか教えてくれるかのう?」

「私は、トム・リドルという少年にそそのかされました。彼はいつからか、放課後私を訪ねによく来ました。私が書いた自信作たちについて熱心に質問をされ、私の文才を褒めてくれました。そして、彼は私に提案をしてきました。もっと有名にならないか? 読者が一部の女性だけでいいのか? 魔法の能力を向上したくないのか? と。私は、私は惹かれました。学生時代の成績は一部を除き平凡。上には優秀な先輩。輝けるのならばなんでもいいと当時はそう思っていたのです。彼は私にさまざまな呪文を教えてくれました。学生時代は気づかなかったのですが、どうやら私は精神系の魔法が忘却術を含め得意であると。精神系の魔法は学校ではあまり教わらないのでね、気づかないのは当たり前ですが。禁じられた魔法にも適性がありました。それを彼は気づかせてくれたんです! 彼は自分がスリザリンの後継者だと言いました。もし、彼に従えばその後継者の座を譲ると言われたのです。それは私にとってとても魅力的な提案でした。断る理由もなく、彼と契約をしました。この右腕に彼との繋がりが見えるでしょう? 彼は私を仕事仲間として大層リスペクトしてくれました。あなた方とちがってね」

「もう良い。トム・リドルは弱い者に付け入るのが昔からうまかった。特に、後が無い君には隙がたくさんあったようじゃ。お主は自分のしてきた過ちを過ちと思っていないのかね?」

「過ち? 人の功績を奪ったことですか。でも、それはどこでも起こっていることではないですか? 賢く生きることの何が悪いのでしょうか?」

「幼少期の歪みを大人になってから直す、難しいことじゃ。わしはお主にチャンスを与えたつもりじゃったが逆効果じゃったようじゃ。すまなかった」

 

 

こんな話があったとかなかったとか。

 




なかなか更新できずにすみません。学生の本分とパソコンの不調により更新滞っておりました。
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