オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
ルーク、アメリカかぶれになる
俺は旅行の支度をしていた。今年の夏は初の国外旅行だ。
「俺イギリスを出ていくなんて初めてなんですけど、どうやって行くんですか? 飛行機?」
「そこが悩みどころじゃ。飛行機は雷が落ちるじゃろうし、船は荒波に揉まれ遭難する可能性が高い……姿現しで行くのが1番安全じゃろう。ただ、残念なことにわしは仕事がたんまり詰まっておる。この間の大きすぎる不祥事のせいでのう。他の者に頼むことも考えたんじゃが、優秀な魔法使いでないと……あー、イギリスとアメリカの距離が開きすぎておるから……バラける心配も捨て切れん。そうじゃ、ビリーと共に行きなさい。渡航届は魔法省に出しておいたから違法にはならんはずじゃ心配せんでもいい、ちと航路がちがうのは融通をきかせてくれるはずじゃ。1番いいのはフラッフィーなんじゃがまだそれは早いじゃろう」
なんで起こる確率が低い状況ばかりを想定しているんだよサンタ。そして渡航届のガバすごくないか?
「まずアメリカに行ったら君の父親に会いなさい。そうしたらシリウスは君が行くべきところに連れて行ってくれるはずじゃ」
「父親? 会えるんですか?」
「問題ない。イギリスに入国することを15年ほど禁止されておるだけじゃ」
「じゃあどうしてもっと早く会わせてくれなかったんですか? 父さんも俺を孤児院に預けるんじゃなくて俺もアメリカに移住していれば」
「幼い君は孤児院を出ること自体が危険じゃった。今は君も大きくなり……やはりトラブル気質であることもこの2年で十分証明された。専門の教育の必要性もな。」
俺はどうやらアメリカでなにか学ばなければいけないっぽい。
「杖は必ず持ち歩くように。もちろん
アルバスには報告していない金属製の杖もしっかり把握されていたようだ。
俺はトランクに着替えやら野球帽やらをぶち込んだ。
「では楽しく学びの多い休暇にするように。あと安全第一じゃ」
「はい、アルバス」
アルバスに別れを告げたあと俺はビリーに話しかけられた。
「ルーク様準備ができましたでありますか?」
「ああ、問題ないよ。移動中は手を繋げばいい感じ?」
「いいえとんでもない! ビリーがルーク様のお洋服をすこし持っているだけで大丈夫なのです!」
「オーケーいつでもいいよ。ただバラけるのだけはごめんだ」
「承りましたっ!」
バチンという大きな音と共に視界が数回回った。
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夏休み:パーシージャクソン迷宮の戦い(これは時系列が気になる方向けの情報です。無視していただいて構いません)
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この夏、俺はありえないほど密度の高い日々を過ごした。まずニューヨークに着いた後寄り道の末、父さんと出会い少し話をした。そしてバイクでハーフ訓練所っていうところに連れて行かれてアテナのコテージでしばらく過ごした。エチオピアドラゴンとか巨大サソリとデスマッチをして、予言を聞いたあと新たな仲間とともに迷宮ラビュリントスへ足を踏み入れなんだかんだアメリカ横断に成功した。そしてその後は弓、ロッククライミング、ペガサスの乗馬、旗とり合戦と色々やった。そして訓練所から出てまた父さんに会い、ビリーと共にイギリスに戻った。
父さんと過ごせた時間は結局1日にも満たなかったが楽しかった。特にバイクは最高だった。
父さんが「またすぐ会いに行く。そっちに処理しなくちゃいけない用事もできた」と最後の最後に言ってきたのは来年以降は謹慎が解除されるからって意味だと信じたいところだ。雰囲気的に今すぐにでも姿現ししそうな雰囲気だったが。
アメリカではいろんな理由で誰とも連絡が取れなかったが、アルバスの家に戻ってくるとたくさんの手紙が届いていた。ロンとジニーからはエジプト旅行に行くという手紙が、ハーマイオニーからはフランスにいるという手紙がきていた。ハリーへの誕生日プレゼントも無事届けたというフクロウ便サービスからの連絡もきていた。
そして今年から取り始めた日刊預言者新聞は大きく二つの見出しで世間を騒がせているようだ。
『アズカバンの囚人半数が脱獄、管理体制に見直しを』『シリウス・ブラック、仮釈放中に行方くらます』
やっぱりか。父さん何やってるんだよ。
まずはじめのニュースによると逃げ出しに成功したのは闇の帝王派だった数名と我らがよく知る元ホグワーツ教員ロックハート、そして残りは雑多10数名と書かれていた。吸魂鬼の出産期を狙った犯行だったとか書かれている。まあそれはいい。
問題は俺の父さんについて書かれたニュースだ。
「先日魔法省からシリウス・ブラックが逃亡中であると正式な場で公表された。コーネリウス・ファッジ大臣は今朝『我々はブラックの捕獲に全力であたっている、万が一にも12年前のような事件はおこさせない』と語り魔法界に対し平静を保つよう呼びかけた。
『そもそもシリウス・ブラックがイギリス魔法界から飛ばされた理由を読者はご存知だろうか? 彼は13人のマグルの殺傷及び器物損壊、などなど複数の罪に問われている。彼は真っ昼間にマグルの前で堂々と魔法を使いある人物を攻撃(捕縛)しようとした。しかし不幸なことに(彼にとって不幸か否かは定かではないが)周りのマグルごとその人物を吹き飛ばしたのだ。闇祓いの調査によると彼の杖からは攻撃性の高い魔法はいくらか検出されたものの、爆発力のある魔法は一切検出されなかったそうだ。国立魔法研究所の所長の意見では『攻撃魔法と盾魔法がぶつかったことにより予測不可能な爆発が生じたのだろう』とのことである。最終的に彼は15年の魔法使用禁止かつ国外追放を命じられた。アズカバン行きにならなかった理由としては彼の友人であるポッター家を襲った犯人である『例のあの人』の部下と思われる人物を追ったために起こった事件ということに情状酌量の余地はあるといった判決を下したからだ。しかしかつての学生時代の知り合いから話を聞くと彼は『傲慢』『短絡的』『直情的』『血も涙もない』など人として問題が多かったこともまた事実だ。このような狂気を腹の中に飼う人間が街中を彷徨いていると考えるとより一層外出時は身を守るための準備が必要となるだろう』
ふう。身内のことを悪く言われるのは心にくるものがある。俺はその新聞を八つ裂きにした後炎で燃やした。
◆
新学期の準備がそろそろ必要になってくる。
ロンとハーマイオニーはダイアゴン横丁に行く日をわざわざ手紙で伝えてくれた。そこにはハリーが家出して今漏れ鍋にいることも書かれていた。
「アルバス、この日以降漏れ鍋に行っても?」
「そうじゃのう……去年で通学路の結界の確認もできたことじゃし、ミストは使えるようになったのかな?」
「しっかりと訓練所で教えてもらいましたよ」
「そうしたら変装用に帽子を深くかぶることが条件じゃ、メガネをするのも良い。今の君はシリウスに顔が似てきたから万が一があったら大変じゃ。吸魂鬼が見間違えるかもしれんし通行人も思うところがあるじゃろう」
俺は条件付きで漏れ鍋に一泊し、その後キングクロス駅に行く許可をもらった。
俺も父さんも確かに目立つ顔だし今のご時世顔を隠すという条件は仕方がない。
ホグワーツ用の荷造りを終え、翌朝俺は漏れ鍋に飛んだ。そこにはハーマイオニーとウィーズリーファミリーがいた。大勢でいて目立っていたからすぐわかった。俺はロンの死角から忍び寄り後ろから声をかけた。
「久しぶり」
ロンは小さく悲鳴を上げたあと飛び跳ねた。そして俺の顔を見て笑顔になった。
「ルーク! びっくりしたー、会いたかったよ。アメリカで日焼けした?」
「ああ、少しね。ロンもエジプトって感じの日焼けしてるな」
「ルーク! あなたまた身長が伸びたのね。もう教科書とかは買ったかしら? まだなら今から一緒にいきましょ!」
「ハーマイオニーも元気そうだね。今年はまだ教科書を手に入れてないから一緒にまわろうか。ところでハリーは?」
「ハリーはここにいるはずだったんだけど今外出中みたいなんだ。でも今夜ルークも泊まるんだろ? その時までには会えるさ」
俺たちは教科書購入からスタートし、最後にロンの杖を買った。教科書は怪物本が特殊だったが一度脅したら従順になったから問題ない。ただロンは怪物本になめられているっぽく何度か腕を噛まれかけていた。
昼食前漏れ鍋に買った教科書類を置いてもう一度買い出しに行こうという話になり戻ってきた。すると元気なさげなハリーを見つけた。俺たちはもちろん駆け寄って声をかけた。
「ハリー! ハリー!」
俺たちの声に気がついたのかハリーがこちらに向かって歩いてきた。
「やっと会えた! 僕たち『漏れ鍋』に朝着いたんだけどもう出ちゃったって言われたんだ。書店も行ったし他にも色々見たんだけど──」
「僕学校に必要なものは全部先週買ってしまったんだ。『漏れ鍋』に泊まっているってどうして知ったの?」
ロンはウィーズリー氏が教えてくれたと言った。ハリーがマージおばさんを膨らませてしまったことの詳細を尋ねた。ハリーは苦虫を噛み潰したような顔をしながら今まであったことを話してくれた。はっきり言ってマージおばさんはクレイジーだ。
「退学処分どころじゃなくて僕逮捕されるかと思った。どうして僕を見逃したのか君のパパはご存知ないかな?」
「たぶん君だからだ。だろ? 有名なハリーポッター、いつものことさ。でも気になるなら今晩パパに直接聞いてみろよ。僕たちも『漏れ鍋』に泊まるんだ!だから明日は僕たちとキングズクロス駅に行ける! 今回はハーマイオニーもルークも一緒だ」
「ああ、今回は二人が間違えて自動車に乗らないように確認しておくつもりだよ」
俺がそういうと男子二名はばつが悪そうな顔をした。そしてハリーが話題を変えようと俺に質問を投げかけた。
「ルーク、君なんでサングラスをして帽子をかぶっているの? アメリカ流?」
「そうそう紫外線はやっかいだからね」
「はぁ……ルーク、その冗談はハリーに通じないわよ。ハリーはルークのお父さんのニュース見なかったの? マグルの方にまで魔法ってことは誤魔化されながらも報道はされていたわ。今顔を出したらそれこそ面倒ごとが起こるに違いないわ」
「そうそう。まあ今は大人しくしているのが吉ってことだ」
「……えっ、なんのこと?」
それからハーマイオニーがペットが欲しいと言い出し、ロンのスキャバーズも痩せて元気がなさそうで一度見てもらわないとということでみんなでペットショップに向かった。
俺はフラッフィーにいいおもちゃがないかを探していたのだが、裏でプチパニックが起こっていた。
「コラっ! クルックシャンクス、ダメっ!」
店員が叫び猫が走る。そしてロンに体当たりをした後猫はスキャバーズを咥えて逃走を試みた。ただロンの必死な抵抗によりスキャバーズは無事だった。
「あれはいったいなんだったんだ?」
ロンの問いかけに隣にいたハリーが答えた。
「巨大な猫か小さな虎かどっちかだ」
そして驚いたことにその猫はハーマイオニーによって購入された。ロンは「君、あの怪物を買ったのか?」なんて言い、ハーマイオニーに「素敵な子でしょう?」と言い直させられていた。
しばらくハーマイオニーとロンのペット論争を俺とハリーは苦笑いしながら聞いていた。
宿に帰るとウィーズリーファミリーも勢揃いだった。
「ルーク! 久しぶり! あのね……魔法薬学でわからないところがあるんだけど聞いてもいいかしら?」
俺がYESという前に双子の発言が挟まってきた。
「いつからジニー嬢は勉強熱心になったんだい?」
「勉強の質問ならうちには首席がいるんだ、そいつにすればいいだろう?」
二人からの言葉にジニーは顔を赤くした後にこう言った。
「でも、ルークが1番聞きやすいの……ダメかな?」
そう言われたら断る理由も全くない。
「ああ、どこがわからないのかな?」
ポケットから羊皮紙と羽ペンを取り出し机に行くよう促した。双子は興味を無くしたのかハリーやパーシーの方に行ってしまった。
「アメリカはどうだった? あとあなた筋トレでも始めたの?」
「楽しかったよ。あっちではアスレチックとか弓道とか乗馬とかそういうのをいっぱいやったんだ。俺筋肉ついたと思う?」
「すごく健康的で昔もかっこよかったけど今はもっと素敵」
「あはは、照れるな。ジニーは? エジプトどうだった?」
「すっごく楽しかったわ。双子がパーシーをピラミッドに閉じ込めようとしたこと以外は順調だったわ」
「ははっ、二人ならやりかねないね」
幸せだ。
「あのさ、ジニー。俺……『二人ともご飯よ!』なんでもない。ご飯だってさ、行かないと」
「えっ、ああそうね。今日はきっとご馳走よ!」
夕食は宿の亭主が10人分のフルコースを作ってくれた。
俺はいつも通り、皿を持って暖炉に行きローストビーフひとかけらを投げ入れた。
「ハデスとアテナに」
「あら、その不思議な儀式久しぶりに見たわね。そういえばあなたのお母さんもやっていたわ」
「ああ、これ母方の儀式なんです。夏に教わって」
「私たちがやっても焦げ臭くなるのに、あなたたちがやると食べ物のいい匂いがするのよね。ほんと不思議」
夏にアメリカに行って急に両親に近くなったな。
「パパ、明日はどうやってキングズ・クロス駅に行くの?」
「魔法省が車を2台ほど用意してくれる」
はっきりした理由は言わなかったが、たぶんハリーを守るためだとかそんなんだろう。闇の陣営がアズカバンからそろって逃げた今、真っ先に狙われるのは彼だろうから。
キングズクロス駅に向かう朝、ハリーの機嫌がすこぶる悪い。いや、正確には俺に対する態度がすこぶる悪かった。
なんて言ったらいいんだろうか、まるで俺に親でも殺されたみたいな感じだ。ちょっと不謹慎だったか。俺のさわやかなおはようのあいさつも、入れ忘れの教科書を指摘した時も『あぁ』みたいなそんなリアクションだ。スネイプ教授でさえあいさつくらいは返してくれるって言ったら事態の深刻さは伝わるかもしれない。ハーマイオニーやロンに聞いても肩をすくめられるだけだった。
俺の予想では昨日の夕飯までは特になんともなかったから、夜中か夢で誰かになにか言われたんだろう。まあ俺も触らぬ神に祟りなしってことでできるだけ距離を置いている。余談だが、本当に神は触らないほうがいい。全部後始末を子供たちにやらせようとしてとても面倒だ。