オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
俺は同室のメンバーが誰だかすっかり忘れていた。というかそこまで気にしていなかった。
「おはよう、ロン。君が俺より早起きなんて珍しいな」
「おはようルーク。なんだか目が冴えちゃってさ。そうだ、君は昨日のコンパートメント、ジニーと二人だったんだろ? 大丈夫だった?」
「もちろん君の妹には手を出してないよ」
「違うよ! いやそれも気になるけど、あれだよあれ! 吸・魂・鬼」
「ああ、ジニーはちょっと貧血っぽかったけど大丈夫さ。チョコレートをあの防衛術の教授にもらった」
「君は?」
「あー、俺? 俺はあいつらに懐かれたよ。俺からしたら庭小人と変わんないさ」
「何言ってんだよルーク。強がるなって」
「あはは、もし本当に手懐けたら君のペットにいる? お下がりじゃない君だけのペットだ」
「そんなペットをもらうくらいならスキャバーズの方がよっぽどマシだね。君本当に変なのをペットにしたがるよな、フラッフィーといいさあ」
「いや別に俺吸魂鬼のことペットにしたいとか言ってないだろ?」
ロンとの会話は俺のストレスを緩和してくれた。友達から無視されない、ジョークに笑ってくれるっていう小さな幸せに酔って、周りが見えていなかったんだ。ロンがあちゃー、やっちゃったみたいな顔をしている。正直後ろを振り返りたくなかった。
「吸魂鬼の話そんなに楽しい?」
「ハリー、ごめん。気遣いがたりなかった」
「どう? ハリーとはどうなった?」
「ごめん。俺がやらかした。主に吸魂鬼関係で」
「もう、話が余計面倒なことになったわ。あとでコンパートメントでハリーから聞いたことを教えてあげるからそれまでは何もやらかさないでくれる?」
「OK、先祖に誓うよ」
大広間につくとスリザリンの席が妙に沸いていた。俺たちが通り過ぎるとドラコは気絶する真似をした。そしてドッとあがった笑い声。
「知らんぷりよハリー。無視して。相手にするだけ損……」
「あーらポッター! ポッター! 吸魂鬼がくるわよ。ほら、ポッター! うぅぅぅぅ!」
ハリーはグリフィンドールの席にドサッと座った。俺はそれを確認した後、パーキンソンとドラコの間で囁いた。
「パーキンソン。食事中にそれは少し品がないんじゃないか? ドラコも注意してあげるのが優しさだ」
「あっ、ブラック。そうね人前でやることではなかったわ」
去年からなぜかスリザリン内での特にドラコ取り巻きからの株があがった俺の言葉はスムーズに受け入れられた。おかしいだろと思うが使えるものは使わせてもらおう。これも今朝の己の罪への罪滅ぼしだ。
「昨日の夜はあんなに気どっちゃいられなかったようだぜ。列車の中で吸魂鬼が近づいてきた時、僕たちのコンパートメントに駆け込んできたんだ。なあ、フレッド?」
「ほとんどお漏らししかかってたぜ」
「あいつら恐ろしいよな。あの吸魂鬼ってやつらは。なんだか体の内側を凍らせるんだ。そうだろ?」
席に戻るとフレッドとジョージはハリーを励ますようにそう言っているところだった。
「だけど、気を失ったりしなかっただろ?」
ハリーが低い声でそう聞いた。やっぱり機嫌は良くなさそうだ。
「吸魂鬼は幸福を好む。ハリーはその時列車で1番幸福だった、それだけの理由だと思うよ。気にしない方がいい」
「でも! そう言う君は吸魂鬼を前になんともなかったそうじゃないか!」
「あーうん、まあ。それは、俺が絶望と憂鬱にすこし慣れているから……とかかな?」
どこでその話を聞いたのだろうか? 俺が通路に出たのを知るのはジニー以外にはいなかっ──いたわ。ルーピン教授がチョコレートを配りに行った時に漏れたのか。それは俺から冥界の、闇の匂いがするからじゃないか? なんて言えないから誤魔化すことになる。ただ嘘をつくのもなんだか違う気がしてそういうふうな返事になってしまった。ハーマイオニーがやれやれとでも言うように首を振ったあたり俺の返答はよろしくなかったっぽい。空回りってこういうことだ。
「ま、なんであれクィディッチの第一戦のあとでマルフォイがどのくらい幸せでいられるか拝見しようじゃないか」
ハリーはその言葉に少し気を良くしたようでソーセージと焼きトマトに手を伸ばしていた。
◆
占い学は北棟のてっぺんだから早めに移動しないといけない。それに同時刻には『マグル学』『数占い学』も開かれているのだから大変だ。
「ハーマイオニー、とりあえず占い学が最初だっけ?」
「そうよ。時間割どおりね」
急な螺旋階段を登り、ついた教室は俺の気を滅入らせた。
「暑いし、香りがきついし、掃除も行き届いていないときた。どこの神託もこうなのか? 教師がミイラじゃないことを願うよ」
「先生はどこだい?」
ロンの問いかけの答えは暗がりの中から聞こえてきた。
「ようこそ。この現世でとうとう皆さまにお目にかかれて嬉しゅうございますわ」
よかったここの預言者はミイラじゃなかった。
「おかけなさい。あたくしのこどもたちよ。さあ」
先生の言葉でおずおずと肘掛け椅子に這い上がる生徒もあれば、丸椅子に身を埋めるものもあった。
「占い学へようこそ。あたくしがトレローニー教授です。皆様がお選びになったのは魔法の学問の中でも1番難しいものですわ。はじめにお断りしておきましょう。『眼力』の備わっていない方にはあたくしがお教えできることはほとんどありませんのよ。いかに優れた魔法使いや魔女であろうとも派手な音や匂いに優れ雲隠れ術にたけていても未来の神秘の帳を見透かすことはできません。今学期はお茶の葉を読むことに専念します、来学期は手相学に進みましょう」
授業の説明かと思いきや突然生徒を指した。
「そこのあなた、赤毛の男子にお気をつけあそばせ。そしてあなた、おばあさまはお元気?」
「元気だと思います」
「あたくしがあなたの立場だったら、そんなに自信ありげな言い方は出来ませんことよ」
ネビルは自信なさげに答えたのにそんなことを言われたらより不安だろう。ちなみにラベンダーは少しロンから離れるように座り直した。
「夏の学期には水晶玉に進みます、ただし炎の呪いを乗り切れたらでございますよ。つまり不幸なことに、二月にこのクラスはタチの悪い流感で中断されることになりあたくし自身も声がでなくなりますの。イースターにはクラスの誰かと永久にお別れすることになりますわ」
嫌な予言を残したあとに教授は二人組になって棚から紅茶のカップをとって教授のもとで紅茶を注いでもらうことになった。それを指示通りに飲み干せば何かがわかるらしい。
「どう? 俺のカップには何が浮かび上がった?」
「そうね、これはフラッフィーかしら? あとは、三叉……いえ、二叉槍ね。あとは骸骨。ちょっとあなたのカップパンクすぎない?」
「君のは雲とハートかな? 恋愛でトラブル? でも数年後の話だ」
トレローニー教授はちょうど近くにいたハーマイオニーとロンからカップを奪い取った。つまり俺のとハリーの。
「隼……ミスター・ポッターは恐ろしい敵をお持ちね」
「でも誰でもそんなこと知っているわ」
「棍棒……攻撃。おや、これは幸せなカップではないですわね……それに髑髏」
「僕、それは山高帽だと思ったけど」
「行く手に危険が。それに……これはかわいそうな子、これはあなたにはグリムが取り憑いています」
ハリーのカップは最悪らしい。みんなも立ち上がりハリーのカップを覗き込む。ハリーが聞き返すとトレローニー教授はご丁寧に説明してくださった。
「グリム、墓場に取り憑く巨大な亡霊犬です! かわいそうな子。これは不吉の予兆。大凶の前兆、死の予告です!」
「グリムには見えないと思うわ。犬の意味は良い友を得るよ」
「……残念ながらあなたにはほとんどオーラが感じられませんのよ」
「うーん、こうやって片目を閉じたらグリムに見えなくもないけど……こう見たらロバだ」
シェーマスの一言にハリーが切れた。
「僕が死ぬか死なないかさっさと決めたらいいだろう!」
ハリーの大声に誰も彼を直視しようとしなかった。
「気を取り直して、もう一つ見てみま──今年のカップは不吉なものばかり……ケルベロスに二又槍どちらも魂や死の象徴。そして骸骨。あなた、なぜ生きているのかしら?」
トレローニー教授の問いかけにクラスはまた静まり返った。生きている人間になぜ死んでいないのかなんて聞くのは不謹慎すぎる。
ただ内心俺は動揺していた。やっぱり神託とか予言ってバカに出来ないな。でも、今回の結果は当たり前と言えば当たり前だ。
紅茶に浮かび上がったのは『主張の強い俺のことが
「あなたは死との親和性は非常に高い。そしてそんなあなたは孤独への道を辿るでしょう」
「ハーマイオニー、君の目は曇っていないみたい。茶葉読みは完璧だ」
クラスで二人も死ぬと宣言されどんよりとしてしまった。
「今日の授業はここまでにいたしましょう」
ただ残念ながら、俺もハーマイオニーも沈んでいる場合じゃなかった。次のマグル学にむけて砂時計をひっくり返さないといけないのだから。
◆
「やっと二人になれた。ハーマイオニー、ハリーはなんで俺を避けてたんだ?」
俺は直球でハーマイオニーにそう聞いた。マグル学が始まる前の数分で概要が知りたかった。
「それが、ハリーはあなたのお父さんのことをウィーズリー氏に聞いたみたいなの。その、あなたのお父さんのミスで両親が死んだと。で、その彼が最近アメリカから出たでしょ? 親友なのに罪を償わずに出てくるなんて何がしたいんだみたいな感じね。それが納得いかないみたい。それと、単純にあなたに親がいたことが羨ましかったんじゃないかしら。あとは去年から溜まった聞く限りくだらない嫉妬よ。つまり八つ当たりね。男の子って本当に面倒臭いわね」
「じゃあ俺ができることは何もない?」
「私はそう思うわ。気まずいだろうけれど普通に過ごしていればいいと思う。世の中の情勢的に外出も制限されているし、吸魂鬼の件で噂されている上に今日の占い学。しばらくあんな態度かもしれないわね。でもクィディッチかなにかで戻るんじゃないかしら。それか何か彼が活躍する場所でもあればね」
「はあ、ハリーは自分のいいところを知らなすぎるんだ。肩書きで言えば最年少シーカー。正義感が強くて賢者の石を守り切ったしバジリスクも倒した。蛇語も話せる。成績もいいし、蜘蛛も大丈夫」
「それが霞むくらいあなたが出来すぎていることが問題なのよ」
「俺? 飛行機もだめ、海もだめ、もちろん蜘蛛もだめ。虚勢を張ることだけがうまい、体調とかの自己管理すらできないただのガキだよ。守りたいものを守りきる力もない。その点ハリーは──」
「あなたの弱さはその自己肯定感が低いことじゃないかしら?」
「それは間違いだハーマイオニー。俺はプライドが高くて傲慢だよ。自分は弱いと言いつつ強いところしか外に見せたくないんだ」
「あなたも相当面倒な性格しているわね」
「男っていうのはカッコつけたい生き物なんだ」
◆
やっと変身術の授業になった。素直に言うとお腹がすいた。
「お腹すいたな。ロンなんか持ってない? 今なら鰻のゼリー寄せもいける」
「持ってるわけないだろ。まだ朝食を食べて一コマしか経ってないのに成長期かよ。それによくさっきの授業の後で腹が減るな。不安じゃないのか?」
こっちは三コマ受け切ったあとなんだ。それに占いの結果は俺を知っているやつからすれば親戚から好かれているな程度のお話だ。
変身術の授業は動物もどきについての概要だった。俺が昨年身につけた知の結晶。教授が呪文を唱えずに虎猫に変わる姿は実に見事だったがそんなことよりも俺はチキンが食べたい。キッチンに洋梨の鼻をくすぐりに行こうかな。
「まったく、今日はみんなどうしたんですか。別に構いませんが、私の変身がクラスの拍手を浴びなかったのはこれが初めてです」
みんないっせいにハリーと俺を見た。なんだ? 俺なんかやらかしたっけ?
「先生、私たち『占い学』のクラスを受けてきたばかりなんです。お茶の葉を読んで──」
そうか、俺たち『占い学』を受けてきたばかりだったな。ハーマイオニーは正常な感覚をまだ持っているらしい。
「ああ、そういうことですか。今年は一体誰が死ぬことになったのですか?」
ハリーはマクゴナガル教授の問いかけに答えた。
「僕です」
「ちなみに俺はなぜ死んでいないのかと言われました」
マクゴナガル教授はきらりと光る目でハリーを見ていた。
「では、ポッター、そしてブラック、教えておきましょう。シビル・トレローニーは本校に着任してからと言うもの、一年に一人の生徒の死を予言をしてきました。未だ誰一人として死んではいません。死の前兆を予言するのはあの方のお気に入りの流儀なのです。『占い学』というのは魔法の中でも1番不正確な分野の一つです。私があの分野に関しては忍耐強くないことを皆さんに隠すつもりはありません。ポッター、私の見るところあなたは健康そのものです。ですから今日の宿題を免除したりしませんからそのつもりで。ただし、もしあなたが死んだのなら提出しなくても結構です」
「教授! 俺は?」
宿題免除のチャンスに飛びつかない俺ではない。
「話を聞くにあなたは死んでも生き返るでしょうから問題ありません。それとも死んでいる間用の特別課題が必要ですか?」
「いいえ、全然」
ハーマイオニーは噴き出すし、ハリーも少しは気分が軽くなったようだ。こうして変身術の授業は終わり待ちに待った昼食だ。人混みに揉まれながら大広間に向かう。
「ロン、元気出して。マクゴナガル教授のおっしゃったこと聞いたでしょう?」
「ハリー、君どこかで大きな黒い犬を見かけたりしなかった?」
ロンの問いかけにハリーは思い出したかのようにこう答えた。
「見たよ。ダーズリーのとこから逃げてきたあの夜、見た」
「それは、それは良くないよ! 僕の、僕のビリウスおじさんがあれを見たんだ。そしたら24時間後に死んじゃった!」
「ロン、それならハリーは漏れ鍋で死体になっているはずだよ。それに死と仲良しな俺はハリーから死の匂いは感じないよ」
俺の自虐ネタに笑ってくれたのはハーマイオニーだけだった。ジョークって難しいな。
吸魂鬼について(この本編独自の解釈)
彼らはキスによって繁殖し、個体数を増やす。彼らを魔法使いが破壊するのは不可能。なぜなら彼らは不生不死な存在だから。
殺したと思っても実際は地上からいなくなっただけであり、その間はタルタロスに落ちている。そしてしばらくすれば人間と違いまた地上に戻ってくる。ただしハデスやその血を継ぐ子には特権としてそのような存在をタルタロスに送ることはもちろん、永遠の眠りにつかせることも可能である。つまり破壊可能。その力は個人の体力を削ることで成立する。つまり力を使えば疲れる。
モンスターとは
怪物。大概神の血を継ぐハーフが大好物でよく襲ってくる。彼らは死ぬということがなく、体を保持できなくなると灰や煙になってぱっと見死んだように感じるが、実はタルタロス(冥界の一番深いところ)に落ちているだけでいつか復活する。(不生不死)
タルタロス
落ちたら出てくるのは結構大変。扉を見つけ出れたら地上に戻れる。