オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
昼食のあとは魔法生物飼育学、ハグリッドの初授業だ。
空は澄み切った薄鼠色だった。
ロンは俺とハーマイオニーと口を利かないし、ハリーは俺と口を利かない。つまりロンはハリーと、俺はハーマイオニーとセットみたいな感じで禁じられた森の手前のハグリッドの小屋を目指した。
「さあ、急げ。早く来いや! 今日はみんなにいいもんがあるぞ! すごい授業だ! みんな来たか? よーし、ついてこいや!」
ハグリッドのハイテンションに一抹の不安を覚えながら、連れてこられたのは放牧場のようなところ。ハグリッドは柵の周りに集まるよう号令をかけた。
「そーだ。ちゃんと見えるところについたか? じゃあ初めにやるこたあ、教科書を開くこった」
「どうやって? どうやって教科書をあければいいんです?」
ドラコの気取った声だ。確かに閉じるのに苦労した教科書をわざわざ開けたくはない。俺は仕方なく無理やり教科書を開けた。
「だ、だーれも教科書をまだ開けなんだのか? おお、ルークお前さんならできると思ちょった。ん? なんでおまえさんの教科書は震えとるんだ? まあいい。ほら、みんなもやってみろ。こうやって撫ぜりゃー良いいだけだ」
確かに俺の教科書はマナーモードもびっくりなバイブ状態だ。脅すんじゃなくてもっと友好的に開ける方法があったらしい。
「ああ、僕たちなんて愚かだったんだろう!
「黙れ、マルフォイ」
ハリーが静かにそう言った。ハグリッドは初っ端から雰囲気のよくないクラスにうなだれていた。
「えーと、そんじゃ、魔法生物を連れてくる。待っとれよ……」
ハグリッドは弱々しげにそう言って森へと入っていった。その間も続くスリザリンからの不平不満。ハリーはそれに必死に注意している。やっぱり正義感は君が1番だ。
ハグリッドが連れてきた生物を俺は知っている。グリフォンと馬の間に生まれた生物。
「ヒッポグリフだ! 美しかろう、え?」
輝くような毛並み、羽の色はそれぞれ違い灰色、赤銅色、褐色、栗毛ととりどりだ。
「まんず、イッチ番先にヒッポグリフについて知らなければなんねえことは、こいつらは誇り高い、すぐ怒るぞ、ヒッポグリフは。絶対侮辱してはなんねえ。そんなことをしてみろ、それがお前さんたちの最後のしわざになるかもしんねえぞ」
儀式はこうだ。そばまで歩きゆっくりとお辞儀をする。ヒッポグリフもお辞儀をしたらさわってもいいと言う合図。もしお辞儀を返されなかったら素早く離れること。
「よーし誰が一番乗りだ?」
こたえる代わりに、ほとんどの生徒がますます後退りした。もちろん俺も。黒い犬は好きだが馬は苦手だ。
「僕、やるよ」 ハリーが名乗り出た。すぐ後ろではあっと息を呑む音がした。ラベンダーとパーバティが囁いている。
「ああぁー、だめよハリー。お茶の葉を忘れたの!」
ハリーは二人の言葉を無視して放牧場の柵を乗り越えた。
「えらいぞ、ハリー! よーし、そんじゃバックビークとやってみよう」
ハリーは恐る恐るだが勇敢に、ハグリッドの指示に従って儀式を行った。バックビークはすぐにとは言わないがお辞儀をした。つまり成功だ。俺は周りと一緒に拍手した。
「よーし、そんじゃ、ハリーこいつはおまえさんを背中に乗せてくれると思うぞ。そっから登れ。羽を引っこ抜かんように気をつけろ」
ハリーがしっかりと乗るとハグリッドはバックビークのお尻を叩き、バックビークは大きく羽ばたいた。今こそコリンがいたら最高の一枚が撮れたに違いない。いつのまにか晴れた空を彼らは自由に飛び回っていた。
空に自由があるのは羨ましいものだ。
余談だが、別にハデスがポセイドンやゼウスとずっと仲が悪いってわけではない。
最初は力が強すぎるから3つにわけようってなっただけらしい。ただ、(神と人の)ハーフが絡むとややこしくなる。ハーフを使って別の神が仲違いを起こさせようとしたりとか。いい例はゼウスの大切にしているサンダーボルトがなくなったり、ハデスの兜がなくなったり。そう言うのがあるから俺は冥界以外は気を使って出入りしなくてはいけない。ちょっとそこを統治している神の機嫌がよろしくないと死が待っている。
「よーしと。ほかにやってみたいモンはおるか?」
ハリーの成功に励まされ、俺たちは恐々と放牧場に入った。ハグリッドは一頭ずつヒッポグリフを解き放ち、生徒たちはそれぞれ近くにいたヒッポグリフにお辞儀をしている。
「なんだ? お前さんの周りには寄ってこんな……バックビークのとこ行ってこい。あいつが1番賢くて強いんだ」
俺の匂いを嗅いで逃げたのか、彼らが仕えるゼウスやアポロンに気に入られていないからか、馬の親であるポセイドンの息子じゃないからか。まあ全部だろう。磁石のNNのように離れていく。
俺がバークビークの近くに行くとハリーとマルフォイ、そしてクラッブとゴイルがいた。
「簡単じゃあないか。ポッターにもできるんだ、簡単に違いないと思ったよ……おまえ、全然危険なんかじゃないなあ? そうだろう? 醜いデカブツの野獣くん」
彼の言葉にバックビークは盛大に反応した。鋼色の鉤爪が反射する。こういう時に俺の体は勝手に動いてしまう。
ドラコが悲鳴にも近い叫び声をあげた。
青銅のナイフの峰を構えて追撃しようとする鋭い爪としゃがみ込んだドラコの間に滑り込んだ。一瞬ピリッと脚が痛んだ気がした。滑り込んだ時に押し退けたドラコは後ろに吹っ飛んだようだ。癇癪の止まらないバックビークを癒す力は俺にはなく、ドラコや他の生徒との間にいることで壁になることに徹した。
本来、今の俺にこの生物を永遠の眠りにつかせることは難しくない。ただそれを望むものはいない。初めての授業で魔法生物学の授業を魔法薬学の授業に変える気はないし、祖父の仕事を増やすわけにもいかない。
挑発して鬼ごっこに持ち込むか、なんて次の一手を考えていたが、一人で対応する必要はなかったようだ。今の少しの隙でハグリッドはバックビークに後ろから首輪をかけることに成功していた。ナイフへの負荷が一気に軽くなり、鉤爪から物理的距離ができた。もがくバックビークはハグリッドに任せ後ろを振り向く。
「僕、死んじゃう! 見てよ! あいつ、僕を殺した!」
「死にゃあせん!」
ドラコのローブは切り裂かれ、血が滲み出ている。そして草の上で身を丸めていた。クラス中はパニックに陥っていた。
「ドラコ、聞こえるか! 怪我は腕だけか!!」
気道、呼吸、循環の確保を確認し、首をコクコクと頷くドラコの患部を観察したあと、俺はタオルを取り出し、患部を押さえつけてカウントをする。
「ハグリッド、ドラコを今すぐ医務室に。直接圧迫による止血済み、出血によるショックありってマダムに伝えてくれ」
「この子を連れ出さにゃ、誰か手伝ってくれ──」
ハーマイオニーが走っていってゲートをあけて、ハグリッドはそこを駆け足で通って城に向かった。
「すぐにクビにすべきよ!」パンジーが泣きながら言った。
「マルフォイが悪いんだ!」ディーンがきっぱりそう言う。
俺たちはそんなパニックな生徒たちを見送り、最後に柵をしめた。
「ふぅ……ハリー、悪いんだけど肩を貸してくれない?」
「どういう……ルーク、君。その血は?」
「アドレナリンが切れたら意外と痛かったってやつだ」
3人は俺の左脚に赤い線が入っていることに気がついたようだ。
「あなたマルフォイを庇った時!!!! 『エピスキー癒えよ』まただわ……あなた相手にこの魔法効かないのよ!!」
ハーマイオニーに言われてやっと自分も魔法使いだったことを思い出した。ドラコにはエピスキーをかけるべきだった。
「ハーマイオニー落ち着いて。部屋に戻ったら俺に効く薬があるんだ。そこまで歩くのを手伝ってほしい」
「なんで黙ってたのルーク」
ハリーが俺の肩を支えながらそう尋ねてきた。
「せっかく君がハグリッドの授業を成功させようとしてたのに、結果怪我人が二人なんて事実が残ってほしくないだろ?」
「いや、まあたしかにハグリッドの授業は成功してほしいけど……僕君のそういうところ大嫌いだ」
「は?」
「今ケンカしている場合じゃ──「言わせてもらうけど、僕は君のことが大っ嫌いだ! なんでもできるくせにそれを驕らないところも、他人を優先して自分の希望は最後まで黙っているところも、僕が君を勝手に避けて、列車では仲間はずれにしたのに、完全に僕が悪いのに気を遣っていつも通り接してくるところも、僕の噂がたたないように裏で手を回してくれていたことも、秘密主義なところもだ!」」
ハリーはそう爆発した。俺はそれに対してなりふり構わず答えた。
「ははっ。そうだよ、君が言うとおり俺は最後に自分の意見を通すために様子を見て戦略を練るし、君と早く仲を戻せる最短ルートを走ろうとする。使えるものはなんでも使う。普段の人当たりのいい性格だって、面倒な性格を隠す隠れ蓑でしかないさ。俺は……君が、いや君たちのことが大好きなんだ。だからこの関係を守るためには俺はズルくなるし、人の顔色を読んで八方美人だってやる。君たちが喜ぶことをやりたいし、一緒にバカやれればなんでもいいんだ。四人で楽しく過ごせるならな」
そう言い切った瞬間ハリーは爆笑した。それにつられてかロンとハーマイオニーも笑いだす。
「そんな熱烈な告白君にされるとは思わなかったよ。でも、君って僕たちのこと本当に大好きなんだな」
「ルークは一人だと暴走するもんな。ハーマイオニーが襲われた去年なんか最悪だったし」
「ロン、それは……忘れてくれ」
「僕、君に嫉妬してた。いや、今もしてる。それに僕の両親を死に追いやった君の親を僕は好きになれなさそうだ」
「ああ」
そこらへんの真偽は俺にとってどうでもいい。父親が嫌われようが知ったこっちゃない。まあ俺の父親はたぶんハリーのこと大好きだろうけどな。
「だけど、君はそれでも僕を好きでいてくれるんだろ?」
「そうだな」
「じゃあ悩んでいるのが馬鹿らしいや。それに僕君より魔法生物学は得意みたいだし」
「なんだよそれ」
ハリーは何か満足したらしい。スッキリした顔をしていた。
「男の子同士の会話は済んだかしら? 早くルークを運び込まないと貧血になるわよ。ルークの顔色が最悪」
「あっ、忘れてた! はやく運ぼう! ハーマイオニーいい呪文しらない?」
「この教科書を担架に変えることはできるわ」
「まって! 俺担架になんか乗りたくない! 恥ずいって!」
俺は問答無用に担架に乗せられてグリフィンドール塔まで運ばれた。幸いなことに授業が早く終わったおかげで見られることはなかったけど。ロンとハリーにニマニマされながら運ばれたのは黒歴史だ。
ネクタルを傷口にぶっかけて、アンブロシアを食べて回復した。血は完璧にとまり、傷口も塞がっていくのを見てロンが「すげえ」なんて言ってる。でも君たち、ハナハッカもこんな感じらしいぞ。
「マルフォイは大丈夫だと思う?」
「マダム・ポンフリーなら大丈夫だよ。俺の体は魔法が効きにくいから怪我を魔法薬で治すことはあんまないから証明はできないけど」
「それは大丈夫。僕はロックハートに骨を抜かれたけど生えてきたから」
「だけど、ハグリッドの最初の授業であんなことが起こったのはまずいよな?」
「マルフォイのやつ、やっぱり引っ掻き回してくれたよな……」
夕食に向かいながら俺たちはハグリッドの今後について机上の空論をして、夕食後も話はしないものの後ろ髪は引かれていた。談話室で俺は数占いの課題を、三人は変身術の宿題をやっていたが三人とも集中力が途切れていて進まない。ちなみに俺はマクゴナガル教授の宿題はもうさっさと終わらせた。予習って大事だ。
「ハグリッドの小屋明かりがついてる。急げば会えるかも、まだ時間も早いし」
「それはどうかしら」
ハーマイオニーがゆっくりそういいながらハリーを見た。
「僕、校内を歩くのは許されてるんだ! 脱獄犯たちもここではまだ吸魂鬼を出し抜いてないだろ?」 ハリーはムキになっていた。
それに言い返せる人はいなかったので俺たちはこっそり抜け出し、ハグリッドの小屋に向かった。扉をたたくとうめくような覇気のない声。
「1日しかもたねえ先生なんざ、これまでいなかったろう」
「ハグリッド、まさかクビになったんじゃ?!」
「まーだだ。だけんど時間の問題だわ、な。マルフォイのことで……マダム・ポンフリーはできる限りの手当をしたって。でもマルフォイはまだ疼くと言っとる……包帯がぐるぐる巻きでな」
理事にまで知らせがいっているらしい。俺の大嫌いなマルフォイ氏はまたもや何かをしてくるかもしれない。
「ハグリッドはきちんと説明した。それを守らなかった彼の方が悪いわ」
「そうだよ、ハグリッド。心配しないで、僕たちがついているよ」
「ハグリッド、もう十分飲んだと思うわ」
三人でハグリッドを慰めている。
「なあ、会いにきてくれてありがとうよ。ほんとうに俺──おまえたち、いったいなにしちょる!! えっ! ハリー、暗くなってからウロウロしちゃいかん!! おまえさんたちも! こんなご時世にハリーを出しちゃいかん!」
ルークがナイフを持っていると知らない限り、ナイフを使っている姿はぼやけていてうまく認識できていません。なんかよくわからないけどルークがマルフォイを庇ったとのみ認識できます。こういう現象をミストがかかっているといいます。