オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、最悪の目覚め

 

 『充実した日々を過ごしていると時間があっという間』なんて意見は間違っている。

 

 あまりに充実しすぎて『まだ1ヶ月しか経っていないのか、早くいい感じに過ぎてくれ』なんて気分になっている俺が反例だ。

 

 日々積み重なる課題にスネイプ教授との個人授業という名の共同研究と雑用。ついでに1日の許容範囲を超えた授業の数。最初の一週間ですでに理解していたが精神が抉られる。

 

 唯一の救いが俺の苦手な魔法生物飼育学の授業がレタス食い虫にレタスを食わせるだけでいいってことだ。これで知能の高い生物だったらよけい苦しんでいたに違いない。ちなみにレタス食い虫も俺に懐いてくれるとは決して言い難いが。

 

 突然だが俺の友人関係にもいくつかの問題がある。

 

 一つ目に俺とハーマイオニーは毎日全力で生きているせいで疲れ気味だということ。

 

 二つめにハリーはクィディッチに時間をとられてなかなか課題が進んでいないこと。

 

 三つ目にクルックシャンクスがスキャバーズを追いかけ回していること。

 

 これのおかげで俺たちの仲は最悪の3歩手前だ。でもそれをどうにかする気力が誰にもないっていうのがよろしくない。

 

 そんな中でハロウィーンの日がやってきた。つまり3年生以上はホグズミードに行ける日。

 

「ハニーデュークスからお菓子をたくさん持ってきてあげるわ」

「ウン、たーくさん。お菓子の他にも面白そうなのを買ってくるから」

 

 許可証のサインをもらえずに大層落胆しているハリーを見てハーマイオニーとロンは一度休戦協定を結んだようだ。

 

「僕のことは気にしないで、パーティーで会おう。楽しんできて。それにルークもいるし」

「ああ、ただ俺は数時間後にはスネイプ教授のところだけどな。ハリーもくる?」

「それはお断り」

 

 俺たちは玄関ホールまで二人を見送った後大理石の階段を引き返した。グリフィンドール塔に戻るとそこは一年生と二年生で賑わっていた。

 

「ルーク! 今日1日フリー?」

「やあジニー、残念ながら約1時間後にはスネイプ教授とデートだ。なにかあった?」

「よかったら勉強を教えてもらえないかなって思ったんだけど……忙しい?」

「いや、約束の時間までなら問題ないよ。どこでやる?」

「そうね、あそこでもいいかしら?」

 

 指を挿されたのは窓際の一席。ふわふわなソファーが特徴の席に俺は間違って寝ないように覚悟を決めなくちゃいけなかった。

 

 俺たちはそこに移動し教科書を開いた。

 

「ここは、そうだね。よく理解してるね。ああ、そっちは──」

 

 ジニーがつまづいているところを噛み砕いて教えていく。ジニーは頷きながら教科書にメモをとる。

 

「それだけわかっていればこの範囲は問題ないと思うよ。他に聞きたいところは?」

「そうね、時間まではあと30分少し?」

「そうだね。それまでだったら大丈夫だ」

「じゃあ30分後に起こしてあげるわ。ベッドで寝て起きられなくなったら困るでしょ?」

「えっ、いやまあそうだけど」

「ほら目を閉じて、みんな自分達のことで忙しくて見てないわよ」

 

 そう言ってジニーは俺のまぶたの上に指腹を滑らせた。本格的に俺のことを寝かせにかかってきてる。

 

「ふぅ。わかったよ。ありがとう。30分で起こしてくれると助かる」

「OK。寝起きにコーヒーは?」

「すごく嬉しい」

「じゃあ用意しておくわね」

 

 ここまでの記憶しか残っていない。次に覚えているのはジニーに肩を揺すられたところだ。

 

 ただ夢の中で俺はコリンに写真を撮られそうになってそれをジニーが最初は止めてたけど最後にはその写真をもらうことで許可するっていう夢を見た気がするけどこれは本当に夢であってほしい。

 

「おはよう、ルーク。調子は?」

「絶好調ではないけど少しはスッキリしたよ。ただ夜のパーティーの間は寮で寝てようかな」

「あら、残念。好きそうな食べ物適当に持って帰ってくるわね」

「助かる。俺が寝てたらロンかハリーに渡してくれ」

「そうするわ。じゃあいってらっしゃい」

 

 ジニーに扉まで見送ってもらって俺は地下に向かった。今日は教授が作る魔法薬の手伝いらしい。

 

 材料的には一般人が飲んだら悶え苦しむことが予想される毒薬だ。

 

 スネイプ教授は誰かを殺すおつもりだろうか。俺は絶対に飲みたくない。

 

「ルーク・ブラックです。スネイプ教授」

「ああ、入れ。手順は覚えてきたな?」

「一応。ただ教授。これトリカブトなんて入れたら劇物と化しますよ? 何用の薬か見当がつかないのですが」

「そのとおり。貴様が一工程でもミスをすればこれを飲んだものは悶え死ぬだろう。薬の効能は今からこれを飲むものにでも聞けば良い」

 

 スネイプ教授が効能を教えてくれることはなさそうだ。そして俺もこの薬について調べている暇はない。

 

「まずはこれをすり潰すんですよね?」

「大鍋に入れる準備ができたら吾輩を呼ぶように」

 

 スネイプ教授はそう言って違う作業に取り掛かり始めた。大方医務室から依頼された薬を大量生産しているのだろう。俺もそっちがやりたい。こっちは少し間違えただけで殺人を起こしかねないから気を抜けない。

 

 本当にさっき寝てきてよかった。

 

 俺はもくもくと材料を切っていく。去年だったらこんなに貴重な材料たちを目の前にくすねるのを忘れるわけなかったんだが、今年はそのくすねた薬草をどうにかする暇がないせいで構想が構想で終わっていく。

 

 ほらこの材料とか爆発に最適だと思うんだけどね。

 

「終わりました」

「そこに順番通りに入れるように」

 

 指さされたのはすでに煙が出ている大鍋。この薬の材料は俺が切ったやつだけではなかったらしい。

 

「粘性がなくなれば完成だ。それまで等間隔で撹拌するように──」

「三回に一回反時計回しを入れると。わかりました」

「問題があった場合ルーピンが尊い犠牲になるだろう」

「……この薬はルーピン教授が飲むのですね」

「そうだ。これが完成したら持っていくからついてこい。やつの面白い顔が見れるはずだ」

 

 別にルーピン教授の変顔は求めていないがスネイプ教授からしたら決定事項なのだろう。一人頷いてまた別の作業に取り掛かってしまった。

 

 薬が出来上がったのはそれからしばらくした後だった。そして俺の腕は子鹿同然になっていた。

 

「教授。完成しました」

「ゴブレットに一杯入れて持っていく」

 

 明らかに不味そうな青い煙を発した薬。味も材料から予想するに最悪そうだ。アクが強そう。

 

 俺はスネイプ教授の後ろをついてルーピン教授の部屋に向かった。

 

「どうぞ」

 

 入った先にはルーピン教授とハリーがいた。

 

「ああ、セブルス。どうもありがとう……ところでルークがなぜこれを運んでいるんだいセブルス?」

「その薬を作る手伝いをね。彼は母親の才能を受け継いでいる」

「……そうか。ルーク、君はどんな手伝いを?」

「材料の下準備と攪拌を。教授、これトリカブト系ですけど殺される覚悟でもおありで? ベアゾールの石が俺の胸ポケットにありますよ。スネイプ教授のですが」

「ブラック! グリフィンドール10点減点。吾輩の棚から盗み出すとはいい度胸だ。石を出せ」

 

 俺は仕方なく石を教授の手の中に返した。

 

「俺は殺人幇助はしたくないので。で、ルーピン教授これは真っ当な薬なのですか?」

「……ああ、いやなに、問題ない。スネイプ、この薬は君監修なんだよね。彼を私は信頼している」

「結構。一鍋分を煎じた。もっと必要とあらば」

「たぶん、明日また少し飲まないと。セブルスありがとう、ルーク、君も」

「礼には及ばん。ブラック、罰則として追加レポートだ。羊皮紙三巻次の授業まで」

「はぁ?! まじかよ……せめて大鍋磨きとかに……いや、やりますよ」

 

 俺の眠る時間が減った。今日のパーティーはこれに当てるしかないな。ハーマイオニー砂時計三回くらいひっくり返してくれないかな。もう俺の隣に未来の俺がいてもいいから普通に寝たい。

 

 最近の食事はハデスとアテナとついでにヒュプノス(睡眠の神)にもささげてるが効果はない。そもそもそういう目的で神様は動いてくれるわけではないのだけど。

 

 

 俺はパーティーに行く人とすれ違って寮に戻って談話室のソファーに座った。

 

 ああー、ポケットの中身をそろそろ整理しないとまずいななんて思い出して机の上に出せるだけ出した。

 

 教科書数十冊、羊皮紙、香水、手袋に大量の採取瓶、作りかけの地図に杖、あとはいつぞやの走り書きのメモやらフラッフィーのおもちゃとか。

 

 何が言いたいかっていうとぐちゃぐちゃだってこと。

 

「はぁ、とりあえずしまうのは後ででいいかな」

 

 とりあえずやるべき課題を右側に寄せて、上から順にこなすことにした。談話室はパーティーの影響で無人。

 

 ここだけの余談だが俺は睡眠不足の時には食欲がなくなるタイプだ。つまり不健康な体質ともいう。一つ調子が悪くなると全部に蔓延していくこの体質はどうにかしたいものだ。

 

 俺が羊皮紙二巻目に突入した時に女性の悲鳴が聞こえた。

 

 俺は悲鳴が聞こえた方に杖を向けて様子を伺う。

 

「誰だ!」

 

 肖像画から現れたのは俺のよく知る人だった。

 

「は? 父さん?」

「おお、ルーク、我が息子。夏ぶりだな。それにしてもひどい顔だ寝てないのか? それに今はハロウィンの宴じゃないのか?」

「待て待て待て。いや、なんでここにいるの? 俺とうとうおかしくなったか……」

 

 父さんが久しぶりの再会を喜ぶかのようにハグをしてきたが俺の頭の中は宇宙だった。まね妖怪だって言われた方がしっくりくる。

 

「最近課題が多くて睡眠不足なんだ。パーティーに行く暇も気力もなくて。そんなことより父さんがなんでここに?」

「ちょっと探し物があってね。ルーク、ウィーズリー家のネズミを知らないか?」

「……スキャバーズのこと?」

 

 唐突に訪ねてきてネズミの話かよ。まだフラッフィーの話の方が納得できた。いや、そもそも侵入してきて呑気にペットの話している場合か?

 

「たぶんそれだ。そいつに少し用があるんだが……ここにはいないか」

「そうだね。スキャバーズなら今ロンのポケットの中だろうさ。でもたかがネズミのためになんでここに? というかここにいることがバレたらまずいんじゃ?」

「少しあのネズミに気になるところがあってな。それにお前が黙っていてくれたら捕まる心配はない」

「いや、無理やり侵入した時点でアウトでしょ。足としてフラッフィーに乗ってく?」

「息子に心配されるのはなんだか感慨深いな。大丈夫だ、あいつに乗るよりもいい方法がある」

 

 俺は談話室の時計を見た。俺が課題を始めてから結構な時間が経っている。

 

「とりあえずあと数十分でパーティーが終わるんだ。そうしたら人が流れ込んでくるからそれまでに俺の記憶を消してここから逃げるのが得策だよ。ついでに俺を眠らせてくれたら最高」

「これはなんだ?」

 

 俺の話を半分も聞いていなかったらしい父さんは俺が机の上に散らかしたものの中から一つつまみ上げた。

 

「ああ、それは校内の地図。ただ俺が目指している地図みたいに誰がどこにいるかを記すのはまだ難しいんだけどね」

「もしかして忍びの地図を知っているのか?」

「確かそんな名前で呼ばれていたかも。ウィーズリー家の双子がフィルチの部屋からくすねてきたんだ。そんなに有名な地図だったの?」

「いーや、でも知ってる。あれは俺たちが作った地図だ」

「えっ、父さんが?!」

「これも、こうしてこうしたら……ほら足跡が見える」

 

 父さんが二、三回何かの魔法をかけるとあの地図と同じようにどこに誰がいるのかわかるようになった。数年悩み続けた問題がまさか父親の手によって一発で消えるとは……人に頼るって大切だな。

 

「すげぇ……」

「だろ? 尊敬したか?」

「すごく」

「それにしてもこの地図よく作り込んだな……さすが俺たちの息子だ」

「へへっ……ってもうパーティーが終わったみたいだ。父さん俺の記憶を抜いて早く逃げるんだ。そうじゃないとスネイプ教授あたりに尋問されちゃう」

 

 地図上の足跡が大広間から出ようとしている。

 

「スネイプ……スニベルスか、そうだな。また会おう」

「OK。楽しみにしてる」

「愛してる。オブ──」

 

 俺は意識を失った。

 

 

「──きろ! 起きろ! ブラック!」

 

 誰かに肩を激しく揺すられ思わず吐きそうになった。胃がキリキリと痛む。

 

「何があったのですか?!」

 

 揺さぶった正体がスネイプ教授、耳元で大声を出したのがマクゴナガル教授だと分かるのにいくばくかの時間を要した。

 

「……すみません、何がとは?」

「ブラックが侵入した」

「俺ここの寮生ですよね?」

「……そうではありません。あなたのお父様がここにいらっしゃったようです」

「授業参観?」

「お前、何を隠している!」

 

 そう言われても俺は課題をやっていたらいつの間にか寝てしまったのだから何も覚えていない。

 

「お前が手引きしたんだろう! パーティーに行かずここで何をしていた!」

「……教授から出された罰則とポケットの整理を。気づいたら寝てましたけどね」

「まあ、セブルス、またルークに課題を出したのですか? 生徒にやらせる量ではないことはわかっていますよね。そもそも彼が授業を何個とっているかご存知ですか──」

「今そんなことを言っている場合ですかなマクゴナガル教授」

 

 どうやら俺の父親がここにやってきていたらしい。どうせだったら親愛なる息子に挨拶くらいしてくれてもいいのに。ついでに誕生日プレゼントくらい置いて行って欲しいものだ。

 

「どうやら本当に知らないようですな。しかしながら見張っておく必要はありそうだ」

「なんにせよ医務室に連れて行った方がいいでしょう。生徒がこのような顔色であることは問題です」

 

 こうしてスネイプ教授に支えられながら一歩、また一歩と踏み出した。そして医務室に着く頃にはおれは顔中汗だくだった。

 

「何をどうしたらそんなに自分の体を無碍にできるのか全くもってわかりません。さあ早くこちらに」

 

 マダムポンフリーに誘導されて俺は久しぶりのベッドにたどり着いた。最近は机の上で寝てばっかりだったから横になれるありがたさに涙がでた。

 

「何かを思い出したらすぐに言うように。あと課題に締め切りは設けん」

 

 スネイプ教授はそう言って踵を返した。なんだかんだ心配してくれたらしい。

 

 たしかに俺に何か聞き出す時以外の教授は俺の顔を見ようとしないもんな。顔色なんてわかるわけないか。

 

 余談だが大抵の指導は俺の後ろから行われる。

 

 

 学校中でとんでもめんどくさいことになっていることを知ったのは俺が医務室から帰った後だった。

 

 いたるところで『シリウス・ブラック』の話で持ちきりだった。どうやって城に入り込んだだとか、話に尾鰭がついてどんどん大きくなっていた。

 

 ちょっとショックだったのはハーマイオニーに「あなたはお父様みたいに残忍なことはしないって信じてるわ」なんて言われたことだ。俺の中での父さんのイメージに残忍なんて言葉は入っていない。

 

 それと父さんがホグワーツに入り込んだおかげでハリーの行動制限がより強化されるなんて思いもよらなかった。風が吹けば桶屋が儲かるだ。

 

 一応ハリーがマクゴナガル教授からうけた説明だと、ホグワーツという侵入不可能な場所に入ってこれたという事実がある以上入った方法がわかるまでは危険なため教員監督のもとでしか外に行けなくなったと言う。

 

 俺は関係ないが「君のお父さんのせいで僕はクィディッチの練習ができなくなった」ってハリーに文句を言われたのは意味がわからない。

 

 

「授業は十分前に始まったぞ、ポッター。であるからグリフィンドールは10点減点とする。座れ」

 

 ハリーは闇の魔術に対する防衛術に10分遅刻した。しかも最悪なことに代講がスネイプ教授の時に。

 

「ルーピン教授は?」

「今日は気分が悪く、教えられないとのことだ」

「どうなさったのですか?」

 

 ハリーは余程ルーピン教授のことが気になるらしい。余計にスネイプ教授を苛立たせていた。

 

「命に別状はない。グリフィンドールさらに5点減点。もう一度我輩に『座れ』と言わせたら、50点減点する」

 

 スネイプ教授は話を仕切り直し、ルーピン教授の授業進度の遅さについて指摘を始めた。それに対しグリフィンドールの生徒は「ルーピン教授は1番良い先生です」なんて言うものだから教授との対立はより激化した。

 

「甘いことよ。ルーピンは諸君に対して著しく厳しさにかける。我々が今日学ぶのは──人狼である」

 

 指定教科書の最終章。さすがに飛ばし過ぎだろうと思ったが、人狼に関しては少し気になっていることがあるので詳しく教えてもらえるのならありがたい。特に──脱狼薬について。

 

「でも先生、まだ狼人間までやる予定はありません。これからやる予定なのは、ヒンキーパンクで──」

「ミス・グレンジャー。この授業は我輩が教えているのであり、君ではないはずだが。その我輩が諸君に三九四ページをめくるように言っているのだ」

 

 全員渋々教科書を開けた。

 

「人狼と真の狼とをどうやって見分けるかわかるものはいるか?」

「満月以外の日に見れば一目瞭然でしょう。細かい特徴は違えど真夜中に動く動物を見るのは難しいでしょうから」

「誰が答えろと言ったブラック。それに下手な説明だ。部分点もやれん。グリフィンドール5点減点」

 

 そろそろ俺はスネイプ教授から点数を引かれた生徒No.1になれるかもしれない。

 

 いや最初からトップを独走してた。

 

 俺に続いてハーマイオニーが適切な解答を言ってくれたが、スネイプ教授が求めるところではなかったらしい。ハーマイオニーも5点減点されて涙目になっていた。

 

「先生はクラスに質問を出したんじゃないですか。ハーマイオニーが答えを知っていたんだ! 答えてほしくないならなんで質問したんですか?」

 

 ロンの勇気ある発言は少し行き過ぎていたとクラス全員がそう思った。そして教授が口を開きかけると同時に俺はこう言った。

 

「全くその通りだと思いますね」

 

 スネイプ教授は額の皺をより濃くした。

 

「処罰だ。ウィーズリー、そしてブラック。我輩の教え方を批判するのが、再び我輩の耳に入った暁には君たちは非常に後悔することになるだろう」

 

 それからあとは皆物音ひとつ立てず教科書から狼人間に関して写しがきをしていた。

 

 俺以外。

 

「教授、ここでの脱狼薬では変身を抑える効果はないとのことですが、ベラドンナを加えるのはどうでしょうか?」

「ベラドンナはトリカブト系と相性が悪い。また副作用のほうが大きいため不可とされた」

「では味についてはラカンカを入れるのはどうでしょう」

「まだ試した者はいない。そもそも脱狼薬の味について改良するほど需要がない。また薬が高価になれば人狼が買うことは不可能になる」

「なるほど。保障を強化しない限りは脱狼薬を手に入れることができる層が増えないということですね。では薬をより安価に製造する研究は?」

「それはこれらの論文に記載されている。ただしこれらの論文は審査が行われていないため真偽は怪しいものが多い」

 

 そう言って渡された資料の山。この間見たスネイプ教授は幻だったのかもしれない。これを読むってなったら結構な時間がかかるぞ。

 

「今月中に返すように」

 

 やっとベルがなった時、スネイプ教授は出て行こうとする生徒を引き止めた。

 

「各自レポートを書き我輩に提出するよう。人狼の見分け方と殺し方についてだ。羊皮紙二巻き、月曜日の朝までに提出したまえ。このクラスはそろそろ誰かが締めてかからねばならん。ウィーズリー、ブラック残りたまえ。処罰の仕方を決めねばならん」

 

 俺たちの処罰はそれぞれバラバラだった。

 

 ロンは医務室のおまる磨き、俺は下級生クラスのティーチングアシスタントとして数少ない空きコマを魔法薬学の授業にささげることになった。スネイプ教授は俺の時間割をお忘れなのかもしれない。

 

 俺たちはお互いを羨ましがった。俺はおまる磨きの方が楽でいいと思ったし、ロンはTAの方がまだマシだと言う。

 

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