オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
今日はクィディッチデー。グリフィンドール対ハッフルパフ。
天気は大荒れ。
「ルーク、今年こそはちゃんとクィディッチを見に行くわよ。せっかくハリーが頑張っているのだから応援しなくちゃ」
俺が図書室に向かう準備をしているとハーマイオニーに引き止められた。
「ハーマイオニー、君はどこにそんな元気を隠していたんだい? 君がタフなのは知っていたけど俺はこの天気大荒れの中出て行って無事でいられる自信はない」
「でも、あなた一人で校舎に残ってまた変な疑いをかけられるよりマシよ。あなたが一人で行動するとろくなことはないから」
「それは一理あるな。毎度アリバイがなくて容疑者になりかける」
秘密の部屋の継承者からブラック手引きの犯人にまでバラエティ豊かに疑われまくっている。
「ということで行くわよ。最悪試合中寝てても起こさないであげる」
「あんな大歓声かつ今日の天気で寝れるほどのタフさは生憎持ち合わせていないな」
雨は本当に酷かった。競技場に歩いてくる間に傘は飛んだため俺は顔面がびしょ濡れになった。初っ端から最悪のスタートだ。とりあえず簡易的な防水魔法を服にかけていたおかげで全身が冷えることがなかったのは不幸中の幸いだ。
「ルーク、僕にもその魔法かけてくれ。寒くてどうにかなりそうだ」
「いいよ、ほら」
色々やっていたおかげでゲットできた席は競技場の入り口から近い端の席になってしまった。
「ここだとあまり見えないわね」
「たぶん今日はどこでもこの天気だから見えないはずだよ」
「それもそうね」
試合はグリフィンドールが50点リードでタイムアウトを挟み再開した。ハリーはハーマイオニーによってゴーグルに撥水機能をつけてもらったようだ。タイムアウト後の動きが格段に良くなった。
ハリーがスニッチを必死に追いかけているのを目で追っていると嫌な予感がした。
サーッと先ほどまでの歓声が消え、その代わりに広がる沈黙。
ひんやりとした感覚。
聞こえるのは風の音と稲妻の音。
そしてハリーが箒から落下した。
この出来事は一瞬だったのかもしれないが俺には時が止まったかのように感じた。
これらの原因は確実に彼らだろう。
グラウンドに集まる100体前後のディメンター。
俺は動かない観客をかき分け、席を飛び越え無鉄砲にもディメンターの渦に向かった。
別に無策だったわけじゃあない。
俺は彼らよりも強いと言うことをすでに知っている。
ハリーの落下速度が遅くなった。誰かが動いてくれたのだろう。そうしたら俺のできることはできるだけ彼らをハリーから離すことだろうか。
『やあ、君たち久しぶりなところ悪いんだけどついてきてくれるかな? ここには入らない約束を俺の保護者が交えたとおもったんだけど違ったかな?』
伝わっているのかどうかはよくわからなかったがディメンターのほとんどがハリーではなく俺を向いた。
俺はできる限り威厳を失わないように堂々と競技場から出て行った。
ただ不死鳥と狼が俺が引き連れて出て行こうとするのを邪魔するので思わず鉄の杖で追い払ってしまった。よくよく考えたらあの不死鳥はサンタのペットの不死鳥の幽体だった気がする。選択を間違えたかもしれないと俺は競技場を出てすぐ後に青ざめた。
俺はまるで羊飼いのようにディメンターを引き連れ禁じられた森付近まで移動してきた。従順な羊で本当によかった。牧羊犬がいないから一人でも反抗期の羊がいたらどうしようもなかったに違いない。
『あー、君たちは死者と違って食べ物は食べないのか? 対価としてあげられるのはサンドイッチくらいだけど』
ディメンターが首を振るのでたぶんサンドイッチはいらないようだ。まあ100人分ないしむしろちょうどいい。
『そうか、まあお前たちは食べなくても存在できるんだから欲張るな』
少ししょんぼりしたような感じがして同情しそうになったがハリーを気絶させた罪はでかい。
『呼ばれるまでホグワーツには入ってくるんじゃない。いいな?』
こうして彼らは俺の下を離れてどこかにふよふよと飛んでいった。
どうしてこうもまあ人に嫌われそうなやつらに好かれるのかと嘆きながら明かりがついているハグリッドの小屋を訪ねた。
「ハグリッド、俺! ルーク! 髪をふかせてくれ」
「おうおう、入れ入れ。こんなずぶ濡れでどうした? え?」
「いや、クィディッチを見てたんだけど羊が乱入してきてさ。森に帰してやってたんだ」
「よくわからんがそれはご苦労なこった。ほれ、こっちにこい。紅茶をいれちゃる。ところでハリーは今日も勝ったんか?」
「それがわかんないんだよね。俺が見てた時はリードしてたんだけど。ところで、俺の
「ルーク、お前さんの
「……いや、ないよ」
だめだ、レタス食い虫にも嫌われてた。
「なあに、気にすんな。レタス食い虫もすぐ元気になるさ」
「そうだといいけど」
ハグリッドのところで少し温まっていると急に寒くなった。
「ハグリッド、ここ少し寒くない?」
「いんや、そんなことはねーが……暖炉の火の前にくるか?」
「そうするよ」
ハグリッドが近づいてくると俺の額に徐に手を伸ばした。
「お前さん、すっげー熱だ。これはこの雨で風邪をひいたに違いねえ。城まで運んじゃるからまっとれ。今準備するからな」
この寒さは俺しか感じていなかったらしい。
数百体のディメンターを制御するにはたくさんの力を使うらしい。今日で学んだ。
ハグリッドに茶色い毛布でぐるぐる巻にされて担がれた俺はレタス食い虫そっくりな見た目をしている。
今なら仲良くなれるかもしれない。
「うんにゃ、よし、行くぞ。辛かったら寝とればいい」
「ありがと」
◆
目が覚めたらまたもや俺は口にストローを咥えさせられていた。
「全く、今年のベッド占有率もあなたがトップになる未来が見えました。口うるさく言っているつもりですが、あなたは自分の限界というものをよく知るべきです。もしくはそれをよく知っている友達の言うことを聞くとか──」
この週末いっぱい俺の入院はマダムによって決定していた。その間に俺の保護者と、マクゴナガル教授、そしてなぜかスネイプ教授もお見舞いに来た。
「──お前の母親も医務室に運ばれることが多かった」
なんてスネイプ教授がボソッと言ったのが意外だった。
親子ともに迷惑をかけて申し訳ない。ただ自分の限界は限界が来てから把握することが多いんだ。どうしようもない。
「──お前の母親はこれが好物だった」
そう言って渡してきたのはココアだった。前回ココアをくれた時も彼なりの気遣いだったようだ。態度と行動が一致していないからわからなかった。
「ありがとうございます。おいしいです」
「そうか。早く回復しろ。やることはたくさんある」
アルバスにはディメンターへの魔法界の対処法をみっちり座学で詰め込まれた。そしてディメンターを操れることは異端であるということも教わった。遅いわ。
変な噂が流れるであろうことは覚悟しなくてはいけないようだ。
ちなみにためしに守護霊の呪文を唱えてみたが杖からはなにも出てこなかった。
そして生徒でお見舞いに来たのはジニーとハーマイオニーとロンだけだった。
ジニーからは大量のメッセージカードをもらった以外は普通のお見舞いだった。たぶん。
「安心して。一部の人があなたに関する悪い噂を流していたから止めておいたわ」
「ジニー、君はいったい何を?」
「ちょっとした情報統制よ。あなたは今ホグワーツの『ダークヒーロー』よ」
「君のその力はたぶん違うことに使った方がいい気が……いや、ありがとう。助かるよ」
確かに陰口はストレスがかかるし居心地が悪いから助かるけど、ダークヒーローってなんだ。
「あなたが吸魂鬼を引き連れて立ち去る姿はすごくかっこよかったわ。誰も動けない中で一人あなたが動いたんだもの。それに対して怯えたり、責めたり、陰謀論に仕立て上げようとするのは許されざるべきことだと思うの」
「そこまで言われると照れるな」
「あなたが普通に学校生活を送れることが私たちの願いだもの」
「所々君の後ろに何かがついているような含みがあるけど……もしかしてこの間言っていた俺のファンクラブってやつ?」
「ええ、みんなからのお見舞いの手紙も預かってきたわ。食べ物もいっぱいあったんだけど、ファンクラブの規約上個包装の市販品以外は禁止だからだいぶ少なくなっちゃった。そうだ、ちなみにハーマイオニーが副会長だって知ってた?」
「いや、え、いや全く。まじかよ」
ジニーから伝えられたことは理解不能なところが30%、衝撃が30%で終始目を見開いていたと思う。
ロンとハーマイオニーからはあの時何が起こっていたのかを聞かされた。
「ハリーが落ちたのは知ってるでしょ? その後すぐにダンブルドア先生が競技場に駆け込んで杖を振ってスピードが遅くなったのよ。その後ダンブルドア先生とルーピン先生が銀色のものをディメンターに向かって出したの。でもその銀色はあなたによって消し飛ばされたわ。あれってもしかして守護霊ってやつかしら?」
「で、その後ダンブルドアが魔法で担架を出してハリーを運んだんだ。ハリーは死んだと思ったけどちゃんと無傷だったよ。ただニンバスは残念ながら暴れ柳にぶつかって大破だ。ハリーはひどく落ち込んでる」
「そして、ハリーが運び込まれた後あなたがハグリッドに担がれてここにやってきたの。あなたの方では何があったの?」
俺は羊飼いの件を最初から話したらロンとハーマイオニーにあなた何馬鹿なことをやっているのと言う顔で見られた。
「どうしてそんな危険なことを! あなたが常識人の皮を被ったクレイジーな少年だったってことをすっかり忘れていたわ」
「そりゃどうも」
「でも、あなたはなんで吸魂鬼が平気なの?」
「そうだね……君が蜘蛛を見ても平気なのと同じ理由じゃないか?」
「それで解決できることじゃないわ。だって彼らは人から幸福を吸い取るのよ? それに、仮に耐性があるとしても、彼らを魔法で服従させるのは理論上不可能なはず」
「人間っていうのは自分のフィルターを通して物事を見て、それを自分の知っている現実に当てはめる。だから事実と目の前の出来事には差が生じるんだ」
「つまりあなたからしたらディメンターを引きつれることは可能なことなのね」
「そういうこと」
「難しい話は終わりだ。ほら、君が好きそうなチキンを持ってきたからみんなで食べよう」
「ロン、ナイスだ」
やっぱりチキンは美味しい。