オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
あんな事件があったから、ハリーは最初はすごく落ち込んでいた。それでも数日もすれば徐々に明るくなり11月の終わりにはクィディッチの結果やらなんやらで”普通のハリー”に戻っていた。
ただ”普通のハリー”とはどういうものかがわからなくなるくらい機嫌が悪い日が多いのは改善してほしいものだ。
俺はというものの今はクマも薄くなり、きちんとアイロンをかけたローブを身に纏っている。ついでに髪のスタイリングもいじれる余裕も出てきた。
それには少しズルい理由がある。
何人かの教授が教科の参考文献をあたかも偶然かのように教えてくれるおかげで日中にレポートが進められて夜や朝を自由に使えるからだ。
課題において何が1番大変かというと、参考文献を膨大な貯蔵の中から見つけ出すことだ。特に完璧主義な俺は一つのレポートに対して参考文献を三つは見つけないと気が済まないタチなのもあってすごく時間がかかっていた。
ところが最近は違う。
スネイプ教授の個人レッスンに行くと俺がちょうど探していた薬草学の著書が積み上がっていたり、マクゴナガル教授にお茶を誘われたと思ったら変身術の参考文献が開きっぱなしで置かれていたり。
「わお、教授、この本お借りしても?」
「好きにしろ。たまたま書棚の整理で出てきた。そんなことよりも次の研究テーマを……」
「教授、この本のタイトルって?」
「あら、私としたことが本をしまい忘れていました。もし興味があるのなら次のレポートと一緒に返してくださいね」
こんな調子だ。
下手したら教育委員会(この場合ルシウス・マルフォイなのか?)に贔屓案件で告げ口しなくちゃいけないのかもしれないが、天使の俺と悪魔の俺で相談した結果黙って恩恵を受け入れることにした。
ついでにこの恩恵はちゃっかりハーマイオニーも受けている。
「ルーク! この本どこから見つけてきたの?! ちょうどここのセンテンスを探していたの!」
「ああ、そっちはマクゴナガル教授の部屋から借りてきた。他にもこれとか役に立ったよ」
「うそ! あなたよくわかってるわね。もう一度まとめ直さなきゃっ」
こうして過ごしてきた数ヶ月。そろそろ学期が終わろうとしている。
ホグワーツはクリスマスの準備で大忙しだ。今年のクリスマスはハーマイオニーもロンも残るらしい。楽しい休暇が過ごせそうでなんだか嬉しくなった。
学期の最後の週末はホグズミード行きが許され、ハリー以外のみんなは大喜びしていた。
「クリスマスショッピングが全部あそこで済ませられるわ! パパもママも、ハニーデュークス店の『歯磨き糸楊枝型ミント菓子』がきっと気に入るわ!」
今回もホグワーツに残るのは俺とハリーだけになりそうだ。今日のハリーはすでに諦め切って「賢い箒の選び方」なんて本を抱えている。
出発の時間になり俺たちはハーマイオニーとロンを見送った。
「なあ、ハリー。今日1日俺フリーなんだ、珍しく」
俺はハリーの耳元でそう小さく囁く。それに不思議そうにハリーは応じる。
「よかったね?」
「そこで、提案なんだが。……俺たちもホグズミードに行かないか?」
「いいね! なんて僕が言うと思う? それができたら前回から行っていたさ」
「ここに俺はいいものを持っている」
「それって……去年つかったホグワーツの地図だっけ?」
ハリーが君は急にどうしたんだ? みたいな目で見てくるから急いで地図を広げる。
「ここには俺が2年かけて見つけた秘密の通路が記されている。もちろん普段はこんな感じで見えないようにしてるけど」
地図を杖でポンと叩くと秘密の通路が浮かび上がってくる。
「この名前は? 動いてるよ」
「あー、どうやったかはあんまり記憶がないけど誰がどこにいるかを教えてくれるんだ。俺たちの名前は……ほらここにあるだろ?」
構想を練っていたのは記憶にあるけど、いつのまにかその技術が地図の中に組み込まれていたのを見つけた時は思わず三回顔を洗い直した。
仕事を代わりにやってくれる小人は存在するってことが証明された。
「そんなことはなんでもいいんだ。この地図を使えば簡単にホグズミードに行ける。誰かに見つかる心配もないし、君が嫌いなディメンターもたぶんいない」
「すごいよルーク! はやく行こう!」
俺たちはすぐさま走り出して隻眼の魔女のコブに向かった。
「ここで呪文を唱えると通路が出てくるんだ。ここは……『ディセンディウム降下』ってな感じだ」
目の前には人一人通れる通路ができた。
「ここを滑り降りたらホグズミードだ。行く? 行かない?」
「何を言ってるのルーク。もちろん行くよ!」
ここには誰も止める人はいない。俺たちはスムーズに出発した。
たどり着いたのはハニーデュークス店の倉庫。子供たちの楽しそうな声と店員の声かけを横に俺たちは人混みに紛れた。
人の波に揉まれながら順々に移動していく。
「百味ビーンズが樽に入ってる! あっちはフィフィ・フィズビーだ!」
「黒胡椒キャンディーとかブルブル・マウスとか面白いお菓子ばっかりだ。これは楽しいな」
しばらく流れて異常な味コーナーにたどり着くとそこにはハーマイオニーとロンがいた。二人は血の味がするキャンディーを品定めしている最中だった。
俺はハリーと目配せをし、二人の後ろに回り込んだ。
「ウー、ダメ。ハリーはこんなもの欲しがらないわ。これってバンパイヤ用だと思う」
「でもルークは絶対面白がると思うんだけど」
「そう言ってさっきからルークへのお土産ばっかりになってるじゃない!」
「じゃあこれはどうだ? ゴキブリゴソゴソ豆板」
「僕それ絶対いやだよ」
唐突なハリーの声にロンは危うく瓶を落とすところだった。そうしたらゴキブリが店内をゴソゴソすることになっただろう。危ない。
「ハリー!! どうしたの、こんなところで? ど──どうやってここに?」
「うわー! 君、『姿現し術』ができるようになったんだ!」
「驚いてるところ悪いけど、俺もいるよ」
ハリーの肩を持って揺すっているハーマイオニーの肩に手をおいて自分がいることをアピールした。
「ルーク! あなたね! どんな方法でハリーをここに連れてきちゃったの! あなた自分が何をしたかわかっているの?! そもそもあなたもサインもらってなかったじゃない! ルールを破ったらどんな罰則が……」
「どうどう、落ち着けってハーマイオニー。今日は久しぶりの完全オフだったんだ。そういう日くらい弾けてもいいだろ? それに君たちが密告しなければ俺はバレない」
「それでこそ僕らのルークだ。で、君たちどうやってここに?!」
ロンはキラキラとした目で、ハーマイオニーは眉間に皺を寄せながら俺たちがここにきた方法を求めてきた。
「俺が3年もいる城の抜け穴を知らないとお思いで?」
「ワーオ、マジかよ。本当に抜け穴なんてあったんだ! フレッドとジョージが嘘ついてたのかと思ってたよ」
「信じられない。それってすごく危険なことよ。もし、シリ……いいえ、アズカバンから脱獄した数多の囚人たちや、他にも不審者がその道を知っていたのだとしたら侵入を防げないってことじゃない」
「それらは生徒の俺たちにとって知らぬところさ。管理体制の甘さとでも理事長に訴える時くらいしか切りたくないカードだね。そんなことより二人とも案内してくれよ。俺が案内できるのは校長の家くらいだからさ」
ロンとハーマイオニーはお菓子の代金を払い、4人でハニーデュークス店を後にし、吹雪の中を歩き出した。
ホグズミードは一体雪で覆われキラキラと輝いている。店からは暖かそうなオレンジ色の光が漏れ、並木には魔法で消えないキャンドルが巻き付けられている。
ハリーがブルブル震えているのを見て、俺たちはマントを着損ねたことを思い出した。
「凍え死ぬ前にどこかに入らないか?」
「そうね、『三本の箒』まで行って『バタービール』でも飲みましょう」
人が入ってきにくい奥の方に空いていたテーブルにつき、乾杯してから数分後、数人の教授とハグリッドが入ってきた。そういえばハグリッドも教授だった。そしてハグリッドと話している男性は俺もよく知っている、コーネリウス・ファッジ魔法大臣だ。
ここで政治的見解を言うのは少し憚られるが、言葉を濁して言うとしたら、俺は現魔法大臣があまり好きではない。以上。
「それで大臣、どうしてこんな片田舎にお出ましになりましたの?」
「今年は色々あった。政府の管理体制に皆疑問を抱いている。仕方のないことだ。ハロウィーンに学校で何が起こったかは聞いているんだろうね?」
「大臣、あのブラックがまだこのあたりにいるとお考えですの?」
マダムロメルダは大臣にそう尋ねた。
父さんは俺が思っているよりも世間では危険視されているらしい。まあ、仮釈放で逃げ出したと思ったら難攻不落のホグワーツに入れることを証明してしまったのだから仕方がないのかもしれないけど。
なにはともあれディメンターの量を増やして父さんをとにかく捕まえたいらしい。父さんよりも捕まえるべき人はたくさんいると思うのは俺だけだろうか? 悪いが俺は身内贔屓だ。
「私は世間がいうほどシリウスは悪人ではないと思いますがね。ただ協力を求める相手、ストッパーを失っただけで」
マクゴナガル教授がそう呟いた。それにハグリッドが大きく頷く。
「俺がハリーを助け出しに家に行った時にはすでにシリウスとアイリス、そしてルークもおった。シリウスはあの時『3人を頼んだ』って俺にバイクを貸してくれたんだ。あの時はみんなパニックだった。シリウスはピーターを追うとだけ言ってすぐに外に走っていった、そしてアイリスは……ルークを俺に託して得体の知れないもんがウヨウヨと湧き始めてそれと戦っちょった。アイリスはシリウスと離れちゃいけんかったのに……アイリスに言われて俺は二人の赤子を連れてダンブルドア校長の下に行った。あの時、俺がもっと落ち着いていたら、アイリスが死ぬこともシリウスがアメリカに飛ばされることもなかったかもしれん……」
「その証言は証拠としての根拠がないんだよハグリッド、君が言った通りみんなパニックだったようだからね。記憶改竄なんてお手のものだ。それに君たちは見ていないんだ。道の真ん中に深く抉れたクレーター。その底のほうで下水管に亀裂が入り、死体が累々。マグルたちは悲鳴をあげ、その中央でブラックは仁王立ちをして笑っていた。その前にペティグリューのローブと僅かな肉片、指一本のみが落ちていた、あの光景を」
俺はその日、現場にいたのか。
知らなかった。
母さんが得体のしれないものと戦っていた? それってモンスターだよな。母さんは父さんの匂いでモンスターからハーフだとバレないようにしていたのか。
自分に神の血が流れていると自覚するまでは匂いが薄いと言っても俺もビッグスリーの血を引いている。それに気づかないモンスターはポンコツだ。
今まで知らなかったことを知って、少し考え込んでしまった。
「それに彼の息子がディメンターを操れるという噂も聞いてね。それが本当だとしたら政府の管理体制にも関わる。一度研究のためにも魔法省に呼ぼうという案もあるんだよ」
「ディメンターを操れるですって……気味が悪い」
マダムはそう呟いた。それに被せるようにマクゴナガル教授がはっきりとこう言った。
「大臣、今回の件ルークは一切関わっておりません。断言します。彼は立派なうちの学生ですよ。それにそもそも学内にディメンターを入れた方が問題では? 彼は勇敢にもディメンターから他生徒を守り切りました。さあ、校長とのディナーに参加するのならそろそろ城に戻った方が良いでしょう」
一人、また一人と席を立ち店の外に出て行った。
3人は俺のことをじっと見ていた。
作者の独り言
更新あいてしまいましたね。受験の息抜きにかいていますので1、2月までは不定期になりそうです。