オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、来年までに強くなると決める

「ごめんね。僕のヒキガエルみなかった?」

 尋ねてきたのはたぶん同じ新入生であろう少年だった。

 

「今のところ蛙は蛙チョコしか見てないな」

「そっか……もし見かけたら……よろしく」

 少年は項垂れて出ていってしまった。 

 

 なんとも拍子抜けだ。オレは「悪いことはなにもやっていないし考えていません」ってことを伝えるためだけに必死でスピーチの冒頭の掴みを考えていたのに……全部水の泡だ。

 

「ルークはさっきから何でそんなに外からの訪問者に神経質になっているの?」

「それは、ハリー。話せば長くなるんだ。ちょうどーーっ」

 

 扉が再びバンっと音を立てて開いた。オレは思わず飛び上がった。これは危険からいち早く身を守るためのライフハックだ。

 

「ネビルの蛙を見なかった? いなくなったの」

 今度は少女が乱入してきた。

 

「見なかったってさっきもそう言ったよ」

 杖を持ってつったっているオレの代わりにロンが答えてくれた。

 

「あら、いまから魔法をかけるの?」

 少女はオレが今からなにか魔法をかけると勘違いしたらしい。

 

「いや、ルークは──」

「そう、今から呪文をためそうと思ったんだ。ハリーのメガネを直してあげようかなって」

ハリーの言葉を遮ってオレはそうでっちあげた。ハリーには不思議そうな顔で見られたが、よく考えてみてくれ。オレが来訪者にいちいちビビっているやつだと思われるわけにはいかないだろ? あいつ顔だけで実は超ビビリなんだぜなんて噂を流されたら羞恥で死にたくなる。

 

「ハリー、目をつぶってろよ。オキュラス・レパロ」

 

 メガネは一瞬でひび割れも歪みもなくなった。ハリーはメガネをはずしたりかけたりして驚いている。

 

「その呪文私もできるわ! 家で試したの。私たち仲良くなれそうね。私の家族に魔法族は誰もいないから手紙をもらった時驚いたわ。だって最高の魔法魔術学校だって聞いているもの。教科書はもちろん全部暗記したわ。それで足りるといいんだけど。私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」

「僕、ロン・ウィーズリー」

 ロンはもごもごと言った。

 

「オレはルーク。よろしく」

「ハリー・ポッター」

「ほんとうに? ハリーポッター! 私あなたのこと全部知ってるわ。参考書を何冊か読んだの。『近代魔法史』『闇の魔術の興亡』『二十世紀の魔法大事件』なんかに出てるわ」

「僕が?」

 ハリーは呆然としている。

 

「まあ知らなかったの? ところで、3人はどこの寮に入るかわかってる? わたし何冊か本をよんだんだけどグリフィンドールがいいみたい。ダンブルドアもそこ出身だって聞いたわ。あー、とにかくもう行くわ。ネビルのヒキガエルを探さないと。2人ははやく着替えた方がいいわよ。もうすぐ着くはずだから」

 

 ハーマイオニーは嵐のように言うことを言って去っていった。ロンとハリーはしばらくぽかんとしていたが数秒して正気を取り戻したのか口を動かし始めた。

 

「ロンの兄さんたちってどこの寮なの?」

 ハリーがロンに尋ねる。

 

「グリフィンドール。ママもパパもそうだった。僕がもし違ったらなんて言われるか……。レイブンクローだったらそれほど悪くないかもしれないけど、スリザリンなんかに入れられたら最悪だ」

「そこって、ヴォ……つまり『例のあの人』がいたところ?」

「ああ」

 ロンはガックリと席に座り込んだ。

 

 今のロンに寮の話はタブーだってことがオレとハリーの共通見解だ。二人で気をそらすように色々話しかけた。オレはなけ無しの『ここ数十年でも流行っているものの知識』を絞り出して一言発した。

 

「ロンはクィディッチ好き?」

「もちろん! 世界一おもしろいスポーツだぜ! ハリーは知ってる? ボールが4個あって──」

 ロンは先程の落ち込みが嘘みたいに饒舌に語り始めた。

 

 オレがハリーにウィンクするとハリーは両目をつぶって応えてくれた。よかった最近もまだクィディッチが流行ってて。一歩間違えたら「なんだって? いまじゃ危険すぎて試合をやることが禁止されてるの知らなかった?」なんて言われてたかもしれない。

 

 ロンの語りに二人で相槌を打っているとまたコンパートメントの戸が開いた。今回は杖をもって突っ立っているなんて失敗は起こさなかった。代わりに舌を噛んだから明日あたりに口内炎になっているかもしれない。

 

「本当かい? このコンパートメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話でもちきりなんだけど。それじゃ君なのかい?」

ブロンド少年だ。後ろに2人連れている。よくあるボスとSPのちびっこ版だ。

 

「そうだよ」ハリーが答えた。

「あぁこいつはクラッブで、こっちがゴイル。そして僕がマルフォイ、ドラコ・マルフォイだ」

 親切にドラコはSPの分までまとめて自己紹介してくれたらしい。ハリー、オレの自己紹介も頼んだって意味をこめて目配せしたが気付いてもらえなかった。ロンにも目配せしたがなぜか吹き出していて不対応だった。

 

「僕の名前が変だとでも言うのかい? そこの君が誰だか聞く必要もないね。父上が言っていたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛で、そばかすで、育てきれないほどたくさん子供がいるってね」

 笑っていたロンの目が釣り上がった。ロン、ドラコは自分の名前気に入ってるらしい気をつけてくれ。そしてドラコ、ロンは家族思いらしいこっちも気をつけてくれ。遅いかもしれないが。

 

「それで、君は?」

「オレはルーク、よろしくドラコ」

「ファミリーネームは?」

「あー。ブラック?」

「そうか、ブラックなら君は僕の親戚だな。僕の母上がブラック家出身なんだ、仲良くしよう。そしてポッター君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。まちがったのとは付き合わないことだね。その辺は僕が教えてあげよう」

 

 オレとドラコは親戚だったらしい世間はせまいな。ドラコはハリーに握手を求めていたが盛大に振られていた。

 

「まちがったのかどうかを見分けるのは自分でもできると思うよ。どうもご親切様」

 ハリーはそう冷たく言った。ドラコは頬をピンクにしていた。これは惚れたか? あれだろ「オレにそんな態度とったやつお前がはじめてだ、おもしろい」って典型的なパターンだろ? 

 

「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるがね。もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じ道を辿ることになるぞ。君の両親も何が自分のためになるかを知らなかったようだ。ウィーズリー家やハグリッドみたいな下等な連中と一緒にいると君も同類になるだろうよ」

 王道ストーリーがリアルでも通用するわけじゃないことは今わかった。ただ単に嫌なやつだ。

 

 どこが地雷かは多すぎて判断がつかないが、両者お互いの地雷上をタップダンスしたことは確実そうだ。

 

 ロンが勢いよく立ち上がってドラコに詰め寄った。それにつられてハリーも立ち上がる。つまりオレだけ座っている。理由は言わなくてもわかるだろ?

 

「もういっぺん言ってみろ」ロンが叫んだ。

「へぇ、僕たちとやるつもりかい?」ドラコが煽る。

「今すぐでていかないならね」ハリーがきっぱりと言った。

 

 オレはそろそろ勇気を絞って言わなければいけないことがある。語る相手の一部がどんなに気に食わなくてもこれは経験者が語らないといけないことだ。二次被害をおこさないためにも。

 

「ちょっと待ってくれ。各自主義主張がわかれたのは理解したんだが、やるならオレがいない別の場所か日を改めてやってくれないか?(ここで騒ぎを起こしたらあの150年魔女がすぐにやってくるだろ? まだあいつと戦うには準備不足なんだ)それかここでやるならせめて力がつく来年まで待ってくれ」

「「ルーク! なんで戦わないんだ!」」オレはドラコとハリー同時に叫ばれてしまった。

 

「この提案は君たちのためでもあるんだ。入学初日から(車内販売の魔女と)戦いになってこてんぱんに負けたなんて噂、絶対すぐに広まるだろ? (あいつら6人無策で魔女に挑んだらしいぜ、勇敢と無謀を履き違えるなんて馬鹿だなぁみたいな)そんな噂たったらオレは羞恥で学校生活がしづらくなる。もちろん君たちもだ」

 

 ドラコはその状況を想像したらしい。「クラッブ、ゴイル戻るぞ」と言って去っていってしまった。

 

「ルークはブラックだからマルフォイをかばったんだ! 僕たち戦ったら確実に勝てた!」

「は? いや、ロン。オレは見たんだ。150年魔女はそう簡単に倒せないぞ。なにせ片手は剣で、片手には爆弾パイを持ってるからな」

「は? ルーク、君何言ってるの?」

 ロンが何言ってるんだこいつみたいな目でオレを見てきた。逆だロン、その目はオレがするべき目だ。

 

「だ・か・ら、君たちが車内で揉め事を起こして車内販売の魔女が君たちを黙らせにくるのを未然に止めてあげたんだ」

「ルーク、車内販売の魔女が黙らせにくるって何?」ハリーが尋ねてきた。

「オレが早く着いて車内を探検してた時のことだ。ちょっと窓を開けて身を乗り出したら、車内販売の魔女が急に現れたんだ。それでオレに席に座れって言ってきた。ちょっと無視したら、彼女の片腕が綺麗に磨かれた剣に、もう一方の手にはカボチャパイを持って臨戦態勢に入ってきたんだ。あれはトラウマものだね。来年までにオレはあいつと対等に戦えるように学校で学ぶつもりだ。これでわかったか?」

 

 ロンとハリーはしばらく黙りこくった後笑い始めた。クスクスではなく爆笑だ。

 

「じゃあっ、ルークはその魔女が怖くてドアが開くたびにビクビクしてたってこと?」ロンが笑いながら尋ねてきた。

「ああ、身も蓋もない話そうだよ。がちでやばい笑顔と空気だったんだって、経験したいならさっきも言ったが別部屋でやってくれ」

「なんだ。僕たちてっきりルークがマルフォイと親戚だからって失礼な発言を許せって言ってるのかと思ったよ」ハリーも死体撃ちをしてきた。

 

 もちろんオレがそんなヘンテコジャッジするわけがない。オレだって揶揄われるのは大嫌いだし、騙されるのはもっと嫌いだ。そういうやつとは昔からよくやりあってきた(勝ったかは別として)。

 

 ただ今回はそんな小さいことはどうでも良くなるくらいもっと巨大な共通の敵が俺たちの前に立ちはだかってたんだ。停戦して回避したいって思うのが人間の性ってやつじゃないのか? 

 

『あと5分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので車内に置いていってください』

 

 この放送に慌てて2人はローブに着替え始めた。やっとおそろいになった。ひとりローブだったからめちゃくちゃ学校楽しみなやつみたいでちょっと恥ずかしかったからこれで安心できる。

 

 完全に列車が止まったところでオレは立ち上がった。その行動でさえ二人にニヤニヤされるのは全くもって心外だ。

 

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