オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、権力で解決

 学校はクリスマスの次の週から始まった。ハグリッドの授業では焚き火の中でちょろちょろする火とかげは可愛かったし(近づかなくていい授業は楽ちんだ)、占い学で手相占いをした時にあなたは生命線がありませんなんて言われたのもネタになっている。ハリーはというとルーピン教授から吸魂鬼祓いの訓練をうけるようで毎日ウキウキしている。

 

 残念ながらあの魔法は俺にとって治癒魔法同様なぜかうまくいかない類の魔法だ。不思議なことに。実力不足なのかもしれないけれど今までどんな呪文も簡単にマスターしてきた身からすると相性が悪そうなことは確かだ。

 

 ハリーはこの数ヶ月があっという間にすぎたというが、俺たち2人にはそんなことはなかった。

 

「ハーマイオニー、少し休もう。これだと君が倒れてしまう」

「ルーク、私まだ古代ルーン語の翻訳が終わってないの! 明日提出だっていうのによ!」

「ここでその課題をやって1日寝込むよりは今休んだ方がいい」

「寝込まないから問題ないわ」

 

「ルーク、あなたそろそろ寝たら? さっきから同じ計算しているわよそれ」

「あぁ、いや、まだいける。この結果の分析が済んでないと明日実験をする意味がなくなるんだ」

「いまの死んでる脳みそじゃいい案が浮かんでくる確率は低いんじゃない?」

「俺は天才だからたぶんひらめくさ……たぶん、そこにある水を取ってくれ」

 

 俺たちは談話室で数時間に一回こんなやりとりをしている。

 

「なあ、ハーマイオニー提案なんだけど……一緒に寝ないか?」

「へっ?! ルーク?!」

「今4時だろ? 4時間前にはもうルームメイトはぐっすりなはずだから」

「何言ってるの?!」

「だから、君のベッドの上で逆転時計を4時間分ひっくり返して寝てから次に俺の部屋に行って同じことをする。そうしたら少しはまとまって睡眠が取れる。さすがに俺たちがバラバラに行動するのはおかしなことになりかねないからお互いのベッドで4時間ずつ一緒に寝よう。いいアイデアじゃないか?」

「そうね……たぶんいいアイデアだわ」

 

 この時俺たちは脳死な深夜テンションってやつだった。

 

 決めたら即実行。俺たちは課題を一時的に片づけ、ベッドに向かった。

 

「狭くない?」

「大丈夫。暖かいな。寝過ごしそうだ」

「アラームは……みんなが起きそうね」

「フラッフィーに起こしてもらおう」

 

 すぐに瞼が落ち、人の温もりを感じながら気を失った。

 

 そして4時間後俺はペットに踏み潰された。

 

「やあ、フラッフィーおはよう。未来の俺のことも起こしてくれたっぽいな。よし、移動の時間か」

「……おはよう?」

「いや、まだ寝てていいよ。あと4時間は眠れる」

 

 かわい……うわ、俺やらかした。

 

 ハーマイオニーは女の子だ。一緒に寝るなんてなにばかなことしているんだ過去の俺。罪悪感となんとも言えない満足感の間に立たされて俺は思わずため息をついた。そして彼女を抱き抱え女子寮から男子寮に移動する。少しやつれた彼女は幸せそうに俺の腕の中で眠っている。最近はスキャバーズとクルックシャンクスが血みどろの戦いをしたこともあり飼い主同士の仲も険悪だ。色々ストレスを感じているのだろう。

 

 眠っている彼女が起きないように俺のベッドに横たわらせ、逆転時計をひっくり返した。そして俺も2度目の眠りについた。

 

「おはよう、とりあえず談話室に移動しようか」

「今何時?!」

「4時だよ。あと一踏ん張りがんばろう」

 

 シワのついたローブを魔法で整え下に降りる。安心して眠れたおかげで頭が冴えている。

 

「ルーク、これってすごく効率的ね。眠ったらすごくスッキリしたわ。今度から定期的に取り入れましょ!」

「あー、うん。そうしよっか」

 

 あー、俺って悪いやつだ。

 

 

 クィディッチに勝利したかつ、スリザリンの間抜けな方々が処罰を受けることになったおかげで談話室は1日中パーティーだった。

 

 貴重な日曜日を潰したくなかったが俺はもちろんノリノリで参加してしまった。ハニーデュークスからお菓子を買ってくる手伝いはもちろん、部屋の飾り付けも豪華にした。

 

 こうして騒いで深夜の一時まで飲んで食ってしゃべってを繰り返しとうとうマクゴナガル教授に寝るように命令された。

 

 今日はハーマイオニーがすでに課題を終えてしまったようなので逆転時計が使え無さそうだ。仕方がない。明日の朝の俺に賭けよう。4時くらいに起きて朝食の時間までに本を読めば400ページくらいはいけるだろう。

 

 そう思って3時間の睡眠を貪るためにベッドに潜り込んだ。今日は湯たんぽがないからちょっと寒いな。

 

 夢を見た。奇妙な夢だ。

 

 ダイダロスがキュクロプスと共にアスポデロスの道路を立体交差にしたり、高架道路から降りるスロープを建設している。そして俺はそれをぼーっと眺めている。

 

 改善された道路にはさまざまな死者が歩いている。

 

 そこには仲よく歩くカップルの姿がいた。彼氏の方は見たことのある癖毛に顔立ち、彼女の方は俺が毎日見る目の色。

 

 ああ、ハリー。君の両親は幸せそうだよ。

 

「あああああああああああァァァァァァァァァァァァ!!!!!やめてぇぇぇ!!!」 

 

 俺はかかっていた布団を地面に落とし、うつ伏せから飛び起きた。

 

「どうした!?」

 

 杖をとり、明かりをつける。そして用心深く音の発生源に近づいた。隣にハリーもいるし、なんなら俺らの部屋をいち早く覗きにきた数名もドアからこっちを見ている。

 

 そこにいたのは恐怖で顔を引き攣らせたロンだった。

 

「ブラックだ! シリウスブラックだ! ナイフを持っていた!」

「は? 父さんがナイフ?」

「ここに! たったいま! カーテンを切ったんだ! それで目が覚めたんだ!」

 

 たしかにロンの左側のカーテンはズタズタになっている。

 

 するとハリーは談話室まで走っていき、覗き込んできた同級生たちも話を聞いていたのか階段を転がり降りていった。つまりみんなパニック。ロンも俺の横を通って談話室まで走っていってしまった。

 

 俺の計画は崩れた。朝からマグル学の本を読むどころか、身内の学内侵入しかも2度目により尋問がスタートするんだろう。どうせくるならもうちょっとスマートに立ち去ってくれよ。バレなきゃ犯罪じゃないんだから。

 

 せっかく面白い夢をみたからハリーに話そうと思ったのにそれどころじゃなくなったじゃないか。

 

 俺は一足遅れて自室を出た。もちろんローブの中にはマグル学の本を忍ばせて。

 

 談話室ではほとんどの生徒がすでに集まっておりマクゴナガル教授もいらっしゃった。

 

「先生、僕、目が覚めたら、シリウス・ブラックがナイフを持って僕の上に立っていたんです」

「ウィーズリー冗談はおよしなさい。肖像画の穴をどうやって通過してきたというんです?」

 

 その質問に対しガドガン卿の答えはこうだった。

 

「ご婦人、一週間分の合言葉を全部持っておりました。小さな紙切れを読み上げておりましたから」

 

 先生は血の気の引いた蝋のような顔をしてこう言った。

 

「誰ですか。今週一週間分の合言葉を書き出して、その辺に放っておいた底抜けの愚か者は誰です?」

 

 みんなは知っていた。それはついこの間合言葉を忘れて寮に入ることができていなかった彼、ネビル・ロングボトムであるということを。

 

 そして階段の上をたまたま見た生徒が「ヒッ」と声をあげたのもちょうどその時だった。

 

 

 その夜グリフィンドール生は誰も眠れなかった。そしてもちろんながら俺は超避けられている。

 

 俺に直接は何も言ってこないし話しかけてもくれないが、狙われたのはロンじゃなくて同室の俺だったという説と俺が侵入の手助けをしたのではないかという二つの論争が静かに囁かれている。俺が導くならもっと完全犯罪を目指すよなんて思っていることは秘密だ。

 

 いや、俺に絡んでこないのには恐怖からだろうと思っていたがそれ以上にもっと簡単な理由があった。

 

 今の俺は両手に花。ジニーを右手にハーマイオニーを左手にだ。過去の俺の記憶だと二人はファンクラブ会長と副会長だったか。

 

 そのおかげで俺は夜通しでマグル学の本を無事読み終えた。とてつもなく眠い。でも今日のグリフィンドール生はどのような理由にしろ全員眠そうだから問題はない。

 

 となりのハーマイオニーは空いた時間ができたと言わんばかりに魔法生物の裁判の資料を読み漁っている。バックビークに関しては俺も考えはあるがこっちもこっちで準備中だ。ジニーはというと、噂話をしている生徒を睨む以外は俺のとなりで魔法薬学の教科書を開いている。そしてたまに質問をされる。ここの3人は真面目すぎるかもしれない。

 

 次の日、どこもかしこも警戒が厳しくなっていた。

 

 フリットウィック教授は父さんの写真をドアというドアに貼って人相を覚えこませた。その写真のとなりに俺の写真を貼って『イケメン親子』って書いたやつは正直に名乗り上げて欲しい。

 

 フィルチはネズミしか通れないような小さな穴に板を打ち付けてまわっていたし俺に出会うたびに変装していないかと汚いタオルで顔を擦られた。

 

 ガドガン卿はクビになり修復された太った婦人がまた門番を務めることになった。

 

 今日はロンが主役だった。どこにいっても昨夜あったことを聞かれ、ロンは誇らしげにそれについて話している。いつもよりイキイキとしている。

 

 今日は金曜日、今頃ハグリッドは聴聞会真っ最中だろうか。

 

「ハーマイオニー、明日のホグズミードで買ってきて欲しいものと送って欲しいものがあるんだ」

「あら、あなたはあの二人と一緒に行くんじゃないの? あの地図を使って」

「俺は必要な時にルールを破るんだ。今はその時じゃない」

「その必要な時がずっとこないといいけど。で、何が必要なの?」

「このリストに入っている薬草と、あとはこの封書を危険生物処理委員会に。公的な郵送証明が欲しいんだ」

「ルーク、何をするの?」

「クリスマスから始めてようやくブラックの現当主になることができた。あとはその権力を適切に使うのみ。そうだろう?」

「でもまさに今聴聞会は開かれてしまったじゃない!」

「権力とお金があれば裁判なんて容易くひっくり返るんだよ。そして今まで成功した事業を全て俺の個人名義ではなくブラック家名義に変えてきた。守りたい家族がいる白狐には用意できないくらいのお金の準備はできている」

「……あなたって悪い人ね」

「もとからそうだろ? 君にとってはいい人でいたいけどね。もうバックビークはブラック家のものだ。いつでもハグリッドに贈呈できる」

「ルーク……ありがとう」

「君があんなに頑張っているところを見たら……ね? 俺が何もしないわけにはいかないだろ。もちろん君が調べてくれた資料が大いに役だったんだ」

「私、最近全然余裕がなくて。もしあなたがいなかったらって思うと本当に怖いわ。絶対におかしくなっていたもの」

「いや俺がいるから逆転時計を自由に使えていないんだ。もし俺がいなかったらもっと時間管理がうまくできているだろうさ」

「そうかしら。たぶんあなたがいなかったら休憩に逆転時計を使うなんて考えさえ思いつかなかったわ」

「真面目なハーマイオニーらしいや」

「ルーク、わたしあなたのことが大好き」

「俺も好きだよ」

 

 俺たちの顔は少し疲れていたがそれは満面の笑みにかき消された。

 




ルークが女子寮に入れたのは、螺旋階段から入らなかったからか。飛んだか、影になったか。
たしかに女子の許可制が妥当ですね。
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