オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、運営委員になる

 

 皆ここ一週間は三校対抗試合の話で持ちきりだった。

 

「ブラック、話があるついてこい」

 

 嫌な予感だ。何がバレた? 

 

「スネイプ教授……なんでしょう」

「吾輩の研究室を自由に使って良い」

「……えっ? 本当ですか!!」

「その代わり、三校対抗試合の運営をお前に頼みたい」

 

 いいことには裏がある。

 

「普通自分の寮の生徒に頼みますよね?」

「スリザリンの生徒が何の対価もなく学校運営に参加するとでも? しかも5年以下にこの役割がなせる奴はほぼ皆無だ」

「なんだかよくわからないですけど……自由に使っていいんですよね? いいですよ」

 

 でもあそこを自由に使えるのならば何も問題ない。そう返事するとスネイプ教授はニヤリと笑った。

 

「ああ……暇があればな。他校の生徒の案内を監督生などと一緒にやってもらうのが役割の一つ。他にも暇な時間には選手が怪我した時や周りの生徒が巻き込まれた時用の薬品、他校の生徒が体調不良になった時用の魔法薬を作ってもらう。いつも吾輩が作っている量が単純に三倍に増えるわけだ。薬草を刻んでいるだけで日が暮れる。それに加えマダムポンフリーの雑用だ。人一倍医務室にいるお前なら動きはわかっているだろう」

「それは誰もやりたがらないわけだ」

 

 5年生以下で魔法薬学がとても得意で社交性とホスピタリティーを兼ね備えた生徒はいないんじゃないかな。俺以外。

 

 魔法薬学が終わり皆で寮に教科書を置きにいく。そして俺はいつもより正確に制服を着こなし、マントをまとった。

 

「ウィーズリー、帽子が曲がっています。ミス・パチル、髪についている馬鹿げたものをお取りなさい。一年生が先頭でついておいでなさい」

 

 みんな並んだまま正面の石段を降り城の前に整列した。

 

「ミスターブラック、あなたはこっちです。ここから他校の生徒を食堂まで案内し、各寮に適当に分かれるように座らせてください。くれぐれも失礼のないように、真面目に行ってください。いいですね?」

「はいはい、紳士な対応をすればいいんでしょう。イギリス人らしく……皮肉たっぷりで」

「ふざけてないでほらっ、位置につきなさい」

 

 最初にやってきたのはボーバトンだった。

 

 彼らは巨大なパステルブルーの馬車でやってきた。馬車は12頭の天馬に引かれて飛んできたが、どの馬も象並みででかい時のフラッフィーといい勝負だ。

 

「ようこそホグワーツへ」

「ダンブリー・ドール、おかわりーありませーんか?」

「お陰様で上々じゃ。カルカロフももうすぐ来るじゃろう、外でおまちになってお出迎えなさるかな? それとも城中に入って暖を取られますかな?」

「あたたまりたーいです」

「ルーク、案内して差し上げなさい」

 

 アルバスに言われた通り城中に案内して差し上げる。ついでに寒そうに震えている人たちにマントを作って渡してあげた。これくらいのサービスで勘弁してほしい。

 

「大広間で今から歓迎の会が開かれます。本校では4つの寮に分かれ生活をしております。カードが置いてある席にご自由にお座りください。何か御用がございましたらお気軽にお声かけください」

 

 カードは昨日の夜慌てて作成したものだ。カードには簡易的なホグワーツの地図が描かれて自分の現在地がわかるものだ。ホグワーツは迷いやすいだろうからという俺の超親切な気遣いだ。

 

「ありがとーございまーす。あなーたのおなまえは?」

「ルーク・ブラック、グリフィンドール所属の4年生です」

「すてーきな名前でーす。あたーしはフラー・デラクール。よろしくねルーク」

「よろしく」

 

 そしてまた城外に戻りいつの間にか到着していたダームストラングも同じように案内した。

 

「君は、ブラックの子かい?」

「はい、ルーク・ブラックと申します。はじめまして」

「君の親戚には何人も会ってきたが、やはりブラック家は顔が整っているな」

「恐縮です。よろしければ彼を暖炉の近くに案内いたしましょうか? また本校では魔法薬学の教授、セブルス・スネイプが風邪薬を調合しておりますので必要な際は医務室にいらっしゃっていただくか、または私にお声かけください」

「ほう、ビクトール。宴会前に彼に医務室に案内してもらえ。セブルスの魔法薬の腕は知っているよ」

「承りました」

 

 俺はビクトールと呼ばれる青年を医務室に案内することになった。風邪薬の調合の原案はスネイプ教授だが、作ったのは俺だと聞いたらどんな反応をするのだろうななんて思いながら彼を医務室に案内した。

 

「マダムポンフリー、風邪薬を一つお願いします。はい、こちらになります。私は外で待っておりますので彼女から風邪薬をお受け取りください」

「ありがとう。きみ名前ヴァ?」

「ルーク・ブラック。あなたは?」

「ビクトール・クラム。あの風邪薬はすごいね、すぐに体が軽くなった」

「それはよかったです。宴会が始まるので移動しましょう。今夜は豪勢でしょうから」

 

 大広間に戻ると入り口はホグワーツの生徒でごった返していた。

 

「ご友人はどちらにいらっしゃいますか? その近くに席をご用意しますが」

「君の隣ヴぁだめかな?」

「もちろん構いません。グリフィンドールの席にご案内しましょう」

 

 余っているカードをつかんでグリフィンドールの真ん中らへんに置き直す。

 

「こちらにどうぞ」

「ありがとう。そんな畏まらなくていいよ。ビクトールって呼んでくれ」

「わかった。クラム、ようこそホグワーツへ」

 

 クラムはここにある全ての物が珍しいらしい。

 

「このカード、すごい。どんな魔法を使ったら地図の中の自分が動くんだ?」

「それは俺のオリジナル魔法。やり方は秘密だよ」

「ルークってやっぱり優秀なんだね。この大会には参加するの? ヴぉくはもちろん出るつもりだけど」

「あー、年齢が条件に満たないから出られないんだ」

「君何歳なの?! すごく落ち着いているから同い年くらいかと思っていた」

「まだ4年生さ。ついこの間15になった」

「……信じられない。でも確かに見た目は成長途中だね」

「なんか失礼なことを言われた気がする」

「ははっ、気のせいだよ。彼らは君の友だち?」

 

 振り向くとハリーとハーマイオニー、そして口をパクパクさせたロンがいた。

 

「みんな立ってないで座りなよ。彼はビクトール・クラム。ダームストラングの生徒だ。こっちはハリー・ポッターとハーマイオニー・グレンジャーとロナルド・ウィーズリー」

「ルーク、君、もしかして彼が何者か知らない?」

「ん、なんのこと?」

「彼ブルガリアのクィディッチチームのシーカーだよ!!」

「そうなのビクトール?」

「ああ、そうだよ。この間ワールドカップに出たところだ」

「それはすごいね。ん? なに、ロン。ああサイン? ビクトール、サインってもらえたりする? 彼君の大ファンらしいよ」

「ああいいよ、ルークもヴぉくのサインいる?」

「じゃあお言葉に甘えてもらっておこうかな」

 

 和やかに話しているうちに全校生徒が着席し宴がはじまった。

 

 目の前にはさまざまな食べ物が並んでいる。その中には外国のものもたくさん混ざっていた。

 

「ハーマイオニー、そっちのブイヤベースをよそってくれる?」

「ルーク、その料理なんふぁって?」

「ロン、君はもう少しゆっくり食べた方がいい。これはブイヤベース、フランス料理じゃないかな? ビクトールも気になる料理が届かなかったら言ってくれ」

「ルーク、そーこのブイヤベースはもう食べ終わったでーすか?」

「ああ、そっちにありませんでした? 今持っていきますね」

 

 レイブンクローの席にブイヤベースの大皿を持っていく。戻ってくるとロンにローブを引っ張られた。

 

「何で君そんなに他校の人に名前を知られているんだ?!」

「さっき案内をしたからね」

「彼女ってヴィーラなの?! あれは普通の女の子じゃない!! ホグワーツじゃああいう女の子は作れない!」

「ロン、落ち着け。君がフラーに夢中なのはわかった」

「彼女はフラーって言うんだね!!」

 

 皿の中身がデザートになりそして空になった。心地よい緊張感が大広間を満たした。

 

「時は来た。三大魔法学校対抗試合はまさに始まろうとしておる。『箱』を持ってこさせる前に二言三言説明しておこうかのう。まずお二人の紹介じゃ。国際魔法協力部部長、バーテミウス・クラウチ氏、そして魔法ゲームスポーツ部部長、ルード・バクマン氏じゃ。お二方はこの三大魔法学校対抗試合の準備に骨身を惜しまず尽力されてきた。彼らと三校の校長が代表選手の健闘ぶりを評価する審査員となる」

 

 代表選手という言葉に皆より真剣に話を聞く。

 

「それではフィルチさん、箱を前へ。代表選手たちが取り組む課題はクラウチ氏とバクマン氏が検討し終えている。課題は三つあり──」

 

 長い長い説明は俺を退屈にさせた。さっさと終わって魔法薬学のレポートをまとめたい。

 

「──代表選手を選ぶのは公正なる選者、『炎のゴブレット』じゃ」

 

 燃えているゴブレットに名前を書いた紙を入れればいいらしい。年齢線をアルバスが引くから17歳未満は紙を入れることができない仕組みらしい。

 

 フレッドとジョージは老け薬でごまかす作戦を考えているようだ。もし俺が今から徹夜で老け薬を作って売ったら結構なお小遣い稼ぎになりそうだな。まあやらないけど。

 

「ビクトール、気分はどうだ? 十分に食べたか? 厨房から卵酒でも持ってこさせようか?」

「薬が効いたから大丈夫です」

「校長先生、僕、ヴァインが欲しい」

「お前に言ったわけではない。ポリアコフ」

 

 カルカロフは何かに気づいて歩みを止めた。ダームストラングの生徒も先頭が動かなくなり立ち止まった。カルカロフの視線の先にはハリーがいた。じっと眺め、傷跡を舐めるようにみているようだ。それをスネイプ教授が嗜める。

 

「そうだ、彼がハリーポッターだ。ポッターに言うことがないならカルカロフ、退くがよかろう。出口を塞いでいる」

 

 カルカロフは自分の生徒をかき集めるようにして連れ去った。

 

「ルーク、またね」

「ああ、また」

 

 数時間でビクトールとは結構親しくなれた気がする。

 

 

 翌日は土曜日で普段なら俺は食堂に1番に行き誰も手をつけていない食事を食べたあとフラッフィーと散歩したり、課題をやったり、やり残した雑多なことを高速で終わらせたりと充実した朝を過ごしているところだった。

 

「ルーク、何やってるんだ! 行くのは大広間じゃないよ!!」

「いや、朝ごはん以外に何をしにいくって言うんだ?」

「もちろんゴブレットを見にいくのさ!!」

 

 玄関ホールにはゴブレットとその半径三メートルには金色の線が描かれていた。ダームストラングは全員入れたらしいがホグワーツの生徒はまだだれも確認していないようだ。

 

「ルーク、いつもの悪知恵を働かせてくれよ」

「ロン、どういうこと?」

「この年齢線を超えてゴブレットに紙を入れる方法さ」

「そんなの簡単だよ。年齢線を消してしまえばいい。もちろん物理的に吹っ飛ばすでもいいし、反対呪文をかけるでもよし。何個か試したい呪文があるんだ」

「ルーク、それはやめなさい」

「わぁアルバス、いつの間に?」

 

 振り返るとアルバスが苦笑いしていた。

 

「わしが一生懸命引いた線を無碍にしようとする話が聞こえたからのう」

「いや、別に今回の選別を邪魔するつもりはないですよ。そうだ!! 家に帰ったら同じ年齢線を引いておいてください。華麗に突破してみせましょう」

「ルーク、年齢線をアスレチックかなにかと勘違いしておるのではないかね?」

「選手として選ばれたくはないですけど、こういうダメと規制されたものは挑戦してみたくなりますよね」

「君は一年生のころからその気があったからのう。毎年一度は盛大に規則を破っておる。考えものじゃ」

 

 一年では立ち入り禁止の廊下に、二年生では禁じられた森に、三年生ではホグズミードに。アニメーガスも不法侵入の手助けも真っ当に裁かれたら勝ち目はない。ここはごねることなく戦略的撤退すべきフェーズだ。

 

 うん、でも改めて考えるとアルバスが養父だからどうにかなっていることがいっぱいだ。彼、結果よければ全てよしみたいなとこあるから。

 

「やったぜ、今飲んできた」

 

 フレッドとジョージが意気揚々と入場してきた。老け薬作戦を実行するみたいだ。

 

「それじゃいくぞ──俺が一番乗りだ──」

 

 確かに、片足を入れるところまではよかった。

 

 でももう片足が金色の線を越えようとした時彼らは何かに吹っ飛ばされた。数メートル飛ばされて冷たい石に叩きつけられる。極め付けにはポンという大きな音とともに白く長い髭が生えてきた。二人は顔を見合わせて爆笑している。

 

「忠告したはずじゃ。二人ともマダム・ポンフリーのところに行くが良い。すでに、ミス・フォーセットとミスター・サマーズがお世話になっていおる。二人とも少しばかり歳をとる決心をしたのでな」

 

 ちょこちょこホグワーツの生徒も立候補しているらしい。誰が有力候補かで朝食を食べにきた生徒は盛り上がっている。

 

 3人はハグリッドのところに行くようだが俺はその誘いを断った。今からやるのはもちろん地獄の薬草刻みだ。

 

「スネイプ教授、ルーク・ブラックです」

「入れ、そして今すぐにこれを刻め。哀れな馬鹿共のせいで老け薬の中和剤が底をつきた。マダム・ポンフリーが今晩の選手発表までには戻してあげたいから早く作れとのことだ」

「うげ、あれ超工程面倒なやつじゃないですか」

「無駄口を叩くな」

 

 いくら魔法薬学が好きだからと言って大量生産が好きなわけではない。指先にはよもぎの匂いがこびりつき、ずっと立って作業をしているから腰にくる。

 

「材料の刻みとすりつぶしが終わりました。鍋代わりましょうか?」

「3番と4番と8番の鍋を頼もう。出来上がったらそこの空き瓶に詰めて医務室まで持って行くように」

「……2番の鍋なにがあったんですか?」

「生徒に材料の選別の罰則を課したら、知識が足りなかったようだ。菊と蓬の葉が混ざっていた」

「それで鍋底に穴があいたと」

「この忙しい時期に……生徒に頼むべきではなかった」

「すりつぶし前で止めるべきでしたね。鍋一つ分でよかったです。おっと、鍋3つとも粘性ばっちりなんで火から下ろしますね」

「口を利かないお前が10人と吾輩が10人いればどんなに平和だっただろうか」

「お疲れです?」

 

 スネイプ教授、たぶんだけど眠れていないんじゃないか。いつもだったら俺が一方的に話して終わるのに今日は口数が多い。

 

 俺は瓶に薬を入れ、ラベルを貼り、拡張してある鞄に突っ込み医務室に足を運んだ。

 

 視界に広がっていたのは老人ホームだった。

 

「ミスター・ブラックいいところに来ました。彼らに癒しの魔法をかけてください。右列の途中まで終わらせました」

 

 たしかに髭だけでなく擦り傷や青あざを負った人で溢れかえっている。

 

「マダム、これ作った薬です。ラベルを貼っておきました。じゃあこっちから癒しの魔法をかけますね」

「そろそろ助手をつけようか盛大に悩んできました。将来癒者なんてどうです?」

「あはは、まだOWLも受けてないのに将来なんて考えられませんよ」

 

 こんな感じで医務室とスネイプ教授の間を複数回往復しているとあっという間に日が暮れた。

 

「そろそろその皺になったローブをどうにかしろ。宴会がはじまる。ああそうだ、頑張った生徒には褒美を与えないとな。グリフィンドールに50点加点しよう」

「教授、知っての通り今年は寮対抗がないので、その加点は無に等しいです」

「なんのことやら吾輩にはさっぱりわかりかねますな。ぐずぐずするな」

 

 俺はスネイプ教授の情緒が心配だ。

 

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