オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
ハロウィーン・パーティーと選手の発表が兼ねられた夕食はもちろん豪華だった。
「ルーク、今日はいつもより食べるね?」
「俺が今日何時間働いたと思う? 9時から5時。昼食休憩はなくパンを片手に医務室と地下を往復だ。労働組合に訴えたら確実に勝てる」
「君、絶対魔法省に就職しないほうがいい。君は変に有能だからいつか過労死するよ。あそこパパがいうに超ブラックだから」
「過労死する前に魔法省を爆発させちゃうだろうから俺の将来から癒者と魔法省は除外されたよ。ちなみにさっき下級生が薬草の分類を間違えたせいで大鍋を一個爆発させてきたところだ」
俺は食事に必死だったが周りはむしろ全然だった。皆この後に発表される代表選手のことが気になって仕方がないらしい。俺の目の前の皿だけ明らかに減りが早いのはなんだか少し恥ずかしい。
食事が綺麗さっぱり片付けられ、炎のゴブレットが運び込まれる。皆目を輝かせ、首を長くして待っている。
ゴブレットの炎が突然赤くなった。花火が飛び散りはじめ、次の瞬間炎がメラメラと中を舐めるように燃え上がり焦げた羊皮紙が一枚はらりと落ちてきた。
「ダームストラングの代表選手は、ビクトール・クラム!」
「そうこなくっちゃ!!」
ロンが声を張り上げた。大広間中が拍手の嵐、歓声の渦だ。クラムはテーブルから立ち上がりダンブルドアの方に歩いて行った。
すこし歓声が落ち着いた頃2枚目の羊皮紙が飛び出した。
「ボーバトンの代表選手は、フラー・デラクール!」
「ホグワーツの代表選手は、セドリック・ディゴリー!」
それぞれ三校は概ね噂通りの結果になった。グリフィンドールから代表選手が出なかったのは残念だが是非とも頑張って欲しい。そしてできれば怪我しないでほしい。これは俺のQOLに関わってくる話だからね。
「結構結構、さてこれで3人の代表選手が決まった。選ばれなかった生徒も含めみんな揃ってあらん限りの力を振り絞り代表選手たちを応援してくれることを信じておる。選手に声援を送ることでみんなが本当の意味で貢献でき──」
アルバスは突然ことばを切った。理由は明白。炎のゴブレットが再び赤く燃え始めたのだ。そして一枚の紙を吐き出した。
「ハリー・ポッター」
隣をみると彼は目を丸くし、口をぱくぱくしていた。俺はため息をついた。
今年も何かが起こっているようだ。
◆
こういうシンと静まり返った状況が好きな人はよほどのマゾ気質か変人だけだろう。俺はマゾでも変人でもない。
誰だ俺のこと変人ではあるだろって言ったやつ。
そしてそう言った空気は打ち壊したくなる気持ちをだれかわかって欲しい。
「グリフィンドールから代表選手が出るなんてめでたいことだ。ほら堂々としてあの部屋に行けよハリー」
「でも、ルーク。僕紙なんて入れてないよ!!」
「じゃあ真に選ばれたってことだ。拍手は盛大なのがいい?」
「ハリー・ポッター! こっちに来なさい」
俺はパチパチと大きく拍手した。ハーマイオニーもハリーの背中を押した後俺の拍手に続く。それにジニー、ロンと続きレイブンクローやハッフルパフの女子たちもそれに続く。徐々に広がっていく拍手の波には先ほどのような迫力は感じないものの、まあ音がないよりはましだった。ハリーからしたら五十歩百歩なようだが。
教授たちは足早に小部屋に入っていく。校長、教授がいなくなった大広間はしっちゃかめっちゃかである。
ハリーのことを悪くいう者もいれば、どうやってと方法を探ろうとするものもいる。
ここで俺は自分でも馬鹿らしいと思うアイデアが浮かんできた。普段だったら絶対にやらないことだがこの空気感が俺を動かした。
あとでアルバスとかに怒られるだろうなと思いながら、俺は先ほどまでアルバスが立っていた壇上にゆっくりと足をすすめた。
教授の席に座っているのはハグリッドやトレローニー教授。俺を壇上からひき下ろすであろう面々は今外出中だ。
「あーあー注目。代表選手に選ばれなかった諸君。君たちそれぞれ思うところはあるだろう。『年齢線をくぐり抜けられれば選ばれたかもしれない』とか『ポッターよりも優秀な自分がなぜ選ばれなかったのか』とか。まあ、そんな擦れたことを言っていても事実は変わらない。そうだろう?」
何が始まったんだ? と皆の視線がこちらに向く。
「そこで私が一つ君たちにチャンスを与えよう。これはただの4年生の言葉ではなく、ブラック家当主としての提案だ。興味がない人はもちろん大広間を出てもいい。責任は私が取るからね」
もちろん責任なんて取れるわけない。父親に頼んで金で解決するくらいだ。これだけ聞いたら貴族にアホ息子だな。
ブラック家当主の力は今も健在だったようだ。スリザリンの生徒が全員残っているのが証拠だ。
「……いないか。私は、『魔法薬学が得意な生徒』『将来癒者になりたい生徒』『リーダーシップがある生徒』そして『私の秘書をやりたいグリフィンドール生』を各2名募集しよう。もちろん年齢線は設けない。ただ、秘書は私と同じ談話室に入れないと困るから寮を縛るが、それ以外はどこの寮からでも大歓迎だ。選び方は実技、面接というところかな」
会場を見渡すと数名見知った顔が何をしているんだ? ってジェスチャーをしてきたが無視だ無視。
「ただのボランティアだと思うかもしれないが、そうではない。魔法薬学が得意な生徒には、私の知り合いの現役の研究者を紹介することもできるし、ブラック家が運営している薬草プラントと安く取引できる権利を与える。癒者になりたい生徒にはブラック家の管理している病院をいくつか紹介することができるから働き口を心配せずに卒業まで勉学に励める。リーダーシップがある生徒には、そうだな、今ブラック家が持っている事業をいくつか引き継いでもらうのもいい。そして最後にブラック家の秘書を務めたとなればどこの企業においても引く手数多なんじゃないかな。我こそはという者はよく考えて応募してくれ」
俺は知っている。この条件に食いつく生徒が一定数いることを。親がマグルだったり、イギリス魔法界にツテがない生徒は就職活動が極めて困難であることを。実力はあるのに下っ端からスタートしなければいけなかったり、そもそも受け入れ口が見つからなかったり。
そういった優秀な人材を今ここで拾っておけばブラック家に悪いことはない。こんなことを独断で生徒が決めるのはどうなのかと思うが、教授たちが問題児の俺を残して出て行ったのが悪い。
「応募方法は、そうだな。俺が作った炎の大鍋に羊皮紙を入れるようにしようか。だいたいルーン文字は解読したからレプリカくらい作れるだろうし。期日は三日。じゃあ、たくさんの応募を楽しみにしているよ」
こうして壇上を降りた。盛大な拍手と歓声と共に。
「ルーク、いつからそんなことやろうと考えていたの?」
「ハーマイオニー、この状況を俺が予想していたとでも言いたいのかい? 全部思いつきさ。いや、ブラックな会社を辞めたければ
「あなた詐欺師や政治家に向いていると思う」
「一つおもしろいことを教えてあげようか?」
「何だい?」
「俺がグリンデルバルトの血を引いてるって話。センスはあるんだ」
「なんだって「なんですって」?!」
「さぁ、仕事だ仕事。どんなメンバーが集まるか楽しみだ」
◆
寮に一足はやくかえり俺は盛大に飾り付けをしておいた。もちろんお祭り騒ぎが大好きなフレッドとジョージも参加したおかげで飾り付けは面白い感じになった。
「俺たちが祝わないで誰がハリーを祝うんだよ。グリフィンドールから代表選手がでたんだ!! みんなはハリーが年齢の規則をくぐり抜けてシーカーになったのを忘れたのか? たぶん彼って勇敢さとかが2歳くらいずれてるんだ」
「そうよ、ハッフルパフに勝てばこの間のクィディッチ戦のお返しができるじゃない!」
「ご馳走を用意しようぜジョージ。厨房にダッシュだ」
寮内を鼓舞するだけ鼓舞しておいた。いつもだったらこういうことはやらないんだけど、まあハリーも不安だろうから。
そっと談話室を離れて自室に向かう。
「ロン。ハリーが羨ましいか?」
「ルーク。僕も君みたいに心からハリーを応援できたらよかった」
「受け入れるのにも時間がかかるのは仕方ないさ。ハリーが名前を入れたのか、誰かが入れたのがたまたま選ばれたのか……考えても仕方ないとわかっていてもね」
「僕、たぶんルークだったら納得できた。だって君は学年一位だし、行動力もある。さっきの演説だって普通あんなことしない。それに君は『ブラック』だ。でも、ハリーは、勇敢だしクィディッチがうまいのはそうだけど、僕とおんなじくらいの成績だし、試練を乗り越えたって言ったって僕だってその時隣にいた。そうだろ? 納得できないんだ」
「そうだね。ロン、君が勇敢なことは三年一緒に過ごしてきた俺がよくわかってる。アラゴグの時だってスキャバーズの時だってね。そんな君がハリーの気持ちまで考えることができたらとっても素敵だと思う。今は急だったから気持ちの整理がついていないだろうから、今夜は目を背けてもいい。ゆっくり寝てまた明日話そう」
「おやすみルーク……ありがとう」
「ああ、おやすみ」
俺は自室の電気を消して部屋を後にした。
談話室に戻るとハリーがもみくちゃにされていた。
「僕名前を入れてない。どうしてこんなことになったのかわからないんだ」
ハリーの悲痛な叫びにふと頭に一つの考えが浮かんだ。
「ハリー、悪かった。名前を入れたのは俺だよ。なんなら年齢を超えないグリフィンドール生全員の名前をぶち込んだ」
「ルーク?? どういうこと??」
「みんなに謝らないといけないことがある。俺、ゴブレットに名前を入れるって行為で人の推薦もできるって知らなかったんだ。年齢線の越え方を知りたい人は個人的にきてくれ。まあもう意味のない技術だけど。俺は真夜中、年齢線を越えてグリフィンドール生の名簿をそこに突っ込んだ。そうしたら面白いだろうなと思って。本当にごめん」
「つまりルークが僕の名前を入れたってこと?」
「こんな大事になるとは思わなかったんだ」
バシンという音と共に俺は吹っ飛ばされた。頬が熱くなり、口の中が血の味で充満する。
「君って本当に最低だ。君が、君が僕の名前を入れなければこんな惨めな思いをしなくて済んだのに」
「ああ」
「絶交だ」
ハリーは談話室を飛び出て自室に走って行ってしまった。
「ルーク、僕たちの名前も入れてくれたのかい?」
「ああ、君たちの名前もちゃんと入れたよ」
「それならきっぱり諦め切れるよ。ありがとな。僕たちは感謝してるぜ」
「そうそう、一千ガリオンは賭けで勝てばいい」
フレッドとジョージに両腕を引っ張られ立ち上がった。
これでよかったんだ。ハリーは選手としてのプレッシャーだけで十分だ。なにかあればロンとハーマイオニーがハリーのフォローをしてくれるだろう。
俺が責められる分には問題ない。一年くらい耐えるのなんて余裕だったろ? それにハリーから少し離れたところにいれば名前を入れたやつの真意がわかるかもしれない。俺はアルバスを疑っているけど......流石に違うか。
◆
俺の大鍋は大盛況だった。特にスリザリンの半純血の子やレイブンクローの勉強熱心な子、そして俺のファン。
そして今俺はなにをやっているかというと必死にマクゴナガル教授と追いかけっこしてる。
「ブラック!! 待ちなさい!! 校内で何が起こっているのか説明なさい!!」
「平常運行です!!」
俺は手に大鍋を抱えながら、マクゴナガル教授は俺に減速魔法をかけながら廊下を走っている。いろんなところに魔法が当たっているせいで生徒の教科書が何冊か浮いている。教授廊下での魔法は禁止ですよ!!
「よっ、ブラック、ファイト!!」
「いけっルーク!! 逃げ切れ!!」
生徒たちはこのレースを揶揄いながら見ている。
そう、俺は別に逃げる必要なんてない。でもこうやって意味のわからないニュースをたくさん作っておけば必然的に代表に関する話は減っていく。話題性が高いネタをたくさんつくることで目を背けさせるよく政治家がやるあれだ。大事な法案が通るときほど芸能ニュースがたくさんとかね。
マクゴナガル教授の減速魔法にあたり、ゲームオーバーになった。
「校長室に一緒に行きますよ。そこで根掘り葉掘り話してもらいます」
「じゃあ、この大鍋は置いていきますね」
「いいえ、それも一緒に持ってきなさい」
「はいマクゴナガル教授」
校長室に着くとそこには、アルバス、スネイプ教授がいらっしゃった。そして俺の後ろにはマクゴナガル教授。はい、四面楚歌。
「ルーク、そこにかけなさい。紅茶かコーヒーどちらが好みかね?」
「紅茶で」
「ところで宴会のあと面白いことをやったようじゃね?」
「ああ、ボランティアの話ですか。ハリーが選ばれたあと急に学生の有志の運営団体をふと作りたいなと考えまして。1日スネイプ教授のもとで仕事をしていてより効率よく進めようとした結果、ちょうどいいひな壇があったのでつい」
「壇に無断であがったのはいただけぬが、三大魔法学校対抗試合を盛り上げようとする心意気は認めんといかんな。そう思わんかね、セブルス」
「吾輩の仕事が増えなければ特になにも」
「では、これで失礼いたしま──」
もちろんこれが本題ではないだろう。それは俺も知っている。
「そう焦らんくても良い。ところでこれも噂なんじゃが、ハリーの件じゃ」
「ハリー? なんのことでしょう」
「今朝、生徒たちが話しておったのじゃが。なんと不思議なことを話しておる」
「寝ぼけていたのでは?」
「そうではない。彼らはハリーの名前を君が入れたと言っておったのじゃ。年齢線を越えて」
「おかしな話ですね……まあその話の発端は俺ですけど」
「どういうことだブラック」
「ハリーが入れたとか入れないとか正直名前が出てしまった以上もうどうでもいいことです。しかし、生徒からしてみればなんとも納得がいかない。そこで俺が彼の名前を入れたことにすればハリーに向いていた負の感情のベクトルが分散します。そしてハリーも全てを俺のせいにすることができます。彼は4年生、まだあの視線に耐えられない」
「そういうあなたもまだ4年生です。それを背負うのは同様に負担でしょう」
マクゴナガル教授が心配そうにこちらを見てきた。
「じゃあハリーを棄権させるべきだったのでは? そもそもアルバっ、校長があの紙を白紙の紙が出てきたようだとかなんとか言って誤魔化せばよかったのでは? 俺だったら、『お試しで入れた自分の名前が出てきたみたいだ。やっぱり炎のゴブレットは俺の能力をわかってる』くらい言ってなかったことにしていた」
「それはできんのじゃルーク。魔法で誓約が結ばれている以上」
「つまり、俺がやったことがベストだったってことじゃないですか」
「わしは君の親として君を心配しておるんじゃ」
「ありがとうアルバス、でもハリーが辛い思いをしてるんだ。少しくらい肩代わりしてあげたいっていうのが友情でしょ?」
「……そうじゃな、セブルス悪いんじゃがルークの頬に傷薬を塗ってやってくれ。痛々しくてのう」
俺は雑に頬に軟膏を塗られて顔を顰めた。今日のスネイプ教授は意地悪だ。
「話をもどします。すでに調査中かもしれませんが、ハリーも俺も紙を入れていない。これが何か仕組まれたことなのだとしたら関係者を含め一度疑った方がいいのではないでしょうか。特にゴブレットを混乱させることが可能な魔法使いは重点的に。ご自身も含め。またなにかあれば報告しますよ。何もないといいですけどね」
教授たちはそれはお前の仕事ではないと言いたいのだろうが、この状況で功利主義の考え方をするのならば俺が状況緩和に適している。それをここにいる人たちは全て理解していた。
「では、失礼しました」
校長室に背を向け大きく息を吸い込んだ。大丈夫。どうにかならなくなったら助けて貰えばいい。
◆
ロンとハリー、そしてハーマイオニーは比較的うまくいっているようだ。よかった。ロンとハーマイオニーが授業中何回かこちらに目配せをしてきた。ただ、ハリーとは全く目があわない。せっかく半年前くらいに仲直りをしたはずなのに一からになった。
ちょっと憂鬱な気持ちを抱えながら、でも仕事と宿題に追われる日常をすごしていた。すでに大鍋の面接は終了し、選抜された人に仕事を割り振ったおかげで地獄の医務室と地下の往復はなくなった。
ちなみに秘書はジニーがやってくれている。ありがたい。さすがファンクラブ会長。
心荒立てることなく過ごせたのは金曜日の昼食までだった。
「気に入ったかいポッター? それにこれだけじゃないんだ──ほら!」
ドラコがハリーに見せていたのは趣味の悪いバッジだった。
『セドリック・ディゴリーを応援しよう、ホグワーツの真のチャンピオンを! 汚いぞ、ポッター』
「あら、とてもおもしろいじゃない。本当にお洒落だわ」
「一つあげようかグレンジャー。たくさんあるんだ。だけど、僕の手に今触らないでくれ。手を洗ったばかりなんで『穢れた血』でベットリにされたくないんだよ」
ハリーにドラコの幼稚な発言はいつものことだ無視すればいい、そう言おうとしたが遅かった。ハリーが杖を抜いた。ドラコも杖を抜く。ここは地下、危険な薬品から貴重な材料まですべて揃っている。そして大量生産中の薬たちもここに保存されている。
「ファーナンキュラス! 鼻呪い!」
「テンソージオ! 歯呪い!」
二人の杖から飛び出した光が空中でぶつかり折れ曲がって跳ね返った。ハリーの光線はゴイルにぶつかり、ドラコの光線がハーマイオニーに命中した。
「っハーマイオニー、落ち着いて。フィニート・インカンターテム。ほら、医務室に行っておいで」
そしてその後のことはあまり覚えていない。気づいたら俺はハリーとドラコを盛大に殴って廊下に放り投げていた。
「やっていいことと悪いことがわからないのかお前ら。この狭い空間で呪いをかけることがどんなに危険か!! 今回は近くの人に呪いが当たった。それも最悪だが、ここがどこかわかっているのか。危険な薬品に貴重な薬草、ただでさえ薬品の供給が追いついていない状況で薬草を無駄にすることの危険性が考えられないほど君たちは幼稚なのか」
「ヒッ」
「ブラック!!」
俺はスネイプ教授に羽交い締めにされた。
「何があった」
「先生、ポッターが襲ってきてそのあとルークが僕のことを殴りました!!」
「ブラック、言い分は?」
「ポッターとマルフォイがここで呪いの掛け合いを始めました。あのままでは薬草と薬大鍋いっぱい分が無駄になるところでした。大事になる前に二人を廊下に追い出しただけです。あと、ゴイルを医務室に連れていくべきかと」
スネイプ教授がゴイルを一瞥し、その後薬草棚に視線を向けた。
「ゴイル、医務室に。なんとも、ホグワーツの代表がこのような脳無しが選ばれるとは非常に遺憾である」
「マルフォイがハーマイオニーを穢れた血と侮辱したんだ!!」
「ポッター、居残り罰だ。さあ、教室に入りたまえ。ブラック、お前は落ち着いたら戻ってこい」
その言葉で自分が平常時の自分と違うことに気がつかされた。
「はい、教授」
頭に血が昇っていたようだ。俺は教室を出て、だれもいない湖に向かった。
「フラッフィー、聞いてくれよ。ハーマイオニーが歯呪いにあたったんだ。杖を抜いて守ってあげるべきだったのかな。でも、あそこは杖を振り回すところじゃないんだ。お前は俺の判断が正しかったと思うか? でも殴りとばすのは違ったよな。口で言えばよかったって俺も思う。ハーマイオニーを傷つけられたとか、みんなの努力の結晶の薬草が危なかったとかそういうのが色々重なって、気づいたら動いてたんだ。あー、やっぱりああいう時周りが見えなくなるのどうにかしないと……。そもそもあのバッジの話の時に一緒に批判すべきだったのか。あの時俺は何をすべきだった? もうわかんないや。フラッフィー、慰めてくれてるのかい? 君はいつも俺の味方をしてくれる。優しいなあ。やなこといっぱいな地上じゃなくて冥界でいっしょにフリスビーやろうって? それは最終手段だよ。あーくそっ、目が腫れるのは避けたいのに」
俺は重力に逆らおうと寝そべった。ただ、俺の目は許容量を超えたらしい。目の脇に伝っていくのを感じた。
「……うまくいかないな」
久しぶりの自分の無力感にイラついた。