オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
「ルーク、何かあったの?」
「やあ、ジニー。あったといえば色々あったけど、簡潔にまとめると最近の件でより自己嫌悪に陥っていたって感じ。思春期にありがちなあれだよ」
「そうやって自分が悪いと思っているところどうにかしたほうがいいんじゃないかしら」
「そうかな? だってそれが事実だし」
「あなたは現状むしろよくやってると思うわ。ハリーが選ばれた時の即座の行動だってあなた以外できる人はあの場にいなかったわ。学生団体の運営もうまくいってる。その証拠にどの教授のクマも薄くなっているし」
「ジニー、なんで教授の隈なんて見ているんだ」
「最近美容が女の子たちの中でブームなの」
「だから今日のリップの色がいつもと違うのかい?」
「そう!! 新作なの」
ハリーと話す頻度に反比例してジニーと話すことが増えた。彼女は優秀な秘書をやってくれている。特に俺からメンバーへの伝令を正確に通してくれるのはありがたい。
「ねえ、ルーク。次のホグズミード、私と一緒にいかない? 許可おりたんでしょう?」
「ああ、いいよ。行きたいところがあるの?」
「うーん、そうね。まず三本の箒は行ってみたいわ。あとハニーデュークスも。でも初めてだから目的があるってよりはいろんなところを回ってみたいの」
「いいね、案内はできないけど一緒に楽しむことはできそうだ。俺はハニーデュークスしかまともに行ったことがないからね」
「それアウトな発言よ。あなたの体は去年ホグズミードに出てはいけなかったんだから」
「パーティーにはお菓子が必要なことが多いんだ」
俺はジニーと顔を合わせて笑った。
ホグズミード当日、俺たちは談話室で待ち合わせをして出発した。
「その髪留め、まだ使ってくれてたんだ」
「もちろん、これ私のお気に入りなの。ルークもピアス似合ってる」
「ああ、また新しいの選んでよ。俺が選ぶとちょっとパンクなのを選んじゃいがちだから」
「男の子が好きそうなやつね。なにをつけても様にはなると思うけど……そうね、選んであげる!!」
「ありがとう。じゃあ行こうか。どこから回りたい?」
「そうね、やっぱりハニーデュークスがいいわ!」
「いいね、俺も眠気覚まし用のガムを買いたい」
「それは止めるべきか迷うわね。あなたは何はともあれ睡眠時間を確保すべきよ」
俺たちを通り過ぎる生徒を見てジニーが言った。
「あのバッジ、趣味が悪いわ。つけていて恥ずかしくないのかしら」
「……忘れてた」
「何を?」
「あのバッジをどうにかやめさせられないかって考えていたことを」
「ルーク、正直言ってあなた手を出しすぎよ。あんなのあなたがどうこうする必要ないわ。頭の弱い人たちはほうっておけばいいじゃない」
「でもホグワーツの品位に関わる」
「じゃあ、忙しいルークの代わりに私がなんとかしてあげる。でも、先に言っておくけどちょっとあなたに迷惑がかかるわ」
「ああ、あれがなくなるならなんでもいいよ」
「じゃあ、ハニーデュークスに行ったら郵便を出さなくちゃ。バッジ1000個受注しないとね」
「なんのバッジを作るんだい?」
「ルーク・ブラックファンクラブオリジナルバッジ。これでハッフルパフのほとんどがあなたのバッジをつけてあの品のないバッジを外すはずよ」
「あー、1000は作りすぎじゃないか? ホグワーツの生徒の数を考えてからもう一度計算し直すべきじゃないかい?」
「そんなことないわ。購入特典をつければ絶対捌けるし、むしろカラーバリエーションでランダムにしたり、シークレットをつくる必要があるかの方が論点として重要だわ」
俺の人気は高いようだ。
俺たちはハニーデュークスに行き、郵送をし、三本の箒でバタービールを飲んで、お互いにアクセサリーとピアスをプレゼントしあった。
「今日はとっても充実してたわ!! 一緒に来てくれてありがとう」
「こちらこそ。君のおかげで日常を忘れられたよ。楽しかった」
耳元で軽い「チュッ」と音が聞こえた。驚きで俺はあげかけた手を動かせなかった。
「お礼のキス。じゃあね」
あの母親の背中に隠れていた彼女はいつの間にか女の子としてのあざとさを身につけていたようだ。
俺は前髪をかき上げため息をついた。
◆
談話室で火傷の薬をして研究ノートをまとめているとロンとハーマイオニーが話しかけてきた。
「ルーク、ちょっといいかしら?」
「ハリーは? 俺と話しているのを見られたらあまりいい気分しないんじゃないか?」
「今ハリーはハグリッドのところにいるから大丈夫。それにハリーに私たちの関係まで邪魔される筋合いはないわ」
「そっか、で、話って?」
ロンとハーマイオニーが俺を引っ張って談話室の隅の隅に連れていく。
「まず確認。あなたは名前を入れていない。そうでしょ?」
その質問に嘘をつくべきか迷ったがあまりにもハーマイオニーが自信を持って聞いてきたからきちんと答えてしまった。
「ああ、今の俺がアルバスの年齢線を破れるわけない。君たちも知っての通りね」
「やっぱり!! 僕が次の日起きたらハリーがルークが最低だなんだって言い出したんだ。そしたら僕を慰めて、背中を押してくれたあいつは誰だったんだ? ってなったよ。なんであんな嘘ついたんだよ? ハリー、君のことを死ぬほど恨んでるぞ。というか僕が不貞腐れたままだったらどうするつもりだったんだ? あやうくハリーは味方がいなくなるところだった」
「それは──「ハリーは実際入れていないのに、周りからは入れたと思われているという状況が1番彼にとってストレスだからよ」」
「そうだね。ハリーは俺を恨めば代表選手になったことを納得できる。自分じゃないのにって思っているより、あいつのせいだと思っている時の方が壊れにくい。それにロンは強いから時間があれば持ち直すって最初から思ってたよ。思ったよりも早かったけど」
「ふふっ、そんなに僕って強いかなあ……じゃなくて、君ってとんでもなくお人好しだ。というかその度合いが狂ってるよ。いつかハリーのために死ぬんじゃないか?」
「本当にそうなりそうだからそんなこと言わないでロン。明日、と言ってももうすぐだけど、1時にハリーとシリウスがそこの暖炉で会うらしいの。あなたは……お父さんに会わなくていいの?」
「いいよ。父さんもハリーのことで忙しいだろ」
「ルーク、君って人になんでも譲りすぎだよ。君だって父親に会ったのは指で数えられるくらいなんだろ? 僕だったら全部独り占めしたいし……自分を苦しめてまで救ってもらっても嬉しくないんじゃないかな」
「父親の件は置いておいて、相手に俺が苦しんでるって知られなければいいんじゃないか?」
「周りが、私たちが知ってるわ。それに私たちもあなたとハリーの仲が良くないとつらいわ。ねえ、あなたは優秀さと優しさを使うところを間違っていると思う。特に今回は度がすぎてるわ」
「じゃあどうすればよかったと思う?」
「名前を入れたなんて嘘をつく必要はなかったのよ。せめてハリーには伝えておくべきよ。ハリーが事実を知ったら罪悪感に苛まれるわ。それって本当に良い選択なの?」
「……」
「はっきり言いますけど、最近のあなたの行動はある種の傲慢だわ。それに自ら孤独への道に進んで行こうとする癖も直すべきよ」
「君ってトラブルが起こったら、まず自分を動かそうとするけどそれって当たり前じゃあないんだぞ。だって魔法使い一人でできることなんてたかが知れてるからね。でも君の場合は、その、魔法使い一人よりも遥かに多い手札を持っちゃっているからそれに気づけてないんだ」
「あなたは手札を使うことに自分の価値を見出しているのかもしれないけれど、何も持っていない、あなたという存在が尊い価値あるものなのよ」
俺は理解できなかった。いやもしかしたら理解したくない考えなのかもしれない。彼らが言っていることはしっくりこなかった。
実力があるから生き残ってこられたし、厚遇された経験は俺の軸になっている。また力のある者、特権を享受している者は持っていない者のために動くことは当たり前だ。ノブレスオブリージュって言葉もあるだろう?
「君たちが言っていることを理解し行動を変えることは今の俺には難しい。時間をくれないか?」
一度自分の根本を見つめ直す機会が必要なのかもしれない。
ただそんな時間が作れるほど俺は暇ではなかったし、そのことについて真剣に悩めるほど大人ではなかった。
◆
ハリーが呼び寄せ呪文で箒を呼び寄せる予定だとハーマイオニーから聞いた。
すごくいいアイデアだと思ったが、一つ気になった。
ハリーの箒が置いてある小屋は鍵がかかっていなかったか? 呼び寄せ呪文も流石に四方八方が囲まれたらどうしようもない。まあ俺の杖は別だけど。あいつ押さえつけられていない限り絶対俺のポケットに収まっているから。いや、押さえつけても無駄か。
一回目の試練の前の真夜中、俺はベッドを抜け出した。そして、影を纏いながら箒が置いてある部屋に向かった。
こういうところが良くないのだろうか? ハリーに箒の鍵は確認した? と尋ねるのが良いのか? 俺が裏で行動しているこの行為もハリーのためを思ったらやらない方がいいのか?
「ルーク、そこで何をしている」
まさかこの状態で声をかけられるとは思わなかった。
「……ムーディ教授」
「なぜ自分がいることがわかったのかという顔をしているな。わしの目はそのような類のものを見透かす。先ほどの質問に戻ろう。ここで何をしている。生徒の消灯時間はとうにすぎているはずだが」
「友人の箒の調子を見に」
「ポッターか。試練の打開策を見つけたようだな」
「あの、アドバイスをしたのは教授、あなただったのですか?」
「ポッターをドラゴンの餌食にするわけにはいかないからな」
「不正行為では?」
「各々それに近いことをやっている。カルカロフなんか特にな」
「じゃあ、今から俺がやろうとしていることとあなたがやろうとしていることは同じな気がします」
「箒小屋の扉の鍵を管理人がかけ忘れた」
「そしてハリーは箒を自分のロッカーに戻さず扉の近くに放っておいた」
ムーディ教授はニヤッと笑った。
「わしはお前が代表選手として戦うのを見たかった」
「過大評価ですよ。きっと貴重なドラゴンをタルタロスの死の奈落に落として失格になるのが関の山でしょう」
「クラウチが頭を抱えるだろうな、ハッ」
叱られたり寮に戻されることなく俺はハリーの箒をロッカーから取り出し、一番出て行きやすそうなところにおいた。
「アクシオ、うん。君は数時間後ハリーめがけて飛んでいくんだよ」
小屋の鍵をあけ、扉を半開きにして外に出た。
「真夜中の生徒の外出はホグワーツでは禁止事項だったな。明日わしの部屋に消灯後くるように。罰則だ」
「失礼ながらそれは罰則で規則をやぶることになりますが」
「察しが悪いな。毎日訪ねてこい。お前に必要な技術を教えてやる」
そして最後にこう言った。
「君には期待している」
◆
第一の課題の試合当日、俺は選手の控えテントの前をふらふらしていた。
俺たちのチームは大量の火傷薬と止血剤、そして応急処置を迷わずできるチームメンバーを用意した。ちなみにチームメンバーには試練の内容は伝わっていなかったが、スネイプ教授から言われた薬からなんとなくは内容を察していたようだ。それでも尻尾爆発なんちゃらとかだと思っていたようだが。
会場の整備、揉め事が起こらないようパトロールもしている。そして俺は選手の要望に応えられるように様子を伺い続けていた。
代表選手がドラゴンのミニチュアを袋から引いたのを横目に見ていた。ハリーが引いたのはなんと運が悪い、一番獰猛なハンガリー・ホーンテールだった。
試練の順番はセドリック、フラー、クラム、ハリーの順だった。
俺はハリーに「君は最高のシーカーだろ? 自信持って行けよ」って言いたかったがもちろんその言葉は俺の心の中で止まっている。今言ったらハリーがドラゴンを倒す前に俺を倒しにかかりそうだから。
選手たちの戦いが終わると共に、救急テントで戦いが始まった。
マダム・ポンフリーと癒者志望が戻ってきた選手の健康チェックをしながら、魔法薬学担当が適切な薬を持ってくる。そんなことをやっている間に新しい患者がやってくる。そんな中俺は全体を見ながらチームメンバーに次の動きを伝えていく。
「マイク、レベッカによるとフラーは火傷と出血、気分が不安定だと」
「了解、消毒、火傷、止血、あとは癒し薬か」
「ユンジ、包帯が必要なのは何箇所かってセインが」
「捻挫用1と出血・火傷用3」
「クラムはこっちのベッドに座らせてくれ。めまいとか吐き気とかあるかい?」
「大丈夫、爪がかすった、痛い」
「レベッカ、隣の部屋、クラムを頼む」
「すぐ行く!!」
これをマダム・ポンフリーただ一人に任せようとしていた学校の運営やばすぎだろ。
すぐにハリーもテントにやってきた。
「お疲れ、肩の傷は消毒が必要だね。めまいや吐き気は? ないなら安心だ。大丈夫、すぐ治る。マイク!! 消毒と軟膏、出血用の包帯を。痛みはまだアドレナリンが出ているから薄いかな。マダム・ポンフリーしか医療行為はしちゃいけないことになっているんだ。でもすぐ来るはずだよ。ああ、マイクありがとう」
紫色の消毒液をかけて軟膏を塗り包帯を巻く。
「マダム・ポンフリーが来たら綺麗に傷を消し去ってくれるよ。安静にする必要はあるけどね。卵を取るの最短だったそうじゃないか、よく乗り越えたな。すごいよ」
一方的に話しきってマダム・ポンフリーにバトンタッチをした。
「ポッターの具合はどうだ?」
ムーディ教授がテントの外にいる俺に近づいてきた。
「軽傷でしたよ。肩の傷も筋肉までは抉っていなかったのでもうすっかり綺麗になっているでしょう」
「そうか、それはよかった。ところでお前は何語が聞き取れる?」
「英語、中国語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ラテン語くらいですかね。あとは古代ギリシャ語とか。どうしてそんなことを?」
「ダンブルドアから教わった言語はあるか?」
「あー、蛇語とかマーミッシュ語ってことですか? 彼がその類の言語を学んだことがあるのは知っていますけど教わってはいませんよ。というか喋っているところすら見たことないですし。もしかして次の試練はバジリスクだったりします?」
「いや、知らんのならよい。では今夜待っている」
ムーディ教授は足を引き摺りながら人混みに紛れて行った。
◆
ハリーのお祝いパーティーで盛り上がっている中抜け出すのは簡単だった。ハリーが卵を解放して甲高い叫び声のような何かで皆が耳を塞いでいるうちに肖像画をくぐった。
「こんばんは、ムーディ教授。俺はあなたから何を教えてもらえるのでしょうか」
つまらないことを教えるんだったら帰るぞ、そんな気持ちでそう尋ねた。
「魔法使いの戦闘の基本だ。杖を出せ。戦場で生き残る術を教えてやる」
決闘をするための大きな部屋。月明かりが二人を照らしている。お互い杖を構えた。
「決闘だ。一度でもわしの杖を飛ばしたらお前の勝ちだ。いくぞ」
「ステューピファイ!! プロテゴっ、レダクト!! インペディメンタ クソっ」
全て弾かれるか避けられる。俺の攻撃は飛んでいるハエと変わらない、そんな態度だ。
その上彼の攻撃はえげつない。俺の身体能力が低かったら一方的な虐待が行われただろう。ブラッジャーのような攻撃。避けても弾いてもしつこく攻撃してくる。実戦だったら、または相手がモンスターだったら命のやりとりができるのだが、今回は訓練こっちが圧倒的不利だ。
「高度な攻撃魔法が使えるだけでは意味がない。もっと賢くなれ」
「ルーモスソレム!!」
俺は部屋中を明るく照らした。そして影を移動しムーディの背後を取る。
「エクスパルソ爆発、ノックス消えろっ」
ムーディの足元を爆破し、明かりを消す。先ほどよりムーディは闇を感じているだろう。
「エクスペリアームス!!」
「視力を封じ背後をとるのは悪くない作戦だ。だがわしにはこの目がある限りそれはきかん」
俺はムーディ教授の無言呪文により体を吹っ飛ばされた。
「戦闘中叫べば叫ぶだけ体力が奪われる。相手も何がくるかわかっていれば対処もしやすい。つまり何が言いたいかわかるな?」
「……無言呪文を混ぜろと」
「決定打まで無言呪文を使えば威力が落ちるが、それ以外の呪文を相手に教えてやる理由はない。お前がまず学ぶべきは詠唱なしの呪文だ」
実践形式の練習は体力が削られた。ムーディ教授は部屋の中心にいるが俺はそれを中心に走り回っている。
「魔法がでてないぞ。その程度か」
「くそっ」
詠唱なしの呪文なんて家事魔法程度でしかやったことがない。始めは不発ばかりで何度も吹っ飛ばされて床に背中をぶつけた。
「今日はここまでにする。明日までにはできるようになっているように」
スパルタだ。古代ギリシャのスパルタでもこんなに過激じゃないだろう。
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