オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ?   作:Luke Black

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ルーク、パートナーを探す

 日に日に青あざやら切り傷が増えていくのは仕方がないことだった。ただこれで医務室に行くわけにはいかないし貴重なアンブロシアを食べるわけにもいかない。

 

 でもその分詠唱なしの呪文の成功率が格段に上がってきた。最初はできたらラッキーだったレベルからどんなに疲れていても威力無視なら確実に成功している。それに新しく強力な魔法もいくつも教わった。闇の魔術だから使うことはほぼないだろうけど、俺はその類の魔法と相性がとてもいいこともわかった。

 

 すっかり単独行動をすることが増えたな、なんて感傷に浸りながら鍋をかき混ぜる。

 

 朝起きて一人で朝食に向かい、一人で食べているところをジニーが合流する。授業に向かい、昼はビリーに頼んで湖の人気が少ないところで食べる。そこで昼寝をしたあと授業を受け、談話室で課題をやり終わったら外に出る。そしてマートルと社交辞令的に話し、2年生の時に見つけた部屋を開ける。蛇語は全くわからないがあのワードだけは完璧だ。そこでひたすら無言呪文の練習をする。疲れたらフラッフィーをモフる。深夜になったらムーディ教授のところに向かい指導を受ける。明け方ベッドに潜る。この生活のせいで最近はベッドのカーテンを閉めっぱなしだ。

 

「ブラック、この後教室に残るように」

 

 魔法薬学が始まって半ば耳元でそう囁かれた。

 

 ハリーは1回目の試練以降は楽しく過ごしているようだった。皆ハリーがドラゴンの試練を見事突破してから彼を見る目が変わった。

 

「ブラックいつまで鍋をかき混ぜているつもりだ」

「っやべ」

 

 魔法薬学で失敗したのはひさしぶりだ。今日は提出課題がない分成績には関係ないがひどい失態だ。

 

 俺は杖で鍋を叩き空にした。エバネスコくらいなら無言呪文は余裕だななんて思いながら。

 

 それをスネイプ教授が訝しげに見ていたのには気づかなかった。

 

 授業が終わり生徒がはけていく。教室内には俺と教授の二人になった。

 

「ブラック、制服を脱げ」

「いや、俺そういう趣味はない「早くしろ」わかりましたよ」

 

 俺のツルツルの体をお披露目する。健康体そのものだ。

 

「いった、ちょグッ」

「どうして隠せると思った?」

 

 教授の杖で強めに叩かれて傷跡や打撲痕が浮かび上がってきた。

 

「この傷はなんだ? 最近お前は何をしている?」

「特になにも」

「話す気がないのなら、読むまでだ。レジリメンス」

 

 奇妙な感覚だ。心地よい物ではない。俺の記憶の隅から隅までを覗かれる感覚。アルバスから教授はすごい開心術師だと聞いたことがある。それなのに無言呪文を使わないのはより強く魔法をかけたかったからか、それとも俺が教授から何をされているかを気づかせるためか。

 

「ムーディか……狂っているな。お前もあやつも」

「彼は俺の知らない世界を見せてくれるんです。授業では決して見ることができなかった実戦を。見たならわかるでしょう? 俺は日に日に魔法が強くなっている」

「その世界を見なくていい年齢の者がホグワーツに通っていることがわからないのか」

「でも強いことに越したことはないですよね」

「短絡的で自惚れ、さすがグリフィンドール。同学年よりすこし優れているからといって全てを自分でできると思い込んでいる。そして周りの大人はそれを褒める。グリフィンドールしか周りにいないと大変ですな」

 

 スネイプ教授は苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。

 

「何が言いたいんですか?」

「お前がやるべき範疇を超えている。身を削ってまでして期待に応えようなど愚か者がすることだ。ムーディには吾輩から言っておいてやろう。閉心術もまともにつかえないお子様に武器をもたせてもしもべ妖精にローブだと」

「っじゃあ、閉心術をおぼえればいいんですね」

「それが第一段階だ。それができなければ強さをただ他人に利用されるだけ」

「教えてください。……お願いします」

「はあ、呆れるな。さっきの話を聞いていたのか? 今お前に必要なことは実戦よりもその前段階の基礎知識・技術、思想の形成、あとは取るに足らない友人とのなんとやらだ。吾輩としては友人も選ぶべきだと思いますぞ。そもそもお前のような性質のやつはポッターなどと一緒にいるとすり減るだけであろう。あやつが自分のことを中心だと思っている限り」

「確かにハリーとはなぜ友達なのかはよくわからないですけど、友達であることに理由も損得もないと俺は思いますよ」

「甘ったれた考え方だ。それで苦しむのは自分だというのに」

「閉心術を教えてもらうにはどうすればいいんですか?」

「話を何度もどせば気が済むんだ。まあ、吾輩が納得するレポートがかけて、かつポッターへの自分の体調すらも犠牲にするようないらない尻拭いをやめたことがわかったら教えてやってもいいだろう。まあお前の性質を考えるといつになることだろうか」

「それが条件なら努力しましょう。判定が主観なことは少し気になりますが」

「……本当に似ている」

 

 寮にもどりベッドに寝転がりながらよくよく考えた。

 

 闇の魔術を鍛える必要は別にない。そもそも最初にムーディ教授に提案されたのは戦場で生き延びる力。これじゃあ戦場の第一線で活躍する力だ。いつのまにか趣旨がおかしなことにひんまがっていた。

 

 何かに魅入られていたのか。

 

 

 クリスマスが近づいてきたころ変身術の授業でお知らせがあった。

 

「ユールボールが近づいてきました。三大魔法学校対抗試合の伝統でもあり、外国からのお客さまと知り合う機会でもあります。さて、ユールボールは四年生以上が参加を許されます。下級生を招待することも可能ですがパーティ用のドレスローブを着用する必要があります。会場は大広間でクリスマスの夜八時からはじまり、夜中の十二時に終わります。ところでユールボールは私たち全員にとってはめを外すチャンスです。しかしだからと言って決してホグワーツの生徒に期待される行動基準を緩めるわけではありません。グリフィンドール生がどんな形にせよ学校に屈辱を与えることがあれば大変遺憾に思います」

 

 つまりダンスの相手を見つけないと惨めなユールボールになるということか。

 

 誰を誘おうか……。

 

 ユールボールのお知らせは他の寮、学年でも行われたらしい。一気にその話題で持ちきりになった。廊下では固まった女子たちがクスクスと話しているし、男子生徒もなんだか居心地が悪そうにしている。うわついた雰囲気に包まれていた。

 

 ハリーはすでに何人かに申し込まれているらしいがノーと言っているらしい。

 

 俺? お知らせから数日たった今まだパートナーは決まっていない。初めて会った子をペアにするのは何か違うなと思って俺も丁寧に断っている。それも次第に疲れて最近は影での移動が増えた。ちなみに実は、俺は注目とか人混みは覚悟しないと入っていけないタイプだ。

 

 でもそんなことを言ってられない。このままだと誘いたい人はいなくなってしまう。そう思って俺は思い切って声をかけた。

 

「あー、ハーマイオニー今いい?」

「あら、どうしたの? ……移動する?」

「そうしてくれるとありがたいかも」

 

 談話室の隅の方に行きソファーに腰をかける。

 

「何かあったの? ついこの間まで亡者みたいな雰囲気だったけど最近は元気そうでよかったわ。本当にあなたとこうやってゆっくり話すのは久しぶりね。あなたいつも授業遠くで受けるし、終わったと思ったらどこかに行っているんだもの」

「ああ、うん、そうだね。色々あったんだ。ムーディ教授の個人授業を受けていたんだけどスパルタでね。今はスネイプ教授との個人授業だから私生活が疎かになったら打ち切られ、ってそんな話はあとでいいんだ」

「そうだ、話ってなに?」

「ふー、うん。俺とクリスマス、ユールボールにパートナーとして出席しない?」

 

 ハーマイオニーが目を丸くした。そして口を開いて閉じて、もう一度口を開けた。

 

「えっ……ルーク、本当にごめんなさい。あの、もう誘われちゃって、あなたユールボールにはゲストとしてじゃなくて運営として参加すると思ってたから。最近すごく忙しそうだったし、全員断っているって聞いたから」

「……そっか。それなら、あー、仕方ないね。ちなみにお相手を聞いても?」

「クラムよ、ビクトール・クラム。外国の生徒との交流が大切ってマクゴナガル教授もおっしゃっていたじゃない?」

「そうだったっけ。じゃあ、エスコートは彼に任せるとして……一曲は俺と踊ってくれない? 結構……君と踊るの期待してたんだ」

「もちろんよ!! しっかりダンスを練習しとくわ」

 

 耳が熱い。断られた衝撃とオーケーをもらった衝撃のダブルパンチだ。

 

「あら、ルークまだペアが決まってないの? そうしたら私なんてどう? 上級生が誘ってくれないとパーティ会場にすら入れないの」

「ジニー、聞いてたのか。ああ、まだ決まっていないよ。でも君は俺でいいの?」

「もちろん!! あなたと行けるならとっても幸せだわ。ね、そう思うでしょハーマイオニー?」

「そ、そう……ね」

「じゃあルーク約束ね!!」

「ああ、一緒に行こうか」

 

 あとでシェーマスに言われたんだが、俺の背後は殺伐としていたらしい。そんなことはなかったと思うけど。

 

 俺がジニーと参加することは学校中でそこそこ噂になっているようだ。

 

「どっちから誘ったんだ?」

「すっごくお似合いだと思う!!」

「ルーク、そのカリスマ僕にも分けてよ」

 

 そんな声をかけられることが増えた。俺もそれを適当にあしらう方法を身につけてからは特になにも思わなくなった。

 

 そして俺の耳にまで大ニュースとして飛び込んできたのは友人の失敗談だった。談話室で同期何人かと話しているとふとそんな話題が飛び出てきた。

 

「ロンがフラーにユールボールを誘ったらしいぜ。そしてこう言われた『あーの、あなたのおともだちのルークはもう相手がいるといまーすか?』ってね。ロン豆でっぽう食らったような顔をしてこう言ったんだ『ああ、僕の妹とね』って、そしたら『ざんねーんでーす。妹のガブリエラにと思ったんでーす。彼から誘ってくるならあたしが踊ってもよかったでーすしね』そして彼女立ち去ったんだ」

「いや、俺なんでそこで話題にあがるの」

「お前はいいよな。可愛い後輩がペア確定でさ。けっこうみんな狙ってたんだぜ。美人だろ?」

「まあ、彼女とは入学前からの付き合いだからね。優しい後輩だ」

「でもルークははっきり言って選び放題だったろ? 君のお誘いを断る女の子なんていないだろうしさ」

「……嫌なことを思い出させないでくれ」

「えっ、断られたの?!」

「ああ、クラムに先を越された」

「わお、まあクラムなら仕方ないよ。彼有名なシーカーな上に代表選手だし」

「その女の子って誰なんだ……?」

 

 

 ユールボール当日の外は雪だった。男どもが雪合戦という熱き戦いをしている中女の子は早々に寮にこもっていた。

 

 俺はというと会場のセッティングから音楽のセトリ、タイムテーブルの確認など大広間で最終チェックに勤しんでいる。

 

「その机はあっちに運んでくれ。ビリー、ここにカクテル類を置いたら取りづらいと思うかい?」

「ビリーが思うにこちらの方がよろしいのではないかと思うのです」

「じゃあそうしよう。そこの君たち、メニューのオーダー制はうまくいくかリハーサルは済んでいるかい?」

「完璧でございます。口に出して注文してくださればすぐにお皿に用意いたします!!」

「ビュッフェ形式だと会場が手狭になるから、大変だと思うけど頼んだよ」

「「忙しいのは本望でございます!!」」

 

 妖女シスターズのリハーサルを横耳に、会場の飾り付けをしていたら自分が身支度すべき時間になっていた。慌てて寮に戻ると一人で踊っているネビルとバッタリ遭遇した。

 

「ルーク、まだ着替えてないのかい?」

「ちょっと手間取っていてね、ネビル今日の君すごくイケてるよ」

「ありがとう! ダンスの練習もいっぱいしたしね」

「相手はルーナだっけ? 精一杯楽しませてあげなよ」

「言われなくても!」

 

 ユールボールという非日常は人の性格も変えてしまうようだ。今日のネビルはいつもの何倍も男前だ。

 

 俺はトランクに仕舞い込んであった父親からもらったローブに腕を通す。

 

 ちょっと古典的なデザインだよな。まあいいか。なんて言おうものならロンが飛びかかってきそうなので俺は終始無言を貫いた。そもそも同じ部屋をハリーと使っているから会話なんてできる雰囲気ではない。

 

 いつもはおろしている前髪を整髪剤で後ろに流し、適当な香水を振る。男の準備なんてこんな物だろう。そう思い部屋を出て談話室に向かう。

 

「隈はどうしようもないか。女の子に何か貸して貰えばよかったな」

「あら、いい物私持ってるわよ」

「ジニー、俺の方が早く待っているつもりだったのに待たせてしまったみたいだね」

「楽しみだったから早く準備が終わったの」

「すごく似合ってる一段と綺麗だ。君と初めて会ったときからしたら信じられないだろうね」

「だってあなたが選んだんだもの。似合わないはずないわ」

 

 そう、ジニーは下級生だからドレスの用意は一切していなかった。そんなところから俺のパートナーになってくれたからドレスが急遽必要になった。ロンのローブから察するに彼女好みのドレスを今から見つけ出せないこともなんとなく察せられた。

 

「自分の気にいったものが着たいんじゃないか? 言ってくれれば調達するよ」

「それだとなんだか気が引けるわ……でもそうね、うん。ルークが私に一番似合うと思うドレスを選んで?」

「俺のセンスが最悪だったらどうするつもり?」

「それでもあなたが選んだってことに価値があるの」

「……そういうもの? まあ頑張って選んでみるよ」

「ありがとう!! ユールボールが私の人生の中で一番の思い出になると思う」

「そうなるよう頑張らないとだ」

 

 つまり今ジニーが着ているドレスは俺が彼女にプレゼントしたものということだ。

 

「ルーク、隈を隠すから少し屈んでくれない? 届かないわ」

「ああ、そうだね。これでいい?」

「はい、じゃあ目を閉じて」

 

 俺の目元に彼女の指が触れる。ひんやりとした彼女の指が俺の肌をなぞるのはくすぐったくもあり、心地よくもあった。指が離れたと思ったその瞬間何かが俺の唇に触れた。温度もわからないくらい一瞬の出来事だった。

 

「はい、完成。そのままでももちろんかっこいいけど、隈を消すと本当に整った顔ね」

「っああ、そうかな? ありがとう」

 

 目の前のジニーは先ほどと何も変わらない表情で、つまり笑顔で俺の方を見ている。気のせいか。

 

 ユールボールは性格すら変えてしまうと先ほど言ったが、俺の性格も変えてしまったようだ。冷静ではなかったみたいだ。だってよくよく考えたらそんなことあるはずないんだから。

 

 俺は冷静を装うよう、一呼吸置いたあと腕を差し出した。

 

「俺にエスコートさせてもらえますか?」

「喜んで」

 

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