オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
「イッチ年生! イッチ年生はこっち!」
ハリーからの情報によると今叫んでいる彼こそがルビウス・ハグリッド。普段は森の番人をしているらしい。なんだよ森の番人って、てかなんで学校に森があるんだよ。普通ビオトープとかだろ?
彼は一年生誘導係に任命されているらしく、ホグワーツへの道なのだろう険しく狭い小道をどんどんかき分けて進んでいった。新入生はそれに必死に付いていく。
新入生はぱっと見ても50人いない感じだ。たぶんだが、少子高齢化が魔法界でも進行しているに違いない。データがないのでなんとも言えないけど。
何度も言うがオレのデータは最新でも50年前なんだ。そのころは全校生徒1000人規模だったらしい。まじかよ、なにがあったんだよ魔法界。
「4人ずつボートに乗って!」
小道を進んでいくと大きな湖に出た。ここからはボートで行くらしい。全員が乗り込んだことを確認するとハグリッドの掛け声とともに水面を進み始めた。
向こう岸に到着し再度人数確認をしている。全員いたようだ。
大丈夫、人数が増えるなんて怪奇現象は魔法界でも異常事態に分類されるようだ。どこまでが違ってどこまでが一緒かそれを見極めていかないといけないのは難しい。とくにあのサンタを常識とするのは絶対だめだ。アルバスは魔法使いだからおかしいんじゃなくて、おかしい魔法使いなんだ。
ハグリッドは大きな握り拳を振り上げ城の扉を三回叩いた。
◆
扉がパッと開いて、エメラルドのローブを着た背の高い黒髪の魔女が現れた。
「マクゴナガル教授、イッチ年生のみなさんです」
「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」
誘導されるままオレ達新入生は階段や廊下を進んでいった。
「新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、その前にみなさんの所属寮を決めなければなりません。ホグワーツにいる間はその寮が家族のようなものです。
寮は4つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれ輝かしい歴史があり、偉大な魔法使いや魔女が卒業しています。どの寮にしてもみなさん一人一人が寮の誇りになることを望みます」
周りのみんなは寮の決め方について話し始めた。ある者は痛いことだといい、ある者は魔法技能をテストされるのだといい、あるものはトロールを倒すに違いないなどと言っている。
アルバスは試験なしで入れてくれるって言ってたから試験はないはず。そう願いたい。
いや、でもアルバスのことだ「入学試験はないが入寮試験はあるということを伝え忘れていたようじゃ」なんて言い出すかもしれない。
脳内でサンタクロースに文句を言っていたら話は進んでいたようだ。
「それでは組み分けの儀式がまもなくはじまります、一列になってついてきてください」
扉の先には大勢の上級生に、輝くたくさんの蝋燭、そして天井は魔法で作られた夜空だった。新入生はちょうど教授の席と上級生の座っている席の間までつれてこられた。顔を上級生の方にむけ、その目の前にマクゴナガル教授が椅子と古びた帽子を設置した。
一瞬の静けさの後、帽子が大声で歌い始めた。2年前なら帽子が歌い出したら触って硬い部分、つまり電池部分を見つけ出すことに尽力を注いだだろうが、もう慣れた。
叫ぶ本もあれば歌う帽子もいる。
帽子は寮の特徴をポエミーに歌ってくれている。勇気がグリフィンドール、正しく忠実がハッフルパフ、賢さがレイブンクロー、狡猾がスリザリン、とのことだ。
いや、スリザリン。もっと良い言い方があっただろ。臨機応変とか、実行力とか。「あなたって本当に狡猾ね、素敵」とはならないだろ。
ABC順に名前が呼ばれ一人一人帽子を被らされていた。オレはBだからABC順だと5本指に入る。よかったダンブルドアじゃなくて、こんな全校生徒の前で「ダンブルドア・ルーク!」なんて呼ばれたら隠しようがない。
「ブラック・ルーク」
呼ばれたので立ち上がり椅子に座る。なんだかスリザリン側が少々ざわついている気がするが何かあったのだろうか?
「ほう! 君はブラック家の子かぁ。ふーむ。おっこれは、グリフィンドールをぜひともおすすめしたいのだが……レイブンクローも合っている気がする」
「ハッフルパフは?」
「適性なし」
「わおバッサリ。スリザリンは?」
「まぁなしよりのありだな。行っても困らんが行かなくても困らんって感じだ」
「じゃあオレはどうしてグリフィンドールがおすすめなんですか?」
「初年度に車内販売の魔女に引っかかる奴らはここ150年グリフィンドール生くらいだからな。知識欲さえもう少し少なかったら迷わずグリフィンドールだね」
「ちなみに僕の両親は?」
「グリフィンドールだ。君の父も車内販売の魔女に引っかかっておったよ」
「じゃあグリフィンドールで」
「グリフィンドール!!」
左端のテーブルから歓声が上がった。もちろんグリフィンドール席だ。
「そこそこ時間がかかったななんて言われてたんだ新入り?」
双子の一人が尋ねてきた。たぶんロンの兄さんだ。
「グリフィンドールかレイブンクローって帽子に言われたんだ」
「決め手は?」もう一人の方が尋ねてきた。
「親と同じ寮。あと車内販売の魔女」
「まじかよ! お前もあいつとやりあったのか?!」
「もってことは君たちも?」
「僕はフレッドこっちはジョージ。僕らも一年の時ちょっとした出来心で列車から飛び降りようとしたら危うく切り刻まれそうになった仲間だ。よろしく」
マジかよ、オレより猛者がいた。
「オレはルーク。よろしく」
「そこ、話すのは組み分けが全部終わってからにしろ」
なんだか厳しそうな上級生に注意されてしまった。
「あいつはパーシー、僕らの兄貴なんだ。監督生になって調子にのってる」フレッドに耳打ちされた。
「夏休み中ずっと自慢してたんだ。耳たこだぜ」
「だまれ」
耳打ちにしては大きな声だったのでパーシーに筒抜けだったようだ。
「「はいはい優秀なお兄様」」
組み分けはどんどん進んでいき、ハーマイオニー・グレンジャーとネビル・ロングボトム。つまり蛙探しにきた子達はもれなくグリフィンドールに組み分けられたってことだ。
グリフィンドールは今からでも寮のシンボルをライオンから蛙に変えるか会議を開くべきかもしれない。
「ポッター・ハリー」
彼の名前が呼ばれた瞬間広間中にシーッというささやきが広がった。
「ポッターってそう言った?」「あのハリー・ポッターなの?」
ハリーは超注目株らしい。一挙一動見逃さないようにみんな首を伸ばして凝視していた。
結構帽子は迷っているようで、沈黙が数分は続いた。オレより組み分けが長い子たちは何を話してるんだ?
選ばれたのは「グリフィンドーール」周りが立ち上がって歓声を上げてるからオレも一緒に口笛を吹いた。
双子は「ポッターを取ったぞ!」なんて叫んでいる。さっきから知り合いがもれなくグリフィンドールに入ってくるのは嬉しい。(ドラコとクラッブ、ゴイルはスリザリンだったが)
あとはロンも入ってくれればオールコンプ?
そしてロンもきちんと順当にグリフィンドールに選ばれた。よかったなロン。さっきまでの青白い顔が嘘みたいに赤くなってる。グリフィンドールカラーだ。
ここで確認しておこうグリフィンドールの同学年メンバーだ。
オレ、シェーマス、ディーン、ネビル、ハリー、ロン、ハーマイオニー、ラベンダー、パーバティー、サリーの合計10人。小規模すぎてもう名前は完璧だ。
「おめでとう! ホグワーツの新入生! 歓迎会を始める前に二言、三言。ではいきますぞ! そーれ!わっしょい! こらしょい! どっこらしょい! 以上」
まじかよアルバス。その掛け声ってオレたちが屋敷の家具を配置換えする時の掛け声じゃなかったのかよ。
ちなみに「そーれ」で持ち上げて「わっしょいこらしょい」で移動させて「どっこらしょい」で下ろす。
みんなめっちゃ拍手してるけど絶対あのサンタの称号に騙されてるって。
「あの人……ちょっぴりおかしくない?」
ハリーがパーシーにそう聞いていた。よく言ったハリー。オレもおかしいと思う。
「おかしいだって? あの人は天才だ! 世界一の魔法使いさ! ところで君ポテト食べる?」
あー、オレの感性が間違ってたっぽい。そうだよな、ポテトの方がアルバスの変人さより気になるよな。
アルバスの方をチラッと見ると目があってにっこりされてしまった。そして口パクで「おめでとう」と言われた気がしたので素直に「ありがとうサンタ」って返したら「わしはサンタではない」と言われた気がした。たぶん気のせい。
気を取り直してチキンを皿によそって食べる。ビリーがつくるチキンにどハマりしたのがきっかけでよく食べるんだが、ここはビリーの職場。つまり同じ味が再現されていた。最高だ。
食事と並行して会話が進行している。ハーマイオニーはパーシーと授業について、ネビルとシェーマスは家族について話していた。
オレ? もちろん双子の武勇伝を聞いてたよ。今度ショートカット通路を何個か教えてもらう約束を取り付けた。
「えへん。全員よく食べよく飲んだことじゃろうからまた二言、三言。新学期を迎えるにあたりいくつかお知らせがある。新入生に注意しておくが構内にある森には立ち入らぬこと、上級生も何人かの生徒には同じことをとくに注意しておきますぞ」
アルバスは双子の方をいたずらっぽい目でみた。ついでにオレも見られた気がする。
「管理人のフィルチさんから、授業の合間に廊下で魔法を使わないように。次に、今学期は二週目にクィディッチ選手の選抜があるので、寮のチームに参加したい人はマダムフーチに連絡するように。最後にじゃが、とても痛い死に方をしたくない者は今年いっぱい4階の右側の廊下には入らぬことじゃ。さあ諸君、就寝時間。駆け足!」
監督生であるパーシーについて大広間を抜け、大理石の階段をのぼっていく。着いたのは太った婦人の肖像画の前だった。
「合言葉は?」婦人が尋ねる。
「カプートドラコニス」
パーシーが答えると肖像画がぱっと開き壁に丸い穴が出現した。
穴を潜り抜けると座り心地のよさそうなソファーに机。暖炉では火が燃え盛っていた。ここが談話室らしい。談話室を奥まで進むと男子寮と女子寮は左右に分かれているらしく、オレたちはもちろん男子寮に続くドアから部屋に入った。すでに荷物はみな運ばれていて、あとは荷物探しの旅にでるだけでよかった。
「ルーク! 君もここだ!」
ハリーがオレが今いる部屋の隣からそう叫んでくれた。
「ハリーありがと、で、ルームメイトは?」
「僕とロンと君さ! よろしく」
男子の新入生は6人だから3人部屋×2となったらしい。ロンも部屋になだれ込んできてルームメイトが全員揃った。
もしここがホワイト子供の家なら速攻で消音枕投げ大会が開催されていたが、2人とももうくたくたなようだ。いつの間にかパジャマに着替えてベッドに潜り込んでいる。
オレも明日からの新生活のために眠りにつくことにした。明日からは早起きしてアルバスにヨーデルとか能楽とかガムランを聞かせられないと思うとなんだか変な気分だ。
約1年で目覚まし音楽レパートリーを増やしたのにな。
ようやくホグワーツに入れました。校長とはしばらくお別れになりそうです。