オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
「見て見て」「どこ?」「赤毛ののっぽの隣」「うわー超かっこいい」「違うってそっちじゃない方」「メガネの方?」「そうそう、あの傷見た?」
周りからの声を聞いてもわかる通り、入学翌日からオレは超有名人だった。もちろんオレよりも有名なやつが半径1m以内にいるってことを入れないとっていう条件付きだけど。
知らない生徒が廊下ですれ違ったらわざわざ逆戻りして見にやってくるし、その中で爪先立ちで頑張ってこちらを見てくる生徒もいた。
もちろんこういう扱いは慣れている。なんてったってオレは『Black of White』をざっと10年背負ってきたからな。看板役はばっちり。チャーミングな笑顔を返しといた。オレ目当てじゃないのは承知の上で。
授業はどれも退屈しなかった。水曜夜は望遠鏡で夜空を観察できたし、週3回の「薬草学」は奇妙なキノコや植物の育て方を実践込みで教えてくれた。この授業はちょっと葉っぱとか切れ端をくすねても気づかれないのが最高にいい。何に使うかって? それは後で考えればいいだろ?
「魔法史」はアルバスの蔵書と夜のお話のおかげで完璧だった。やっぱりと言うべきか、オレはここ数十年の歴史より百年以上前のことの方が詳しいっぽい。ソースはハーマイオニーだ。彼女には『二十世紀の魔法事件』を読むことを推奨された。暇だったら読もう。
「妖精呪文」はフリットウィック教授の担当だった。背が小さいから本を積み上げた上で授業をしている。それを見てからオレはだるまおとしがやりたくてムズムズしている。なんの呪文をつかえばいいか思いついた人がいたら教えてくれ。
マクゴナガル教授の授業は「変身術」だ。初回の授業はお説教からはじまった。
「『変身術』は、ホグワーツで学ぶ最も複雑で危険な魔法の一つです。いいかげんな態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、二度とクラスにいれません。初めから警告しておきます」
それから教授は机を豚にかえ、また机に戻した。こういうパフォーマンスは勉強のやる気を増させる。もちろんオレも同様だ。
しょっぱなから机を豚に変えるわけではなく、オレ達はマッチ棒を針に変えるところからのスタートだ。
オレは超真面目に授業に取り組んだ。まず、指示通りマッチを針に変えた。そしてその針をどんどん増やしてお手製の針山に刺していった。完成したのはハリネズミのぬいぐるみ、我ながらいい出来だ。
「ミスターブラック! 何をやっているんですか。きちんと指示通りにやりなさい!」
「オレも教授みたいに生き物を作ってみたかったんです」
そう言った瞬間パーバティーとラベンダーに笑われた。サリーも肩が震えてんのバレてるからな!
「今日の授業はいかに鋭くきれいな針に変身させるかが目標であって、かわいいハリネズミをつくることではありません。しかもなんで針じゃなくてまち針に変身させているんですか!」
「そっちのほうが可愛いかなって」
「ブラック、指示を無視しないでください。グリフィンドール1点減点です。ただし、一番早く変身を成功させたことから2点あげましょう」
「どうも」
「君が1年生の中で初めて減点と加点をくらったやつだろうね」
ロンがとなりからそう囁いてきた。
「オレもそう思う」
減点と加点は思ったより軽いことで行われるらしいってことがわかった。
ハーマイオニーも針に変えることに成功し1点獲得していた。ついでにオレとは違って教授の微笑みもゲットしてた。
◆
「今日の授業はなんだっけ?」
オートミールに砂糖をかけながら、ハリーが尋ねてきた。
「『魔法薬学』だってさ。今日が初回授業だ」
「しかもスリザリンと合同だよ。スネイプはスリザリンの寮監だろ。いつもスリザリン贔屓するってみんな言ってる──本当かどうか今日わかるさ」
ロンがバナナを食べながら付け加えてくれた。
「マクゴナガルが僕たちを贔屓してくれたらいいのになぁ」
というハリーのぼやきにロンが盛大に頷いている。
「そしたらオレは2点きっちりもらえただろうし、あんな山のような宿題を出すはずないな──」
話は途中で途切れた。理由は大量のフクロウがテーブルの上を旋回し始めたからだ。これは朝食恒例イベントだ。
ハリーのもとに一通の手紙が届いた。
「ロン羽ペンかして、ハグリッドに返事書かなきゃ」
「ハリーなんて書いてあったの?」
「金曜の午後は授業がないから3時にお茶をしようってハグリッドが。ルークとロンも来る?」
「その返事にルークも行きますって書いといて」「僕も行く!」
「わかった。2人も参加しますって書くね」
そう言ってハリーは羽ペンで書き上げた後ハリーのペットのヘドウィグ(学校内でたぶん一番白い)の足に手紙をくくりつけた。
◆
「魔法薬学」の授業はオレたちにとって最高とは言い難かった。
まずどの授業も同じで出席から始まる。オレの名前が呼ばれるタイミングでスネイプ教授は一瞬口を動かすのを止めかけた気がしたがたぶん喉になにか絡んだかなにかだろう。
特にアクションなく先に進んだ。そしてハリーはオレと同じような待遇を期待していたっぽいがきっちりブレーキが踏まれた。
「あぁ、さよう。ハリー・ポッター。我らが新しい──スターだね」
この言葉にドラコと取り巻きはニヤニヤと笑っていた。おい、自分の名前笑われて嫌だったんじゃないのかよドラコ 。せめて面白くても我慢しろよ。変身術の時のサリーみたいに。
「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と厳密な芸術を学ぶ。このクラスでは杖を振り回すような馬鹿げたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君も多いかも知れん。ふつふつと沸く大釜、ゆらゆらと立ち昇る湯気、人の血管の中をはい巡る液体の繊細な力、心を惑わせ、感覚を狂わせる魔力。諸君がこの見事さを理解することは期待しておらん。我輩が教えるのは、名声を瓶詰めにし、栄光を醸造し、死にさえ蓋をする方法である──ただし、我輩がこれまでに教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」
話が一段落ついたところでスネイプ教授は突然「ポッター!」と強めに呼んだ。
「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」
「わかりません」
「チッ、チッ、チッ、有名なだけではどうにもならんらしい」
「ポッター、もう一つ聞こう。ベゾアール石を見つけてこいと言われたらどこを探すかね?」
「わかりません」
「クラスに来る前に教科書を開いてみようとは思わなかったわけだな、ポッター、え?」
「ポッター、モンクスフードとウルフスベーンとの違いはなんだね?」
「ハーマイオニーがわかっていると思いますから、彼女に質問してみたらどうでしょう?」
ハリーの小さな反撃にグリフィンドール生は何人かクスリと笑った。ハーマイオニーはすでにほぼ椅子に体がつかないくらい高く手をあげていた。
「座れ」
教授はピシャリとハーマイオニーに言った。
「教えてやろう、ポッター。アスフォデルとニガヨモギを合わせると、眠り薬になる。あまりに強力なため『生ける屍の水薬』と言われている。ベゾアールの石はヤギの胃から取り出す石で、たいていの薬に対する解毒剤となる。モンクスフードとウルフスベーンは同じ植物で、別名はアコナイトともいうが、トリカブトのことだ。さて? なぜ今言ったことをノートに書き取らんか!」
世の中にはノートをとっていたらきちんと話を聞けって言う人もいれば、とらなかったらなんで手を動かさないのかと言う人もいる。
そんなこと超能力でも使わないとわからないんだから理不尽だ。待てよ、ここ超能力者の集まりだからワンチャンできんのか? いやそんなことはないはずだ。もしそんなことができるなら自己紹介文化は廃れているはず。だよな?
「ポッターの無礼な態度でグリフィンドール1点減点」
その後もこの雰囲気が好転することはなかった。教授は二人ずつ組にしておできを治す簡単な薬を調合させた。
ペアはオレとハリー、ロンとディーン、シェーマスとネビルだ。教授はオレたちが干しイラクサを計り、蛇の牙を砕くのを見て回った。
オレは舌打ちはされたが注意はされなかった。いやこれはオレの偏見かもしれない、実は歯の間に朝食が詰まっているのを教授が思い出したのとオレに何かコメントしようとする時間が重なっただけかもしれない。
ドラコの角蛞蝓が完璧に茹で上がったから見に来るようにと言った時、地下牢いっぱいに強烈な緑色の煙が上がり、シューシューと音が広がった。ネビルが山嵐の針を火にかけたままいれたらしい。
なるほど、手順通りにやらないとこういう危険が発生するのか。
「馬鹿者!」
教授が忌々しげにどなり、魔法の杖を一振りしてこぼれた薬を取り除いた。
「医務室につれていきなさい」
苦々しげに教授はシェーマスに言いつけた。そしてくるりと半回転してオレたちの方を向いた。
「ブラックとポッター。針を入れてはいけないと何故ロングボトムに言わなかった? 彼が間違えれば自分の方がよく見えると考えたな? 本当に子は親に似るようだ。グリフィンドール2点減点」
「あー、すみませんでした。次回以降はドラコの茹でた蛞蝓は見にいかず、ネビルに張り付いていることにしますよ」
「教師に生意気な態度をとるなブラック! グリフィンドールもう1点減点」
このまま続けたらグリフィンドールの点数を教授が空にしてしまいかねないので黙ることにした。戦略的撤退ってやつだ。
もちろんおできの薬は完璧な状態で提出したので出来栄えまでイチャモンをつけられることはなかった。
「元気出せよハリー」
オレはめいっているハリーの肩を叩いた。
「逆にルークはなんで平気なの? 今日だけで僕たち2点ずつ減点されたんだよ?」
「だって、あの減点は防ぎようがないだろ」
「そうそう。フレッドもジョージもよく減点されてるんだ。これくらいみんな許容範囲だよ」ロンもハリーを慰める。
「ハグリッドのところに行こうぜ。気分転換だ」
◆
ハグリッドは「禁じられた森」の端にある木の小屋に住んでいる。
戸口には石弓と防寒用の長靴がおいてあった。突っ込みたくはないが頭が入りそうなサイズの長靴だ。ノックをすると中から犬の唸り声が聞こえた。どうやらオレたちは犬小屋とハグリッドの家を間違えていたようだ。
いや、合っていた。「待て待て、退がれファング」といいながらハグリッドがドアを開けた。片手は扉に、片手は犬の首輪を掴んでいる。絶対離さないでくれよハグリッド。
「くつろいでくれや。よぉハリー元気そうだな。で、そっちがルークでこっちがロンか。こうやって見てると君たちの父さんたちを思い出すな。で、ロンはウィーズリーのとこの子だろ? え? おまえさんの双子の兄貴たちを追い払うのに俺は人生の半分を費やしているようなもんだ」
オレたちは硬めなロックケーキを食べながら授業の話をした。とくにスネイプ教授の話をするハリーは絶好調だった。
「でもスネイプは僕のこと本当に憎んでるみたい。ついでにルークのことも」
「ばかな。なんで憎まなきゃならん?」
ハグリッドは露骨に目を逸らしたからなにかあるのかもしれない。
すぐにハグリッドは別の話に変えた。ロンの兄貴のチャーリーはドラゴンの仕事をしてるらしい。
「ハリー何見てんの?」
オレは熱心に何かを読んでいるハリーに尋ねた。
「このグリンゴッツ強盗事件! 僕の誕生日の日なんだ!」
「わーお。それはいい記念日だ。みんなに覚えてもらえる」
「違うよルーク! 荒らされた金庫は実は侵入された日にはすでに空だったって書いてある。その日ハグリッドが金庫から小包を取り出したのを見たんだ。たぶんこれだよ!」
「ハリーとルーク、ロックケーキの追加はいるか? お土産にいくらか包んであげよう」
ハグリッドは脈絡なくロックケーキを勧めてきた。たぶん全部食べ終わる頃にはオレの歯は全て入れ替わっているだろう。
いつのまにかハリーが読んでいた日刊預言者新聞はハグリッドによって暖炉の肥やしにされてしまったようだ。
夕食に遅れるとよくないとか言う理由で帰るよう促されたので第一回お茶会はお開きとなった。
ちなみにオレのポケットはハグリッドお手製ロックケーキでいっぱいになってしまった。もし歯固めが必要なベイビーがいたらオレに連絡してくれ。すぐにふくろうで送る。