オレ、重要なことは何も教えてくれない人の養子になったんだけどやばくないかこれ? 作:Luke Black
「みんな集まって何みてんの?」
オレは朝から寮の掲示板にへばりついてる一年集団を見て尋ねた。
「あら、ルークおはよう。今日もかっこいいわね」
「「ルークおはよう」」
「ありがとうラベンダー。パーバティーとサリーもおはよう。で、掲示板の内容って知ってたりする?」
「木曜日に飛行訓練があるの。それのお知らせよ。スリザリンと合同だって。ルークは箒乗ったことがある?」
ラベンダーがポスターの詳細を教えてくれた。
「ああ、あるよ。家の庭でしかとんだことないからドラコみたいにヘリと衝突しかけたなんて武勇伝はないけど」
パーバティーが目を輝かせ「得意?」と尋ねてきた。
「そこそこね」
「私たちだれも乗ったことないの。コツとかある?」
「んー、オレも誰かに習ったわけじゃないから詳しいことはよくわかんないけど、はじめはゆっくり床を蹴るとかかな。力いっぱい踏み切るとスピードの制御が難しいからね」
「ルークは箒に乗る姿も様になるんでしょうね」
「あはは、期待しといて」
オレがちょっと女子と雑談している間にロンの周りでも似たような会話がなされていた。つまり箒の乗り方のコツについて。ついでに自分の箒エピソードからクィディッチについてもワンセットだ。ハリーは箒に乗ったことがないからなのか、スリザリンと一緒だからなのかわからないが微妙な顔をしてた。
あぁ両方だったっぽい。
◆
木曜日の朝食、グリフィンドールの1年生は全員落ち着きがたりなかった。
ハーマイオニーは早速仕入れた『クィディッチ今昔』から得た箒の知識を排出しているし、ネビルはそれを一言でも頭に残そうと必死にメモを取っている。ロンは何度目かわからないチャーリーのお古の箒でハングライダーを避けた話をハリーに聞かせていたし、ディーンはなぜかサッカーについてオレに語ってきた。
そんな中、毎日恒例フクロウ便の時間だ。今日はネビルに何か小包が届いたようだ。おかげでオレの食べようとしたリンゴが吹っ飛ばされた。
「『思い出し玉』だ! ばあちゃん僕が忘れっぽいの知ってるからーー」
ネビルの説明によると届いた思い出し玉と言うものは何か忘れていることがある状態でぎゅっと握ると中が赤く光るらしい。今のところぱっと見ガラス玉だ。いや、ネビルが握った瞬間赤くなった。
「……何かを忘れてるってことなんだけど。何忘れたんだろ?」
ネビルがうんうん唸っているとネビルの手から思い出し玉が消えた。ドラコが引ったくったのだ。ついでにハリーとロンが勢いよく立ち上がった。
「アクシオ、思い出し玉」
オレはドラコの手から玉を呼び寄せ呪文でオレの掌に移動させた。ちなみに呼び寄せ呪文が成功したのは今回初だ。いつもはだいたい顔にぶち当たる。魔法ってけっこう偶然成功して感覚を掴むことがよくある。
「ミスターブラック! 今魔法をつかいましたね」
マクゴナガル教授が大股でこちらにやってきた。ドラコ達にニヤつかれたが、教師の手前仕返しができない。
「あー、マクゴナガル教授おはようございます。魔法の使用禁止は廊下だけだと思ってました」
「食事中も同様です。次見かけたら減点しますからね。それで、この騒ぎはなんですか?」
「先生、マルフォイが僕の『思い出し玉』を取ったのをルークが取り戻してくれたんです」
ネビルがオレのことを庇ってくれた、サンキューネビル。これでもう一度見逃してくれる権利がもらえるといいんだが、教授にそういう考えはなさそうだった。
「見てただけですよ」
ドラコはそう言ってクラッブとゴイルを引き連れてするりと逃げ出した。
「ほら、ウィーズリーとポッターも座って食事をしてください。ブラック、きっちり見ていますからね」
「はーい」
オレはどうやらマクゴナガル教授に目をつけられているらしい。オレ何かしたか?
◆
その日の午後3時半少し前、オレは玄関口で出会ったハーマイオニーと一緒に正面階段から校庭にむかった。
「あー、残念。いい箒はスリザリンのものっぽいね」
「ルーク、どういうこと?」
「ほら、あそこ。もうスリザリンは集まってるみたいだ。フレッドによると練習用箒はあたり外れがあるっぽい。例えば右にひん曲がってるやつとかはハズレだね」
「それならもう少し早く来ればよかったわ」
「これを見る限り次回から確実にそうするべきだね」
オレとハーマイオニーがグリフィンドールの中で一番早く着いたので、みんなには悪いが10本の中で比較的ましな2本を選ばせてもらった。オレたちの数分後に残り8人が走ってくる。
「何をぼやぼやしてるんですか! みんな箒のそばにたって、早く」
マダムフーチが遅れた生徒を急かす。
「右手を箒の上に突き出して、そして『上がれ』と言う」
みんな一斉に『上がれ!』と叫んだ。オレの箒は比較的素直だったようで、きちんと応えてくれた。
「……ルーク、どうやるの?」
ハーマイオニーが何回か失敗したあと遠慮がちに尋ねてきた。
「いまいち悪いとこはなさそうだけど……箒交換する? こっちの方がやりやすいかも」
「そうね、ありがとう。やってみるわ。えっと『上がれ!』」
箒はスッとまっすぐハーマイオニーの掌に向かって飛んでいった。成功だ。
「やった! できたわ!」
ハーマイオニーがせっかく手に持った箒を投げ捨て両手をこちらに向けてきた。なんだ? と一瞬焦ったが、ハイタッチをしたら正解だったらしい。その場でぴょんぴょんと跳ねている。なんか小動物みたいでかわいい。
スリザリンの生徒は案の定全員箒を手に持っていた。つまり全員成功ってことだ。一方グリフィンドールで成功しているのは、オレ、ハリー、ハーマイオニーだけ。ただハリーは素でセンスがあるみたいで、小枝が何本も飛び出しているやつをまともに制御していた。オレはあの箒とはうまくやれそうにない。
「さあ箒に跨って、私が笛を吹いたら地面を強く蹴ってください。箒はぐらつかないように押さえ、2メートルぐらい浮上して、それから少し前屈みになって降りてきなさい。笛を吹いたらですよ。1、2の──」
ネビルがカウント前に飛び出した。しかも思ったより勢いよく。
「こら、戻ってきなさい!」
先生の声をよそにネビルはシャンパンのコルクのようにヒューッと飛んで行った。声にならない悲鳴をあげて必死に箒にしがみついている。
そして数秒後真っ逆さまに落ちた。ガーン、ドサッ、ポキッという三つほど嫌な音をたててネビルは草の上にうつ伏せに墜落し、突っ伏した。マダムは慌てて駆け寄り、ネビルの状態を確認する。幸いなことに手首が折れただけだったらしい。魔法界では死ななきゃ全部軽傷だからね。厄介なのは謎の呪いと間違った呪文だけってマダム・ポンフリーがよく言っている。
「今から私がこの子を医務室に連れて行きますから、その間、誰も動いてはいけません。箒に触れることも禁止です。さもないとクィディッチのクの字を聞く前にホグワーツを出て行ってもらいます」
そうマダムは僕たちのことを脅して城の方にネビルを支えながら歩いて行った。
「ルークあなた何するつもり?」
「あー、言葉にするなら優雅に芝生で昼寝?」
「はぁ、授業中よ。居眠りになるわ」
「でもハーマイオニー、オレたち本もなければ箒も使えない。もちろん魔法も禁止だ。そんな状況で他に何をしろって言うんだ?」
「他に何かあるでしょ、えーっと……ってルーク起きて!」
オレはハーマイオニーのお説教の声を目を瞑りながら聴いていた。ただすぐにお説教の矛先がハリーへと変わった。
「ちょっと! ハリーダメよ! マルフォイの挑発に乗っちゃダメ! フーチ先生がおっしゃってたでしょ動いちゃいけないって、みんなに迷惑がかかるのよ」
「わーお! ハリーすげぇ! いつの間に飛び方覚えたんだ?」ロンの声だ。
「もう! 私は止めたわよ! どうして男の子はじっと待っていられないの??」
すごく今オレのことを見ている気がする。ただハーマイオニー、ひとつ言いたいんだがこの場で一番じっと待ってるのはたぶんオレだぞ?
「ハリー・ポッター!!!」
マクゴナガル教授の声が聞こえる。今はグラウンド、つまり夢か。
「まさか……こんなことはホグワーツで一度も……よくもまあ、こんな大それたことを……首の骨を折って即死だったかもしれないのに」
「先生、ハリーが悪いんじゃないんです──」
「おだまりなさい、ミス・パチル」
「でも、マルフォイが……」
「ミスター・ウィーズリー、くどいですよ。ポッター、さあ一緒にいらっしゃい。グレンジャー、そこで寝ているブラックを起こしておくように 」
「はい先生。ルーク、起きて。ルーク!」
「……っあぁ、起きるよ。で、どこまでが夢?」
「全部って言いたいところだけど、ハリーが違反してマクゴナガル教授に連れて行かれたわ」
「じゃあハリーが退学になったらドラコも退学になるようにオレが言ってやるからそんな顔するなって」
「あなたにそんな権限あるわけな……あなた起きてたのね?」
「目を瞑ってウトウトしてただけだよ」
ハーマイオニーに「信じられない」みたいな顔をされたのだが、それはハリーを止めなかったことへなのか、ハーマイオニーの説教中寝たふりをしたことについてなのか、それ以外なのかは教えてもらえなかった。
◆
夕食の時間、ロンとキドニーパイがまずいかおいしいか論争をしている時、ハリーが戻ってきた。なんだか幸せそうな顔をしていたが、その理由は30秒後に判明した。
「シーカーだって?! だけど一年は箒持ち込み禁止だって……なら、君は最年少の寮代表選手だよ。ここ何年来かな」
ロンが驚いて叫んだ。すぐにハリーが声下げてとジェスチャーをする。
「100年ぶりだって。ウッドが言ってたよ」
ハリーはキドニーパイをかき込むように食べながら言った。オレとハリーとは味の好みが違うようだ。
「へー、ハリーすごいじゃん。練習はいつから?」
「来週から。でも誰にも言うなよ。ウッドが秘密にしておきたいんだって」
オレが思うにたぶんその秘密明日には広まってるに違いない。いまでさえ何人かハッフルパフ生がざわついてる。
「ポッター、最後の食事かい? マグルのところに帰る汽車にはいつ乗るんだい?」
ドラコがニヤつきながらやってきた。反対テーブルなのにご苦労なことだ。
「空の上とは違って地上ではやけに元気だなマルフォイ。小さなお友達もいるしね」
「そんなに言うなら僕一人でいつだって相手になろうじゃないかポッター。御所望なら今夜だっていい。杖だけで決闘だ」
「じゃあ僕がハリーの介添人をする。おまえのは誰だい?」ロンがその挑発にすかさずのった。
「クラッブだ。真夜中でいいな? トロフィー室にしよう。いつも鍵があいてるんでね」
ドラコは言うことだけ言って去って行った。嫌な感じだ。
「ルークも来る?」
「いや、3対2でくるなんて卑怯だ! なんて言われるのはごめんだから二人に託すよ」
「マルフォイが負けたら言いそうだな。わかった、僕とハリーで行くよ。ところでいい呪文しらない?」
「あー、とりあえず危なかったら盾を作るイメージで『プロテゴ!』って叫んどけ」
「攻撃魔法は?」
「あーなんだろ、ちょっと思い出すから待って」
「ルーク、思い出す必要はないわ。聞くつもりはなかったんだけど、聞こえちゃったの。あなたたち夜に抜け出そうとしてるみたいね。夜中校内をうろつくのは絶対ダメ! 見つかったら何点減点されると思ってるの? まったくなんて自分勝手なのかしら」
「まったく大きなお世話だよ」「バイバイ」
ハリーとロンの返しにハーマイオニーはそっぽを向いて大広間を出ていってしまった。
◆
真夜中、二人は出かける準備をし始めた。
「じゃ、2人ともがんばれよ。これ猫除け、作ったんだ。かけてけよ」
「なんで猫除け? この香水が?」
「ミセスノリスに付き纏われたらまずいだろ? これでそいつはクリアだ」
「ナイスルーク。でもなんでそんなの持ってるの?」
「ハグリッドと取引したんだ。ほら、早く行かないと遅れるぞ」
「行ってくるよ」2人は忍足で階段を降りて行った。
ちなみにハグリッドがホグワーツに行くたびにミセスノリスがしつこくついてくると言っていたのを聞いたのがきっかけだ。
猫(ミセスノリス)除けの香水を渡すという条件で、禁じられた森付近の草をとる許可をもらった。これから徐々に規模を拡大していく予定だってことはまだハグリッドには伝えていない。楽しみだ。