平和の世に浮いてしまい、戦争が近付くにつれ漸く場所を得られた女だった。
彼女は戦い以外に縛られなかった。
宗教だとか、住んでる場所だとか、人種だとか
スペースノイドだとか、アースノイドだとか
地球連邦だろうが、ジオンだろうが、他のコロニーだとか
そんなものに意味はなかった。彼女にとって目の前に相対し、自分を殺そうとして初めて価値を持つ。
そんな女にだって来て当然の結末があるものだ。
※これはオリーブドラブ氏のところの『機動戦士ガンダム 〜烈火のジャブロー〜』の三次創作だよ!
ちょろっと出てきた『ジークヒンメル・ドラヘンハルト』が主人公だからまずオリーブドラブ氏の方を読んでから来てね!
↓(リンク)
https://syosetu.org/novel/223795/
皆様、こんにちは。
本日も司会を務めます、エイベル・アダムスです。
一年戦争の謎を掘り起こす『一年戦争の真実』シリーズ第47回目の今回では、ガダルカナルの戦いでチラリと話に出た即席の混成部隊、そこに落ち延びていた幽鬼中隊にフォーカスを当てていきます。
早速話に移りましょう。
今私がいる所は、現在では既に使用されていない連邦軍バッターニ特殊海軍基地です。
知ってのとおり、現在は戦争からの回復が急がれている状況ですが、ここが修復されることはありません。
本来であれば南洋諸島に隠れ潜む残党軍に対する反攻作戦の要になる予定地域でしたが、幽鬼中隊に襲撃されたことにより壊滅、放棄されています。
その為現在でも連邦軍と幽鬼中隊との戦いの名残が色濃く残っているのです。
このザクIをご覧下さい。
弾痕で確認がしにくいですが、肩部に『EZ.1』の刻印がありますね。
これは『
つまりこの機体はかの中隊長、ジークヒンメル・ドラヘンハルトが搭乗していた機体ということになります。
数年前まではこのコックピットの中で当時の守備隊と命のやり取りをしていた訳です。
そしてその向かいにあるのは皆様ご存知のガンダム…ではありません。
この番組でも何度か紹介している陸戦型ガンダムの改造機です。
私が過去に紹介した極東方面軍の第08MS小隊でも陸戦型ガンダムを改造した機体をご紹介しましたが、こちらの機体はよりジムに近い状態になっていますね。
こちらもズタボロですが、コックピット部分には大きな損傷がありません。
これが連邦軍パイロット唯一の生き残りが乗っていた機体なのです。
「正に鬼のような強さでした。倍はあるはずのこちらが不利に思えてならず、実際その通りでしたから。」
この機体に乗っていた当時伍長のアニク・マノジ・バテル曹長はこう語りました。
「当時の私達は炎葬隊の壊滅によりかき集められ、ガダルカナルを初めとした南洋諸島を制圧する為に居ました。
部隊の招集に時間がかかっているようでしたが、その規模はMS三個中隊にその他装甲部隊や歩兵も合わせれば大隊になる規模です。」
それだけ圧倒的な数がいて、何故勝たなかったのでしょうか。
我々は彼の他にこの戦いの生き残りを知っており、取材のアポイントメントをとることができました。
未だ公表されていない真実を持っているという彼はこう語ります。
「練度さ。それ以上でも以下でもない。」
幽鬼中隊第二小隊1番機、中隊内の撃墜スコアは彼女に次ぐ2位のブルティガス・ベスティハルト元中尉はたったそれだけで纏めました。
練度。
それは戦闘において重要なものでしょうが、それだけで果たしてここまで変わるのでしょうか。
「変わるさ!俺達を見つける間に奴らは2機失う、見つけたら格闘戦で更に2機、道連れにして1機、キルレシオは5だ。
それにこっちはゲリラ戦は慣れっこなんだよ。温室で育った連邦のクソガキは普通の戦闘しか考慮しなかったんじゃないか?ゲリラ戦に対する警戒が無さすぎるんだよ。
或いは現場からの声を無視した結果かもしれないが、まあそれはいいさ。
兎も角、想定していた戦闘との違い、そして練度が明確だった。だからあそこまで追い詰めれたんだよ。」
実際に当時の映像を見ると、大きく混乱する連邦軍が見て取れます。
遠方からザク・キャノンの砲撃が届く最中、その姿すらも捉えることができていないですね。
その上近接戦闘が起こった場面では…ああ、ここです。
ザクIIの…EZ.3ですね。
隊長機を撃墜し暴れているのが見えますね。
…戦車の攻撃で撃墜されるまで三機と二両がやられたようです。
ザク・キャノンとジム・キャノンの砲撃も違いが大きく見えます。
ジム・キャノンが遮蔽に隠れず横一列になっているのに対して、ザク・キャノンはマズルフラッシュの位置が何度も変わっています。
動きながら攻撃に徹したことがよくわかりますね。
「こちらの指揮系統が混乱したのも原因だと私は思っています。私の小隊長は上からの指示を何度も要請していましたが、司令塔を次々と殺られて大混乱の様相を呈していました。」
当時の連邦軍の状況は通信記録からも見て取れます。
アニク曹長が言う通り、通信は正に混沌です。
死亡報告と敵の発見報告や援護要請がひっきりなしに飛び交い、指示を出すはずの声が全く聞こえません。
そもそもにして声を出せていないのですから当然です。
「まず司令塔を殺す。これは俺達の鉄則だ。
なんせ連邦の奴らは特別機が多い。こっちにも多いっちゃ多いが、コマンダーが誰かは人目見て分かる。
俺達みたいにダミーのアンテナもつけてねぇし、どころか指示してるタイミングってのが丸わかりだ。
そこに誰かが伝えた座標指定通りに遠方の狙撃小隊が撃てば…BOOM!」
「容易く私達の連携は破壊されましたが、それでも徐々に徐々に敵を倒すことは出来ました。」
当時の幽鬼中隊は中隊とは名ばかりでした。
何せ普通十二個小隊で一個中隊のところをたったの六個小隊でしたから。
その上一個小隊につき支援車輌がいる連邦軍とは違い、支援もないどころか最悪欠番になっている有様です。
その状況でゲリラ戦をしたとしても、連邦軍に勝てないことは間違いなかったでしょう。
押されていく状況の中、戦場が大きく動きました。
「狙撃小隊がやられたあたりだったな。この音声記録を聞きな」
渡されたものに入っていた音声は当時のジオン軍の通信記録でした。
これが彼の言う公表されていない新たな情報。
この番組が初めて世界に発信する情報です。
『お前ら帰りたい場所あるか?』
『突然どうしたんです隊長』
『遂に頭に銃弾を喰らったとか?』
『んな訳あるか。俺様が当たるわけないだろ』
残る7機の通信です。
それぞれの小隊が壊滅していく度に残っていたものが別の欠けた小隊に加わることを繰り返していた彼らですが、この世間話のような通信から一変します。
『俺よ、帰りてぇ場所見つけたわ。』
『男か!』
『おいウソだろ!狙ってたのに!』
『隊長もやっと作ったの?さんざん言ったでしょ、彼氏は健康にいいってさ』
『ちげぇっての。前だよ前。まだゲリラ戦じゃなかった時だよ。どうせこのままじゃ負けるぜ?…なぁ、戻らねぇか?』
この言葉に幽鬼中隊の生き残りは次々と賛成の声を返しています。
幾分若いブルディガス元中尉の声も確認できますね。
「その時だったんです。突如として隠れ潜んでいたジオン軍が突撃をしかけてきたのは。
それまで血眼で探していたジオン軍ですが、でてこいと言っていたにも関わらずそれをすぐに後悔しましたよ。
彼らの機体は特別なチューンが施されているわけではありませんでした。いえ、多少は入っているかもしれませんが、あまり大きく変わってるようには見えなかったのです。
しかし外部に取り付けた使い捨て装甲がなんとも厄介でした。
これのせいで歩兵の対MS兵器は貫通力が削がれ、致命傷を与えられずに居たのです。その上角度によってはこちらの攻撃を弾くせいで有効打だと思ったものが次々と無力化されていきました。」
『叩き潰せッ!!』
『
『うわぁぁっ!!?』
『気やがった!ジオンの気狂い共が!!』
『背中なんか向けや━━━』
『メイフィス!!メイフィスはどこいった!』
『あと一機殺━━━』
『ヴィクトリア!後方は任せた!』
『さすがに数が多いな!まるで鴨撃ちだ!』
『クソが!弾薬に━━━』
『死にやがれよォッ!』
「私は…戦闘を初めてあそこで経験しました。ビームライフルで貫いた敵は…最後にこのようなことを叫んでいたんですね。」
「ハハ、いいじゃねぇか。断末魔と銃声…懐かしい場所だ。俺の生まれ故郷なんじゃないか?」
『ガンダムだ!ガンダムがいるぞ!』
『アルバンをやったや━━━』
『コイツ速いッ!ディル!すぐ横に━━━』
『ぐぁぁあッ!!?クソッ!!燃えやがった!畜生ふざ━━━』
『おいおい、残りはお前と俺様か?』
「…何故彼女はあの状態で戦ったのですか?私にはそれだけがわからないのです」
アニク曹長と相対したジークヒンメル元大尉の機体は酷い惨状でした。
片腕を根元から破壊され、首は支えを失っているのか起動こそしているものの飛び出ているような状況です。
脚部も大きく損傷し、大きく動くことは不可能でしょう。
視界の確保ですが、なんとコックピットの大部分が溶解しています。
顔は伺えませんが、月光を受けた反射で光っているのが見えます。
…綺麗な薄青色の光ですね。
この状態でも動けるのですから、ザクの信頼性の高さを伺えます。
しかし対する陸戦型ガンダムはほぼ傷はなし。
普通の神経であれば、降伏を選ぶでしょう。
「降伏なんてありえねぇよ。聞いてりゃ理由もわかるさ。」
『よぉ、テメェ。覚悟はいいよな。』
「当時の私は…ビームライフルが破壊されてサーベルを抜き放っていました。
対する相手はザク・バズーカを背負い、こちらに向けてきています。目視の照準とは思えませんでした。
だからこそ、狙いをズラすために自ら突撃を選んだのです。」
『来た、来た来た来た来た』
『コイツ…!よくもこんな、たくさん殺しやがって…!』
『来た来た来た来た来たァッ!!!』
「振り抜いたサーベルはコックピットに当たりませんでしたが、バズーカを切断することはできました。これで勝負がつく。そう思っていました。」
『借りるぜッ!!』
『うっっ??!!』
「傍に転がっていたヒートソードを素早く装備して斬りかかってきたのです。恐らく回避も予定していたんでしょう。嵌められたのです、私は。間一髪でサーベルで防御できていなければ、私はあそこで死んでいた。」
『チィッ…!
『っぅぅぉぉおおお!!!!』
「膝をつかせるような体勢になったのが幸いしました。上から振り下ろされた攻撃のおかげでボディはがら空きでしたし、脚のサーベルを抜くことが出来たのですから。…彼女は死の直前、なんと言っていたのですか?」
止めていた音声を動かせば、漸く私達に納得が得られました。
なぜ戦っていたのか
どうして降伏しなかったのか
復讐でもなんでもない、それはたった一つの感情だったのです。
『━━━楽しいんだよなァ━━━』