・ノスロナ♀でロナルドが女体化してます。
・唐突に始まるドラルクの回想みたいな話です。
・捏造フェスティバルです。
・某所の同胞たちとノスロナ♀の同胞たちが少しでも楽しんでいただけますと幸いです。
・たくさんの同胞たちへの感謝を込めて!ありがとう!
まさに「お人好し」という言葉が吸血鬼になったかのような父の親友にしては、高慢ちきで鼻持ちならない嫌味な男。それがドラルクにとってのノースディンだった。
なにせ、父の親友面をしておきながらその父にとって妻と並んで最愛の宝である息子――つまりは自分をちっとも甘やかさなかった上に、あろうことかもっともらしい理由をつけては厳しくあたってきたのである。
おまけに、数多の女の子を取っ替え引っ替え魅了する女たらしときた。
愛妻家で息子思いである父とはなにからなにまで対極だとしか思えない男のどこを気に入って、父は親友と呼ぶのか。ずっと疑問だった。
だからこそ、あの冷血漢が唯一無二の相棒にその毒牙をかけたと知った瞬間、何度だって馬に蹴られてやる覚悟を決めた。
相棒が涙を流したところでなにも面白くないし、師匠に罪を犯されるのは弟子として体裁が悪い。
そんな享楽主義なりの仁義を通して――今に至る。
「あーあ」
エプロンの腰紐を結わえながら、ドラルクは嘆息した。
「私たちの心配は、すっかり杞憂になってしまったねぇ」
「ヌッヌヌヌヌ。ヌヌヌヌヌヌヌヌ」
「ふふ。ありがとう、ジョン」
いつだって苦楽を共にしてくれる可愛らしくて健気な使い魔のジョンが肩を叩いてくれるのが救いだ。それくらい、振り返ってみれば馬鹿馬鹿しい徒労だったのである。殺され損のくたびれもうけにも程がある。
キッチンに満ちる甘い香りを胸いっぱいに吸い込んでもなお残る苦々しさに、ドラルクは唇を綻ばせた。
「とはいえ、ねぇ……ある意味これからなんだよねぇ……」
危惧していた通り何回も泣いた相棒は、きっとこれからも泣くだろう。
ただ、ドラルクも、ジョンも、彼女が傷つけられることはないと知っている。それくらいの信頼はしてやってもいいと思える程度には、あの男のことがわかったからだ。
決して知りたくて知ったわけではないのだが、どんな情報も咀嚼してしまうのがゲーマーという生き物である。それに、幼い頃から抱き続けたノースディンを起点とするすべての疑問に合点がいったことについてはそれなりの爽快感がないわけでもないし、その際に見られた不本意極まりなさそうなしかめっ面もまた、見ものだったので、溜飲の方はすっかり下がっていた。
(それにしてもまさか……よりにもよって、お父様と情けないところが似ているとはね)
何でもできるくせに何でも不器用である父と同じように、ノースディンは「魅了」を駆使しておきながら愛というものに対してとにかく不器用だったのである。つまるところ、二人揃ってとんでもない器用貧乏仲間だったというわけだ。
時には吸血鬼と人間という相反する者同士すら結びつける「愛」というものに焦がれておきながら、愛されないことはおろか愛することにも愛されることにも怯えていた臆病者。老若男女問わず虜にする「魅了」の能力は、そんな臆病さの裏返しときた。
憧れるあまり自分も同じようになれるわけがないと卑屈になるあたり、割れ鍋に綴じ蓋とはよく言ったものだ。
気のいい父親はいざしらず、祖父から受け継いだ享楽主義を誇る自分さえ、もう放ってはおけない。
――きっと、永遠に。
「これで一安心できると思うかい?」
「ヌー……ヌリヌリ。ヌーッヌヌンヌイ」
「んっふっふ。だよねぇ! だ、か、ら……これから心配させられる分、今はとことん楽しませてもらおう」
「! ヌ!」
にやりと笑い合う一人と一匹の前にそびえるのは、天井にまで届かんばかりの山に積み上げられたスポンジケーキ。あとはもう、これまでの鬱憤と、これからの激励を飾り付けるだけだ。
「私たちなりの祝い方でね!」
「ヌー!」
暗いことを考えるのが馬鹿馬鹿しくなるくらい、とびきりきらびやかで甘ったるく仕上げたケーキこそ、二人の門出に相応しい。そんな確信を胸に、ドラルクとジョンはウエディングケーキの仕上げへと挑み出したのだった。