「図書館って、強い能力だよな」「お前は何を言ってるんだ」   作:クラウディ

10 / 29



テスト1日目が終わったけど、最近風邪を引いてたせいで後半の問題が全く分からんかった。
そんなことがありつつ、もはや日課となった連続投稿をする。

ちょろっと戦闘シーンを入れています。

それでは本編どうぞ。





魔女の考察

「らぁっ!」

「ふんっ!」

 

 まず動いたのは、二人の槍兵。

 蒼い猛犬と、死人のように肌が白い男性。

 バーサーク・ランサーと呼ばれた男性は、その手に槍を構えて真っ直ぐに突っ込んでくる。

 狙いは――管理人さんだった。

 それに対して、クーニキは、管理人さんとランサーの直線上に割り込み、朱槍で薙ぎ払う。

 ガキィッ!! 鈍い音が響く。

 明らかに、力任せに振り回しただけの一撃だったのに、まるで鉄塊を殴ったような音を立てて、バーサク・ランサーは吹き飛ばされていた。

 凄まじい威力。

 だけど、ランサーはその程度で倒れたりはしなかった。

 瓦礫の山から出てくると、その無傷な体をさらす。

 

「ッチ! やけにしぶてぇな。今のは結構強めに打ったんだぞ?」

「フッ……あの程度ではこの私を倒すことなどできぬよ」

「言ってろ。その心臓、穿ってやるからよぉ!」

 

 今度はクーニキから仕掛ける。

 先程のランサーみたいな正面からの特攻ではなく、低い姿勢で駆けていった。

 その速度はかなりのもので、一瞬にして距離が詰まる。

 対するランサーは、迎撃するのではなく、その手に持つ血のような槍を投げつけた。

 投擲。

 物を投げるというシンプルな攻撃方法。

 投げられた石が当たって血を流すのは珍しくないことだが、投げているものと投げた人物はその比ではない。

 クーニキの胸元に向かって飛んでいく槍。

 それは、クーニキの胸に突き刺さるかと思ったが、直前で軌道をわずかに変える。

 そのわずかに逸れたことで一刻の猶予ができたクーニキが、槍を弾き飛ばし、更に接近した。

 速い。

 さっきよりもずっと。

 想像できない速さだった。

 そのまま肉薄すると、槍を突き出す。

 しかし、それでもランサーは慌てる様子を見せなかった。

 それどころか、不敵な笑みを浮かべたままだ。

 不穏な気配を感じて、咄嗟に強化魔術をクーニキにかけた。

 次の瞬間。

 ランサーの体から先程弾き飛ばした槍が、体の内側から突き破るようにして現れる。

 そして、それは勢いよく飛び出してきた。

 その槍がクーニキを貫く――ことはなかった。

 

「あっぶねぇ……いい援護だマスター!」

「……外れたか」

 

 私が咄嗟に使うことのできた強化魔術が間に合ったクーニキは、ぎりぎりだったが回避に成功する。

 クーニキが避けたことで、ランサーが放った技は不発に終わり、飛び出した槍はどろどろと形を失って地面に落ちた。

 だけど、これは…… 私は思わず息を飲む。

 今の攻撃は……まさか!?

 

「クーニキ! その槍、血でできてるみたい!」

「分かってるよ、っと」

 

 回避した状態を立て直し、ランサーから距離をとるクーニキ。

 そんな彼の腕には、一本の血濡れた槍があった。

 あれは間違いなく、先ほどランサーが投げたものだろう。

 血で作られた武器。

 ただ手に出すだけじゃなく、体から直接突き破るようにして発動することも可能。

 しかも、あの威力……ただの人間が受けたら即死間違いなし。

 そんなものを、彼は平然と持っている。

 改めて対峙してみると分かる。

 目の前にいる男は、今まで戦ってきたどのサーヴァントとも違う存在だと。

 その力は圧倒的で、人間である私たちでは到底太刀打ちできるものではないと思わされる。

 でも……。

 私は歯を食いしばって、皆のためにできることをするんだ!

 

「よそ見は禁物よ?」

 

 意識がクーニキ達に逸れていると、バーサーク・アサシンがこっちに向かって魔力の塊を飛ばしてくる。

 当たれば私の体なんて容易く破壊できそうなものを前にして、私は頼れる後輩の名を呼んだ。

 

「マシュ!」

「はい!」

 

 魔力の塊と私の間に割り込んだマシュが、その手に持つ大盾で防いでくれる。

 彼女の持つ盾のおかげで、私は傷一つ負うことなく済んでいた。

 ありがとう、と声をかけると、彼女は笑顔で振り返ってくれる。

 やっぱり頼りになる子だ。

 だけど、アサシンは、それだけで終わらせてくれなかった。

 アサシンがその手に持った杖を振ると、生み出された血の波が私達に押し寄せてくる。

 流石にマシュでも防ぎきれない量だ。

 でも、

 

「はぁっ!」

 

 ジャンヌさんが旗を大きく振るい、血の波を吹き散らす。

 それによって私達は事なきを得た。

 だけど、そこで終わりじゃない。

 吹き飛ばされた血が、空中で集まり再び大きな塊となって襲い掛かってくる。

 それもまた、ジャンヌさんの旗によって対処された。

 本当にすごい。

 これが、管理人さんが元通りにしたジャンヌさん本来の力……!

 

「……兄さん、絶対に霊基を修復しただけじゃありませんね。明らかに力が本来のそれ以上に出ています」

「え!? そうなの!?」

 

 ジャンヌさんが掌を開いたり握ったりしていた時に呟いた言葉が聞こえてびっくりする。

 確かに、今の彼女からは以前感じられたサーヴァントとしての力も感じるけど、それ以外にも何か別の力があるように思える。

 それが何なのかまでは分からないけれど、彼女が本来以上の力を発揮しているのは確かだった。

 それを為したのは……きっと、管理人さんなんだろうなぁ……。

 ふと、管理人さんのことが気になって、あたりを見渡した。

 一体どこに……?

 

「あ! 管理人さんはあそこにいます!」

「え!?」

 

 そう言ってマシュが指差したところを見ると、そこには倒れているクーニキがいた。

 そして、クーニキの傍らには管理人さんの姿もあった。

 二人はどうやら無事なようだが、クーニキは全身の所々に傷があるようで、負傷のせいなのか、息も少し上がっている。

 

「クー、大丈夫かい?」

「ったりめぇだ。しっかし、厄介すぎるぜあの血の槍」

「そうだね……」

 

 二人の会話から察すると、さっきの一撃はクーニキにとっても想定外だったらしい。

 つまり、あの攻撃はランサーの切り札みたいなものということだ。

 そんなものが簡単に使えるということは……。

 嫌な予感が頭を過った時、足元に魔法陣が現れる。

 もしや、相手の攻撃……!? そう思ったが、その魔法陣から感じる魔力はどこか知っているもので……。

 よく見ると、私たちだけじゃなくて、管理人さんたちとアサシンを相手取ってるエミヤの足元にも同じような魔法陣があった。

 そして、管理人さんが魔法陣を見ずに、その手に持った本を開いて詠唱しているところから、これは管理人さんの仕業だと把握する。

 そのことに安堵していると、管理人さんがこう言った。

 

「時間は稼げた。皆、空間跳躍をするよ!」

「空間跳躍って何!?」

「ワープです先輩!」

 

 聞き慣れない単語に戸惑っている間に、その魔法陣から発せられる魔力はどんどん強くなっていく。

 このままじゃまずいと思ったのか、「魔女」のサーヴァントたちが急いで駆け寄ってきた。

 だけどもう遅い。

 魔法陣から放たれた光が私達を包み込むと、次の瞬間、私達は見知らぬ場所に転移した。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「あらら? 行ってしまわれたわ? どうするのアマデウス? 彼が逃げたのなら、そう簡単には捕まえられないわよ?」

「さすがの僕でも彼がここにいるとは思ってなかったよ。さて、また探さなければならないか……」

「もう! アマデウスったら、もっと笑顔に行きましょう! こんなつらい時こそ優雅に!」

「マリア、君は相変わらずだね。まぁ、今は君の言う通りだ。とにかく、カルデアのマスターたちを追おうじゃないか」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

「きゃっ!」

「ほわっ!?」

 

 管理人さんのびっくり魔術――空間跳躍(マシュが言うにはワープ)を使い、あの場から離れた私達は見知らぬ草原にてしりもちをついていた。

 どうやら、魔法陣が空中に展開されてたみたいで、少し高さがあったみたいである。

 そんな私達の目の前には、見渡す限りの草原が広がっていた。

 空を見上げると、太陽が燦々と輝いており、時間的には昼頃かな?

 だけど、辺り一面が草原だから、ここがどこだか分からない。

 ここは……いったい……?

 

「あの場所からおよそ30キロの場所だ。ここなら、奴らもすぐには追撃できないだろう」

「あ、管理人さん!」

 

 声のした方へ振り返ると、管理人さんが地面に手をついて立ち上がっていた。

 私もマシュの手を借りて立ち上がる。

 それを見た管理人は、本を開きつつ、こっちに向かって歩いてきた。

 

『皆大丈夫かい!? 突然のことで僕らの方もバタバタしてたけど……』

「大丈夫だよロマン! 乙女のお尻にダメージが入ったこと以外は問題ない!」

 

 心配してくるロマンに、私は元気よくそう返した。

 それに苦笑しながら、ロマンは管理人さんに問いかける。

 

『先程の「魔女」についてなんだけど、管理人君はなんであんな質問をしたんだい? 幼い頃とか約束とか……』

「ああ、それに関してはぐえっ」

「兄さん? それ以上はいけませんよ?」

「痛い痛い。アームロックはやめてくれよジャンヌ」

 

 管理人さんが「魔女」にした質問の意図をロマンが聞いて、それに管理人さんが答えようとするのを遮って、ジャンヌさんが管理人さんにアームロックを仕掛ける。

 なんだろう……「それ以上はいけない!」って言葉が浮かんでくるんだけど……。

 まぁ、そういうのはさておき、私も気になったので聞いてみた。

 

「ねぇ、管理人さん。あの質問は何か意味があったの?」

「立香さん!? あなたもですか!?」

「うん、真面目な話だから、そろそろアームロックを解いてあげてジャンヌさん。管理人さんすっごい余裕そうだけど、話が進まないから……」

 

 私の言葉で、渋々といった様子ではあったが、ジャンヌさんは管理人さんを解放してくれた。

 管理人さんが解放されると、ジャンヌさんは彼の腕を掴んで、どこかへと歩き出す。

 管理人さんは何事もなかったかのように付いていくので、ちょっと心配になったが、「まぁ、ジャンヌさんだし大丈夫か」と楽観的に考え、見送った。

 やがて、私達から20メートルぐらい離れた二人はこちらに声が聞こえない程度に話をしだす。

 大体3分ぐらいしてから二人は戻ってきて、再び会話を始めた。

 ちなみに、その間にエミヤとクーニキは周囲を警戒するために離れており、この場に残っているのは私達だけである。

 二人が戻ってきたところで、ロマンが管理人に話しかけた。

 

『それで、もう一度聞くけど、さっきの質問の意味は?』

 

 その問いに、管理人さんはこう答える。

 管理人が口を開いた瞬間、その場の温度が急激に下がった気がした。

 管理人さんはゆっくりと息を吸うと……

 

「実はジャンヌが幼い頃、とある約束をしたってのは、あの話を聞いたなら分かっているだろう? その内容は言えないけど、ジャンヌの反応からして、覚えているのは分かっている。そして、「このフランスを憎んでいるから、私は滅ぼす」と「魔女」は言っていた」

「うん……すっごい怖かった」

 

 管理人さんの言葉を肯定するように、私は呟く。

 あの時の彼女は、まるで憎悪に飲み込まれたかのような目をしていた。

 それは、私達が知っているジャンヌさんではなく、ただひたすらに他者を呪っているような、そんな目をしていたのだ。

 もしあの時、彼女が聖杯を使って、私達に襲い掛かってきたらと思うとゾッとする。

 そんな事を考えていると、管理人さんが静かに言った。

 彼は真剣な表情で……しかし、普段通りの声でロマンに告げる。

 

「僕はその時考えたんだよ。もしかしたら、「魔女」はジャンヌが心のどこかで思っていた「憎悪」の部分なのかもしれないと。しかし……」

「私は、自分を聖女にふさわしくないと思っていましたが、このフランスにあれほどの恨みを持ったことはありません。それが例え、火炙りにされた時でも変わりません」

「……このように、本人自身が否定している」

『…………なるほど』

 

 管理人さんの言葉を引き継いだジャンヌさんの言葉に、ロマンが黙った。

 私も何も言わず、二人のやり取りを聞く。

 ジャンヌさんはさらに続けた。

 

「この場で言うのは恥ずかしいんですが……兄さんの言った幼い頃の約束を、私は一度として忘れたことはありません。ですが、それを誰かに言うつもりもありませんでした。だから、このことを知っているのは、私と兄さんだけになります」

 

 ジャンヌさんの話を聞いているうちに、ロマンは納得したように何度か小さく首を振る。

 そして、ロマンは管理人さんを見て問いかけた。

 彼の目は先程とは違い、鋭いものになっていた。

 管理人さんはそれに応えるよう、あることを告げた。

 

「おそらく、相手は聖杯を使って創り出したんだろう。自分にとって都合のいい――フランスを憎む「ジャンヌ・ダルク」をね」

 

 その言葉を聞いた瞬間、私達は言葉を失った。

 何故なら……。

 「自分が愛した国を滅ぼす存在なんて、本来ならいるわけないだろう?」管理人さんが言いたいのは、そういうことだ。

 もしも、「魔女」がジャンヌさんと同一人物だったならば、火炙りの場で怨嗟の声を上げることもなく、オルレアンで虐殺を行うこともない。

 だから、フランスを憎む誰かによって、本来のジャンヌさんとは違うジャンヌさん――「魔女」が創り出されたんだろう。

 確かに、そう考えると辻妻が合う。

 だけど……それでも分からないことがあった。

 だって、それじゃあジャンヌさんはどうなってしまうのか。

 仮に、管理人さんたちの考えが正しいとすれば、「魔女」はジャンヌさんの偽物ということになり、ジャンヌさんを利用しようとして、フランスに復讐しようとした人物は、一体どこに行ってしまったのだろうか。

 私の疑問に答えるかのように、管理人さんがさらに説明を続ける。

 その声音には、若干の怒気が含まれていた。

 彼がここまで怒りを見せるのは初めてだ。

 それだけ、自分の妹分の偽物とも言うべき存在を作られたのが頭に来てるんだろう。

 管理人さんの怒りを感じているのか、ジャンヌさんは顔をしかめさせていた。

 ……うん、これは後でフォローが必要だよね。

 そんな事を考えながら、私は管理人さんの説明に耳を傾けた。

 

「ということで、僕たちができることは、オルレアンの状況を知りつつ、「魔女」を生み出した「誰か」を探っていこう。そして、カウンターとして召喚されたのはジャンヌだけではないはず。だから、協力してくれるサーヴァントも探しつつ、戦力が集まったらオルレアンで決戦だ。異論はないかな?」

「ありません! 必ず、あの偽物のジャンヌを倒してみせましょう!」

 

 管理人さんの問いに、私は力強く答えた。

 こうして、新たな目標を掲げて、私達はこの特異点を進んでいくのであった。







 頭のいいキャラを入れると話がサクサク進んでしまうが、その代わり、本来の出会いがなくなってしまうこともある。


何時に投稿すると見やすいのか?

  • 1~3時
  • 4時
  • 5時
  • 6時
  • 7時
  • 8時
  • 9時
  • 10時
  • 11時
  • 12時
  • 13時
  • 14時
  • 15時
  • 16時
  • 17時
  • 18時
  • 19時
  • 20時
  • 21時
  • 22~24時
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。