「図書館って、強い能力だよな」「お前は何を言ってるんだ」   作:クラウディ

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本日二度目の投稿。

管理人さんの宝具の名前が(ルビだけ)決まりました!

図書館を「アカシックレコード」
ペンを「レコーダータクト」
にしたいと思っています!

協力してくれた「Beal」さん、「こんころ狐」さん、ありがとうございます!

それでは、本編どうぞ!





リヨンにて

「ここがリヨンです」

 

 先導するジャンヌさんから告げられたその街――「リヨン」の光景は凄惨たるものだった。

 建物は崩壊しており、あちこちに血痕が見られる。

 街の中央にある城も半壊している。

 そんな様子に眉をひそめるが、今はそれどころじゃないと思い直し、気持ちを切り替える。

 

「ねぇロマン。町の中に生きてる人は?」

『……駄目だ。サーヴァント反応が二つあるがそれ以外は……』

 

 空中に投影されたカルデアの映像からロマンの声を聞きつつ、辺りの様子をうかがっていると、ジャンヌさんがこちらを振り返る。

 彼女の顔はどこか強ばっていた。

 

「大丈夫ですかジャンヌさん?」

「……ええ、大丈夫です立香さん。それより、ジークフリートを探しましょう。ルーラーとしての力で場所は分かっています」

 

 そう言って、彼女は歩き出す。

 私たちはその後に続きながら、破壊された町並みを進む。

 瓦礫を飛び越え、崩れた建物を迂回しつつ、奥へ進んでいく。

 そして、しばらく歩くと開けた場所に出た。

 そこには――。

 

「っ! 生ける屍(リビング・デッド)!」

「管理人さん!」

「任せたまえ。『詠唱破棄――この魂に憐れみを(キリエ・エレイソン)』」

 

 目の前に現れたゾンビのような姿になった人間たちを前に、管理人さんは一瞬にして魔法陣のようなものを空に浮かべる。

 すると、ゾンビたちは突然苦しみだし、そのまま塵となって消えていった。

 それを見届けた後、管理人さんは私に振り返る。

 

「さぁ、向かおうか……と言いたいところだが……無粋な輩の登場だね」

「やはり、気づかれてしまうか……」

 

 管理人さんの言葉にそちらを見ると、そこには明らかに先程のゾンビとは違う雰囲気を纏った人物がいた。

 黒い貴族服に身を包み、顔のほとんどを覆う仮面の隙間からわずかに覗かせるその顔は青白く、死人を思わせる風貌だった。

 その手は明らかに人のそれではなく、禍々しい気配を放っている。

 ただならぬ相手であることは明らかだった。

 

オペラ座の怪人(ファントム・オブ・ジ・オペラ)……?」

 

 管理人さんの手によって、ルーラーとしての力――「真名看破」を発揮したジャンヌさんが、相手の真名を暴いた。

 どうやら、それが彼の正体らしい。

 しかし、その名を聞いた瞬間、隣にいたマシュが驚きに目を見開く。

 その様子を見かねて、管理人さんが声をかける。

 彼もまた、知っているようだ。

 

『十九世紀を舞台とした小説『オペラ座の怪人』に登場した幽霊怪人(ファントム)の、恐らくはそのモデルとなった人物だろうね』

 

 そう説明したロマンの言葉に納得する。

 確かに、今の彼はまさにそういう風体だったからだ。

 ……ん? 待って……。

 という事はつまり……。

 私は改めて、目の前にいる男――ファントムを見る。

 ファントムは、すでに塵となったゾンビたちの姿を見て、心底残念そうにため息を吐いた。

 

「ふぅ……彼らも私の地獄で歌ってくれればよかったのだが……」

「っ!」

 

 その発言に、私は歯を食いしばり、拳を握り締めた。

 ただ殺すだけでは飽き足らず、死者を冒涜するなんて……!

 怒りで体が震えるのを感じていると、管理人さんが一歩前に出る。

 右手召喚した本に魔力を集め、いつでも放てる態勢に入った。

 それに気づいたのか、ファントムは口元を歪め、両手を広げる。

 まるで、歓迎でもするように。

 

「さぁ、惨劇を始めようではないか……!」

「来ます先輩!」

「そんなことさせない! 絶対にぶっ飛ばしてやる!」

 

 マシュの声に我に返り、盾を構えるマシュの隣に立つ。

 そして、こちらに向かってくるファントムを迎え撃つべく、戦闘態勢を取る。

 こうして、私たちとファントムの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 最初に仕掛けてきたのは、ファントムの方だった。

 管理人さんが浄化したゾンビ以外の残っていたゾンビをこちらにけしかけてきて、一斉に襲いかかってくる。

 サーヴァントの皆はそれらを蹴散らしながら、ファントムへと接近する。

 対サーヴァント戦を想定していたおかげか、ゾンビたちはそこまで強くなく、一撃の元に切り伏せることができた。

 けれど、問題はここからだ。

 ゾンビたちが消滅した後、その奥に陣取っていたファントムは、人骨でできたオルガンのようなものを召喚する。

 

「唄え、唄え、我が天使……地獄にこそ響け我が愛の唄(クリスティーヌ・クリスティーヌ)……」

「いきなり宝具かよ!?」

「皆さん! 私の後ろに下がってください!」

 

 クーニキが驚愕したような声を上げ、ジャンヌさんが皆を自身の後ろに下げる。

 その直後、ファントムはパイプから奏でられる音色に合わせて歌い始めた。

 そして、爆発するかのような音が発せられ、思わず耳を塞ごうとする前に、ジャンヌさんが宝具を発動する。

 

「主の御業をここに。我が旗よ、我が同胞を守りたまえ! 我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!」

 

 それは、かつて聖女ジャンヌ・ダルクが常に先陣を切って走りながら掲げ、付き従う兵士達を鼓舞した旗を用いた宝具。

 天使の祝福によって味方を守護する結界宝具。

 管理人さんも保有するEXランクという規格外の対魔力を物理的霊的問わず、宝具を含むあらゆる種別の攻撃に対する守りに変換するというもの。

 そのランクは驚異のAランク。

 生前は聖女と呼ばれたジャンヌさんの宝具は、まさに防壁と呼ぶに相応しい効果を発揮し、辺り一帯を不可視の壁で覆う。

 だが、ファントムは止まらない。

 

「くぅっ!」

「宝具を連続で使用するとは……! 先輩に管理人さん! このままではジリ貧です!」

 

 マシュの悲鳴にも似た警告を聞きつつ、私自身も必死に考える。

 今ここで一番効果的な攻撃方法は何か。

 それを考えるが、有効な手段は何も思いつかない。

 ジャンヌさんの宝具による防御もいつまで保つかわからない。

 どうすればいい?

 ファントムまでは距離がある。

 遠距離攻撃手段を持つエミヤなら攻撃が届くかもしれないけど、そうなったら旗を解除しなきゃいけない。

 それに、アレだけの魔力が吹き荒れる中、矢が破壊されないとも限らない。

 どうしたら……!

 

「そうだ……! 管理人さん! 空間跳躍って私たち以外にもできる!?」

 

 私は咄嵯に思いついたことを口に出す。

 すると、すぐに管理人さんからの返答が来た。

 

「……できるよ」

 

 少し間があったのが気になるけど、今はそれを気にしている場合じゃない。

 とにかく、その返事を聞いた私は、続いて指示を出す。

 

「ジャンヌさんはそのまま宝具を維持してて! エミヤ! あのネジみたいな矢を構えてて!」

「ネジ……偽・螺旋剣(カラドボルグ)のことか!?」

「そうそれ! それを構えてて! 発射した瞬間、管理人さんに矢だけ飛ばしてもらうから!」

「! なるほど……了解した!」

「立香! 私たちは!?」

「マリーさんたちは戦闘に向いてないから今はお休みで!」

 

 そう言って、マリーさんの言葉を聞きながらも、エミヤは投影した剣――矢をつがえる。

 そして、その瞬間を待つ。

 ファントムは未だ宝具を歌い続けている。

 けれど、ジャンヌさんの旗は、徐々に損傷が出始めていた。

 私はそれを見つめながら、合図を送る。

 そして、その時は来た。

 ファントムが最後のフレーズを歌うと同時に、一拍の隙ができる。

 

「今!」

偽・螺旋剣(カラドボルグ)!!」

 

 私の合図とともに、エミヤが射った矢が弓から飛び出し、そのまま空を進んでジャンヌさんの展開した障壁にぶつかる前に、

 

「――『空間跳躍』」

「!? かはっ!?」

 

 管理人さんが矢だけを的確にファントムの側に飛ばす。

 矢はファントムに突き刺さり、当たった部分とその周辺を抉り飛ばした。

 けれど、まだ終わらない。

 矢が突き刺さった後も、エミヤが投影した宝具にはあることができるのだ。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

 壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)

 サーヴァントが持っている宝具に込められた神秘を爆発させる技だって管理人さんが言っていた。

 そんなことをすれば、サーヴァントは強力な武器を失うのと同じことらしいのだが、エミヤは一度見たものを魔力がある限り複製できるからこそ、あんな戦い方ができるのだ。

 エミヤの一撃を受けたファントムは爆発の中で完全に消滅する。

 その瞬間、先程まで響いていた怪音波も消失した。

 

「……倒せたんですか?」

「ファントムの気配は消失した。しかし……」

「しかし……?」

 

 ジャンヌさんが恐る恐るという風に管理人さんに聞いてくるので、私が聞き返すと、管理人さんはこう答えた。

 だけどその前に、カルデアと通信が繋がる。

 

『皆! 今すぐその場から逃げてくれ! サーヴァントを上回る――()()()()()()()()だ!!』

「『蜥蜴』が来るようだね……」

 

 ドクターの切羽詰まった声と共に、管理人さんがとある名前を呟く。

 『蜥蜴』。

 それは、竜の比喩にも使われている。

 つまり、それは――

 

――オオオォ……!!

 

 突然、遠方から轟音が響き渡る。

 何事かと思っていると、マシュを含めたサーヴァント全員が警戒心を露わにしていた。

 私自身、背中に氷柱を突き刺されたような悪寒を感じて、その場にへたり込んでしまう。

 すると、管理人さんがこんな言葉をかけてきた。

 いや、かけてくれた。

 まるで、恐怖を和らげようとするかのように……。

 

「大丈夫だよ……僕達(サーヴァント)がいるんだし、立香ちゃんがいれば……どんな相手でも、負けるわけがない」

「そうですよ先輩……! 私たちは、ここで足を止めるわけにはいきません……!」

 

 そう言って、マシュも自身を奮い立たせるように私に声をかけてくれた。

 そうだ。

 私たちはまだ、止まれない。

 だって、私たちの後ろにはたくさんの人たちがいて、そのために今も必死になって戦っているのだから。

 私は改めて決意を固めると、管理人さんの方を見る。

 

「立香君たちは先にジークの下へ急いでいてくれ。ジャンヌとマルタ、皆の先導を頼む」

「! 兄さんは!?」

「安心してくれ。流石に消滅することはないだろう。それこそヘラクレスレベルが来ないとね」

 

 管理人さんの言葉に、私は思わず息を飲む。

 あのヘラクレス?

 それって、ギリシャ神話で語られる、最強の英雄の一人じゃない!?

 でも、そんなことも言ってられない。

 

「行こう皆!」

「っ! 分かりました先輩!」

 

 マシュの返事を聞いて、管理人さんを除いた全員が建物の中に入っていく。

 後ろから響く轟音を振り払うようにして……。







・管理人のちょっとした秘密

 実はハッピーエンドが好き。
 バッドエンドはあんまり好きじゃない。

 誰だって、美しいものが見たいのだ。
 それは管理人だって例外じゃない。

 犠牲の上での幸福……?
 絶対に変えられない世界の流れ……?

 そんな結末、()が変えてやる。


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