「図書館って、強い能力だよな」「お前は何を言ってるんだ」 作:クラウディ
良い感じに書けた。
いつもと比べて調子にムラがありすぎる……。
あと2、3話で第一特異点終わります。
それではどうぞ!
「……敗北だ。これで我が身の呪いも解ける。……貴方達に感謝を。そして、愛しの王妃に謝罪を。申し訳ありません、王妃よ。我が過ちを許したまえ――」
「……えぇ。許すわデオン。貴女の罪を許しましょう」
「ふぅ……音楽家を戦わせないでほしいんだけどなぁ……」
バーサーク・セイバー――シュヴァリエ・デオンがマリーさんに謝罪の言葉を残しながら消えていく。
彼女は、私達が戦った敵の中でもかなり特殊な存在だろう。
彼女からは殺意を感じなかったし、何より、彼女がジャンヌさんやゲオルギウスさんといった英霊達に敬意を払っているのは明らかだった。
……とはいえ、『魔女』に操られている以上、倒さなければならなかった。
そして、クーニキが相手をしている方――ヴラド三世も倒されていた。
「――ここで、終わりか。余の夢も、野望も、またも潰えるか……」
「おうおう。随分と弱気じゃねぇか。あれだけの威勢はどこいった?」
「それはそれ、これはこれだ。今の余はただの亡霊にすぎない。聖杯の力によって望まぬ殺戮をさせられていた哀れな男に過ぎん。それに、どうせなら最後は正義である者の手で死にたいものであろう? さらばだ……」
そう言い残して、ヴラド三世は静かに消滅した。
……結局、彼の真意は分からずじまいになってしまったけど、今は考えても仕方がない。
それよりも、目の前の脅威に集中しなければ。
「マスター、大丈夫ですか!?」
「うん、なんとか……。皆は……?」
「あとはエリザベートさんと清姫さんが相手をしているカーミラだけですが……」
「多分勝てそうだね……なら、私たちは……!」
「はい! このまま先へ進みます!」
マシュの言う通り、私たちにはまだまだ余裕がある。
ならば、先に進もう。
そう思っていた時だった。
「え――」
私の横を、ものすごい勢いで通り過ぎる『誰か』の姿があった。
その際、紅い液体が飛び散り私の顔にもかかる。
その正体は、すぐに分かった。
――血だ。
つまり、その人物は負傷しているということ。
誰が……?
思わず振り返ると、そこには……。
「くっ……! まさか、ここまでとは……!」
ジャンヌさんが苦悶の声を上げながら立っていた。
全身はボロボロになり、額から大量の血を流している。
その姿は、満身創痍という言葉がよく似合っていた。
「ジャ、ジャンヌさん!?」
「っ! 待ってください先輩!」
親しい人の姿を見て、私は慌てて駆け寄ろうとした。
それをマシュが制止するが、私は振り払ってジャンヌさんの下へと向かおうとする。
だが、
「きゃあっ!?」
ゴウッと、突然発生した炎の壁が行く手を阻む。
その発生源は当然、
「そう簡単に行かせるもんですか」
『魔女』だ。
彼女はジャンヌさんの傍に立ちながら、こちらを睨みつけてくる。
睨みつけられた瞬間、全身の鳥肌が立った。
恐怖心で体が震えそうになるが、それでも必死に抑え込む。
それでも、『格』の違いともいえる圧倒的なプレッシャーに押しつぶされそうになった。
(これが……『魔女』の本当の力……!)
以前、ダ・ヴィンチちゃんが言っていた。
『彼――管理人はね、神代の英雄以上の力を持っている。格的には『神』よりも上だね。普通なら勝てないよ。でも、今のサーヴァントとして召喚された彼なら、聖杯を持った状態で戦えば勝ち目はある』
それが、今の状況。
管理人さんと同程度の相手が、ジャンヌさんを殺そうとしている。
私ひとりじゃジャンヌさんを助けられない。
かと言って、皆を呼んでも勝てるかどうかわからない。
そんな絶望的な状況の中、ふと声が聞こえた。
「『突風』」
「なっ!」
「きゃあっ!」
聞き覚えのある声と共に、ジャンヌさんを襲おうとしていた『魔女』の周りに突風が吹き荒れ、私たちを隔てていた炎の壁も吹き散らされる。
そして、ジャンヌさんがこちらに吹き飛んでくる。
「え、えちょまっ!? へぶっ!?」
「きゃっ! だ、大丈夫ですか立香さん!?」
咄嗟に受け止めようとしたのだが、ジャンヌさんが私を巻き込んで倒れてしまう。
……ちょっと恥ずかしい。
そして、ジャンヌさんを抱き留めたまま顔を上げると、
――そこには、管理人さんが立っていた。
「あ……」
「無事か、ジャンヌ?」
「えぇ、なんとか。助かりました兄さん。それと、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。『魔女』に負けてしまい……」
「気にするな。あれは仕方のないことだ。それより……」
管理人さんが私達を見て、それから周りを見渡す。
そして、少しだけ顔をしかめた後、ゆっくりと口を開いた。
「ふぅ……思っていた以上に聖杯の力が強いみたいだな。僕がいない間にここまで被害が出ているとは思わなかった……」
「あの、『魔女』は……」
「ああ、任せてくれたまえ。気になっていたこともあるからね」
そう言って、管理人さんは前に出る。
すると、今まで無表情だったはずの彼が、笑みを浮かべながらこう言った。
「ようやく話せるね。聖杯によって生み出されたジャンヌの――『贋作』君?」
「……ッ!」
その言葉に動揺をあらわにする『魔女』。
それとは対照的に、管理者さんは穏やかな口調のまま続けた。
「さて、まずは状況を整理しようか。元々、この特異点は君という異物から始まった……のではない」
「え……?」
管理人さんの言っていることが理解できず、思わず声を漏らす。
だが、管理人さんは構わず語り続ける。
「ジャンヌを自称する君は、フランスへの復讐のために聖杯の力で蘇ったと言っていた……。しかし、当のジャンヌはそんなものなどこれっぽっちも持っていない。なら、億分の一の確率でジャンヌの意識が現世に現れ、聖杯に願うとしても、復讐のための復活はないだろう。むしろ、自主的に消滅することを選ぶだろうし、ジャンヌ一人の力では『抑止力』を振り切ることなどできない」
そこで言葉を切った管理人さんは、今度はジャンヌさんの方を向いて言う。
「ならば、なぜここにジャンヌ・ダルクを名乗る者がいるのか? 答えは簡単だ。『ジャンヌ・ダルク』は一人ではなく二人いるからだ」
「え……?」
「本来、サーヴァントを召喚するとしたら、原則として、同じサーヴァントは2体召喚されることはない。それは僕だって同じこと」
「…………」
「だが、例外はある。それが今回だ。おそらく、『君』が召喚される前に別の誰かが召喚され、その誰かが願ったのだろう。……『フランスを憎むジャンヌ・ダルク』をね」
管理人さんの言っていることは以前にも聞いていたから分かる。
優しいジャンヌさんが国を滅ぼそうとするなんてありえないと。
だから、ジャンヌ・オルタさんが『偽物』である可能性は確かにある。
でも、それだけじゃない。
もう一つ、管理人さんには何か確信があるような気がした。
「『君』はね、僕の知っているジャンヌとは違うんだ。僕の知っているジャンヌは、食べるのが好きで、誰であっても無条件に愛してしまうほど底抜けのお人好しで、そして何より、自分のことを『ただの小娘』だと認めながらも、『聖女』であろうと努力し続けた人なんだ。少なくとも僕はそう信じている」
「……」
「だからこそ、君のしていることを看過するわけにはいかない。彼女は、フランスの勝利を願って戦った英雄であり、聖女だ。……人々を虐殺する『魔女』ではないんだよ。ジャンヌ・『オルタ』君……」
言葉の最後を、はっきりと強調しながら告げる。
すると、それまで黙っていた『魔女』が口を開いた。
「……あなたに、私の何がわかるっていうんですか?」
「わからないよ。正直なところ、僕は『君』のことをよく知らない」
「なら、どうしてそんなことが言えるのです!?」
「簡単なことだ。『君』は、僕が知るジャンヌよりも弱い」
「っ!」
「もちろん、単純な戦闘だけを見たらそうではないかもしれない。だけど、君がジャンヌより劣っていることはたくさんある。優しさ。愛嬌。勇気。そして……心の強さ」
「……っ!」
「君は強いと思っていたかい? ……いや違うな。思いたかっただけだ。君は『誰か』の願う感情のままこの国を滅ぼそうとする、まるで『操り人形』のようでありながら、それでいいと思っている節があった。自分はジャンヌであると思い、自分という我を出しながらも、悲惨な最期を遂げたジャンヌならこう思うだろうと想像して行動していた」
「……さい」
「はっきり言おう。君はジャンヌではない。そして、ジャンヌも君のようなことは望んでいないはずだ」
「……うる……さい……!」
「君は――」
「うるさいって言ってんでしょうがぁ!!」
叫びと共に放たれた炎を、管理人さんは軽々と避ける。
「ふぅ……」
「はあ、はあ……」
服の裾に燃え移った火を払いながら一息を吐く管理人さんとは対照的に、大きく肩で息をする『魔女』……いや、『ジャンヌ・オルタ』。
彼女の顔は怒りに染まっており、今にも爆発しそうだった。
そして、それを見た管理人さんは再び口を開く。
「さて、ここからが本題だ。君は軽く『解析』したところ、肉体情報に関して言えばジャンヌと瓜二つだ。ただ、その肉体に残る経験がまるで『生後十数日』程度しかない」
「あぁあああああああああああああっ!!!」
管理人さんの言葉を聞きたくないとでもいうかのように、旗を振り回してあたり一帯を火の海にする『オルタ』。
そんな彼女を見ながらも、管理人さんの口調は一切変わらない。
淡々と事実を告げた。
「肉体だけは大人で、経験は赤ん坊。精神的にも僕の追及で取り乱す程度には脆い。ジャンヌはその精神力から英霊として呼ばれたといっても良い。だが、今の君はまるで癇癪を起こす子供のようだ」
「君は、僕がジャンヌと交わした約束を思い出せなかったね? なにせ、ジャンヌが子供の頃――君の経験の中には含まれていない時期に交わしたものだからだ」
「うぐっ……! ああああっ!!」
「これらから察するに、君は――」
再び暴れ出した彼女に、管理人さんは動じることなく話し続ける。
そして、最後に一言だけ言った。
「――君は、『ジャンヌ・ダルク』ではないからだ」
管理人さんの口から、その言葉が出た瞬間。
「…………」
今まで、怒りの表情を浮かべていた『オルタ』の顔から、一切の感情が失われた。
いつの間にか私の周りにはみんなが集まっていて、『オルタ』を警戒している。
でも、『オルタ』を攻撃をするという訳ではなく、管理人さんに任せていた。
「……な、んで……」
「…………」
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでっ!!?? 私は『私』じゃないの!? 私はどうして生まれたの!? ねぇっ!?」
「…………」
「教えてよお兄さま!! 私は何なの!?」
縋りつくように泣き叫ぶ『オルタ』の姿は、まるで子供だった。
自分の存在意義がわからなくて、ただひたすらに泣くことしかできない小さな女の子のように見えてしまう。
そんな姿を見て、管理人さんは何も言わずに黙っていた。
「ひっく……ひっく……」
「……『オルタ』」
「えっ……?」
泣き続けていた『オルタ』を、そっと抱きしめる管理人さん。
それは、本当に優しく包み込むような抱擁で、見ているだけで安心してしまうほど温かいものだった。
「君がしてきたことは許されることではないし、僕だって許す気もない」
「……っ!」
「でも、君は『そうあれ』と願われてしまった不幸な子だ。なら、それを叶えるために頑張ってきたんだろう? だったら、もういいじゃないか。誰かの願いのために頑張るのは、これで終わりにしよう」
「……う、うぅ~!!」
『オルタ』は、管理人さんの言葉を聞いてまた大声で泣き始めた。
その涙には、憎しみや悲しみだけじゃなく――きっと、色んな感情が含まれていると思う。
そんな二人を見て、私達はただ見守ることしかできなかった。
・管理人のちょっとした秘密
基本的にどんな人にも優しい。
甘いともいえる性分だが、それは彼に存在意義を与えてくれた『彼』の性格を大きく引き継いでいるからである。
『生まれたからには幸福に』
『誰かに決定される未来ではなく、自分で選んだ道を歩む』
『もし、間違った生き方をしていたり、自分で選択できないのであれば、先達として正し、背中を押す』
『悪として生きていても、底抜けの悪でなければ、助けられる』
『その生き方しかできない、受け入れてもらえなかったら、自分が受け入れる』
偽善だなんだといわれそうだが、偽善があるからこそ救われる人がいる。
余計なおせっかい上等。
手が届くのならば助けるんだ。
明日の飯が不味くならないように……。
自分の心を裏切らないためにも……。
ちなみに、『彼』は『セイヴァー』の資格がある。
何時に投稿すると見やすいのか?
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