「図書館って、強い能力だよな」「お前は何を言ってるんだ」 作:クラウディ
いつの間にか、UAが10,000を突破していました!
それも、この作品を見てくださる皆様のおかげです!
これからも頑張っていきたいと思っていますので、ご愛読、よろしくお願いします!
それでは、本編どうぞ!
「…………」
「兄さん!」
淡々とワイバーンを屠っていく兄さんの後ろ姿を見て、思わず叫んでしまった。
普段の兄さんなら、絶対にこんなことはしない。
なのに、どうして? そんな疑問が頭から離れない。
ただ言えることと言えば、今の兄さんは普通じゃないってことだ。
だから、止めないといけない。
でも――どうやって?
「……大丈夫だよ、ジャンヌ」
「! 兄さん!」
私の問いかけに返事をしてくれたのは、いつの間にか戻ってきたらしい兄さんだった。
どうやら、さっきのワイバーンで最後だったみたい。
こちらに近づいてくる姿に少しだけ安心してしまったが、すぐに気を引き締め直す。
「一体、何があったんですか……!?」
「……君を名乗る誰かが、こうしたのは分かっている。でも、何故
あぁ……なんて悲しい目をしているんでしょう……。
いつも笑顔で、私の頭をなでてくれていた兄さんが、こんなにも悲しんでいる……それがとても辛かった。
きっと、これは夢だ。
そう思いたかった。
だけど、これは紛れもない現実なのだ。
聖杯の力によって、生み出されたであろうもう一人の『私』によって起こされた悲劇。
それを止めるために、こうして戦っているのだ。
だから――。
それを遮るように、ロマンさんの声が聞こえた。
『管理人君! 今すぐ戻ってきてくれ! そこから離れて行ったサーヴァント反応が引き返してきた!』
「!? 兄さん!」
「分かってるよ。皆の下へ今すぐ合流しよう」
そう言って、私達は常人離れした身体能力で立香さんたちの下へ急いだ。
道中、兄さんの表情を見た。
その顔はとても険しく、何かを考えているようだった。
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「あれが……!」
「魔女……!」
私たちの視線の先には、黒い服を身に纏った女がいた。
おそらく、アレが今回の黒幕――ジャンヌさんを名乗る「魔女」だろう。
しかもそれだけじゃない。
周りには、様々な衣装の男女が4人ほどいて、誰もがエミヤやクーニキなんかと劣らない威圧感を放っている。
間違いない、こいつらがこの町を襲った奴らだ。
怒りのあまり歯を食いしばってしまうが、駆けだすことはできない。
下手に動こうものなら、私みたいな一般人に毛が生えた程度の存在では、「魔女」にたどり着くことすらできず瞬殺されるだろう。
それほどまでに、今の相手は強い。
そんな私とは違い、皆は冷静に相手を見据えている。
エミヤとクーニキはもちろんだが、マシュですらいつでも自分のやるべきことをやれるようにと構えていた。
流石だ。
こんな状況でも、皆は落ち着いてる。
――だからこそ、私は覚悟を決めることができた。
皆に守られるだけの、足手まといにならないための努力をするために。
「皆さん無事ですか!?」
「ほぉ……」
そう考えていると、ジャンヌさんと管理人さんが瓦礫の山を越えて私達の下へ駆け寄って来る。
心配はしてなかったけど、現状の最高戦力である管理人さんと、管理人さんによれば、マシュみたいな防御型の宝具を持つジャンヌさんはこの場には最適だ。
そして何より、これでサーヴァントの数は同数。
数の上では互角になった。
そんなことを私が考えていると、「魔女」がジャンヌさんの方を見て、目を見開いた。
「……っ!」
「――なんて、こと。まさか、まさかこんな事が起こるなんて」
ジャンヌさんが警戒心の混ざった眼差しで「魔女」を見上げるのに対し、「魔女」は信じられないと言わんばかりに呆然としていた。
一体、何を驚いているんだろう?
そんな疑問を抱いている間にも、状況は進んでいく。
管理人さんが、小声で声をかけてきたからだ。
「皆、すぐさま撤退戦ができるように構えてて」
「ど、どうしてですか……?」
「おそらく相手は、『聖杯』を所持しており、それによって、あのサーヴァントたちは『強化されている』。流石の僕でも強化されたサーヴァントを複数相手取るのは難しい。だから、今、この場で奴らを相手取るのは非常に危険だ」
確かに、サーヴァントの実力は見た目で判断できないことが多い。
ましてや、相手は強力な英霊が5人もいるんだ。
いくら管理人さんでも、手古摺りそうなのは明白だ。
だけど――。
そう思っていると、突然笑い声がその場に響いた。
笑い声の大本は……「魔女」からだ。
「ねえ。お願い、誰か私の頭に水をかけてちょうだい。まずいの。やばいの。本気でおかしくなりそうなの」
そう言いながら、彼女は狂ったかのように笑っていた。
その姿は……とても正気とは呼べないモノだった。
……おかしい。
さっきまで、敵だと認識できるほど殺気に満ちていたのに……。
「だってそれぐらいしないと、あんまりにも滑稽で笑い死んでしまいそう! ほら、見てよジル! あの哀れな小娘を! なに、あれ羽虫? ネズミ? ミミズ? どうあれ同じことね! ちっぽけすぎて同情すら浮かばない!」
そう言って、高々と笑う彼女の姿に、管理人さんを除く全員が唖然として動けず、ただ見つめることしかできなかった。
しかしその中で、ただ一人だけ、彼女の言葉を聞いて顔を青ざめさせた者がいた。
それは――ジャンヌさんだった。ジャンヌさんはまるで恐ろしいものでも見たかのような表情を浮かべていた。
だがその理由までは分からなかった。
それでも、この状況がよろしくないことだけは理解できた。
そんな中、鬱憤を晴らすようにしゃべっていた「魔女」が口を開いた。
「ああ、本当――こんな
その瞬間、空気が変わった。
先程までの、張り詰めた緊張感ではない。
もっと深く、暗い憎悪の感情。
それに気づいた時、私は鳥肌が立った。
思わず一歩後ずさってしまうほどの、恐怖を感じた。
――これは、殺意だ。
――国を滅ぼそうとするほどの、強い、強い殺意だ。
「ねえジル、貴方もそう――って、そっか。ジルは連れてきていなかったわ」
「貴女は……貴女は、誰ですか!?」
ようやく絞り出したような声でジャンヌさんが問いかける。
それに対し、「魔女」は何でもなさげにこう言った。
「それはこちらの質問ですが……そうですね、上に立つものとして答えてあげましょう」
「私はジャンヌ・ダルク。蘇った救国の聖女ですよ、もう一人の『私』」
「ッ!」
ジャンヌさんの顔が、今まで以上に強張った。
そして同時に、彼女が何者であるのかを理解した。
ジャンヌさんと同じ姿をしていて、ジャンヌさんと同じサーヴァント。
だけど、中身はジャンヌさんじゃない。
彼女こそが、ジャンヌさんの言っていた、もう一人の自分なのだと。
「……馬鹿げたことを言わないでください! あなたは聖女などではない! それはこの私自身が一番知っていることです!」
ジャンヌさんが叫ぶ。
そうだ。
ジャンヌさんは、自分のことを聖女にはふさわしくないって言ってた。
そんなジャンヌさんが、自分のことを聖女だなんて言うはずがない。
そんな疑問を抱いていると、「魔女」は言葉を続ける。
「えぇ、えぇ。分かっていますとも。私は聖女なんかじゃありません。私は悪魔と契約した、ただの魔女。竜の魔女と呼ばれた怪物です」
彼女は、そう言って笑った。
狂喜に満ちた笑顔で、自分を嘲笑うかのように。
だけど次の瞬間、彼女の顔から狂気は消え失せ、代わりに真剣な表情で言葉を紡いだ。
まるで、これから告げることが本題であると言うように。
「まぁそんなことよりも、フランスを滅ぼすよりも先に、貴女を殺してしまいましょう」
そう言って、ゆっくりと視線を動かして――ジャンヌさんを見た。
まるで獲物を狙う肉食獣のような目で。
それを向けられたジャンヌさんは、蛇に睨まれた蛙のように固まってしまっていた。
そして、再び視線を戻した彼女は、先程の狂った笑みではなく、優しい微笑を浮かべてこう続けた。
「だから、安心してください。皆等しく地獄へと送ってあげましょう。あいつらが私にそうしたように」
そう言われたジャンヌさんは、一瞬呆けたような表情を見せたけど、すぐに怒りの形相に変わった。
しかし、そんなジャンヌさんを管理人さんが制する。
「抑えなさいジャンヌ。今は怒りに任せて行動するべきではない」
「……ありがとうございます兄さん。少し冷静さを欠いていました」
そう言って、ジャンヌさんは深呼吸をして心を落ち着かせる。
それを見て、管理人さんは静かに問いかけた。
「ねぇ、黒いジャンヌ。君は僕のことを知っているかい?」
「ええ、知っていますとも、お兄さま? あなたはこんな女にも手を差し伸べようとしましたね? やはり体が目当てだったのかしら?」
管理人さんの言葉に対し、皮肉気に返す『魔女』。
しかし管理人さんは動揺することなく、落ち着いた口調で話を続けた。
「僕のことを知っているなら話が早いよ。僕は君と幼い頃にとある約束をしたんだ。それは憶えているかな?」
「は?」
「!? ににに兄さん!?」
管理人さんの問いに対して、二人が困惑の声を上げる。
「魔女」はわけがわからないといった表情だが、ジャンヌさんは先程の悲しそうな顔を一変させて、真っ赤になっていた。
それも当然だろう。
いきなり訳の分からない話をされたら誰だって混乱してしまう。
それでも、管理人さんは構わず続ける。
その瞳には確信めいたものが見え隠れしていた。
「ネタ晴らしはしないよ。それで、答えられるかな?」
「兄さん!? そういう話はこんな場所でしなくてもいいでしょう!?」
「放しなさいジャンヌ。これが一番手っ取り早いからだ」
焦った様子のジャンヌさんを、管理人さんが引き留める。
その様子を見て、なんだか空気が緩くなってしまった。
さっきのシリアス君はどこに……ジャンヌさんが赤い顔のまま、管理人さんの口を抑えようとしている様を見てそう思った私だが、案外効果は劇的だったようだ。
ふと、「魔女」に視線をやると、困惑した表情で頭を抱えている「魔女」の姿がある。
「幼い、頃……? お兄さまと、約束した……?」
ブツブツと呟いている。
どうやら思い出そうとしているみたいだ。
でも、その姿は忘れ物をしてしまった子供のように儚い感じで、今にも消えてしまいそうだった。
やがて、何かを思い出したのか、ハッとした表情になって管理人さんを見る。
そして、震える声で言った。
それは、ある意味では真実であり、同時に嘘でもある言葉。
だけど、今の彼女にとっては何より残酷な一言。
「私の、幼い頃は……?」
「どうやら思い出せないようだね。こっちのジャンヌはすっごい焦っているのに」
管理人さんはそう言って苦笑する。
対する彼女は俯いて、何も言わなくなってしまった。
だけど、私は気づいていた。
彼女が泣いていることに。
肩が小さく上下していて、嗚咽が漏れていることに。
そして、
「そこの男を殺しなさい! バーサーク・ランサー! バーサーク・アサシン!」
「よろしい。では、私は血を戴こう」
「フゥ……男が相手なんて気乗りしないわ……まぁ、その代わりにあの聖女様とお嬢さんたちを食らいましょうか」
突然大声を上げて命令を下す彼女に対して、二人は特に驚くことなく応じた。
そして、戦闘態勢に入る二人。
そんな彼女たちを見て、ジャンヌさんも旗を構える。
管理人さんも本を構え、サーヴァントの皆も戦闘の準備を整えた。
『皆! この特異点に来て初のサーヴァント戦だ! 油断しないでくれ!』
「分かってる! 皆、負けないで!」
ロマンが警告を飛ばし、私が皆に単純な指示を出す。
下手な指示は皆の邪魔になるからだ。
そうして、この特異点に来て初のサーヴァントとの戦闘が始まった。
・管理人のちょっとした秘密
ジャンヌが子供の頃に、2人はとある約束をしており、「私が大人になったら――してください!」というお願いに「機会があったらね?」と返していた。
結局のところ、それは叶えられることはなかったのだが……
誰も知らない歴史の裏話である。
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