秋宮ゆららは青を喰む   作:Ni(相川みかげ)

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レアコレに脳を破壊されて投稿サボってました。
ぼちぼち復帰という事で短いけど投稿です。


42.お泊り会の買い出し

 

「ケーキ、ケーキ~!」

 

 クリスマス当日、私とチカは予約したケーキを取りに行くため、街へと繰り出していた。

 チカが目の前で歌い歩きながら器用にくるくる回ってる。周りから見たら完全に女児そのものだけど、この子大学生なんだよね……

 

「その前にタコパの買い出しでしょ?」

「へへ、そうでしたぁ~」

「もう。クリスマスは毎年一緒に祝ってるじゃん。なんでそんなにテンション高いの」

「今年はみんなも一緒だもん。2人が4人になるから楽しみも2倍なのだ!」

「そうはならんでしょ。馬券当てて高いケーキ予約したからって浮かれすぎ」

「むぅ。あぶく銭はパーッと使うのが楽しいのに」

「そんなダメ人間みたいな事言わないでよ」

 

 ただでさえ私みたいなダメ人間に関わって人生台無しにしてるんだからさ。

 そう思ったが、折角のクリスマスなので苦言はこのくらいにしておく。

 スーパーについた私達は具材を確認する。

 

「ケーキもあるし、タコは少なめでいいでしょ。……なにかタコの他に入れたいものあるかさく姐達に聞いてみよ」

 

 さく姐と冬城は2人でクリスマスプレゼントを買ってから家に来るとの話だったのでLimeで連絡を入れると、さく姐からはすぐに既読がつき「焼き鳥」と返事が返ってくる。今日は酒なしだぞ。

 冬城からは既読がついたのに返事が返ってこない。

 

「わたしベーコン入れるね~」

「うむ。肉ばっかだねキミたちは。後でトマト入れとくか」

 

 さく姐ご所望の鳥ももの焼き鳥を買い物かごに入れた横から、チカがぽいっとブロック状のベーコンを投げ入れてくる。

 もうちょっと女子力とか意識した方がいいんじゃないかな。そう思いながらも口に出す事はやめて、その他の具材や、お菓子を買っていると音沙汰の無かった冬城から「チーズ」との返事がきた。

 

「そんな悩む事か?」

「どうしたの~?」

「冬城がチーズ欲しいんだって。そのくらいさっさと言えばいいのに」

「きっとあさひちゃんになにか頼むのを申し訳ないとか思ってるんじゃないのかなぁ。かわいいよねぇ、ことちゃん」

「もう知り合ってから3か月以上経ってるのに……どれだけ人見知りなんだよ。最初の内は私も大目に見ていたけどそろそろ手が出るぞ」

 

 ひん剥いて強制的に裸の付き合いでもしてやれば、冬城とももうちょっと円滑なコミュニケーションがとれるようになるのだろうか。ちょうどお泊り会だしいいアイデアかもしれない。

 

「そう? ことちゃんもだいぶ遠慮がなくなってきたように思うよ? さく姐もそうだけどあさひちゃんと2人でいる時は好き好き~って感じのオーラすっごい出てるもん。よっ、養殖人たらし~」

「それはもう完全に蔑称なんよ」

「わたしというものがありながら他の女の子を誑し込んでるあさひちゃんに文句の一つや二つくらい言ってもバチは当たらないと思うのです。浮気も重婚もいいけどかまってくれないと拗ねるからね」

「はいはい、よしよ~し」

「くぅん」

 

 抱き着いてくるチカの頭を適当に撫でると、彼女は犬みたいな鳴き声を発した。

 そもそも私の人生は全部チカのために使ってるのにこれ以上何を望んでいると言うのだろう。コラボ配信だってちょくちょくしてるのに本当に強欲だなあ。

 そこまで考えてふと思い浮かんだ事を口にする。

 

「そうだ、配信しない方がチカのために時間は使えるじゃん」

「そういう事じゃないの。もう! あさひちゃんは乙女心がわかってないなあ」

 

 されるがままになっていたチカがバッと顔を上げて怒った顔を見せる。

 乙女心ってなんだ……? くそう、もっとシンプルに物事を捉えろよ人類共……!

 しかし、今日の私は流されるまま生き恥を晒すいつもの私とは違うぞ。

 

「まあ、待ちんしゃい。なにも今すぐやめたいとかそんな話じゃないよ。お仕事だからね。色んな人を巻き込んでまで始めた事なのに、終わり方まで滅茶苦茶じゃあ申し訳が立たない。どんな事があっても切りの良い所までは続けるよ。でも、それとは別の話で。……もう私の役割は終わったでしょ」

 

 チカが反論せずにじっと見つめてくるだけなのでそのまま続ける。

 

「スタートアップはもう成功してる。人気商売なんて誰にも見られないフェーズを乗り越えた後は、勝手に周りが熱狂して盛り上げてくれるものだし、そういうのチカは得意でしょ。私がいようといなかろうと、チカは勝手に人気になってくよ」

 

 ……そもそもチカがその気なら、最初から私の存在なんて不要だったという事実は置いておく。

 『秋宮ゆらら』という引き立て役がいなくても、『夏風たま』が勝手に輝く事を確信できたというのであれば、潔く身を引く方が物語としても蛇足がなくて切りがいい。活動を辞めざるを得なくなった親友の思いを胸に更に輝くアイドル、うん。バックストーリーも完璧だな。

 私は元の自堕落な生活に戻るので、チカにとっては一石二鳥だ。

 

「……ねえ、あさひちゃん。この活動は楽しい?」

 

 唐突にチカがそんな風に問いかける。

 

「うーん……楽しいよ。多分そう思ってる」

「そっか、良かったぁ」

 

 数瞬記憶を整理してそう答えると、チカは安心したように笑う。

 

「前に、あさひちゃん言ってたよね。あさひちゃんをVtuberにさせたかった理由はなんだ~って」

「言ったね。どうせ答えてくれないんだろうけど」

 

 チカは抱き着くのをやめて私の前に立ち、大きく腕を広げて宣言する。

 

「あさひちゃんの頭の中をハッピーで埋め尽くすのが私の目標だからだよっ! ……へへっ、なんちゃって」

「まーた、はぐらかして。まったくもう」

 

 言った後に恥ずかしくなったのか、照れ隠しに舌を出すチカを呆れた目で見る。

 そんな無駄な事したって意味なんかないのにね。

 ……まあ、無駄を積み重ねるのも人間の生き方の一つか。

 

「わかったよ。蛇足だろうとチカがやりたいならいくらでも付き合うよ。よくよく考えたら私の人生そのものが蛇足だし。その代わりちゃんと私の終わり方まで管理するか、すぱっと捨ててよね。今までと同じようにさ」

「またそれ言う。わたし、あさひちゃんを捨てたりしないもん」

 

 どーだか。チカにはもっと夢中になれるものがあると思うよ。

 そんな思いを私は口に出す事はなかった。

 口に出す事で本当にチカが私への興味を失ってしまうのが怖い……などと殊勝な気持ちを持つような人間で私があれたのなら、ここまで拗れた事にはならなかったのかなとふと思ったのだった。

 

 買い出しの後、ケーキを取りに行った。ホールケーキだった。

 チカさん、タコパの後でホールケーキは食べきれないと思うよ……?

 ウキウキでケーキを受け取るチカに水を差すような事は言えなかった。ここで口に出せるような人間で私があれたのなら、もう少し幼馴染は年相応の落ち着きを持っていたのかと思うと涙が止まらなかった。

 

 




マシュマロ
→自由に使ってください。こっちも自由に使います。
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