転生したら冥府の王子 ~凡人だった俺が異世界では光と闇の最強血統だった~ 作:木岡(もくおか)
「ええ!?」
俺はその時、転生した時以来の大きさの驚きをした――。
中界に行きたいという話をした時に、やたら詳しいと思っていたけど、中界出身とは思わないではないか……。ただ、学があるのだとばかり……。
父はなんとなんと、RPGとかでよく聞いた主人公の名称である「勇者」。その人物であったと言うのだ。
でもさ……。
「勇者って……何?」
俺は思ったことをそのまま口にした。ゲームの世界における勇者は分かるけど、この世界における勇者っていったい何なのだ。勇者だから強いと言われても納得できない。
まさか魔王的なものを倒したとでも言うのだろうか。
「うーん。魔王を倒して世界を救った人のことだな。魔王って奴は魔界の王様で、力を付ける度に何でか他の世界を攻めようとするんだけど、前にそれを止めた奴も、そのまた前にそれを止めた奴も勇者って呼ばれてるから、俺も勇者って訳だな」
本当にそうであった――。
詳細なことは分からない。さらに聞きたいことが山ほどあった。行きたい世界のことについても、父の過去全てを話して聞かせてほしくなった。
だから、それから俺は父を追いかけまわすようになった――。
両親2人の強さを知った俺はまた、すくすくと育った。1日1日と日々を重ねて、1歩ずつ成長していった。
ただの冥府の王族だと思っていた。いやその時点で、ただのというのはおかしいが、それに加えて勇者の息子だった。何それどういう血統、とんでも最強血統ではないか。間違いなくこの世界で俺1人だけ。
そんな両親の血を色濃く受け継いでいるらしい俺は、いつかきっと追い付けるその背中に近づいていくのが楽しかった。
やればやるほど、できることが増えていく。昨日できなかったことができるようになる瞬間がある。そこにたまらない快感があった。
そうして、また長い歳月が過ぎていった――。
成長の日々で、何より俺の興味を引いたのは魔法であった。これはもうもちろんと言っていいかもしれない。やっぱり前の世界には無かったこの概念は燃える。
勉強や剣術をおろそかにしている訳ではないけれど、魔法の時間は特別楽しかったし、特別気合を入れていた。
――とある日の午後も俺は、城の中庭にて魔法のトレーニングを行っていた。
午前中は勉強をして――昼食を終えると――すぐに動きやすい服に着替えて――城の中庭に出たのだ――。
侍女の1人に後ろから見守られながら、少し離れた位置にある的に向かって右手を伸ばす。程々に力を抜きながらも、5本の指はほんのり開いて、精神を集中させる。
そして、体にあるエネルギーを一気に右手へ集中させた。
感覚で言えば、前世で怪しげな人がテレビで言っていた「気のコントロール」だとか、小学生の頃にやった漫画やアニメの主人公の必殺技の練習と変わらない。
人間にはなんとなくエネルギーを集中させる感覚というものがあるのだ。何も出る訳はないけど、ぐっと力を込めれば手の平から何かを放出できそうな感覚。
この世界では本当に魔力というエネルギーを放出することができた。
こうして体中を流れるエネルギーを全て、右手に集中させるイメージを強く持てば……。
前世でそれをやるよりも遥かに大きな手ごたえを感じて、右手の向こうまで突き抜けていく……。
(風よ、出ろっ)
そう念じながら放ったのは、できるようになったばかりの風の魔法だった。
まだ100発100中で成功するわけではないけど、今回はかなり上手くいった。
だから、口からふーっと息を吹くのと同じくらいの風が手から出た……。
「すごいですね!坊ちゃま!」
「…………」
「もう3つ目の性質変化ができるようになるなんて、私も驚くばかりです」
「……いやさ、本当にこれでいいの?」
手を叩いて褒める侍女に対して、俺は唇をむっとさせて言った。
右手から出る風は、自分の髪に向けてふわふわとさせる。こんなドライヤーみたいなので本当に正しく魔法が機能しているのかというアピールである。
こんなんじゃスカートめくりとかも充分にできないけど、本当の本当に合っているのか。
「何をおっしゃいます。基本の5属性への性質変化は私でも2つしかできませんよ」
そう言うと、侍女の1人は片手からは電気をバチバチとさせ、もう片方の手からは宙に浮かぶ水の玉を作り出した――。