転生したら冥府の王子 ~凡人だった俺が異世界では光と闇の最強血統だった~   作:木岡(もくおか)

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第5話 光と闇の素質

 初めて目にした魔法――。存在があると知ったのもつい先ほどの俺には、その理屈も原理も全く理解できなくて――。

 

 感想はただ、何か光って綺麗だったなくらい……。

 

 母が手に持った水晶玉に今の俺の顔が写る。転生した俺の顔は今の両親の顔のちょうど間みたいなものだった。

 

 髪色は母の影響が強く出ている赤紫くらいの色で、顔のパーツはまだ子供だからよくは分からないけど父似だと思う。

 

「この水晶玉には触れた者の魔力を吸い出す性質があるの。そしてそれを外側へ拡散する力。最も根本にある魔力を吸うわ。全く変換されていない、人が本来持つ魔力。まるで宝石のように美しく綺麗に……曝け出してくれる」

 

 水晶玉と、そこに写った自分の顔を見ながら俺は鼓動を早めていた。緊張がピークに達していた。いよいよ才能が無い自分が両親を裏切ってしまう。そう思うと落ち着いていられない。

 

 さらに、久しぶりに振れた月明かりの下の冷たい空気も緊張を助長していた。

 

「私は今、魔力を操作してそれに抵抗しているから何も起こらないけど、あなたが振れたらすぐに反応するわ。ほら、どっちの手でもいいからゆっくり触ってみて」

 

 心臓が大きく脈打つ。背中のほうから全身へ鳥肌が伸びていく。俺は手を上げたけど伸ばすことができなかった。

 

「怖がらないで。大丈夫、何も痛い事や苦しい事は起こらないわ」

 

 母がさらに水晶玉を近づけてきた。怖い……けれど、逃げることもできない俺は目を逸らしながらそっと水晶玉に触れる。

 

 当たり前にガラスの感触がする――。5本の指をつけると、そのまま手の平まで触れさせた。

 

 次の瞬間、下を見ていた俺の視界に強い光が映り込む――。

 

 先程の母のような黒い色の光だった。反射的に水晶玉を見れば、それが見えなくなるほど強く大きく輝いていることが分かる。

 

「うわ!?」

 

 隣の母の顔も良く見えないし、少し離れて立っていた父の姿も見えなくなった。しかも、黒い光はさらに強くなっていく。

 

 視界が真っ黒になるほど大きく大きく――。どこまで大きくなるのか分からない――。

 

 そして、それが怖くなってきた俺は水晶玉から手を離して、後ろへ身を引いた。

 

「…………」

 

「…………」

 

 再び見えるようになった両親はすぐには何も言わなかった。目と口を丸くして俺のことを見ていた。

 

 驚いている……みたいである。しかし、これは一体、どっちの驚き何だろう……。

 

「……んまー!すっばらしいわ!シェードちゃん!」

 

 ……数秒の沈黙の後、母が飛び跳ねて喜んだ。持っていた水晶玉を高く上へ放り投げて、俺のほうへ走ってくる。

 

「何て子なの!すごい魔導の素質だわ!しかもとても純粋な闇の魔力、私にそっくりね!」

 

 今までで1番激しい褒め方。俺を持ち上げてさらに飛び跳ねる。抱きしめる腕の力が強すぎて苦しいほどだった。

 

「ねえ、あなたも見たでしょ。この子凄いわ。それにやっぱり闇の魔力を持っていた」

 

「いーや、まだ勝負は分からないね」

 

 母に少し遅れて動き出した父は母が投げた水晶玉をキャッチしていた。

 

「どういう意味?」

 

「光の魔力の素質はこの水晶玉だけじゃ測れない。光の魔力というものは素質を持って生まれた者が長く厳しい鍛錬の末初めて身につけられるものなんだ。俺も最初から使えた訳じゃない」

 

「そうなの?」

 

「ああ。だからシェードに光の魔力の素質があるかどうかはこいつを使って確かめる――」

 

 父はそう言うと、力強く右手を前に出した。

 

 先ほど母がやったように父も手から光を放った。白色の光だった。何故かライトと違って眩しくはない不思議な光。

 

 それが消えると、父の手には1つの剣が握られていた。

 

「さあシェード、今度はこの剣の柄を握ってみるんだ。この剣は光の魔力を帯びた剣、光の魔力を帯びた物質には、光の魔力の素質を持った者しか触れない、そういう代物だ」

 

 綺麗な剣だった。ほんのり光っているようにも見える。何故そんなものを父が持っているのか、少しだけ気になった。

 

 けれど、今度は戸惑うこと無く剣へ手を伸ばした。

 

「待て。もう少しゆっくり。もし素質の無い者がこの剣に触れると、痛みがする。ゆっくりな、ゆっくり」

 

 逆に制止されてしまうほど、迷いを持っていない。

 

 さっきまでとは別の意味で鼓動が早くなっていた。体が熱い。早くその結果が見たくて、興奮していた。

 

 父が持つ剣を受け取る――。

 

 すると、直感していた通り、剣から体に流れ込んでくる見えない何かをすんなりと受け入れることができた――。

 

 程なくして、父がガッツポーズをして喜ぶ――。

 

「うおおおお!すげえなシェード!お前の中にはとてつもない才能があるぞ!」

 

「才……能……?」

 

 1つの単語を耳に届けられると、俺はかっと目を見開いた。

 

 …………………………。

 

 才能……自分には全く無いと思っていたものだった……。転生して、別の体になったのに何故か最初から無いと決めつけていた……。ずっと望んでいたどうやっても手に入れられないはずの物……。

 

 測定の仕組みとかはよく分からんけど、俺はどうやら手にしていたらしい……。

 

 嘘だろ、帰りたい……どうせなら日本で人生2週目とかが良かった……そんなことを考えさせていた負の感情がみるみる消え去っていく。

 

「本当に、本当に僕には才能があるの?」

 

「ああ。それもとびっきりのな」

 

 父の笑顔につられて……俺はこの日、久しぶりに心から笑った。

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