深く考えず、ゆるーくお読みくださいますと幸いです。
2月某日、未だ厳しい寒さの続く横須賀鎮守府、その一角にて。
「そろそろバレンタインですね。お姉様は司令にチョコあげるのですか?」
「そうねぇ…司令にはお世話になってるし、日頃の感謝も込めて、気合い、入れようかな!」
「……本当に感謝だけでいいのですか?」
「へ?」
「まさかバレてないとでも思っていたのですか?計算せずともわかります。司令へのご好意、みんな知ってますよ?」
「え、え〜と……やっぱり?///」
「まったく…早くしないと他の子に先越されちゃいますよ?」
「でも…あれだけ司令に宣言しちゃったし…私から渡すのも…」
バレンタインは一大イベント。比叡も、内に秘めたる恋心を解き放……つ前に絶賛霧島にバラされているのである。
「司令の事です、気にしないと思いますよ?」
「う〜ん…そうかなぁ…」
「戦艦の本分は敵との殴り合い、恋の戦いも真正面から、ですよ。お姉様。」
(司令もお姉様のことは好きなはずなのに…さっさとくっついてほしいのだけれど。)
「…そうよね、そうよ!負けない!司令を落としてみせる!お願い霧島、手伝って!」
「私でよければいくらでも。お姉様。」
廊下で覚悟を決める乙女が1人。その頃、執務室でもどうやら動きがあるようだ。
「うん、報告書ありがとう。下がってもいいぞ。」
「了解ネ!それはそうと提督、そろそろValentine's Dayデース!比叡にはchocolate、あげるんデスカ?」
「ごほっ…んん、な、なぜに俺が?」
「提督、榛名を含め、鎮守府のほとんどの人は気づいてますよ?」
「あ、そう…ってかなんで俺があげるんだ?ああいや、別に嫌とかではないんだが…」
「英国では男性から女性にpresentする事が多いネ!それに、、、ケッコンのringも嬉しいケド、提督はカッコカリで終わらせる気は無いでショー?」
「まあ…それはそうだが…」
「比叡お姉様の練度もこの前99になりましたし、バレンタインです!公私共にグッドタイミングなのでは?」
「ただなあ…アイツいっつも「負けません!」って俺に宣言してくるし…脈はなさそうなんだよなぁ…」
(比叡お姉様は[恋は落ちた方が負け]を本気で貫こうとしてまいすしね…)
(隠せて無いけどネ〜。比叡も提督も鈍感ネ。)
(そこがお似合いとも言いますけどね。)
流石姉妹艦。目合わせだけで会話ができる。
「それはattackシないとわからないヨ?」
「提督、時には思い切りも大事だと榛名は思います!」
「……そうだ、な。ありがとう2人共、決心がついたよ。」
「お安い御用ネ!」
「榛名は大丈夫です!」
そう言って執務室を出て行く2人。
「当日も執務あるし、、、前日の夜にでも作っておくか…あ…作り方…分かんねえや…」
どうやらこちらも前途多難な様で。どうなる事やら。
「霧島、比叡には上手く誘導しましたカ?」
「バッチリです!司令はどうでしたか?」
「完璧ネ!提督も完全にその気になったネ!」
「比叡お姉様と提督のために、必ず成功させましょう!」
「もちろんデース!あとは当日の作戦ネ!なんとか2人きりにさせないト!」
「そうですね…お姉様、一旦私達全員で行ってから、その後…」
交錯する3者の思い。果たしてどのような結果となるのか…
2月13日、戦艦寮。既にキッチンには甘い香りが立ち込めていた。
「チョコクリームはできたネ!榛名、スポンジの粗熱はとれましたカ?」
「はい、大丈夫です!」
「了解ネ!チョコクリームをスポンジに塗ってクダサーイ!」
「榛名、全力で」優しくネ。つぶれないように気をつけてネ。」
金剛型、というよりは横須賀の戦艦全員でチョコ作り。駆逐艦とチョコの交換をする為の者、提督や担当の整備士に日頃のお礼や思いを伝えようとする者など、さまざまである。
「扶桑、山城、ガナッシュはどうですカ?」
「レシピも難しくはないし、順調よ。」
「姉様、次は粉砂糖です。」
「伊勢、少し多くないデスカ?」
「航空戦艦は艤装大きいしね〜。扶桑と相談して、整備の人たちの分、多めにしてるんだ。ね、2人とも。」
「日頃のお礼もあるからね。」
「大和は、、、スゴイ事になってるネ…」
「なぜかみんな集まってくれるのよ。それに長門はまだ演習中だし、、、烹炊所の妖精さんフル活用しちゃった♪」
それぞれの事情、それぞれの思い。そんな中___
「お姉様、もう少し冷やした方がよろしいかと。」
「そ、そう?意外と難しいな…」
(比叡も順調?みたいネ。霧島、後は比叡1人に任せるネ。)
(分かりましたお姉様。)
「お姉様、金剛お姉様に呼ばれたので一旦離れますね。」
「ん、オッケー。あとはこのレシピ通りで良いんだよね?」
「はい。分量はキッチリの方がいいと思います。」
比叡は他よりも少なめの量を、端の方で作っていた。
「それにしても、やっと決心したのね。」
「まさかここまで粘るとハ思わなかったケドネ。」
「私があんな事言わなきゃよかったかな…ちょっと反省。」
「伊勢は悪くないネ。比叡が純粋だからヨー。」
比叡に『恋は落ちた方の負け』を吹き込んだのは伊勢であった。以前酒の勢いで…らしい。
「でも、まさかあの比叡がここまで料理上手くなるとはね。言っちゃあ悪いけど最初の頃は…」
「空回りしてたケド、それも提督へのloveで乗り切ったネ。」
「確か『料理も司令に負けたくない』だっけ?大和に泣きついてたよねぇ。」
以前は料理は苦手、というか果たしてそれは料理と呼んでいいのか疑うレベルだったのだが、提督への想いと大和を筆頭とする面々の協力もあり、今では1人でも「美味い」と言わせる事ができるまで上達した。
時は経ち、徐々に終わった者からキッチンを出ていく中、比叡だけは…
(もう少し…あとは冷やして…)
未だに終わっていなかった。大分気合入ってるようである。
「包みの箱はこうして…手作りチョコ、よし…包装の準備、よし…できた!って、アレ?もうこんな時間?急がなきゃ!」
明日の準備は万全、後は
翌日、1500。甘い香りが鎮守府を包むバレンタイン。執務室も例に漏れず、代わる代わる艦娘が来ていたが、今度もまた。
「提督、tea timeネ!みんなで cakeでも食べるネ!」
「ん、そんな時間か。そうだな、書類もひと段落したし、そうするかな。」
「紅茶は榛名がご用意しますね。」
「司令、今日はチョコレートケーキです。甘さは控えめで量を計算しているので、あっさりと仕上がっています。」
「有難い。朝から甘めが結構続いてたからな。」
ひと時の休憩。しかし、2人ほどソワソワしているのは気のせいでは…ない。
「1530になったネ。おっと、そういえば大和に呼ばれてたネ。榛名、行きまショー!」
「はい!提督、失礼します。」
「私も艤装の担当の方に用事があるので…司令、失礼しますね。」
「おう。また後でな。」
残るは比叡___しばしの沈黙。
「比叡。」「司令!」
「「あ、先どうぞ。」」
声かけどころか返しまで被るとは。
「んんっ、じゃあ俺から行くぞ。」
「は、はい…」
「まずは練度99、おめでとう。それでな…」
机の引き出しから出てくる濃紺の小箱。中にはシルバーのリングが。
「ケッコンカッコカリの指輪なんだが…受け取ってくれるか?」
「わ、私にですか?(ど、どうしよぉ〜!ただでさえ先に渡せなかったのに、指輪の話なんて…ますます渡しにくいよぉ…)
わ、私の心は…「待ってくれ。練度99もあるが、正直それはオマケなんだ。」
「え、そういう話じゃないのっ?…あ、あぁ……そう?は、恥ずかしいぃ……」
(…オマケ…やっぱり…司令は…私の事は…………恥ずかしい。自分だけ空回りして、チョコまで作って…)
「比叡。」
「へ?」
突然名前を呼ばれ顔を上げると、真剣な表情の提督が。
「それでな。ここからは俺個人の話なんだが…」
「はい…」
____比叡、好きだ。俺の側に居てくれないか。
「え、司令…それって…」
「ああ。俺と……付き合って欲しい。」
その一瞬、私が聞いていた音が消えた。
「わ、私で…いいんですか?」
「比叡がいいんだ。」
紛れもなく自分に向けられた想い。今まで隠そうと思っていた、隠しきれなかった想い。辛うじて堰き止めていた感情も、言葉によって崩されて…
「うっ…ぐ、ぐすっ…!し、しれい…!」
「ど、どうした!突然泣き出して…そ、そこまで嫌だった」違うの…!抑え…きれなくて…」
「ひ、えい?」
もう、隠せない。隠さなくても、良い。だったら。
「しれい…ひ、比叡も…私も好きです! 貴方の事が!大好きです!」
「!!!」
「司令と、貴方と一緒にいたいです!」
「比叡…比叡!」
「司令!」
少しだけ離れていた2人。泣きながら、泣きそうになりながらお互い駆け寄り、抱き締める。
「…比叡は、あったかいな。」
「それは司令もです…」
顔を見つめあって、そして______
数分後。
「順番が逆な気もするけど…比叡、はい。ハッピーバレンタイン。」
そう言って渡されたチョコ。
「えぇ⁉︎司令もチョコ作ったんですかぁ?」
「ああ。イギリスでは男性が渡すって聞いたからな。」
「そうですか…し、司令!比叡もチョコ、作ったんです!う、受け取ってください!」
「本当か!ま、まさかもらえるとは…生きててよかった…」
「な、泣くほど嬉しかったんですか?」
突然泣き出す提督に、どうすればいいのか慌て出す比叡。その姿を見て笑い出す提督に、つられて自分も笑みが溢れる。
「フフッ…悪い。そりゃあ、自分が好きな人から貰えるなんて、こんなに嬉しいことはないさ。」
「私もです。司令、ありがとうございます。」
「どういたしまして。せっかくだから、今ここで2人で食べないか?」
「賛成です!私、紅茶淹れてきます!」
そうしてキッチンに消える比叡の左手には、シルバーのリングが煌めいていた。
「って言うことがあったんだよ。」
「ありがとうございました。参考になりました。」
「吹雪はあいつらにかな?」
「は、はい!その…大尉さん達には、お、お世話になったので…」
「いい気持ちネ!頑張ってくださいネ!」
「は、はい!頑張ります!」
「私もチョット用事を済ませて来るネ!see you!」
そうして離れていく吹雪と金剛。
「なぁ比叡。」
「はい、なんでしょう?」
「今年は2人で作らないか?」
「2人で、ですか?構いませんが…なぜです?」
「いやぁ、こうして振り返ると金剛や榛名、霧島に相当お世話になってたろ。せっかくだから…」
「いいですね!去年のお礼と言わんばかりに驚かせちゃいましょうか!」
「うっし、そしたらこの書類の束、片付けるか!」
「気合、入れて、行きます!」
あれから1年。色々あったようだが、2人の仲は良好のようである。
お読み頂きありがとうございます。比叡の「負けません!」は、もしも提督に恋心があったら、、、と、彼女の性格を元にこの解釈といたしました。金剛のについては、着任時既に妹が提督に恋心を抱いている事に気づいたら?という条件を元に改変を施しています。
本来の予定であればもう少し糖分多めに作る予定だったのですが、、、どうやら甘い表現は苦手なようです…
ご意見、ご感想お待ちしています。お読みいただきありがとうございました。