【完結】妖精國に落ちた超越者が、妖精騎士たちにほんの少しだけ救いを与えるお話【挿絵有り】 作:ロウシ
マジでちょびっとしか原作キャラ出ません。
マジでオリキャラのガチ過去話で回想です、注意。
ぶっちゃけ読まなくても本編の流れには影響はないです。
ただ、ゴローの心情とか、その辺はわかるかもしれませんが。
その点をご了承ください
幕間:何が正しいか知らない、何が楽しいか知ってる
0.
世界の全てが飴細工であった。
で、あるならば、天狗になる以外に何ができたのか。
暴君以外の、何になれたと言うのだ?
初めて世界が止まったのは、私が生まれて四歳と八ヶ月、二十二日目の事だった。
全てが止まっていた。
風も、波も、人も、音も、光も。
空の雲も、太陽さえも。
私が認識する世界の全てが、スイッチを切ったように停止した世界。
幼い私には、何が起こったのか分からなかった。
まだ、相対性理論も知らない時期だ、無理もない。
私はその時、人生で初めて光速度で動いていたのだ。
同時に、私はその時間にいながら、遥か過去と未来における、私の
四歳児の脳にはあまりにも超大すぎる情報に、私はのたうちまわり、体内にある全てのものを吐き出して倒れた。
八歳の頃。
私にとって、世界とは飴細工であることを知る。
少し、力を入れて歩く。
それだけで大規模な地震が起きた。
八歳の私が力を込めて大地を蹴ると、地盤沈下で二千平方キロメートルの大地が海に還った。
死者数は一億四千万人以上。
原因は不明とされた。
世間的には天変地異とされ、惑星の環境は大きく変わった。
十三歳の時、私は太陽の表面を歩いている。
質量二百兆ギガトン、摂氏一千五百万度の核融合の黒点を浴びた私の感想は、「少し眩しいな」であった。
二十二歳のとき、私は九百三十億光年より先の空間にたどり着く。
宇宙における観測可能圏外は超光速領域であるが、その気になった私にとっては、それでもまだ、時間も空間も止まっている速度だ。
最も、超光速の世界にあるものは、時間や空間ではないのだが……
つまり、私は四歳児の時に、二十二歳と七ヶ月と十九日目の私が『事象の地平線』を乗り越える事を知った。
そして、世界とは、単一の次元ではなく、複数の次元が重なる──あるいは、隣あっていると知る。
すなわち、多元宇宙を発見し、無限に連なる
さらに私は、世界を構成するものは、
私は更なる深宇宙に潜り、それを包括する超多元宇宙──すなわち『
二十七歳になった時、私は老化を止めた。
最も、その時すでに、『時間』というものが曖昧な私にとって、外見的な老化──形状の変化はまるで意味を持たなかった。
私の誕生から一万六千年目。
私は人里から離れた。
地球を離れた。
太陽系からおよそ千と七十二億八千万光年先、次元がズレた時間点、人類の宇宙観測外領域に、『宇宙の観測者たち』の住まう地球型惑星を見つけ、百億年ほどそこに住むことになる。
それから四十二億六千二百万年、九ヶ月と十一日。
地球は長い公転の旅を終え、太陽に包まれて滅んでいった。
すでに、地上に人類はいなかった。
私が誕生してちょうど百億年目。
とうとう太陽がその寿命を迎えた。
恒星がその自重に耐えきれず、潰れていく。
美しい光景であった。
私はその時、太陽の地殻にいた。
太陽の最後の輝きを、そこにいながら俯瞰して見ていた。
その当時、超新星爆発は、宇宙現象としては私に滅びをもたらす、ひとつのチャンスであると思っていた。
恒星は見事に爆発し、ガンマ線が炸裂した。
太陽系から四百光年以内の生命体が、それで絶滅した。
レーザー状に伸びたガンマ線バーストは、千光年先まで届いただろう。
その爆心地で、光に包まれる私の感想は、「ちょっと眩しいな」であった。
私は一兆二千億光年まで宇宙が成長するのを見てから、『観測者たち』と別れた。
自ら惑星を作り出し、そこに命を生み出してみた。
それは想像以上に難しく、人類がいかに奇跡の産物であるかを私は思い知る。
何度も失敗し、その度に滅ぼした。
五百十二回目に、とうとう地球人類の類型を発生させた。
『
私はそれに畏敬と、少しばかりの侮辱を込めて、『
結果的には、それから千回ほど、私は自ら作り上げた愛しいそれを滅ぼすことになる。
何度作り直しても、何度やり直しても、彼らは最終的に、目に見える『神』である私を、殺そうとするからだ。
神の奇跡と全能を、最終的に、彼らは恐れた。
私は人類種を生み出すことに疲れ、生み出す前に観測可能な限りの未来を観た。
量子観測から言うと、物質領域に置いてゼロパーセントと百パーセントの確率は存在しない。
限りなくゼロパーセントに近い一パーセントと、限りなく百パーセントに近い九十九パーセントがあるだけなのだ。
だが、観測するすべての未来において、時間的差異はあれど──人類は『神』を捨て、滅ぼしにかかった。
私は疲れ果て、それから八兆百三十八億二千万年後、つまり宇宙が灼熱死するまで、完全な無を過ごした。
未来視をやめ、観たいものを見ることにした。
耳も閉じて、聴きたいものだけを、聞くことにした。
自ら首を刎ねてみたが、意識が戻る時には完全な蘇生を果たしており、私の力は破壊力や全能性よりも、生存力が高いと思い知る。
つまり、自殺は不可能であった。
精神が壊れることもなかった。
人間の範疇で言えば、すでに壊れているのかもしれない。
しかし、私はまだ、『私』を正確に認識できている。
自己を形成する自己認識世界の崩壊がない限り、精神的な死とは呼べないのだ。
時間と空間が色鮮やかに、カーテンを閉めるように崩れ去るその光景は、やはり人界を超越した美しさがあった。
私にとっては、最後のチャンスであった。
とどのつまり、宇宙を形成する物理法則全てが滅び、『無の領域』が訪れれば、私は死ねるのではないか?
だが、私は形容できない領域に立っていた。
その時の絶望こそ、私の最も苦難の時期であった。
時間のない領域で、無限に等しい感覚を過ごしたのち、潰れ果てた宇宙の残骸をもとに、私は"神の鉄槌"を打ち下ろしてビッグバンを引き起こし、宇宙を創成した。
ビッグバンに溶け込めない宇宙の残滓は自らの体内に取り込んだ。
それはそれとして、別の宇宙として体内で育てることにしたのだ。
私は、何度も、何度も、それをやることになる。
目指すは、私を殺せる存在を作り出すこと。
壮大な領分で行う、ただの自殺願望、自殺実験である。
そのために、創造した世界に、私は懲りずに降り立ち、時に超人種、時に全能の神々を生み出して、その時を待った。
だが、私はその時すでに、私では私を越える存在を生み出すことができない事を、自らの全能で悟っていた。
確率論において、量子の観点からして、宇宙に絶対はない。
だが、それは物質領域においての話である。
私の存在は物理法則を超越している。
量子観測のもたらす不確定性原理など、宇宙に依存せず、その規格を超越する私には、なんの意味もない。
神はサイコロを振るが、私は降らずともいいのだ。
アインシュタインは、敬逆な神の信徒であるが故に、その天才性に反して視野狭窄に陥り、神の全能性を信じるが故に、神の全能性を否定していたのだ。
全能のパラドクスとは、所詮人理万象の内にある故に、認識する程度の事象だと、私は知る。
で、あるならば、暴君になるしかなかった。
全ての世界は飴細工。
私すら超えられぬ不完全な世界。
それに、一縷の望みを持つために。
下等世界に縋り付く私の無様な人間性は、それでも宇宙領域に、人類の類型にこだわった。
自らの細胞を雛形に作り出した全能者たちも、私には遠く及ばない。
それでも、私は私の粗悪なコピーを作り続けた。
結果として、私の世界は多元宇宙を包括する全能者と、パワーにおいてはそれを上回る超人種で溢れかえり、私の軍勢は超多元宇宙的な脅威となっていく。
その中で、私は百年、あるいは千年。
あるいは、万年に一度。
希望に懲りぬ私は、優れたる全能者と超人種を殺し合せ、更なる未知と進化を探っていた。
多元宇宙を侵略し、数多無限の世界を滅ぼしては取り込んだ。
私の未知を知るために、それを、作り出すために。
私の世界に叛逆はない。
私は絶対者である。
私は全能者である。
私は至高者である。
私が生まれてから、ぴたりと百京年目。
だから、『彼』が現れたのだ。
──私と全く同じ顔、私と全く同じ肉を持った、それが。
1.
私と全く同じ顔、私と全く同じ肉。
違うのは、身長が私より少し低い。
頭に、尾の長い、純白のバンダナを巻いており、左耳が半分無かった。
顔には、左頬と左側の額が削げていた。
それと、右から鼻を貫通して、左頬まで肉が削げていた。
吊り目で、黒目が大きい。
強い目をしていた。
星々を内包する目であった。
私の同位体であろうか?
何もかもが、似ていた。
ただ、ひとつを除いて。
決定的に違ったのは、強さであった。
その男は、私よりも、遥かに強かった。
私は殴られて、蹴られ、叩きつけられた。
『彼』のそれは、抗いようのない力であった。
私は、その男に内在する、何もかもを認識できなかった。
私は恐怖していた。
目の前の男は、ただ、計り知れない巨大な力の塊である。
その暴力に、私は一方的に打ちのめされた。
『彼』は、ただ、なんの悪戯か──圧倒的な暴力のカタマリが、私と同じ姿をとっているにすぎないと思った。
私は、私の全知全能を持って戦った。
しかし、何もかもが『彼』には通じず、立ち上がれば殴られ、傷を癒せば蹴られた。
やがて、私はボロクズのように横たわり、その顔に躊躇なく踏み込まれる『彼』の靴の裏を眺めた。
却って冷静になっていた私が驚いたのは、私より隔絶した力を持つ『彼』は、惑星の皮一枚傷つけなかったことだ。
最後の踏み込みすら、その破壊力に反比例して、その被害は私の頭で少し、地面を沈める程度であった。
「な……に、も……の…………」
私が喋ると、『彼』は太い笑みを携えて。
なんだ、生きてんのか。
思ってたより、だいぶ強いんだな。
と言った。
数としての、量としての『
からころと、『彼』は笑っていた。
あっけらかんとした、人間らしい笑みであった。
私は、『彼』に縋りついた。
創造していた全ての世界を私の中にしまい込み、『彼』の手を取って後を追いかけた。
2.
私は、戦争に赴いた。
『彼』の弟子となり、神々の戦場を駆けた。
しかし、決して、最前線には行かなかった。
『彼』も、彼の上司も、同僚たちも、口を揃えた。
お前じゃあ、殺されるよ。
無駄に、死ぬだけだ。
足手まといにすらなれない。
戦士を束ねるものとして、部下を、ただ死なせるための認可は出せない。
私は、程なくして、その言葉が真理だと、その身で思い知る。
私は、誕生から六千京年目の頃。
その時すでに、私には物質領域的な時間は、意味がないものであるが──とにかく、私の感覚ではその程度の時間が経っていた。
私は、すでに多くの仲間を失い、また、多くの仲間に生かされていた。
彼らの仇を打ちたかったが、それは許されなかった。
私は、まだ『彼』の弟子であったからだ。
だから、こっそりと、『聖者の涙』を使用して、『彼』の目を欺き、最前線に赴いた。
たどり着いた途端、後悔すらできなかった。
私では、そこに、存在できない。
ただそこに吹き荒れる力が、私が存在する事を許さない。
その中で、戦えているものは十三人。
何京何垓という『超越者』の中でも、選りすぐりの十三人。
私如きが、立ち入れる領域ではなかった。
私が、魂のひとかけらに至るまで、全身を粉々に砕かれても死ななかったのは、幸運にも『世界最強の男』が、私の存在に気づいて庇ってくれたからだった。
彼は、神々に立ち向かう総軍のリーダーであり、私の存在をほぼ完璧に蘇生させて、逃してくれた。
だが、不釣り合いにも現れた圧倒的弱者を、強大な神々が易々と逃すはずもなく、私は追撃を受けて死にかけ、ダメ押しと『神の毒』を喉に打ち込まれた。
私に内在する全ての力を使って死に至ることは防ぎ、私は次元を何層も突き破って、ひとつの
そこにいる原住民が、私を覗き込む。
私は目が見えない。
声も碌に出せない。
ただ、私を見下ろすそれが、戸惑いと心配を向けてくれていることに気づいた。
私は私を構成する中で、唯一潰れていなかった右目に全神経を集中して、『彼女』を見た。
「けん……かし……て……くれ……」
そして、ようやく口にできた言葉を、彼女は叶えてくれた。
そして、私は本当にぎりぎりで生き延びて、蘇生し、密かに、力が戻るまではこの世界で生きることを決意した。
この世界では、私を恐れず、助けてくれた彼女のために生きよう。
男はそう、胸に誓ったのだった。