【完結】妖精國に落ちた超越者が、妖精騎士たちにほんの少しだけ救いを与えるお話【挿絵有り】   作:ロウシ

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最終話の投稿は月曜だと言ったな、アレは嘘だ
4/9 誤字修正 報告ありがとうございました
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最終話:君は、君こそは、日曜日よりの使者【挿絵追加】

1.

 

 

 全ては、終わる。

 

 ブリテンは、現れた『奈落の虫』に飲まれていった。

 

 バーヴァン・シーを見送ったゴローが、ストーム・ボーダーに降り立った時。

 キリシュタリア・ヴォーダイムとカイニス、ペペロンチーノとコーラルはそこにいなかった。

 

 彼らは、「では、私たちは予定通りに! また逢おうカルデアの諸君!」と彼ら同士で打ち合わせ、脇目も振らず、止める暇もなくボーダーから飛び降りたのだと言う。

 そして、入れ替わるように『奈落の虫』が出現し、それどころではなくなったと。

 

 全てがつながっていく。

 モルガン、『予言の子』、妖精國にカルデアが現れた理由。

 そして、それを全て、増悪の渦に巻き込もうとした存在──

 

 目の前に、ようやく、それは現れた。

 

 オベロン。

 ブリテンの、終末の運命。

 嘘つきの王子。

 人理の敵。

 役を羽織るもの(プリテンダー)の、オベロン。

 

 真名を、オベロン・ヴォーティガーン。

 

 彼は、迎え撃つ構えの藤丸立香たちを見ても、やっぱり、と、気づいていたか。と笑った。

 その振る舞いに、戸惑いはない。

 混乱も、驚嘆もない。

 細まる目が、卑しく光っている。

 全て、手のひらの上さ、と言っていた。

 自分はこうなることを、すべて、予想していたのだと。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「まったく……マイるよねえ。こっちがブリテン崩壊ツアーの計画(プラン)を、千年がかりでコツコツ積み上げてたらさ。いきなり、いきなりだよ? どっかの世界のマジの『全能の神』が、しゃしゃり出てくるんだからさ。いやいやどんなクソゲーだよ? 理不尽の極みだ! あんまりすぎるだろ!! 責任者出てこいよ、って話だよね。マジでさ」

 

 おっと、汚い言葉はダメだね。

 妖精王に、相応しい振る舞いをしなきゃ。

 

 おどけるオベロンに、メリュジーヌとバーゲストは敵意を向ける。

 いや、向けるそれは、殺意と言うべきだろう。

 目をしかめて、眉を吊り上げて、二人とも怒りをむき出しにしている。

 しかし、ブリテン屈指の実力者の彼女らのそれを、オベロンは軽々と受け流す。

 

「いやいや、僕に殺気を向けるのは筋違いじゃないの? だって、君たち、僕が関わらなくても、どのみち『厄災』になってたんだぜ?」

 

 これは、ブリテンの運命だからね。 

 俺の当面の目的は、とにかくケルヌンノスという蓋をどかして、ブリテンの大地に、この世界に『奈落の虫』を出すことだった。

 それだけだもん。

 そのために、モルガンが邪魔だなーって思ってた。

 

 だからさ。

 ぶっちゃけ、おまえたちはどうでもよかったんだよね。

 やばいのはモルガンと、そこの『神』ぐらいでさ。

 だからさ、うん。

 おまえたちはどうでもよかったし、カルデアは、もっとどうでもいい駒だった。

 でも、ま。せっかくだし?

 パーティは派手な方がいいと思って、全ての起爆のタイミングを、ばっちり合わせたわけだけどね!

 

 どうだい、この、機微を見逃さない調整力!

 場面を見切る目!

 オベロン流の、一流の喜劇ってやつさ。

 堪能してくれたかな?

 

「オベロン……!」

 

 睨むなよ、バーゲスト。

 良かったじゃないか、今回愛した彼は、この世界じゃ無敵の神だぜ?

 君なんかじゃ、絶対食べられない。

 ま、だから、こっちもリスクを承知で、この世界にないもので、なりふり構わず排除にかかったわけだけど。

 

 言葉を言い終わると同時に、オベロンの右腕が、ぼとりと落ちた。

 腐り落ちるそれであった。 

 痛い素振りも見せず、当たり前のように、それを指して、ほら、とオベロンは言う。

 

「『全能の神』を殺す毒だもんね、流石だよ。持ってただけなのに、僕の霊基の半分ぐらいは抉られた。モース毒なんか比較にならないよね……まあ、僕は()()()が無事なら、()()()がどうなろうが、どうでもいいんだけどね」

 

 そう言うと、バーゲストやメリュジーヌが斬りかかるよりも早く。

 

 オベロンは自分も、藤丸立香たちも、ストーム・ボーダーごと『奈落の虫』に飲み込ませた。

 

 

2.

 

 

 その一瞬で、ゴローは外に出ていた。

 バーゲストと、メリュジーヌと、パーシヴァルを連れて。

 彼らは、ゴローの力だろうか、空に立っていた。

 『奈落の虫』──無限の(ウロ)が、眼下にあった。

 

 突然の場面転換に、パーシヴァルは目を見開いた。

 回復ポッドに入っていたはずの彼は、鎧を纏っていた。

 『聖槍』を握っていた。

 聞けば、嫌な予感がしたために、ポッドから出て戦闘態勢を整えていたのだと言う。

 

 生真面目だねぇ、とゴローは言った。

 パーシヴァルは、その言葉に反応できなかった。

 顔から血の気がひいている。

 しかし、ぐっと、何かを飲み込んだ顔になった。

 けわしく眉間に皺を寄せて。

 力を抜いて、微笑むような。

 何かを、悟ったような表情となった。

 度し難い感情が、現れている。

 ええ、ええ。

 と少し悲しげにゴローに目配せした後、目の前の惨状に再び目を向けた。

 

 『奈落の虫』が、ブリテンを自らの空洞に落とし込むそれ見て、瞬時に理解していた。

 あれは、あれこそが、壁画の予言したものだと。

 ブリテンで生まれたものとして、あれこそが、この世界の終末の具現であると、本能で理解していた。

 

「ど、どうすればいいんですの……」

 

 なンもせんでいいよ。

 

 バーゲストの震える声を、ゴローはあっさりぶった斬った。

 バーゲストはゴローの顔を見た。

 口元の血を拭いながら、彼は笑っていた。

 

「今更、あの子たちが負けるわけ、ないじゃない。ホラ、見てごらんなさいな」

 

 ゴローは空を指差した。

 高い空。 

 星が、輝いていた。

 大きな輝きだ。

 それが、そこから、光の筋が、ひとつ。

 

 『奈落の虫』に向かって、落ちていった。

 

 あれは──

 

 『聖槍』を持つが故が、パーシヴァルが真っ先に、それがなんなのか理解した。

 ゴローはけらけらと笑っていた。

 血を吐きながら。

 

 ああ、そうさ。

 あの子だよ、パーシヴァル。

 

 パーシヴァルの目から、ひと筋、涙が溢れた。

 

「あの子、なんですね」

 

 バーゲストが、言った。

 しみじみと、ゴローは頷いた。

 さて、と前に出た。

 

「さて。あの子たちも、なんやかんや苦労して、ここまで来たンだ。最後の手助けぐらい、してやろうかね」

 

 ふふ、と微笑む。

 まだ、その口の端から血が流れていた。

 ゴローが人差し指を立てて、『奈落の虫』に向けた。

 そこに、ずい、と、同じタイミングの、同じ歩幅で、メリュジーヌとパーシヴァルが前に出た。

 

「おいおい、半死人がでしゃばるンじゃァありませんよ」

 

 どっちがだい。

 とメリュジーヌが言った。

 わかったんだよ。

 と続けた。

 いや、とそれを覆す。

 

「わかってたんだ。私が、私としてきみに助けられた時に。私の力は、最後、この時のために使うんだって……」

 

 ()()()()ね。

 原始竜アルビオン。

 私は、この世界で唯一の、汎人類史の存在。

 だから、ずっと、ひとりぼっちだった。

 ずっと、そう思ってたんだ。

 

 メリュジーヌは顔を振り向かせて、笑った。

 でもね、と。

 

 でもね、違ったんだ。 

 パーシヴァルと、バーゲストを見た。

 順番に。

 最後に、ゴローを見た。

 

 その意味を、

 バーゲストも、

 パーシヴァルも、

 ゴローも、

 ちゃんと、理解していた。

 

「パーシヴァルくんは、いいのかい?」

 

 構いません。

 と即答した。

 声にも、目にも、迷いがなかった。

 

「私は、この世界の人間であるが故に、ブリテンが滅んだ後、生き残ることはできません」

 

 なぜなら、ブリテンにおいては、そこで生まれた人間とは、空想なのだから。

 汎人類という現実に、空想は生きられない。

 

「あなたが。ゴロー殿、あなたが……僕をここに立たせてくれたのです」

 

 パーシヴァルは、笑顔であった。

 強がりの、笑顔であった。

 

「あなたが、この機会をくれたのです」

 

 ──愛を持って槍を取った僕が、愛と共に死ねる機会を

 

 ましてや、彼らのために、彼らを助けるために、最後の命を使えるのですから。 

 私も、円卓のみんなに──ガレスに自慢できると言うもの。

 

 メリュジーヌは、何も言わなかった。

 パーシヴァルは、ゴローに手を差し出した。

 ゴローは、んん〜と顔を俯かせたあと、顔を上げた。

 血を拭って、顔を綺麗にして、その手を服で拭いて、静かに、しなやかに。

 その大きくて太い手を差し出して、パーシヴァルの手を握り返した。

 

「こんな時にまで、あなたという人は、本当にヒーローなンだな」

 

 逢えてよかったよ。

 本当に。

 あなたを見ていると、俺ァ彼らの背中を思い出す。

 

「彼ら?」

 

 ああ。

 俺の、何倍も弱いくせに、

 俺の、何倍も強い敵に、立ち向かった男たちさ。

 

 人のために。   

 世界のために。

 愛のために。

 何より、自分の尊厳のために。

 彼らは剣を握って、自分よりデカくて怖いやつに、立ち向かうンだ。

 

 生まれがどことか、育ちがどうとか、外見がどうとか、性別だとか、年齢だとか、勝てる力を持ってるかとか、そンなモンは関係ないのさ。

 イザって時に、自らを奮い立たせて絶望に立ち向かえるヒト。

 その背中を見せて、人々を奮い立たせるヒト。

 そンな『勇気』を持つ人はね、実ァ神々の世界にも、そうそういないンだ。

 

 きみは、パーシヴァルは。

 いざと言う時に、人のために命をかけて、人を救えるンだもの。

 ヒトを奮い立たせる心を持ってるンだもん。

 

 だから、きみは、本当にヒーローさ。

 パーシヴァル。

 きみと。

 きみに出会うように働いてた、星の導きに、俺ァ感謝しよう。

 

 二人は顔を見合わせると、どちらともなく頷いた。

 

「ゴロー」

 

 それを、羨ましく思ったのか。

 メリュジーヌは、

 

「だっこして」

 

 と言った。

 恥も何もなく、子供のように。

 ゴローはちら、とバーゲストを一瞥した。

 彼女は、仕方ないですわ。と目を閉じて息を吐いた。

 ふふん、とメリュジーヌはバーゲストに視線を合わせる。

 

 ──きみは、ゴローの恋人かもしれないけどね。

 ──私は、ゴローのライバルだもん。

 ──だから、別腹ってやつさ!

 

 流し目の、自信と力に煌めく瞳が、そう言っていた。

 

 ほら、とゴローが手を広げると、メリュジーヌはすぽんとそこに飛び込んで収まった。

 ゴローが背中に手を回すと、彼の半分ぐらいの大きさの彼女は、すっぽりと包まれた。

 腕の剣が面白い形で突き出ていた。

 

「また、逢おうな」

 

 とゴローが言うと、

 

「うん。()()()()()

 

 とメリュジーヌは言った。

 ゴローはそれを聞いて、一旦目を見開いて、それから細めて、回す腕に優しさを込めた。

 メリュジーヌがむふーと笑った。 

 子供のような笑顔であった。

 

 よし!

 とゴローから離れると、パーシヴァルと並んで、『奈落の虫』を見据えた。

 

 ──いくよ、パーシヴァル!

 ──ついてこれるかい?

 

 パーシヴァルは、はい! と大きな声で応えた。

 少年のような活気の良さであった。

 

 二人は飛び出した。

 

 蒼い光を、メリュジーヌが。

 白い光を、パーシヴァルが纏う。

 二人は、あっという間に音を置き去りにした。

 メリュジーヌが、放った熱線をその身に纏って突撃する。

 パーシヴァルがそれに負けじと白光をさらに輝かせて加速する。

 

 ──『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)!!』

 ──『眩き選定の槍(ロスト・ロンギヌス)!!』

 

 

 二筋の光が混ざり合い、『奈落の虫』を外側から打ち砕く。

 彼らの身体も魂もまた……

 

 光の中で砕けゆく最中、彼らは手を握っていた。

 その表情は、やっと、想いを成せたのだと。

 

 彼らは最後の瞬間まで、

 納得と、満足と、愛を浮かべていた。

 

 

3.

 

 

 そして、ふたり。

 

 メリュジーヌとパーシヴァルの開けた穴から。

 奈落から離脱したストーム・ボーダーが、空の果てに飛んでいくのを見届ける。

 

 世界の終わりに、並ぶのは、ふたり。

 

 彼にとっては、最初の彼女。

 彼女にとっても、いろいろな意味で、最初の彼。

 

 滅びゆく世界。

 締め切ったカーテンを開けるように。

 そこから、差し込まれる光のように、茜色の空が、青空に入れ替わる。

 

 わあ、と彼女は言った。

 

「汎人類史の空とは、あんなに綺麗なんですね」

 

 彼らが生きていた空の下。

 円卓の騎士たちが生きていた空の下。

 カルデアの者たちが生きていた空の下。

 この惑星の、本当の空の色。

 

 大気中に濃い魔力がなくなっていく。

 おかげか、光を歪め、押しとどめるものがない。

 物体の反射光をスムーズに運ぶ大気は、ブリテンのそれと比べるといささか薄味だが、その分澄んで、透き通るようだった。

 

 今なら、まだ乗り込めるよ?

 と彼が言う。

 彼女は、首を振った。

 それは、許されません。

 例えあなたが是としても、(わたくし)の犯した罪はあります。

 罪は罪です。

 私が許せないんですわ。

 それが、裁かれずに終わることを。

 

 この世界は、ちゃんと罪に相応しい罰を受けた。

 カタチはどうあれ、モルガン陛下も、メリュジーヌも、バーヴァン・シーも、みんな、罪と罰を、精算できました。

 なら、(わたくし)も、罰を受けなければ。

 

 ……そっか、

 と、男は言った。

 ボーダーは、もう、見えなくなっていた。

 

 

 ふたりは、話をした。

 

 最初から。

 

 ずっと、聞きたかったことがあるんですの。

 

 なンだい?

 

 あの時、あなた、私の目の前に、狙って落ちたんですか?

 

 バカいうない。

 そンな余裕はねぇよ。

 

 あン時の俺ァ、目も見えねぇ、耳も聞こえねぇ。

 今、自分がどこに落ちてンのかも、わかってなかったンだよ?

 

 じゃあ、私の目の前に落ちたのは、偶然なんですね。

 

 そうなるねぇ。

 

 全能の神なのに、偶然に身を任せちゃったんですね。

 あなたは、時間も自由に行き来できるのに。

 

 ……あンなぁ。

 俺ァ、たしかに全能を能力として行使できるケド、存在そのものが常に全知全能ってワケじゃァねンだぞ?

 ヒトにゃァヒトの。

 世界には、世界の。

 神には、神の、ルールってモンがあンの。

 

 特に──異聞帯ってェトコじゃあ死んでるみたいだケド、この世界にゃァ、本来、いわゆる抑止力の類が、やたらと幅を利かせてるみたいじゃねぇの。

 

 例え、俺にとって、それがパンチ一発で吹っ飛ばせる程度のモンだとしてもだ。

 その世界に属する以上は、世界の法にゃァ最低限は従うモンなのよ。

 神であれ、ね。

 

 ましてや、俺ァ本来お行儀のワルい神々を取り締まる側なンだぜ?

 そう言う組織の一員なのよ、もともと。

 法を守る側が、道にツバを吐き捨てるマネ、しやせんよ。

 

 ──じゃあ、私とあなたが出会えたのは、純粋に、その……奇蹟、なんですね。

 

 ──ああ。

 俺が、バーゲストに会えたのは、奇蹟さ。

 

 もしかしたら、俺なンかより、もっともっとでっかい運命力を支配できる『至高者(いとたかきもの)』が、示し合わせたモンかもしれンが……それは、そンなんは、それを認識すらできン俺たちが考えても、しょうがねぇハナシさね。

 

 楽しかったですわ。

 

 ああ、楽しかった。

 

 一緒に、ご飯を食べました。

 

 卓を囲んでね。

 バターステーキ、美味かったねぇ。

 

 一緒に、釣りに行きましたね。

 

 ……ごめん。正直、あン時、バーゲストのこと「熊みたいだなァ」って思っちまってた。

 

 …………

 

 お、怒んなよぅ!

 わ、ワルかったって! ごめんって!

 

 庭で、一緒に、紅茶を飲みましたね……

 

 うん。そうだねぇ。

 あの花、アドニスくんのためのモノだったンでしょ?

 

 ……ええ。

 私が、歩けない彼のために、植えたものでした。

 

 綺麗だったよ。

 

 ……はい。

 

 本当に、バーゲストは、アドニスくんのことが好きだったンだねぇ……

 

 ……はい。

 

 ……ふふ、ちょびっと、嫉妬しちゃうねぇ。

 

 ……ぐすっ。あなた、それ、そんな顔するの、ずるいですわ。

 

 ああ。

 でも、しょうがねぇじゃないの。

 

 俺ァ、お前さんのこと、好きなンだもん。

 

 …………もっと、言ってくださいます?

 

 ……スネてる?

 

 ええ、スネてます。

 だって、あんなに、で、で、デートまでしたのに。

 一緒に踊ったのに、言ってくれなかったんですもの。

 

 スマンねぇ。

 

 でも、永遠の愛なんて、誓えないもの。

 永遠の愛なんて、どこにもねェからさ。

 見てきた俺が言うンだから、間違いねぇ。

 

 …………

 

 だから、俺ァ、きみとの愛を、一生懸命、なんとか紡ごうとがんばったんだぜ。

 ないアタマ働かせて、恥ずかしいケド、神のマネごとたくさんやって。

 

 だから、さ。

 俺ァ、きみに、永遠の愛は誓えない。

 ないモンはない。

 

 けど、アナタは、それを繋ぎ止めようとしてくれました。

 こんなに、血を流して、みんな、救ってくださいました。

 

 うん。

 だってよ、俺ァきみのことを、愛してるからね……

 

 ──だから、

 ──だったら、次に一緒になったとき、たくさん、たっくさん! 言ってくださいまし。

 

 ──……ああ。

 きみがのぼせるぐらい、食べきれないぐらい、愛の言葉をささやくとするよ。

 

 ──少し、恥ずかしいですけれど、ふふ。

 

 俺だって、ハズかしいよ。

 自分で言ってて、キザすぎると思うモン。

 

 でも、楽しみにしていますね。

 ちゃんと、言質は取りましたからね。

 

 ふふ、一本取られたねぇ。

 マイったねぇ。

 

 …………

 

 …………

 

 ……また、

 

 ン?

 

 また、逢い──

 

 逢いに行くよ。

 

 ──えっ?

 

「俺が、バーゲストに逢いに行くよ。だから、ちょっとだけ、まっててくれないかい?」

 

 ────!

 

 ……ええ、

 ええ! まっていますわ!!

 (わたくし)は、あなたをまっています!

 

 だから、出来るだけ……はやく、来てくださいね。

 ずっと、まってますから。

 

 ずっと、ずっと。

 

 あなたを──

 

 …………

 

 …………………………

 

 

 

 

 

 

 

 そして、世界には、ひとり。

 

 漂白された世界に、ひとり。

 

 血を吐きながら、笑いながら、泣きながら。

 

 男は、ひとり。

 

 

 空に向かって、飛び出した。

 星に向かって、飛び出した。

 

 あっという間に、世界を飛び越えて。

 溢れる血が、空に昇る龍のように、軌跡を作った。

 

 彼は、彼女に、逢いに行った。

 

 遠く遠く、どこまでも、

 

 どこまでも、空の彼方まで、飛んでいった。

 




最終章最終話、おわり
エピローグ ブルーハーツのテーマ に続く
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