【完結】妖精國に落ちた超越者が、妖精騎士たちにほんの少しだけ救いを与えるお話【挿絵有り】   作:ロウシ

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エピローグです
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ブルーハーツのテーマ
エピローグ:あきらめるなんて、死ぬまでないから


1.

 

 

 太い──男だった。

 

 ノウム・カルデアの来賓室……に仕立てた応接室。

 たっぷりゆとりあるソファがふたつと、机がひとつ。

 入り組んだ機械類が雑多に並び立てられるカルデアの中でも、一層簡素な部屋であった。

 そこのソファに、彼らは対座していた。

 

 ひとりは、カルデアの総司令官にして、最高責任者であるゴルドルフ・ムジーク。

 ひとりは、話を円滑に進めるべく、また個人的興味と好奇心からシャーロック・ホームズ。

 ひとりは、ホームズ同様の理由から、レオナルド・ダ・ヴィンチ。

 ひとりは、話を聞いてから、目を爛々と輝かせて同席したいと譲らず、根負けしたゴルドルフに同席を許されたネモ・プロフェッサー。

 そして、最後のひとりは、藤丸立香であった。

 

 彼らと対座する男は──太い男であった。

 

 ソファに無造作に座る大男。

 身体が大きい。身にまとう肉が、太い。

 やや前傾姿勢になっている。

 両膝の少し上に肘を置いて、股の間の位置で手を組んでいる。 

 その指が、太い。

 その脚が、太い。

 その微笑みが、太かった。

 頭を覆う、尾の長い白のバンダナ以外、全身、黒い服だった。

 革靴も、当然黒い。

 その足も、大きくて広い。

 顔に、肉が削れた傷があった。

 左耳が上半分から千切れていた。

 右の頬から、鼻を貫通して、左頬の手前まで、肉が削げた傷が目立つ。

 

 ゴローと、よく似ていた。

 ほとんど、本人かと見まごうほど、似ていた。

 違いは、黒いシャツの左胸の部分に、十字架のワンポイントがあること。

 傷の位置が鏡合わせたように逆であること。 

 ゴローは平時はタレ目気味であったが、この男はツリ目気味の黒目であること。

 そして、身体の大きさが、あくまでゴローと比べるなら、少し、小さいこと。

 その身体が発する存在感も、超大かつ強靭なものではあるが、ゴローとは違ってあっけらかんとした爽やかさがあった。

 良く言えば、親しみがある。

 悪く言えば、ぶっきらぼうである。

 

 彼は、出された紅茶を手に取ると、うむむ、と顔をしかめた。

 

「うん……せっかく出してもらっといてなんだけど、ごめんなさいね。俺、紅茶飲めないのよね。だからこれ、コーヒーにさせてもらったよ」

 

 と、言った。  

 

 彼がそう言うと、カップの中の紅茶は、コーヒーになっていた。

 

 驚きはない。

 そのぐらいはするだろうと、予想できていたからだ。

 

 声は同じだ。

 これは、全く同じであった。

 だが、口調が違う。

 こちらの方が、ややお堅い気がする。

 

 ──『彼』は、いた。

 

 既に、ノウム・カルデアの中に。

 そうとしか表現できなかった。

 

 カルデアが、ストーム・ボーダーがブリテンから帰還して、丸二日が経過しようとしていた時。

 さまざまな想いを胸に、各々が次に進むための準備を進めていた時だった。

 

 『彼』は、いたのだ。

 現れた。でも、入ってきた、でもない。

 ボーダーの格納庫(ドック)に、既にいたのだ。

 

 あまりにも自然な振る舞い。

 あまりにも自然な姿。

 カルデアに常任するサーヴァントたちですら、さっきの召喚で、新しく召喚されたサーヴァントかなにかかと、スルーしてしまうなじみっぷりであった。

 

 彼は、藤丸立香の個室に普通に入ってきて、言った。

 

「すごいね、まるで秘密基地だ」

 

 藤丸の絶叫は、カルデア内に警報となって響き渡った。

 

 

2.

 

 

 コーヒーを飲み終えると、男は飲み終えたそれに合掌をさげた。

 違う。

 その印象を、ここにいる全員が抱いていた。

 

 まず、男はゴルドルフに頭を下げた。

 自己紹介はしなかった。

 

「ど、どう言うことかね? ホームズ! 説明を!!?」

 

 ゴルドルフは疑念をホームズに丸投げした。

 ホームズは、さて、と待ち構えたように言葉を綴る。

 まず確認したいのですが、と前おいた。

 

「あなたは、ゴローではないのですね?」

 

 ゴロー?

 『彼』は、目を見開いた。

 あいつ、そんな名前で通してたの?

 と、心底呆れたような口振りで聞いた。

 

「き、キミはあ、あの全能の神の身内ではないのかね?」

 

 いや、そうですけど。

 と『彼』は言った。

 太い指で、頬を掻く。

 この動きは、良く似ていた。

 

「いやぁ、仮名がゴローて。アイツほんとセンスねぇな……」

 

 『彼』は、空になったハズのカップに口付けた。

 いつのまにか、コーヒーがなみなみと注がれている。

 

「そ、それで、『全能者』の身内が、我がカルデアに何をしにきたのかね?」

 

 まさか、報復……とゴルドルフが青ざめた。

 違う違う!

 と『彼』は顔の前で手をぶんぶんとふった。

 大袈裟な動きだった。

 

「バカ弟子が御世話になっていたそうなので、師としてご挨拶に伺ったのですよ」

 

 弟子……?

 

「キミは、ゴローの、師匠なのかい?」

 

 そうだね、レオナルド・ダ・ヴィンチ。

 とあっさりと名を呼んだ。

 この時点では、ゴルドルフとホームズ以外、自己紹介はしていなかった。

 

「こっち側で、あのやんちゃ坊主のやらかしの後始末が終わったんで、判決を教えるついでに、寄らせていただきました」

 

 深々と頭を下げて、言った。

 

「判決……とは?」

 

 あ、そこからかぁ。

 と汗粒をひとつ。

 

「いや、あのハナタレ小僧。身の程もわきまえず戦地に飛び出して、勝手に殺されかけてた結果、こちらの世界に転がり込んでましてね……いやあ、総帥(ヘッド)はカンカンでして。私も随分絞られました」

 

 しょぼんと顔を沈める。

 いえ、我々は彼には助けられましたよ。

 とホームズが言う。 

 半分は……と、男が言った。

 

「ええ。半分ぐらいは見てましたので、知ってます。アイツが色々頑張ってたのはみんな知ってます……が、こっちはその時既に軍法会議まで行っちゃってたんで、流石に庇いきれなくてですね。下手すりゃ俺が責任持って、アイツをブッ殺さなきゃならなかったんですよね、マジで」

 

 マジ……ていうか、アレ死ぬの?

 とゴルドルフが言うと、死にますよ、あいつも。

 とあっさりと返した。

 

「まあ、いてもいなくても別に戦局が変わるようなヤツでもないんで、俺がしばらく禁固刑食らった代わりに命だけはなんとかなりましてね。いやぁ、参りましたわ」

 

 しかし、とホームズ。

 

「我々は、彼とはその……あまり絆が深かったわけではありません。結果として生き残ったのが我々であっただけで、彼が世話になっていたものたちは……」

 

 ああ。 

 その点は大丈夫。

 先に時間超越点に寄ってきたんだけど、この世界に出力される分のモルガンやらバーヴァン・シーやらはいなかったから、こっちにきたわけで。

 

 さらりと訳の分からないことを言うのであった。

 こう言うところは、ゴローと似ている。

 あまりに荒唐無稽すぎるためか、ホームズですら、そうですか……と意味深に呟く返事しかできなかった。

 

「だが──ゴローが生きていることに疑いはないけど、彼はまだここには来ていないよ?」

 

 ああ、それ。

 ちょっと来るタイミング、ワザとズラしたからね。

 だって、恥ずかしいじゃん。

 

「恥ずかしいって……」

「だってさ、藤丸くん。よかれと思って死刑になるレベルで悪いことやって追放食らった男が、追放先で愛する人見つけてイチャつける環境に落ち着いてる時に、その師匠が堂々と現れて、『すんませんバカ弟子がご迷惑おかけしました。全部見てました!!』って目の前で頭下げられたら、俺だったら死にたくなるわ!」

 

 ってか死ぬわな!

 と男はゲラゲラ笑う。

 豪快な気質であった。

 少々下品でもあった。

 

 だが、言わんとしていることは死ぬほど良くわかるのであった。

 

「そういうワケなんで、アイツここに来たら伝えてもらえます? 『おまえ三兆二千四百億年とんで十二万五千年の追放実刑食らったから、よーく休んどけよ』って」

「いやとんでもない年数だね!? インフレって怖い!!?」

 

 『彼』は言うだけ言うと、さっさと扉を潜って帰っていった。

 誰も後を追わなかった。

 たぶん、もうこの世界にはいないだろうなと深く理解していたからだった。

 

 それと、入れ替わるように。

 

 ノウム・カルデア全体に、凄まじい轟音が鳴り響いた。

 

「今度は何かね!? ま、まさか『異星の神』の襲撃かね!!?」

 

 ゴルドルフが立ち上がって叫んだ。

 藤丸たちはバタバタと震源に向かう。

 

 そして、ドックに存在するそれを見て、声を失った。

 

 なんだ、これ? 

 と。

 

 それは、部屋であった。

 城の一室、そのひとかどの部屋のようだった。

 

 鉄製の格子が嵌め込まれて、その外壁も鉄製。

 ボルトは鉛製であった。

 重量感のある外観である。

 しかし、その一室のみ、力づくで城から剥ぎ取ったように、廊下への繋ぎ目の鉄板がねじくれていた。

 外見は、よほどの摩擦を受けたのか、ひどく焼けて、煤汚れていた。

 さながら、年代物のアンティークのようであった。

 いささか厳しい外見ではあるが。

 

 どこかで、見覚えがあるような……?

 

 藤丸たちの脳裏に浮かびかけては消えるもの。

 ドックに慌てて飛び込んできたマシュが、それを見て、叫んだ。

 

「き、金庫城です! 先輩!! ノリッジの、スプリガンの……!!」

 

 あ! 

 と藤丸立香が手を叩く。

 ダ・ヴィンチはうええ!? なんで!? と疑問に声を上げ、ホームズやネモたちはただひたすらに疑問符を浮かべていた。

 

 その疑問に応えるように、重厚な扉がぎぎぎと錆び臭い音を立てて開き、鉄臭い埃と共に降り立った人物が口を開いた。

 

「やあみんな! また会えて嬉しいよ。私だ、キリシュタリア・ヴォーダイムだ!」

 

 ゴルドルフたちの、悲鳴のような声が上がった。

 

 

3.

 

 

「聞いてくれ! ミミズが大きかった!!」

 

 キリシュタリアの第二声は、訳のわからない言葉であった。

 その奥から、ゲホゲホと埃に咳き込みながら出てきたのは、カイニスとペペロンチーノ、コーラルと、そして……

 

「し、死ぬかと思いました……ほ、ほんとに汎人類史に着いたんですよね、私たち!? ここ、天国じゃないですよね!?」

 

 この部屋の主人の、スプリガンであった。

 スプリガンは腰を抜かしてひーひー言いながら這い出てきた。

 ぺぺロンチーノは藤丸たちを見て、はぁい! 半年ぶりね! と言った。

 キリシュタリアは、すごかった! とにかくすごかったよ!

 と少年のようにはしゃいでいて、話にならず。

 カイニスは目にクマを作ってぐったりしていた。

 コーラルはなんだかずっと放心している。

 

「!? ど、どう言うことなんだい!? キリシュタリア、ぺぺ!? これ、一体全体どう言うことなんだい!?」

 

 ダ・ヴィンチの言葉はごもっともである。

 あの時、『奈落の虫』との決戦前に別れたキリシュタリアたち。

 落ちゆくブリテンに逃げ場などなかったハズだ。

 なぜ、一体どうして生きている!?

 どこにいたんだ?

 

 次々と浮かぶ疑問。

 その答えそのものが、そこに現れた。

 

「いやァ、なんとかミッションコンプリートしたさぁ。全員無事でよかったよかった!」

 

 太い──声であった。

 すごいねぇ。まるで秘密基地だねぇ。

 とどこかで聞いたセリフを吐いた。

 

 カイニスがその声の主に、良くねぇよバカ!! と怒号を飛ばす。

 

 突如として現れた金庫城の一室。

 その背後からひょっこり出てきたのは、ゴローであった。

 

 

4.

 

 

「金庫城の部屋ごと、宇宙に飛ばしてた!!?」

 

 うん、とゴローは頷いた。

 整理すると、ゴローの話はこうだ。

 

 ブリテンの──異聞帯の消滅は、地球上に歴史が重なっている状態の解除である。

 元々『異星の神』の力の影響、つまり人理の漂白は地上に留まる。

 だから、星の内海か、太陽系外にまで出れば、地球上で行われる地上限定の歴史改変には巻き込まれない。

 なので、妖精國で最も頑丈で密閉空間の金庫城を自身のパワーで覆って、『奈落の虫』の決戦前にキリシュタリアたちに金庫城に退避してもらい、バーヴァン・シーの消滅を見届けた後で金庫城ごと宇宙に投げ飛ばした。

 

 その回収に、ゴローが今日まで手間取っていたのだと言うことだった。

 

「いやァ、勢いつけすぎちまってさァ。まさか天の川銀河の外より遠くに行ってるとは思わないじゃン?」

 

 地球から、およそ十万光年より外である。

 つまり、キリシュタリアたちはあの時から、十万光年の宇宙の旅をしていたのだ。

 ぺぺロンチーノが『半年ぶり』と言ったのは、いわゆるウラシマ効果のせいである。

 地球時間で二日過ごしたカルデアと違い、宇宙空間を超光速で、地球から十万光年先を飛んでいたために、キリシュタリアたちの経過時間がズレているのである。

 

「もう勘弁してくださいよ! 途中何回死にかけたことか!! 宇宙にはロマンなんてない! こわい!! 私は地球が好きだ!!!」

 

 スプリガンのそれはもう、狂喜であった。

 きいええええと絶叫しながら床にしがみついている。

 

「まあ気持ちはわかるわ。何度かブラックホールに落ちかけたし、恒星に引き摺り込まれかけたし、しまいには星より大きいミミズに食べられかけちゃったものね……」

 

 ミミズ……?

 

「ああ! 聞いてくれ藤丸立香!! バカでかいミミズがいたんだ!! 我々の前に現れたそいつは、惑星の何十倍も大きくて、視界を埋め尽くしてヌメヌメしていた! アレは、私がフルパワーで惑星轟を使えても……多分駆除はムリだったと思う!」

 

 まるきりコズミック・ホラーである。

 いや、あんたが同盟組んでた、本来は宇宙艦隊の機神ゼウスたちは、地球に来るまでそう言うのを相手にしてきていたのだろうけども。

 

「いや、ほんとにごめんねぇ」

 

 平謝りするゴロー。

 コーラルはずっと目を回している。

 目を回したまま、ゴローにいや、大丈夫です。とぶつぶつ言っていた。

 情報量があまりにもぶっ飛びすぎていた上に大きすぎて、思考回路がずっとショートしているのだった。

 

「とにかく、妖精國の次代妖精と、元汎人類史の人間。これだけは、まぁ、ナントカ救えたよねぇ」

 

 ポリポリと頬を掻くゴロー。

 藤丸は、『神の毒』は!?

 と聞いた。

 

 ゴローは、まだ入ってるよ。

 とあっけらかんと答えた。

 

「そりゃァね、今だって外見整えて、から元気でゴマカしてるだけさね。でも、でもね」

 

 と、ゴローは言う。

 少し恥ずかしげに、頭を下げた。

 

 ──はやく逢いに行くって、言っちまったしなぁ。

 

 その時である。

 

 格納庫の出入り口に、息を切らした彼女が立っていたのは。

 

 

5.

 

 

 彼が、来た。

 

 確信していた。

 衝撃と、轟音。

 警報器がけたたましく鳴っている。

 

 彼女は、まだ召喚されたばかりで、カルデアはまだ慣れぬ環境であった。

 整った部屋。

 座に教えられた知識としては知っているが、実感がない機械類。

 それらに囲まれることによる気疲れから、部屋でベッドに寝転がり、休んでいた。

 だから、突然の轟音に飛び上がるほど驚いた。

 

 だが、不思議と危険は感じなかった。

 危機感の代わりに胸に去来したものは、暖かさであった。

 

 しわり、と目がにじんだ。

 彼女は、駆け出した。

 着替えることも、着飾ることも、忘れて。

 

 なんてことのない廊下。 

 それが、とても長いものに感じた。

 自分の足の動きが酷く不器用だった。

 不恰好に走った。

 

 構わない──

 

 彼が、来ている。

 彼が、来ているのだ!

 

 やっぱり、また、約束を守ってくれた!!

 

 嬉しさと、期待で胸が張り裂けそうだった。

 

 そして、たどり着いた先に、彼はいた。

 

 相変わらず、太い身体であった。

 相変わらず、大きな身体であった。

 相変わらず、その笑みが太かった。

 相変わらず、その黒目は、吸い込まれそうな引力を秘めていた。

 

 ──おや、久しぶりだねぇ。

 

 ワザとらしく、彼は笑った。

 彼女は脇目も振らず、一直線に彼の胸に飛び込んだ。

 

 わあわあと泣き出した。

 その頭を、よしよしと、彼は撫でた。

 

 柔らかく、優しく。

 彼のごつごつとした指が、髪を撫でる。

 それが、たまらなく嬉しかった。

 

 ──約束通り、また、逢えただろ?

 

 見下ろす彼は、笑っていた。

 見上げる彼女も、笑っていた。

 

 ふたりは、ここに再会を果たした。

 

 これから何があろうとも、一緒にいようと、彼は言った。

 

 うん、うん! 

 と彼女は頷いた。

 

 

 

 こうして、星々の果てから落ちてきた男は、巡り巡って、彼女の元にたどり着いた。

 

 ──彼は全能者である。

 

 ──だが、彼は人間だった。

 

 ある夜、妖精國の空に異変が起きた。

 空から吐き出されるように落ちてきた男がいた。

 

 男は、女王モルガンの前で、自らを全能者と名乗り、神にも等しいと言った。

 

 ──だが、彼は人間であった。

 

 かの國の未来に興味はなく。

 この星の結末に興味はない。

 

 ──それでも、彼はひとりの人間であった。

 

 未来の決まった世界。

 滅亡の決まった世界。

 終末を止められない世界。

 

 彼は興味がなかった。

 それを止める気もなかった。

 

 ──しかし、彼は人間であった。

 

 苦悩する女王がいた。

 苦悩するものたちで溢れていた。

 罪と罰でがんじがらめにされた、愛すべきものたちがいた。

 

 ──男はこの國の結末に興味はなかった。

 

 

 だが、彼女たちに、ほんの少しだけ、救いがあってもいいんじゃないかと思っていた。

 

 そして、男は愛し、愛された。

 だから、ほんのすこしだけ、彼女たちに、救いをもたらすことにした。

 

 

 これは、妖精國に落ちた超越者が、妖精騎士たちにほんの少しだけ救いを与えるお話であった。

 

 それ以上のお話ではない。

 

 だから、これで、この話はおしまいである。

 

 彼ら彼女たちの行先に、困難はあるだろうが。

 

 きっと、なんとかなるでしょう。

 

 だから、ここで、おしまい、おしまい。

 

 

【妖精國に落ちた超越者が、妖精騎士たちにほんの少しだけ救いを与えるお話 完】

 




これにて終了。完結にございます。
約60日、約50話。
お付き合いいただきまして、ひたすらに感謝です。
たくさんの評価、お気に入りなど、本当にありがとうございました。
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