怪物のバラード   作:ディヴァ子

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ディアブロス程、あの合唱曲が似合うモンスターはいないと思った次第。


プロローグ:真っ赤な太陽が昇る砂原

 やーっ! 僕の名前はディアブロス。人間が「双角竜」とか「砂漠の暴君」とか呼ぶ飛竜種のモンスターだ。

 ……えっ、モンスターの癖に何で自分の事にそんなに詳しいのかって?

 そりゃあ、出会ったハンターとか編纂者とかが、驚きながらペチャクチャ喋ってくれるからだよ。「ディアブロスだ!」「砂漠の暴君が出たぞ!」なんてね。

 そして、すぐに武器を抜いて襲い掛かって来る。

 酷い話だよね。僕、別に何もしてないし、するつもりもないんだが。

 だけどまぁ、僕らの種族はとにかく凶暴で、自分以外は敵みたいに思っているらしいから、仕方ないんだろうけどね……。

 うん? 僕は違うのかって?

 違うよー。僕は生まれた時から臆病な、所謂落後者なんだ。何せ卵から孵った瞬間、他の兄妹にド突かれ、泣き喚いて逃げ出したくらいだからね。お母さんもあっさりどっか行っちゃうし。

 しかし、世の中何が幸いするか分からない。そうやって強敵から逃げ続けて来た結果、僕は同時期に生まれた兄弟の中で、唯一生き残って成体になれた。

 後で知った事だけど、ディアブロスって種族は、最硬の甲殻と最強の攻撃力という凄まじいスペックの割りに、そんなに長生き出来ないらしい。

 そりゃそうよね。卵が孵るまでは守って貰えるけど、それ以降は放置されるから、かなりの数が間引かれるし、成体になったらなったで持ち前の凶暴性で喧嘩ばかりするので、致命傷を負う確率が高くなる。大抵の敵には勝てるとは言え、同種同士となれば話は別であり、その時に角が折れたり尻尾が砕けたりと、対抗手段となる武器が壊れてしまい、そのまま死んでしまう事も多いと言う。さもありなん。

 だが、何度でも言うが、僕はとても臆病だ。リオレウスやリオレイアはもちろん、ドスガレオスにも勝てない。

 というか、そもそも縄張り争いに発展すらしない。向こうは僕を見て勝手にビビって逃げ出すし、僕も僕でビックリして地下に潜ってしまうので、戦いにならないのである。

 ……自分で言ってて、情けなくなって来るなぁ。僕としては、サボテンを食べられれば万事解決、世は事も無しなんだけどね。サボテンうめぇ。

 

『ボルルル……』

 

 あ、ボルボロスくんだ。最近、足繁く通うようになったんだよね。

 

『………………』

 

 もちろん、僕は何もしない。同族は縄張りを侵す確率の高い彼らを問答無用かつ容赦なく排除するが、僕はあくまで知らんぷりをして、ボルボロスが目を付けていない、瑞々しいサボテンをモシャモシャ食べる。

 ――――――これは僕だけが気付いているのかもしれないけど、ボルボロスという種族は昆虫食で、サボテンが枯れる原因である虫を食べてくれる益竜であり、排除などとんでもない、協力して然るべき存在なのである。

 だから、僕は敢えて彼を無視して、存分に虫を食べて貰っている。おかげで僕の縄張りだけ、サボテンの発育が段違いだ。他の同族ではこうはいかないだろう。これからも末永くよろしくお願いします。

 

『ボルフゥ……』

 

 今日も今日とて害虫駆除をしてくれたボルボロスくんが、こちらをチラチラと様子見しながら帰っていく。大丈夫だって、ド突き回したりしないから。また明日ね~♪

 

『グェエエエァアアアアアッ♪』

『ボギャォッ!?』

 

 さようならって言ったら、脱兎の如く逃げられたでござる。解せぬ。もう少し抑えられないかなぁ、この声量……。

 さて、ご飯も済んだし、今日はもう寝ようかなー。食っちゃ寝最高。

 

『――――――ボルァッ!』

 

 うん? 何か向こうからボルボロスくんの悲鳴が聞こえるぞ?

 ……これはもしかして、

 

「はぁっ!」『うにゃにゃにゃー!』『ヴァオン!』

『ゴルゥゥ……!』

 

 あ、やっぱりハンター(とオトモのアイルー&ガルク)に襲われてた。

 しかも、結構手傷を負っている。これはイカン。

 

『グヴェアアアアアアアッ!』

「何ッ、ディアブロスだと!?」『ご、ご主人、どうするのにゃ!?』『ヴヴヴッ!』

 

 僕は基本的に臆病だけど、何ならハンターからはさっさと逃げるタイプだけど、サボテンの品質管理に協力してくれるボルボロスくんを狩るなど、絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛。彼くらいなんだからね、図々しく縄張りに何度も入って来てくれる個体は!

 

『ギャヴォオオオオオッ!』

 

 という事で、食らえ目潰し!

 

「うぇっほはっ……す、砂掛けだぁ!?」『な、何だこいつ、攻撃パターンが通常と違うにゃ!?』『キャインキャイン!』

 

 どうだ、大型飛竜種の放つ砂掛けは痛かろう!

 ディアブロスどころか、下手すればイビルジョーでさえ虐殺する狩猟民族なんぞと、真面に角付き合って戦って堪るか!

 そぉーら、帰れ帰れぇーい!

 

「く、くそっ……撤退、撤退だ!」『覚えてろにゃ、こんにゃろー!』『アォーン!』

 

 フン、負け犬の遠吠えとして聞いておいてやるぜ!

 よし、これで当面の危機は去ったな。ほら、君も早く住処に帰りなさい。

 

『グェヴァアアアアアアアアヴォッ♪』

『ボルァアンッ!』

 

 ……また尻尾を巻いて逃げられた。哀しくなっちゃうなぁ。僕も帰って寝るとしよう。それが良い、うん。




◆ディアブロス

 竜盤目竜脚亜目重殻竜下目角竜上科ブロス科に属する凶暴な飛竜種。
 「双角竜」という異名の通り、捩じれた二本角が特徴で、他に襟飾りや先端が棍棒になった尻尾を持つ。一応は飛竜種に分類されているものの、普段は地下に暮らしているので、基本的に飛ばない(飛べないとは言ってない)。縄張り意識が極めて強く、侵入者を容赦なく排除する、砂漠の暴君と呼ぶに相応しい種族である。
 ちなみに、こんな見た目と習性の癖に、サボテンが大好きな草食竜だったりする。何故だ。
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