やーっ! 皆お早うさぎ!
僕だよ、何故かブレス攻撃が出来るようになったディアブロスだよ。
あの後、何度かブレスを出してみて分かった事だけど、どうやら僕の体内には、通常のディアブロスに存在しない、キノコを溜めておく為の“袋”が形成されているらしい。胃とは直結せず、食道の途中で口を開いていて、摂取したキノコはここに送られ、おそらくは栄養と毒素に分離されている。
もちろん、キノコに大した栄養は無い上に含水率もサボテンより低いので、腹は殆ど満たされないが、分離される毒素が重要であり、これには毒属性だけでなく、食べ合わせによって様々な属性を持ったブレスを吐く事が出来るようなのだ。
今の所可能なのは、毒テングタケの毒、マヒタケの麻痺、ニトロダケの火、食べ合わせで猛毒、スタン、爆破って感じかな。アオキノコやマンドラゴラ、ドキドキノコはバフ撒きだね。こちらに関しては、自分に回すべき栄養を外に出してるだけなので、あんまりやりたくないけど。
この検証の為に、一体何匹のビシュテンゴが犠牲になった事か。
あいつ、どうしてあそこまで執拗に喧嘩を売って来るのかなぁ。割と喧嘩っ早いフロギィやイズチですら威嚇で止めてるのに。所詮は猿知恵って事かな?
ブンブジナは相変わらず可愛い。人畜無害どころかモンスターのご飯にしかならない程の大人しさである。
『きゅんきゃん♪』
特にこのちびブジナがねぇ、可愛くて仕方ないのよ。コロコロ転がるし、お腹見せて喜ぶし。貧弱な肉体は野生化では明確な欠点だが、そこがまた愛らしくもある。まさに癒し。カムラの里でもグッズが作られてるらしいし、この近辺では随一のマスコットキャラだよねー。
『ボルフゥ……』
『クルルル……』
ボルボロスくんとロアルドロスくんはあまり興味が無さそうだが、空気を読んで見守ってくれている。普通に良い奴だよね、君ら。
……さて、そろそろ現実と向き合うとしよう。
題して、「ロアルドロスくんお別れ会について」。
そう、ロアルドロスくん、割かしここを気に入っているようなのだ。確かに水没林程ではないが水源は多いし、何より食糧が豊富にある。景観も良いから、嫌がる理由は無いだろう。僕は食糧が少なくて嫌だけど。残念だけど、彼とはここでお別れだね。
『クルルル……キィェエエエエン!』
それがロアルドロスくんも分かっているのか、彼は僕が何かを言う前に、一声鳴いて立ち去って行った。
『コァアアアアアアアアアアアン!』『キェェァッ!?』
かに思われたが、突如襲来した黒いタマミツネの泡にぶっ飛ばされた。またこのパターンかよ!?
『コァヴォオオオッ!』
現れたタマミツネは他の黒いモンスターたちと同様に身体中が傷だらけで、怒りと恐怖で我を忘れている、謂わば暴走状態である。
その上、泡に爆破属性が付与されているらしく、火と爆発に弱いロアルドロスくんは一発で戦闘不能になってしまった。何て奴だ。
クソッ、ロアルドロスくんがここで安心して暮らしていく為にも、こいつは生かしておけない!
『グヴェァアアアアアアアアッ!』
僕はちびブジナをボルボロスくんに任せて、バフ効果のある咆哮を上げた。よく分からんが、使い道があるならしっかり利用するのが生物なのさ。
幸い僕自身は熱には耐性があるし、タマミツネ族の水流ブレスにさえ気を付ければ大丈夫だろう。こいつと遭う前にも1回だけ交戦した事あるからね、ビシュテンゴ狩りの最中に。
命懸けで事前情報をくれて有難うビシュテンゴ、でもお前はムカつくから滅んでしまえビシュテンゴ!
『クォアアアアッ!』
クルクルと弧を描きながら、ボンボンと泡爆弾をばら撒く黒いタマミツネ。
タマミツネは淡いピンクの鱗と青紫色の体毛を持つ海竜種の一体で、別名を「泡狐竜」と言い、体毛から発する粘液を利用して泡を作ったり、潤滑剤として使う事で舞うように攻撃する事が出来る。黒い個体はそれに加えて爆破属性も持った感じである。火と水が合わさり最強に見える。
だが、それは気のせいだ。何故なら、僕は爆破属性に限らず麻痺や毒も使える上に、環境生物をも活用出来る悪知恵もあるんだからなぁ!
と言う事で、食らえ通りすがりの閃光羽虫!
『キャァアアッ!?』
お前、女の子みたいな悲鳴を上げるなぁ。通常のタマミツネもそうだったけど。
しかし、今この瞬間こそがチャンス。変な事をされる前に畳み掛けてやる。「雷毛ころがし」である!
『イヤァアアッ!』
やっぱり女の子やな。種族単位で男の娘ってどうなのよ?
よしよし、これで雷やられになったな。後はボコボコにしてスタンを取るのみ。
――――――プシャアアアアアアアッ!
『ギヴェェエエエエッ!?』
殆どノーモーションで水流ブレスを出すなぁ!
――――――ドワォッ!
『グヴォオオオオオッ!?』
しかも、特大爆弾泡攻撃ィ!
水やられで体力と堅牢さを失っていたせいで、避けられずにクリーンヒットしてしまった。痛過ぎるわ。
つーか、何だこの爆破液、纏わり付いて離れないんだけど!?
『クゥウウウウ……ッ!』
うぉおおおっ、ヤバいヤバいヤバい、また何か大技しようとしてるよ!
『ギチィ……?』『………………!』
おおっ、大翔蟲(翔蟲の雄個体)!
こいつなら多少乱暴に扱っても大丈夫だろ。よろしくお願いしまぁあああすっ!
『キァアアォッ!?』
おや、翔蟲アクションで空中に退避したら纏わり付いてた爆破の炎が取れて、それに突っ込む形になった黒いタマミツネが引っくり返ったぞ。
そうだ、タマミツネ自体は火に弱い方なんだった。爆破を使うから爆破が効かないとは限らない。毒も火も電気すらも使える人間が、その全てで死ぬ可能性があるように。使えるのと使い熟せるのとは別物なのだ。
『ギャヴォオオオオオオオオオッ!』
食らいやがれ、麻痺ブレス!
『グギギギギギ……!』
よぉーし、麻痺った。これで終いにしてやる……ファル○ン・パンチ(爆破前脚アタック)!
『キャォオオオオオ!』
嘘ぉっ!? 状態異常から抜け出すの早過ぎィ!
『キュアアアァァ……』
さらに、引っ掻きでこちらを怯ませた後、泡爆弾を叩き込んで来た。アグレッシブ過ぎるだろお前!
――――――ピィイイイイイッ!
『ボルァッ!』『キュァアアアン!?』
だが、更なる大技へと派生する前に、ボルボロスくんがナイスな横槍を入れてくれた。爆破に弱いのによくやってくれましたよ!
『グヴェァァオオオオオン!』
いい加減沈め、沈めよぉ!
『グァァ……!』
爆破パンチによる左右の連打→尻尾叩き付け→それを支点に爆破ダイブ→ブレス攻撃(劇毒)という、僕が考え得る最大の大技連携を叩き込まれた黒いタマミツネが、ようやく息絶えた。
あ、危ねぇ、ボルボロスくんがいなかったら、返り討ちに遭う所だった。
と言うか、よく考えるとこれが黒いモンスターの初討伐じゃない?
本当に良く勝てたな、僕。ボルボロスくんやちびブジナに大した怪我は無いし、ロアルドロスくんは食べ合わせで一命を取り留めたみたいだから、一安心である。
めでたしめでたし、お後が宜しい様で。
――――――と、言いたい所だったのだが、
「……やるじゃないか」『凄いにゃー』『ワンワン』
まさかの
◆ヌシ・タマミツネ
海竜目海獣竜亜目泡狐竜下目タマミツネ科に属する泡狐竜……の特異個体。例によって古龍夫婦の被害者。
本来なら淡いピンク色の美しい身体は痛々しい漆黒に染まり、爆破属性の影響で毛が青白く輝いている。通常種を遥かに超える攻撃力と爆破やられ(というか鬼火やられ)によってハンターの命をゴリゴリ削って来る鬼畜兵器である。
尚こんなにも無慈悲な仕様なタマミツネだが、最終鬼畜兵器は別に居る。
余談であるが、人里に現れるタマミツネは全て雄であり、孔雀などと同じく雌が地味な種族だったりする。