怪物のバラード   作:ディヴァ子

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遂にイブシマキヒコとの邂逅、そシテ――――――。


閑話:届け愛のメッセージ

《我は狂飆……天津を濯ぐ禍ツ神也……!》

 

 ヒノエさんの肉体を借りて、己の意志を伝えて来る巨大な古龍。

 脚ではなく鰭が生え(前脚はある)、宙を泳ぐように飛ぶ姿は、まるでユクモ村に伝わる暴風雨の神:嵐龍アマツマガツチを思わせる。もしかしたら近縁種なのかもしれない。

 事実、かの龍は登場と同時に龍属性の空気弾を撃ち出し、激しい竜巻をも引き起こしている。

 まさしく自然の暴威、風の神龍。一体何を目的にカムラの里へ舞い降りたのかは知らないが、ヌシモンスターたちの身体に刻まれた共通の傷を見るに、こいつが全ての元凶なのだろう。

 ならば、やる事は1つ。

 

 ――――――里を荒らすモンスターは、皆の敵。総力を以て倒してみせよう!

 

「とりあえず、第一砦に戻るぞ、愛弟子! ロンディーネさんも早く!」

「了解した!」「……そっすね」

 

 まぁ、先ずは奴が降り立った第一砦に戻らなければならないのだが。降臨の余波で攻撃するとか、そんなの有りかと言いたい。

 ……私が行くまで、死ぬなよ!

 

「ぐはぁっ!」『みゃみゅー!』『ウルホーッ!』

 

 死に掛けてたーっ!

 死亡フラグの回収が早過ぎるんよ、お前は!

 クソッ、生命の大粉塵をばら撒いてやるから、死ぬなこの野郎ーっ!

 

「助かった!」

「もっと褒めて!」

「グッドだ!」

「グッドされた!?」

 

 お前、意外と余裕あるだろコラ。

 ともかく、ここからは私も居るし、皆も居る。対する敵は古龍1体のみ。里の絆を試される時が来た。

 さぁ、何処からでも掛かって来い!

 

 

 ――――――ギュルァアアアアアアッ!

 

 

 風を吹き出しながら大回転魔弾して来たぁ! お前には生物としての常識は無いのか!?

 

『クゥォルァアアァ!』

 

 さらに、口から空気弾を撃ち出して来たかと思うと、回避したその先に尻尾を叩き付けて来た。ガードが間に合わなければ、アイツはミンチになった上で空高くばら撒かれていたかもしれない。こういう時に便利だよな、片手剣。

 だが、古龍が尻尾を叩き付けた時に、地面が捲れて浮かび上がっている。そこを足場にすれば、奴の顔面に良い物をぶち込める。食らえ、狩猟笛の一撃を!

 

『クァアアアアアッ!?』

 

 私とアイツの殴打が古龍の顔を襲う。流石は巷で“片手盾”呼ばわりされるスタイル。音が重々しく痛そうだぜ!

 

 

 ――――――ザァアアアアアアアアッ!

 

 

 しかし、そこは強大なる古龍様。何事も無かったかのように、口から薙ぎ払いビームを放って来た。マッハ3のスピードで吹っ飛ばされそうな音してんな!

 ……って、里守バリスタが全滅したぁ!?

 一体何人犠牲になったのかは分からないが……これはメチャ許せんよなぁ!

 食らえ、切り札発動(リバースカード・オープン)、撃龍槍!

 

 

 ――――――ズギャアアアアアアアン!

 

 

 私の10万馬力で起動した撃龍槍が、古龍を貫く。

 撃龍槍は、その名の通り古龍を撃退する為に開発された設置式の大型武器で、回転するドリルのような大槍を勢いよく標的にぶち込む、割とエグイ兵器である。

 

『……ガァヴォルァアアアアアアアアッ!』

 

 すると、古龍は痛みにのた打ち回るどころか怒りの咆哮を上げ、眼を真紅に血走らせながら、真空状態の腕を叩き受ける神砂嵐で施設を破壊し、宙に舞い上げられた私を尻尾で叩き落した。

 

「かはっ……!?」

 

 ヤバ、い……息が……デキナ……ィ……!?

 

『ご主人ーっ!』『メラルぅー!』

「……はぁっ!?」

 

 た、助かった。キンカとナベシマ(アイツの相猫)が回復してくれたおかげで、命拾いしたよ。

 どう考えても致命傷だった気がするけど、ヨモギちゃんが食べさせてくれたお団子が力を発揮したのかもしれない。彼女の作るうさ団子は不思議な効果があるからね。ヌシオウガの猛攻ですら発動しなかったにも関わらず今効果が表れるって事は、奴の攻撃力は相当なようだな。

 そ、そうだ、アイツは……!?

 

「よくもメラルを! くたばりやがれぇええええっ!」

『グルヴォォ……ッ!』

 

 物凄い形相で破龍砲をぶちかましてた。えっ、何その顔、怖ッ!?

 だが、流石に撃龍槍と同等の決戦兵器である破龍砲を食らってノーダメージとは行かなかったようで、今度こそ地に墜ちて倒れ伏した。

 

『ガァヴォルァアアアアアァッ!』

「あぎぇおぁっ!?」「メラルッ!」

 

 しかし、殴る前に復活し、再び口から滅びの疾風炸裂弾を放って来た。また私だけガード出来なかったぁ!

 く、くそぅ、頑丈過ぎるだろ、こいつ。クシャルダオラとかだったら、とっくにスタンに入ってるのにぃ!

 

『ギュルァッ!』

「させん! 気焔万丈!」「「穿て!」」「愛弟子ィ!」「せぇい!」「メラルさんたちはやらせない!」「レッツ&ゴーゴーッ!」

『ガヴォァッ!?』

 

 だが、古龍が更なる追撃をする前に、里長が、ヒノエ&ミノト姉妹が、ウツシ教官が、ロンディーネさんが、イオリきゅんが、ヨモギちゃんが嵐のような波状攻撃を仕掛け、返り討ちにする。遂に速射砲に手を出したね、ヨモギちゃん!

 

『グァヴォルァォオゴァアアアアッ!』

 

 それでもまだ斃れない。古龍は血反吐をぶち撒き、身体中が部位破壊された状態だというのに、尚も私とアイツを殺そうと襲い掛かって来た。最早飛ぶ気力も無いのか、地べたを這いずる姿は蛇を思わせ、無様よりも恐怖の方が勝ってしまう。

 

『イヌスギィ!』『キャンディーズ!』

 

 しかし、寸での所でガルムとナベリウス(アイツの相犬)が私たちをさっと回収し、事なきを得た。

 ――――――好き勝手出来るのも、ここまでだ!

 

「行けっ! 三音演奏!」「はぁあああああっ!」

 

 私のサポートを受けて超カムラ人と化したアイツが、古龍の一本角にハードバッシュを叩き込み、へし折った。やっぱり止めはパンチなのね。

 

『ギュギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 

 力の源である角を折られた古龍が、命からがら空の彼方へと逃げていく。

 

「ふぅ、終わった……のか?」

「さぁね……」

 

 そうあってくれれば良いんだけどね。

 ともかく、百竜夜行を引き起こしたであろう古龍は遠くに去った。束の間の平穏かもしれないが、私たちは勝ち取ったのだ。掛け替えのない日々を。

 

「……ありがとう、メラル」

「どうって事はないよ……」

 

 ついさっきまで死にそうな目に遭っていたのに爽やかな笑顔でそう言えるあたり、やっぱり英雄(ヒーロー)の証はアンタにこそ相応しいのかもね。嫉妬しちゃうぞ。

 

 ――――――そして、それから数日後。

 

 ハンターズギルドは、かの古龍を風神龍イブシマキヒコと呼称する旨を発表し、同時に溶岩洞へ移住したヴェノブロスから、風神龍と対となる古龍の存在について伝えられたのであった……。




◆イブシマキヒコ

 別名「風神龍」。禍群の息吹と称される、雷神龍ナルハタタヒメの対となる存在で、風を操る大型古龍(“超”大型に非ず)。腕や背中に「風袋」という特殊なガスを溜める器官を持ち、そこから生み出される風で(何故か上下逆さまに)宙を舞い、突風や竜巻を起こす事が出来る。空を泳ぐ習性の為か後ろ足が鰭状となっている他、口がエイリアンやプレデターみたいな二重構造になっていたりと、結構見た目がグロイ。
 非常に縄張り意識が強く、結婚式場に他の生物が存在する事が許せない性質を持ち、ご自慢の暴風で「それ行け!」とモンスターたちを追い払ってしまう。この時の犠牲者が百竜夜行の面子とヌシモンスターである。
 まさに気ままな一陣の風が如く傍若無人な古龍だが、雌個体であるナルハタタヒメを探して何千里と飛び回り、彼女が生き延びる為なら己の命すら厭わない漢気も持っている。どこぞの可哀想な徹甲虫とは違うのだ。
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