怪物のバラード   作:ディヴァ子

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※彼としては重大な発表がありマス。


君を愛したい

 やーっ! 僕だよ、最近ヴェノブロスとか言う物騒な名前で呼ばれている、臆病者なディアブロスだよ。ディアブロスって名前も大概だと思うけど(「悪魔」って意味合いがあるらしい)。

 そんな僕だけど、ようやく安住の地――――――と言えなくもない場所に辿り着いたんだ。

 それがここ、「溶岩洞」だよ。

 活火山らしい熱気溢れるマグマの大地と、薬草どころか流水草まで生えるくらい湿度に満ちた水場が隣接する、実に不思議な場所だが、僕ら全員にとって都合が良い。

 水場があるからロアルドロスくんとボルボロスくんは問題なく暮らせるし、意外と植物が沢山あるからちびブジナも食べるに困らない。何よりキノコだけでなく、僕の大好きなサボテンも自生している。「灼熱サボテン」という種類だ。これがまた美味いのよ。瑞々しい砂漠のサボテンとはまた違う、スパイスの利いた味が何ともね。

 さて、近況報告はこれくらいにして……重大発表をしたいと思いまーす!

 

 ――――――実はですね、彼女が出来たんですよ。

 

 何かね、ここに来る途中で別の百竜夜行に出くわしたんだけど、その中にアタフタしてるディアブロスの女の子を見付けたのさ。何でも雷を纏う超巨大な古龍に襲われたらしい……えっ、何それ怖っ!

 ともかく、その子は身体が滅茶苦茶小さい上に(僕より一回りは小さい)、

 

『はふぅ……モヤモヤするですぅ……』

 

 このキャラクターですよ。同族とですら面と向かって話せずモジモジしている、僕も驚く程の大人しさとおっとりさを持つ、可愛い女の子である。ギャップ萌えって、こういう事を言うんだろうか……。

 あ、そうそう、僕たちに限らず、モンスターは同族同士なら会話が可能だ。鳴き方の微妙な違いで、相手が何を言いたいのか、本能的に分かるのよ。ボルボロスくんたちとはボディランゲージとニュアンスでしか意思疎通が出来なかったから、何か新鮮だなぁ。

 まぁ、ディアブロスって会話は出来ても、基本的に分かり合える事って稀なのよね。だって大抵の第一声が「お前を殺す」なんだもの。そんな事だから砂漠の暴君とか言われるんだよ。

 

『あ、そろそろご飯にしましょうか。……とって来ますね。今日はサボテンとニトロダケの水煮にしますか』

 

 それに比べて、この子の良妻ぶりよ。別に亭主関白になる気は無いけど、枯草を敷いた寝床を作ってくれたり、頼んでないのに食べ物を取って来てくれたりと、こうも色々尽くされるとついつい甘えたくなっちゃうのよね。ちびブジナもお母さんだと思って懐いてるし。マジで良い娘やなぁ……。

 

『『………………』』

 

 そ、そんな目で見ないでよ、二竜(ふたり)共!

 特にロアルドロスくん、“この甲斐性無しが”みたいな視線を浴びせないで!

 良いじゃん、君もここに来て新たなハーレムを作る事に成功したんだからさ!

 ……ああ、うん。水場が沢山あるという時点で居るとは思ったよ、ルドロス。もちろん先任のロアルドロスも居たには居たんだけど、僕らの顔を見たら速攻で逃げ出したんだよね。

 たぶん、ここには彼以外のロアルドロスが居なかったんだろうけど、あの弱腰にはロアルドロスくんも冷めた目で見てたわ。ハーレムの雄はルドロスを守る事が役目だから、この反応も当然と言える。ルドロスちゃんたちもジト目で見送ってたし。

 そんなこんなで、ロアルドロスくんは新たな居場所を見付けた。大社跡に残して来なくて良かったー。あそこにルドロスは居ないし、マガイマガドが縄張りにしていると聞いては、置いておく訳にはいかない。

 マガイマガド――――――怨虎竜の異名を持つ、牙竜種のモンスター。

 同じく群れを作る牙竜種である雷狼竜ジンオウガと違い、どちらかと言うとロアルドロスくんのようなハーレムを築く種族であるらしく、1匹の雄が複数の雌を侍らせている……事に間違いはないのだが、群れの長として認められる条件が問題である。

 マガイマガドの雄に課せられる条件は、“最強であれ”“イケメンであれ”という2つ。

 先ず1つ目の“最強であれ”というのは、文字通り史上最強の雄になれ、という意味。縄張りの安全を絶対かつ完璧に守るのが雄の役割なのだ。

 次に“イケメンであれ”というのも、そのまんまカッコいい男でいろ、という事。マガイマガドの特徴的な兜っぽい角は所謂ディスプレイで、一生に一度しか生えてこないこれを、雄は傷1つ無く保存しなければならないのである。どんなに広い縄張りを持っていても、どれ程最強の力を持っていても、ブサメンには何の権利も無い。酷い話だ。

 なので、マガイマガドは常に餌を求めて縄張りをうろつき、外敵であれば古龍にさえ喧嘩を売る。

 つまり、人里に現れるマガイマガドは全部雄である。こいつもまた、タマミツネのように雄が派手な種族なのだ。

 ……雄の背負う宿命には雲泥の差があるけど。

 だから、僕は絶対にマガイマガドと遭いたくない。雌にモテようと殺気立ってる雄にとって、今の僕らは完全に火に油だしね。どうだ、羨ましかろう!

 あ、そうだ、ボルボロスくんについてだけど、彼は唯一のボッチだよ。同族が全然居ないからね。何れは出会いを求めて寒冷群島に引っ越すつもりみたいだ。何でも世の中には氷砕竜という亜種が存在するんだとか。泥の代わりに氷を纏うって、どういう事なのかなぁ?

 ともかく、僕らは元気です。ボルボロスくんは分からないけど、僕らはここに骨を埋めようと思います。

 

 ――――――僕たちのスローライフは、これからだ!




◆ボルボロス亜種

 文字通りボルボロスの亜種。別名は「氷砕竜」。
 暑さを嫌い涼みを求めて移動した結果、泥の代わりに氷を身に纏うようになったらしい。戦い方はあまり変わらないが、通常種以上に肥大化した頭で突っ込んで来る上に「迂回して後ろから小突く」という変則的な攻撃もして来る。もちろん、雪の塊を放って来るので、雪だるま状態にもされる。
 ちなみに、40体を狩猟すると「グレイシア」という称号を貰えたりする。……ポケモンかな?
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