怪物のバラード   作:ディヴァ子

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今回もまったり回


面倒な声が聞こえたよ

 やーっ! 僕だよ、最近彼女が出来て舞い上がってるヴェノブロスこと、怖がりで寂しがりなディアブロスだよ。

 さてさて、溶岩洞に棲み始めてから早数ヶ月。ここでの生活にも大分慣れてきたし、ボルボロスくんたち以外の知り合いも多く出来た。

 先ずはリオレウスとリオレイア。空の王者&陸の女王の夫婦だ。

 彼らの縄張りは広いが、基本的にニッチは被らないし、こちらが余計な事をしなければほぼ見逃して貰える。逆に面倒な外敵を追い払ってくれる上に、サボテンまで食ってしまう悪食なリノプロスを捕食してくれる有難い存在である。何ならわざと彼らの下へ追い立て、大量の生肉をお歳暮としてプレゼントしているくらいだ。これがまた好評らしく、ボルボロスくんたち共々、かなり大目に見て貰っている気がする。

 そう言えば、最近リオ夫妻に子供が出来たらしい。この前、それっぽい幼体を何匹か見掛けた。もちろん、お祝いギフトをこれでもかと送りましたとも。

 お次は馬鹿デカい夜泣き岩、岩竜のバサルモスちゃん。

 鎧竜グラビモスの幼生で、鉱物の甲殻を全身に纏った「動く大岩」である。これでも飛竜種だというのだから驚きだ。人の事あんまり言えないけど。

 言うまでもなく、まだ赤ちゃんなので凶暴性は皆無であり、僕らも大人しい方なので、殆ど同居状態にある。餌の被りが無く、外敵から身を守れると踏んでいるのだろう。手を出さないと理解しているのか、普通に隣で寝たりするし。初めはゼルちゃん(僕の彼女ちゃん。「ゼルエル」の略。確かそんな天使が居るらしいし、どう見ても天使だから、そう呼ぶ事にしました)もビビっていたが、大きさを除けば手の掛からない子供同然だからか、今では彼(彼女?)の餌も用意するようになってきている。可愛いね。

 次の知り合いは、モンスターではなく、環境生物のガスガエルくんたち。

 彼らの特徴として、刺激を与えると何かしらの効果を発揮するガスを噴出して身を守るのだが、基本的に手を出さなければ何もしないし、厄介な環境生物を食べてくれる、これまた有用な存在である。特に纏わり付いて爆破攻撃を仕掛けてくるコダマコウモリを捕食して貰えるのは非常に嬉しい。最初は羽虫だと思ってたんだけど、あれ蝙蝠なんだね……。

 今ではすっかり慣れたのか、ちびブジナの遊び相手になってくれる個体も居る。遊んでいると言うよりかは、お手柔らかに突き放している感じだが、それがまたちびブジナには好評らしく、ちょっかいを掛けてはコロコロと転がり、遊び疲れたら一緒に蟲を食べるなど、微笑ましい光景を提供してくれる。エモい。

 さて、次は……知り合いと言うか、何と言うか――――――若干迷惑なお隣さんって感じのヤツカダキだ。

 背中に獲物の皮を被るとかいう悪趣味な性質を持つネルスキュラの親戚で、こちらは自らの糸を白無垢のように纏う、ちょっと雅なモンスターである。別名も「妃蜘蛛」だし。蜘蛛の癖に脚が四本で、折り畳み式の長い首があるけど。「火吹き御前」の異名もあり、口から火炎放射をしてきたりもする。

 そんな振袖放火魔のヤツカダキだが、蟻などと同じ真社会性のモンスターなので、当然ながら「臣蜘蛛」も存在する。それが溶岩洞の至る所でウロコトルと遊んでいる蜘蛛型モンスター、ツケヒバキだ。自分の糸で紡いだ繭でボールのような姿になっている可愛い生き物だが、彼女らは好奇心旺盛かつ女王と同じく火炎放射まで出来る結構ヤバい奴であり、事ある毎に色んなモンスターに喧嘩を売っては場を乱す、ちょっと迷惑な奴らである。

 当然、僕らに対しても悪戯感覚で火を噴いて来たり、糸で拘束しようとして来たりする。正直、ボルボロスくんやロアルドロスくんならまだしも、僕たちディアブロスに火はほぼ効かないので、精々「温いなぁ」くらいにしか感じないのだが、親であるヤツカダキにとっては気が気ではあるまい。毎回毎回、律儀に子供たちを腹部の育児蓑へ回収しに来ては、おっかなびっくり、ちょっと申し訳なさそうに去っていく。別に気にしてないけどさ、教育はしっかりして下さいな。

 まぁ、ようするに近所の悪ガキと、それに振り回されるお袋さんって感じだ。だから知り合いと言えば知り合いだが、別に仲良くはない。そんな関係。

 そして、最後の知人が、

 

『ZZZzzz……』

 

 この飲んだくれのおっさん――――――ではなく、金獅子ラージャンである。

 ……いやね、失礼なのは重々承知だけどさ、お腹をボリボリ掻きながら鼻提灯を膨らませて、大鼾をかいている姿は、どう見なくてもおっちゃんなのよ。見た目はヒヒの頭に悪魔の二本角、ゴリラの上半身とライオンの下半身という組み合わせをした、カッコいい姿なのだが。

 ただし、それは平時のリラックスタイムでの話。一度戦闘となれば、古龍を鼻で嗤う程の暴れぶりを見せる。

 ラージャンは牙獣種に分類されるモンスターで、ババコンガやドドブランゴの親戚みたいな物なのだが、実態はパワー・スピード・タフネス全てを兼ね備えた超攻撃的生物であり、ご自慢の剛腕で殴り掛かって来るだけでなく、口から破壊光線まで放って来る。その戦闘力は古龍を相手に引けを取らないどころか、あの超危険生物イビルジョーと互角に渡り合う程。そんな馬鹿な!

 さらに、「闘気化」という独自の戦闘形態を確立しており、怒り狂うと普段は真っ黒な毛並みが異名通りの金色に逆立ち、怒涛の勢いで攻め立てる。その上、「闘気硬化」なる第二段階まで備えていて、腕の筋肉を真っ赤になるまで盛り上げ、鋼鉄のように硬くする事が可能だ。ビルドアップしただけで刃を「カキン」と弾くのはおかしいと思うの。

 金色の毛並みと雷属性のオーラを纏う雄姿は、まさしく金獅子と呼ぶに相応しい。

 ……どう見ても猿だし、僕の知っている個体に至ってはオーラが赤いから、「赫獅子」って感じだけど。

 そんな動く暴力装置なラージャンだが、普段の姿から察せられる通り、何時も怒髪天という訳ではなく、猿なだけあって知恵もあり、意外と話せば分かるタイプだったりする。話すと言うよりは、貢物をしてるだけなんだけどね。

 と言うのも、ラージャンは雑食なので、僕とゼルちゃんの作った「キノコ入りの蜂蜜酒」や「リノプロスのキノコ和え」が大好評なのである。僕のブレスは毒にも薬にもなる妙技であり、食材の発酵くらいなら、ある程度コントロール出来るのだ。

 おかげでこの赤いラージャンさんとはかなり親密な間柄であり、酒の肴と引き換えに縄張りへの滞在を許され、リオ夫妻でも敵わない古龍や古龍級生物の襲撃から守って貰えている。まだまだ若輩だったとは言え、縄張りを奪い取ろうと強襲して来たテオ・テスカトルを一方的にタコ殴りにした上で空の彼方へぶっ飛ばした時は、思わず「生物とは?」と問い掛けたくもなったが。

 とまぁ、そう言った訳で、今日も僕は赤いラージャンさんにお酒とおつまみを提供しに来ている。

 今回のメニューは、「マンドラゴラの薬用酒」と「ドスハッカジキのニトロキノコソース掛け」。昨日は甘い蜂蜜酒とズワロポスのケムリの実スモークだったので、今日は胃が焼けるような癖の強い味にしてみました。気に入ってくれるかな~?

 ちなみに、僕は彼の事を心の中で「イージャンさん」と呼んでいる。料理が美味しかった時に浮かべてくれる笑顔(サムズアップ付き)が素敵だったので、尊敬を込めてそう呼ぶ事にしたのである。

 

『ニカッ☆♪』

 

 そして、今日もイージャンさんはイージャンさんであった。

 さて、今日はリオ夫妻にお歳暮を贈りに行く予定だし、ここらでお暇しよう……と、思ったんだけどねぇ。

 

『グルヴォッ!』

『『エー……』』

 

 ――――――野生のマガイマガドが現れたッ!




◆ラージャン

 「金獅子」の異名を持つ、漆黒の猿型モンスター。金“獅子”とは。
 尖爪目堅歯亜目ラージャン科に属する牙獣種で、謂わばババコンガとかドドブランゴの親戚……の筈なのだが、古龍を相手にも引けを取らない凄まじい戦闘能力を誇る、イビルジョーと同じく正真正銘の化け物。ハンマーのような剛腕でぶん殴るほか、口から謎のブレスを発射して来る。お前のような牙獣種がいるか。
 普段は黒い毛並みのキメラモンスターであるが、戦闘時には自家発電により毛が金色に逆立つ「闘気化」、怒りが増すと両腕が鋼鉄の如く真っ赤に燃え上がる「闘気硬化」という二段階のバトルモードに移行する。最上位クラスになると、全身に真っ赤なオーラを纏ったりする。どう見ても超サ○ヤ人です、本当にありがとうございました。尻尾が弱点だしね。
 ちなみに、体内に発電器官を持ってはいるものの、“ある条件”を満たすまではリミッターが掛けられている。その条件とは“キリン(古龍)の角をへし折って食べる”というものであり、ラージャンという種族の異常性を端的に表していると言える。
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