怪物のバラード   作:ディヴァ子

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防具の防御力はディアブロスの方が上だケド、スロットとスキルはボルボロスの方が優秀なのヨネー。


ある朝に目覚めたら

 ~~~♪ ~~~~~♪

 

『ZZZzzz……』

 

 ……うぅん?

 何だろう、この大海原に揺られるみたいな心地良い音。

 やぁ、僕だよ僕。臆病者にして落後者のディアブロスの1個体だよ。

 朝っぱらからコンサートをするなと言いたい所だけど、音自体は耳障りが良いので、特に文句は無い。他の同族程、音に神経質じゃないしね。

 それにしても、本当に何なんだろう、この音?

 まるで、笛を吹くような――――――、

 

「狩猟を開始する!」『うにゃぁ!』『ガヴン!』

 

 ――――――嘘ぉっ!?

 

 驚き目を覚ましてみれば、眼前に迫る群青色の棍棒みたいな物が。

 

 

 ――――――ボキン!

 

 

 さらに、鈍い痛みと何かが折れる音。間違いない、これは……、

 

『グヴェアアアアアアアアアアアッ!』

 

 いってぇ! 右の長い牙が折れたぁ! というか折られたぁ!

 クソッ、何処のどいつだ、寝起き早々に人の牙をぶん殴ってへし折るような外道は!

 

「決着を付けてやる! この新調した狩猟笛でな!」『ひゅーひゅー、カッコいいにゃ、ご主人!』『バヴッ!』

 

 ハンターかよ。知ってたけど。

 つーか、お前は昨日ボルボロスくんを殺そうとした奴だな!?

 彼に引き続いて僕まで狩ろうとするとは……これはメチャ許せんよなぁ!?

 

『グヴェアォッ!』

「目がーっ!?」『おーまいにゃーっ!』『バルス!』

 

 という事で、砂掛けに続き、今度は閃光で目を眩ませてやった。

 へへーん、僕、知ってるんだ。このチカチカ明滅しながら飛んでる羽虫を突っつくと、強力な目晦ましになってくれるって。流石にハンターの使う閃光玉みたいな物は作れないけど、環境生物は幾らでも利用してやるとも。

 何たって、殴り合い、命の奪い合いは真っ平御免だからね!

 とは言え、流石に牙を叩き折られたのに、目潰しだけで済ますのは割に合わない。少しくらいは仕返しさせてもらうよ!

 

『グヴェァアアアアアアアヴォッ!』

「ぶべらっ!?」『ご、ご主人ーっ!?』『アォーン!?』

 

 ハハハッ、翼でぶん殴ってやったぞ!

 えっ、角や尻尾は使わないのかって? 折れるのが嫌だからお断りします。

 

「あっ、しまった!」

 

 うん?

 

 

 ――――――ヒュンヒュンヒュンヒュン、グサッ!

 

 

『ギヴェエエエエエエエエエエッ!』

 

 ぐわばーっ!

 ハンターの手からすっぽ抜けた狩猟笛が、折れた牙の傷口にミラクルヒットしたぁ!

 その上、僕にしては珍しく興奮して体温が上がっていたからか、はたまた漏れ出た体液が影響したのか、何とそのまま接着・融合してしまった。この歳で差し歯は無しでしょ!?

 

「き、貴様、よくも! 25年ものローンを組んで取り寄せた一品物を! 返せゴラァっ!」

 

 ふざけるなよ貴様!?

 四半世紀分の金を掛けてまで人を殺しに来るなよ!

 つーか、お前こそ僕の牙を返せ! どうしてくれるんだよ、これ! 声を出す度にメロディ奏でるんですけど!?

 

『グヴェァヴォオオオオオッ!』

「ぐわぁっ!? 今度は落とし穴だとぉ!?」『砂地獄にゃーっ!』『キャィンキャィン!』

 

 どうだ、蟻になった気分は!

 僕はビビりな分だけ器用だから、ただ地面を掘るだけじゃなく、こうやって砂の地獄を造り出す事だって出来るのだ!

 これ、案外と同族に有効なのよね。ディアブロスって、地下生活を営む癖にやたらと体重あるから、自分以外が掘った穴に嵌まり易いんだ。何とも間抜けな話である。砂漠の暴君とは一体……。

 さぁ、仕返しは充分したし、変に反撃される前に撤退を――――――、

 

『グヴェ?』「なっ……!?」

 

 しようと顔を上げたら、目の前に砂嵐が迫っていたでござる。大型モンスターを纏めて呑み込める程の、大規模な竜巻だ。

 おかしい。幾ら取り込み中だったとして、砂漠に適応した僕が兆候を聞き逃すなんて。

 それはともかく、今は……全力退避ィイイイイイッ!

 

「あっ、おい、見捨てないでよぉおおおおっ!?」

 

 いや、知るかぁ! お前さっき自分が何をしたのか分かってんのかコラァッ! お前はそこで死ね、このビチグソがぁっ!

 

「わきゃーっ!」『うにゃー!』『キャォーン!』

 

 僕が地下深く潜った時、丁度真上に到達したようで、大地を引き裂くような轟音を撒き散らし、ハンターたちの汚い悲鳴を置き土産に、嵐は去っていった。

 そして、辺りが静まり返ったのを見計らって、地表に顔を出してみると、

 

『……グヴゥ』

 

 見事に何も無くなっていた。岩もサボテンも、ハンターたちの姿も。キメ細やかな砂だけが、何処までも広がっている。

 まさしく砂漠。命無き渇いた大地。こういうのを、確か人間に言わせれば、「砂砂漠」なんだっけ?

 まぁ、それはそれとして、この棲み処は捨てるしかないな。岩ならまだしも、サボテンが根こそぎやられちゃどうしようもない。再び自生するのを待ってたら僕が飢え死にしてしまう。

 ……誰かサボテン、分けてくれないかなぁ?

 

『グヴェアアアアアヴォッ!』

 

 僕はとりあえず、東に向かって歩く事にした。体感でだけど、竜巻は北東に向かって行ったようだし、西にはここより何もないからね。

 さぁ、出掛けよう、棲み処を捨てて。

 

 あー、歯に違和感……。




◆冥笛エンフォーラル

 ラギアクルスの狩猟笛「ラギアホーン」の最終派生武器。解放ランクの高さや希少種まで必要になる要求素材の難しさがネックだが、その分性能は折り紙付きで、大器晩成型の武器である。
 ディアブロスを襲ったハンターは、これを25年のローンを組んでロンディーネさんから購入した。
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