怪物のバラード   作:ディヴァ子

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※闇堕ちとかじゃありまセン。


お前を殺したい

 えーっ! 僕だよ、絶賛命の危機をビンビン感じているヴェノブロス的なアレだよ。

 いや、もうね、えーっとしか言えないのよ。何で赤茶けた松ぼっくりを退けたと思ったら、電竜ライゼクスが来ちゃうのよ。

 ライゼクスは異名の通り、電磁気を操る大型の飛竜種で、目に付く生き物を手当たり次第に殺して廻る事から“空の悪漢”とも称される、非常に質の悪いモンスターである。殺しを遊び感覚で行うというのだから尚の事。

 特に空の王者たるリオレウスを目の敵にしており、少しでも視界に入っただけで殺しに行く程の徹底振りだ。もちろん、その雌個体であるリオレイアにも牙を剥く。

 何故こんなガイキチなのかと言うと、孵化した時点で親が育児放棄するからであり、たった1人で生き抜く内に凶暴で歯止めの利かない性格になるのである。その辺りは同じく凶暴で有名なディアブロスに通じるものがあるね。僕とゼルちゃんは違うけど。

 ともかく、そんな悪逆非道な雷の反逆者が降り立ったとなれば、やる事は1つしかない。虐殺だ。

 

『ギギャヴォオァッ!』

『ギュァアアアアッ!?』

 

 さっそく、一番大嫌いなリオレウスさんに襲い掛かるライゼクス。飛行能力はほぼ互角で、雷属性を操るとなれば、リオレウスさんに勝ち目は薄い。リオレイアさんが加勢に入ったとしても、それは変わりないだろう。どっちも雷属性に弱いからね。

 しかも、本来なら纏った電荷は蛍光色を放つのだが、この個体に関しては青白い光を帯びている。幼い頃に偶然見掛けた別個体とは明らかに違う。体格も二回りくらい大きいし、こいつは確実に強い。

 

『バリヤァアアドァッ!』

『ギュァ……!』『キュァァァ!』

 

 リオレウスさんとリオレイアさんは頑張ったが、ライゼクスは2対1というハンデを物ともしない猛攻で両方共叩き落してしまった。鶏冠から雷属性の光刃を生成する事は知っていたが、流石に空中で側転しながらブレスを二連撃で放ったり、強力な電磁場で相手を引き寄せたり、鋏のような尻尾からもブレードを出したりするのは、全然知らなかった。規格外にも程があるだろ。

 

『ゴヴヴヴッ!』『ギシャァヴォオオッ!』

 

 さらに、様子見からの奇襲を仕掛けて来たマガイマガドとも互角――――――否、それ以上の空中戦を展開。しつもく食らい付くマガイマガドを、電荷を帯びた雷パンチとサマーソルトで打ちのめす姿は、不謹慎だがもっとやれと思ってしまった。マガイマガドは死すべし、慈悲は無い。

 

『グルルルル……』

 

 おーっと、嬲る獲物が居なくなって、今度はこっちに目を向けやがったよ。な、仲良くしよ?

 

『バリバリダァアアアッ!』

『イヤァアアアアアアッ!』

 

 何の躊躇いも無く突っ込んできた来たぁっ!

 お前、飛竜種の癖に翼で殴るなよ! 僕も良くやるけど!

 ウゴガガガガガ、バッ……バリバリダァアアアアアアッ!

 

『グフハハハ、ゴヴァアアアハハハハッ!』

 

 こ、こいつ、嗤ってやがる!

 もう空の悪漢とか、そういうレベルの話じゃない。こいつは悪魔だ。空から降って来た悪鬼羅刹だ。補食なんて何のその。テメェさえ良ければ後はどうでもいい、悪の限界が無い竜である。こんな奴が存在するとは……。

 

『ギゴガゴォゴォオオオッ!』

 

 ライゼクスが再び鶏冠に光刃を形成し、僕目掛けて振り下ろして来る。あっ、これは終わった。

 

『止めて下さい!』

『グギャヴォッ!?』

 

 だが、光刃が僕の脳天をかち割る前に、散歩中である筈のゼルちゃんが体当たりをして阻止した。流石にこれだけの騒動があれば気付くだろうが……駄目だ、早く逃げて!

 

『えい、えい、えい!』

『………………』

 

 最初の一発は不意打ちだったからこそ決まった物であり、その後は全くと言っていい程に効果が無かった。それはそうだろう。体格差があり過ぎる。これでは子供と大人どころか、リノプロスとクシャルダオラだ。勝ち目なんて1ミリも無い。

 

『グルルル……バギャヴォオオオオッ!』

『きゃあああああっ!』

 

 しかし、逆らう事自体が腹立たしいのか、ライゼクスはゼルちゃんの懸命な抵抗を払い除け、首筋に噛み付いてぶん回し、足蹴にした。

 

『ギャハハハァ、グヴハハハハハハッ!』

 

 その上、満たされた嗜虐心を反映したかの如く、ゲタゲタと嘲笑う。

 ……いい加減にしろよ、テメェーッ!

 

『グヴェアヴォオオオオオッ!』

 

 僕は雷やられで痺れる身体を、体液を内部で(・・・・・・)爆破する(・・・・)とういう荒療治で突き動かし、高笑いを続けるライゼクスへ飛び掛かった。

 翼指を! こいつの! 目の中に……突っ込んで! 殴りつけるぅ! それも、爆破属性でだぁ!

 

『グルヴッ!』

 

 だが、そこは歴戦と思しきライゼクス。自分の眼球目掛けて振るわれた翼を弾き飛ばし、逆に僕の横面へ雷属性の一撃を叩き込んだ。属性耐久値が壊滅的な僕は一瞬にして痺れなおした……のだが、関係あるか!

 

 

 ――――――カチッ!

 

 

『ゴヴァアアアッ!』『グギャァッ!?』

 

 歯を食いしばり、再び体液を暴走させて麻痺を無理矢理解除して、今度こそライゼクスのしたり顔に翼をぶち込んでやった。爆破属性の一撃が奴の顔面を抉る。

 

『ギィィガァヴヴヴヴヴッ!』

 

 しかし、眼球だけはしっかり避けていたようで、怒りと憎しみに満ちた目で僕を一瞬だけ睨み付けたかと思うと、鶏冠の光刃で切り付けて来た。それも2回。どちらも僕の胴体を袈裟と逆袈裟に斬り裂き、血飛沫を上げた。

 だが、それだけだ。僕の体内にあるキノコ袋はとっくに破れ、胞子が全体に行き渡っている。

 そして、憤怒による高熱で異常に活性化した胞子は瞬時に傷を繋ぎ留め、完全に塞いでしまった。まるで古龍みたいな異能に僕自身も驚いているが、今はそんなの知った事か。

 僕はただ、お前を殺してやりたいんだよ!

 

『グヴェアアアアッ!』

『ギャヴォオオオッ!?』

 

 さっきとは逆に、ライゼクスの左右の連打を翼で爆ぜ除け、尻尾のブレードは側面から尾で弾き飛ばし、鶏冠の光刃を根元から角で白刃取りして、がら空きの顔面に爆炎を浴びせ掛けてやった。これにはさしものライゼクスも堪らずに仰け反り、引っくり返った。

 その後は一方的なタコ殴りである。泣こうが叫ぼうが、このディアブロス、容赦はしない。

 貴様が死ぬまで、殺すのを止めない!

 

『ギィィィ……ギャヴォオオオッ!』『グヴェァォ!?』

 

 しかし、悪鬼羅刹の往生際は殊更に悪いらしく、自らの鶏冠を壊してまで発生させた閃光で僕の目を晦ませ、ジタバタと逃げ出した。

 

 ……お前、これだけの騒ぎを起こしておいて、逃げられると思ってんのか?

 

『ゴバァアアアッ!』『バヴォオオオッ!』

『ギギャァアアアアアアアアアアアアッ!』

 

 無様に空へ逃げるライゼクスを、イージャンさんとバサルモスちゃんのブレスが射貫き、

 

『ボルヴァァッ!』『キィウェエエエン!』

『カッ……、…………ッ!』

 

 墜ちた所をボルボロスくんの頭突きとロアルドロスくんの体当たりが襲い、今度こそライゼクスは斃れた。

 まだ目は見えないが、音と動作だけで充分だ。彼らはやってくれたのである。

 

『……大丈夫、ゼルちゃん?』

『私は大丈夫です。あなたこそ、大丈夫なんですか!?』

『割とギリギリ……』

『だ、誰か! 秘薬を持って来て下さい!』

 

 強い眠気に襲われる中、それでも僕はライゼクスの亡骸を睨み付け、思う。

 

 ――――――貴様が死んだ理由は、たった1つ。テメェは僕らを怒らせた。それ以上でもそれ以下でもない。

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 そんな溶岩洞の激闘を、2つの眼が見下ろしている事に、誰も気付かなかった。

 

 

 

 ――――――対よ、対よ。今こそ巡り会わん。我らが楽土を築きたもう……。




◆ライゼクス

 竜盤目竜脚亜目電翼竜下目電竜上科ゼクス科に属する大型の飛竜種。別名は「電竜」。
 昆虫の翅を思わせる美しい半透明の翼と黒光りする甲殻が特徴のスタイリッシュなモンスターであるが、その実「空の悪漢」の異名を持つ凶暴かつ好戦的な種族で、目の前の命を奪い、殺す事しか考えていない。特にリオレウスとリオレイアを目の敵にしており、一触発の殺し合いが起きる。
 これ程までに異常な攻撃性を持つ原因は孵化後のネグレクトにあり、生まれた時から己のみが味方である状況が続く事で、成体になる頃には立派なキリングマシンの出来上がりである。
 「雷の反逆者」と称される事もあり、その名の通り電磁気を自在に操る。その際、通常個体は蛍光色に輝き、歴戦の個体は青白く燃え上がる。
 また、骨格こそ一般的なワイバーン型だが、飛竜種にしては珍しく翼で殴り付ける攻撃を得意とし、逆に足蹴にする事はほぼない。必殺技は鶏冠に光の刃を形成して叩き込む「ライトニングブレード」。
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