やーっ! こんばんにちは、メンタルよわよわディアブロスだよ。
さっそくだけど、弱音を吐いて良いかな?
『ヤヴェエエエエエエエエッ!』
どうしよう、ビックリするくらいにサボテンが見付からないんだけど。見渡す限りサラサラの砂ばかりで、岩どころか礫すら見当たらない。当然、根付く土台がないからサボテンも無い。確かにとんでもない規模の竜巻だったけど、こんな事ってある?
あーあ、これじゃあ僕の古巣どころか、この砂原地帯そのものがもう駄目なのかもしれない。そんなぁ……。
『ボルフゥ……』
そんなこんなで歩く事暫く。フラフラと彷徨うボルボロスくんを見付けた。生きとったんかいワレェ。
しかし、これは僥倖だ。昆虫食の彼が歩いているという事は、何処かしらに虫の集まるサボテンがあるって事だからね。さっそく後を付けてみよう。
カンカン照りの、砂しかない不毛の地を、大きなモンスターがのっしのっし。
……こうして歩いてみると、あの嵐の凄まじさが分かる。大型モンスターである僕の足で数時間も掛かって、やっとこさ岩場が見えて来たんだもん。何もかもふっ飛ばし過ぎでしょ。
だからなのか、道中でハンターはおろかモンスターにも出遭わなかった。あのデルクスすら顔を出さないのは流石に気味が悪い。
とは言え、岩場に到達した辺りからは、小型モンスターがチラホラ見えて来た。それに伴い、僅かばかりの水場と弱々しい草木も見受けられる。
だが、肝心のサボテンは何処にもなかった。ボルボロスくんはオルタロスという腹に蜜を抱えた甲虫を食べに来たようで、蜜の出所である蜂の巣や小さな花はあったが、サボテンは影も形も無かった。
後は何故か生えている、色取り取りのキノコのみ。
『………………』
僕は草食性だが、何でも食べられるという訳ではない。
草食動物はお互いにニッチが重ならないよう、ある程度食性が決まっており、例えばディアブロスはサボテンを含む多肉植物が主食になっている。他の植物も食べられない事も無いが、消化不良か栄養失調になるだろう。
つまり、僕はこの辺りに生えている植物やキノコ類を一切口に出来ないのである。哀しいかな、草食動物の性。
しかし、お腹が空いているのも事実。
――――――パクッ!
背に腹は代えられず、とりあえず空腹感を誤魔化してみようと、目の前のキノコを食べてみた。
『ギヴェェエエエエエエエエエ!?』
毒テングダケだった。しまった、アオキノコと間違えた!
『ボルァッ!?』
突如のたうち回る僕に驚くボルボロスくん。そりゃ驚くわな……じゃなくて、アオキノコ! ビックリ仰天してる暇があったら、アオキノコ取ってきて!
『………………』
何だかよく分かっていないようだが、僕が必死にキノコを角で示しているのを見て、律儀にも採取して来てくれるボルボロスくん。何処で見付けたのか、蜂蜜とにが虫まで用意してくれたりと、至れり尽くせりだ。この食べ合わせは色んな効果を増強してくれるからね。有難や有難や。
と、とにかく、早く何か口に入れて、毒を中和しないと……!
――――――パクッ!
『シヴィレェエエエエエエッ!』
マヒタケだった。何でや。大丈夫か、僕の視覚。
まぁ、僕の可視領域って、人間程は広くないんだけどね。その分、耳が良い訳だし。
クソッ、次はこれだ!
――――――モシャッ!
『ボヴェエエエエエエエエッ!』
今度はマンドラゴラかよ!
こんな貴重なキノコを見付けて来たボルボロスくんの目敏さは凄いけど、それ扱いを間違えると死に至る劇薬なんだってばぁ!
あ、ヤバい、意識が……ええい、ままよぉ!
――――――バクゥッ!
『……ッ、グフゥ……ハフーッ』
間近に迫る死の気配に恐慌した僕は、自棄クソでキノコをガッツいたら、今度こそアオキノコだったようで、先に食べた増強効果により、どうにかこうにか九死に一生を得られた。
心なしかボルボロスくんも嬉しそう。向こうとしては、癇癪でぶっ飛ばされないか不安だっただけかもしれんけど。
ともかく、生きてるって素晴らしい。良い子の皆は、素人目線で自生しているキノコを食べないように。マジで死ぬからね?
『グゥゥゥゥ……』
だが、こんなに酷い目に遭っても、結局はサボテンではないので、全然腹は膨れなかった。
むしろ、劇薬に身体が抗ったせいで、余計に体力を失ったような気がする。どうすんのよ、これ……。
とりあえず、歩く余力すら無いので、今日はこのまま寝よう。体力が回復しないと移動すらままならないや。それじゃあ、少し早いけど、おやすみなさ――――――、
『『………………!』』
と、僕とボルボロスくんは、言い様のない悪寒を感じて、急いで身を隠した。僕は少ない体力を使って穴を掘り、ボルボロスくんは小さな沼地に頭の鼻先だけをだして息を潜める。
――――――ズゴゴゴゴゴゴッ!
何だ、何なんだ、この振動……!?
『クケェッ!』『ギャォオオッ!』『グルヴァッ!』『ギキィッ!』『ガゴォオオッ!』
数キロ程離れた場所を、無数のモンスターたちが疾走する。種族の統一はまるでなく、大きさもてんでバラバラだが、
『グヴゥゥゥゥ……!』
さらに、その最後尾をヌシの如くのし歩く、黒い悪魔。全身が切り傷だらけで、婚期でもなければ雌ですらないのに甲殻がどす黒く染まっているなど、ともすれば病気のようにも見える、双角の飛竜――――――ディアブロスである。
一体何があったら、あそこまでズタボロで、狂気的になれるのだろうか。
もしかして、あの嵐に巻き込まれて?
仮にそうだとしたら、あの嵐は、もしかすると……、
『グルヴッ!』
『『………………!』』
と、突然真っ黒なディアブロスが足を止め、こちらを見た。嘘でしょ!?
ナ、ナニモイナイヨー?
『グゴギヴェエエエエエエエエァァヴォオオオオン!』
しかし、僕らの願いも虚しく、漆黒のディアブロスはこちらに向かって突っ込んで来るのであった。
◆ボルボロス
竜盤目獣脚亜目冠頭竜上科ボルボロス科に属する獣竜種。別名は「土砂竜」。
現実で言う石頭恐竜によく似た姿をしており、見た目通り頭突きが得意(その際に頭頂部の鼻腔から薬缶みたいな音を立てる)。食性は昆虫食で、オルタロスを主食としている。ディアブロスにとってはサボテンの害虫を食べてくれる益竜なのだが、中々理解してもらえない。
陽光から身を守る為、泥を纏う習性を持ち、外敵に対してもそれらをぶつける。亜種は氷を纏う為、「氷砕竜」と呼ばれる。