怪物のバラード   作:ディヴァ子

8 / 26
※今回はハンターさん視点デス。


閑話:みんなで語ろう

 ここはカムラの里。

 霊峰が美しい観光の街「ユクモ村」から程近い場所にある、たたら場製鉄が盛んな山紫水明の隠れ里。

 そして、私はメラル。カムラの里出身のハンターだ。

 幼い頃より修行を積み、つい最近ようやっと資格を得たばかりの新米だが、クエストの達成率は100パーセント。挫折らしい挫折も無く、ウツシ教官からも太鼓判を押される、まさしく順風満帆なハンター生活を送っていた。

 そう、“あいつ”に出遭うまでは。

 

「砂原の方でモンスターが活発化し、生態系が乱れつつあります。「百竜夜行」の兆候かもしれません。調査をお願いします」

 

 その日、私は受付嬢のミノトさんから生態調査のクエストを依頼された。

 ここカムラの里では、遥か昔から「百竜夜行」という“モンスターの群れが雪崩れ込む”災禍に見舞われており、特に50年程前に起きた際は怨虎竜マガイマガドの乱入もあり、壊滅的な被害を被った。

 その為、カムラの里は製鉄技術を活かして砦を築き、独自の戦闘スタイルを確立したりと、来る新たな百竜夜行に備えて来た。

 その最たる物が「翔蟲」である。翔蟲は大型モンスターすら拘束する頑丈な糸を吐く甲虫で、その特性を活かした「鉄蟲糸技」は必殺の威力を誇る。他にも距離を詰めたり空へ駆け上がったりと利用方法は多岐にわたり、まるで蜘蛛にでもなった気分になれる。

 そんなスパイダーマッなカムラの里所属のハンターであるが、意外な事に人数は少ない。周囲を山河で隔絶された隠れ里に人材不足は付き物だからだ。私を含めても3人くらいしかいないだろう。

 まぁ、あくまでハンターじゃないだけで、里の者は全員が戦闘員なのだが。驚く事なかれ、茶屋のヨモギちゃんですら前線に立つのである。我が里の事ながらヤバ過ぎる。

 さて、里の事はこれくらいにして、“あいつ”の話をしようか。

 “あいつ”……即ち、あの変わり者なディアブロスについてね。

 

「――――――確かに、モンスターの移動した跡がたくさんあるな」

 

 クエストを受注し、その足で砂原へ向かうと、案の定痕跡が幾つも見付かった。小型モンスターが姿を消し、大型モンスターが棲み処を捨てて移動している。

 まるで、何かに追い立てられるかのように。

 里長曰く「百竜夜行のモンスターたちはどれも傷付き、既に弱っている」らしいが、そうだとしたら、一体何に巣穴を突かれたのだろう。

 この調査は、その理由を調べる為のものだ。

 

『それにしても、熱いにゃー。もう帰りたいにゃー』『クゥゥン……』

 

 と、背後で愚痴る猫と犬。こいつらはキンカとガルム。私のオトモアイルー&オトモガルクである。普段はこんな感じで頼りないが、戦闘においては頼もしい相棒だ。

 つまり、今はただの猫と犬である。何だかなぁー。

 

「おいおい、もっとシャキッとしろよ。せっかく新しい武器も手に入ったんだからさ」

 

 そう、私は今回、新たな武器を持ち出して来た。その名も「冥笛エンフォーラル」。ラギアクルスの希少種から作られる、超レアな狩猟笛だ。

 当然ながら値は張るし、そもそも海辺に棲息するラギアクルスを素材にする関係上、輸入するしか手に入れようがない。

 その問題を解決してくれたのが、最近やって来た貿易商のロンディーネさんである。

 ……言動が明らかに商人じゃないし、「商人の血が騒ぐ」とか言っちゃうアレな人だが、悪い人ではなさそうだし、仕事そのものはちゃんとしてくれるので、生温かく見守るのが里の皆の暗黙の了解となっている。

 で、さっそく彼女に口利きして貰い、この武器を購入出来たという訳だ。

 ただし、レア度がレア度なので、ローン払いになってしまったが。大丈夫、生涯ハンターとして生きるつもりだから、25年なんて軽い軽い。

 

 ――――――そんな軽い気持ちで受けたのが良くなかったのかもしれない。

 

『グヴェアアアアアアアッ!』

「何ッ、ディアブロスだと!?」『ご、ご主人、どうするのにゃ!?』『ヴヴヴッ!?』

 

 探索中に現れたボルボロスと戦っていると、突如としてディアブロスが現れたのである。

 とは言え、ディアブロスとは何度か戦っている。負ける気はしない。この新しい武器の威力を試してやる!

 

「うぇっほはっ……す、砂掛けだぁ!?」

『な、何だこいつ、攻撃パターンが通常と違うにゃ!?』『キャインキャイン!』

 

 何とこいつ、馬鹿の一つ覚えのように咆哮してから突っ込んで来るかと思ったら、砂掛けを食らわせて来たのだ。ディアブロスにそんな頭があるとは。

 さらに、その後も突進する事は無く、延々と砂で視界と気道を塞ぐという嫌がらせ戦法を繰り返すばかり。とんだチキン野郎だが、逆に遣り辛い。

 

「く、くそっ……撤退、撤退だ!」『覚えてろにゃ、こんにゃろー!』『アォーン!』

 

 これには堪らず、私たちは退却した。

 武器を新調したからと言って、必ずしも勝てるとは限らない。そもそも今回は調査が目的だったので、連戦を出来る程の装備は持ってきていなかった。

 だから、これは戦略的撤退である。決して、砂で髪が痛むのを嫌った訳じゃないよ?

 ともかく、これは里長やゴコク様、教官たちに報告だな。「砂漠の暴君」の異名を持つ程の凶暴な種族であるディアブロスが、小手先の戦い方を選択したり、他種族を守ろうとするなど、それこそ異常事態だ。

 

 ――――――だが、私はこの時、知らなかった。

 

 この不思議なディアブロス……後に「ヴェノブロス」と呼ばれる事になる特異個体との、長い長い因縁が始まってしまった事を。




◆カムラの里

 ユクモ村近くにあるという、ニンジャの隠れ里。製鉄技術に優れており、「翔蟲」を利用した「鉄蟲糸技」や「操竜」と言った独特の戦術を確立している。
 遥か昔から「百竜夜行」という災禍に見舞われており、50年前の時はマガイマガドの乱入によって一度は壊滅状態に陥ってしまい、それからは里全体を要塞化した。
 ユクモ村の近隣地域という事もあって、出現するモンスターや見舞われる災禍(と、その原因)などに共通点が見られる。
 土産品は「うさ団子」。茶屋のヨモギちゃんにお願いすれば、顎が外れる程に意味不明な調理行程を見せ付けられた上で提供して貰える。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。