最悪……最悪だ、本当に。
――――――いきなりで済まないね。私だ、カムラハンターのメラルだ。
とりあえず聞いて欲しい。ここ数日で、私は自慢の得物を2つも奪われてしまった。あの奇妙なディアブロスに。
先ずは砂原でのリベンジ戦。エンフォーラルで開幕殴打を食らわせ、気分良く狩猟を始めようとしたのだが、何とあのディアブロス、前回の砂掛けに続き、閃光羽虫による目晦ましに自前の落とし穴に嵌めるという、まるでハンターのような姑息な手で反撃して来たのである。
さらに、普通なら角で突き上げて来るであろう所を、こいつはリオレウスの如く翼でぶん殴って来た。下から来ると思って身構えていた為、意識の外からクリーンヒットしてしまい、思わずエンフォーラルを手放してしまった。
そして、それがディアブロスの折れた右の牙に当たり、何故かそのまま一体化してしまった。
いや、そんな事ってある?
しかも、その後に謎の砂嵐に巻き込まれてしまい、回収する暇など無かった。何なの、この弱り目に祟り目な展開は。あんな簡単に大竜巻が発生して良いと思ってんの?
その上、這う這うの体で休憩場所を探し、ようやっと一息入れた所に、まさかのディアブロスによる追撃。サボテンなんて食うじゃなかった……。
さらば、私の25年もの未来。
だが、悪い事は続くモノ。強走薬欲しさに水没林へロアルドロスを狩りに赴いた時に、キンカ(オトモアイルー)の友達から嫌な話を聞いてしまった。
曰く「水辺でディアブロスとロアルドロスが戯れていた」らしい。
より正確に言うと、勝手に溺れて独り相撲していたディアブロスに、群れを追われて気が立っていた中年のロアルドロスが八つ当たりをしたところ、翔蟲で反撃され、泥濘を抜ける為の馬車馬として使われたんだとか。
いやいやいや、何じゃそりゃ。砂掛け、目晦まし、罠と来て、今度は翔蟲アクションって、ハンターの立場が無いじゃん。
さらに、肝心のロアルドロスが見付からない上に、何となーく嫌な予感がしてサボテンの蜂蜜漬けというあいつにしか通じ無さそうな罠を設置してみれば、本当に現れやがった。
そして、またしても「しまった!」してしまい、この日の為に新調した25年分のローン兵器「衝鼓【叫虎】改」までも奪われてしまった。どうしてお前はそんなに差し歯になるんだ、ふざけるなよ。これで私、老後まで働き詰めなの確定したんだぞ!?
さらに、泣きっ面に蜂はまだまだ続く。
『アヴォオオオオン!』
「嘘だぁああああっ!?」『何でにゃーっ!』『キャン!?』
ディアブロスによる痛みと怒りのローリングアタックで吹っ飛ばされた先で、オサイズチを捕食中のジンオウガにメテオストライクしてしまったのだ。バルファルクかな、私は?
むろん、それくらいでモンスターが死ぬ筈も無く、ジンオウガは即行で怒り狂い、こっちに武器が無いのを良い事に、さっさと超帯電状態に移行して襲い掛かって来た。オトモたちが頑張ってくれているが、彼らはあくまで補助役、長くは持たないだろう。
くそぅ……まさか、こんな所で死ぬのか、私は!?
「そうは行くかぁ!」
『グヴォォオオッ!?』
しかし、窮鼠は猫を噛むもの。極限まで追い詰められた私は、バラバラに食い散らかされたオサイズチの頭部と尻尾を拾い、それらを剣と盾として持って挑んだ。
そう、私が最初に握った武器――――――片手剣のスタイルである。
最近は成功を重ね続けたおかげで、新たな武器と境地を開く事が趣味になりつつあったが、まさかこんな場面で原点回帰する事になろうとは……。
『ヴォオオオン!』
「ぬぐぅっ……!」
ジンオウガのお手付きを躱し、雷爪攻撃を盾で防ぐ。体力も装備も覚束ないこの状況で、上手く立ち回れる筈もないが、それでも致命的な一撃だけはしっかりと防いでいく。
『グルヴォンッ!』
「舐めるなぁっ!」
『キャヴォぉン!?』
そして、尻尾のムーンサルトをバックステップで回避してからジャストラッシュを食らわせ、その反動を利用して一度宙に浮きつつシールドバッシュを当て、ハードバッシュの連携攻撃を叩き込む。それによりジンオウガがスタン状態となり、無双の狩人とは思えないくらいにジタバタと藻掻き出した。
「死ねぇ!」『うにゃにゃーっ!』『ガルァッ!』
もちろん、容赦は一切しない。3人掛かりでタコ殴りにしていく。
『グルヴッ……!』
「起きるなぁっ!」
『アヴォォォン!?』
さらに、立ち直る前に落とし穴へ叩き落し、再度身動きを封じて、更なる攻撃を加える。泥玉ころがしの水やられは痛かろうて!
『グヴヴッ……!』
その後、どうにか態勢を整えたジンオウガは、しかし交戦する事はなく、そのまま森の奥へ逃げて行った。これ以上の戦いは不毛だと悟ったのだろう。食う所が殆ど無い、それでいて反撃は苛烈なまでにして来る獲物など、わざわざ傷を負ってまで狩る意味はない。
「た、助かったぁ……」『死ぬかと思いましたにゃあ』『クゥ~ン……』
とにかく、私たちは生き延びる事が出来た。こんなに嬉しい事は無い。雨も降って来たし、もう帰ろう。
こうして、死ぬ思いをしたのに得られる物は何もないという、かなり酷い部類に入る挫折を味わった私は、オトモたちとすごすごと帰還する破目になったのだった。
「……覚えてろよ、あのディアブロスめ!」
『次は頑張りますのにゃー』『ワンワン!』
だが、このまま終わる私ではない。必ずリベンジしてみせる。
さて、奴は次に何処へ向かうのだろう。流石に水没林に居座るとは思えないので、砂原に戻るか、灼熱サボテンのある溶岩洞に向かうと考えられるが――――――あの頭のおかしさなら、何かの間違いで大社跡に迷走するかもしれない。
果たして、その予測は当たってはいたのだが……そこで見掛けたあいつは、またまたとんでもない事をしでかしていた。
――――――何と奴はディアブロスの癖に、“ブレス”を吐いていたのである。
◆片手剣
右手に剣を左手に盾を持つ、モンハンの基本装備……と見せ掛けて、実はかなり玄人向けなスタイル。射程が短く防ぐ能力も低めだが、盾による殴打にはスタン効果があり、手数もそこそこ稼げるので、上手く活用すれば気絶させた上で属性ダメージを蓄積させる事も出来る。なので、双剣などと同じく属性武器と相性が良い。
ちなみに、作者はずっと片手剣しか使ってません。上手いとかじゃなくて、それ以外ロクに使えないんです……。